こんなことを思ったり。ぼちぼちかんげき。

アラフィフ負け犬がビンボーと戦いながら、観劇したものなんかを感激しながら記録。

2021年かんげき思い出し。

2021年末にバタバタと引越して、今日からの新生活に向け、必死で準備しておりました。

そんなわけで、今手元にあるチケットは1枚のみ。

1月にいろいろ見たいものはあったのですが、入手する時間を見つけられず、残念ながら見られていません。

せめて2021年の観劇記録だけ、自分のために置いておきます。

 

★1月

宝塚雪組「fff-フォルティッシシモ」「シルクロード」×2回

梅芸「ポーの一族」×2回

 

★2月

パレード

宝塚花組「NICE WORK IF YOU CAN GET IT」

 

★3月

宝塚星組ロミオとジュリエット

 

★4月

きみはいい人、チャーリー・ブラウン

宝塚花組アウグストゥス」「Cool Beast

 

★5月

地球ゴージャス「The PROM」

スリル・ミー

 

★6月

宝塚雪組ヴェネチアの紋章」「ル・ポァゾン愛の媚薬-again-」

寺田瀧雄没後20年メモリアルコンサート

 

★7月

CLUB SEVEN zero Ⅱ

日本の歴史

 

★8月

宝塚雪組CITY HUNTER-盗まれたXYZ-」「Fire Fever!」

宝塚花組「哀しみのコルドバ」「Cool Beast

 

★9月

ケムリ研究室「砂の女」×2回

宝塚星組柳生忍法帖」「モアーダンディズム」

 

★10月

宝塚月組「川霧の橋」「Dream Chaser」

 

★11月

宝塚花組「元禄バロックロック」「The Fascination」

 

★12月

OLIVER!

ナイロン100℃「イモンドの勝負」

 

22本!The Promとスリルミーが上演されていたら、本来ならば24本じゃないですか!!

一月1本にとどめるという目標を大幅にオーバーした原因はやっぱり緊急事態宣言で、特に宝塚歌劇の私設ファンクラブさまから余ったチケットがたくさん回ってきたという悲しい事実があります。

そして東京では現在、花組雪組も公演中止が続き、他の舞台もいろいろ中止になったりと、まだまだこの感染症との戦いは終わらないのだなと実感します。

 

こうやって見ると2021年は完全に宝塚歌劇団のターゲットにされていたな、と思います。

熱いファンだった中学時代に上演された作品の30年ぶり、31年ぶりの再演に踊らされ名古屋へ博多へ。さらにシティーハンター世代。

でも宝塚歌劇で見たものだけで言うと、今回は「柳生忍法帖」が好きでした。

ああいうヒーローが登場し、娘役さんたちが主体で物語が進んでいくのは見ていて本当に心地よかったです。

 

出会えてよかったナンバーワンは「きみはいい人、チャーリーブラウン」の花村想太くん。しかも同じ天才肌のアッキーとの共演はこの先あまり見られることがないかもしれないので、貴重だったと思っています。

ジャージー・ボーイズ再演、今度は花村想太くんで見に行きたいと考えています。

 

ミュージカル演出として本当に素晴らしかったのが「パレード」でした。

あのカラフルな紙吹雪の光景は今でもフラッシュバッグします。作品も出演者も素晴らしい文句なしの舞台でした。

 

でも「ヒッ!」と思わず声をあげてしまったのが「砂の女」のオープニングだったんですよ。

 

そういう意味で一気に物語に入り込ませたケラさまの演出はやっぱりすごいなと思うのです。

読売演劇大賞の作品賞と女優賞にノミネートされていますが、

第29回読売演劇大賞 ノミネート決定! : エンタメ・文化 : ニュース : 読売新聞オンライン

緒川たまきさんはこれも受賞されそうですよね。本当に素晴らしい「女」を作り上げていらしたと思います。

 

最後に見た「イモンドの勝負」はバタバタしていたのもあるのですが、ナンセンスコメディーという初めて見るジャンルにとまどってしまって感想が書けていません。

でも時が経つにつれジワジワジワと面白いというか、改めてなんだったんだろう、あと5回くらい見たい、て気分になるからすごいです。

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さて2021年は中止以外にも神田沙也加さんが早逝されるという悲しい出来事もありました。

実は1月の舞台初めを今度こそ彼女のイライザを見るんだ!と意気込んでいただけに言葉もなくショックでした。

今思うのは「リガリーブロンド(キューティーブロンド)」を彼女でと願っていた、その願いを叶えてくれて、素晴らしいエル・ウッドを作り上げて魅せてくださったことにただただ感謝だなと。

でもやっぱり彼女のグリンダがいつか見たかったし、イライザも見たかったです。

こういう妄想や希望を膨らませることも彼女がくれた幸福な時間だったと、あの舞台での煌めきを思い出しては実感します。

たくさんの感謝と大好きだった気持ちが彼女に届きますように。

 

2022年は新生活もあって、観劇頻度をグッと落とす予定ですが、見たいものは相変わらずいっぱい。

なので早く心配なく上演、観劇ができる世の中に戻ることを心より願っています。

古いけれど確実な総合芸術@ミュージカル「オリバー!」

12/11(土)17:30~ 梅田芸術劇場

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スタッフ

脚本・作詞・作曲 ライオネル・バート

この日のキャストは下記の通りでした。

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日本では31年振りの公演となるようです。

その辺りの事情はミュージカル『オリバー!』に魅せられて~観た・気付いた・愛した | SPICE - エンタメ特化型情報メディア スパイスが詳しかったです。

 

わたしがこのミュージカルをどうしても見に行きたいと思ったのは、もちろん先の記事にもあるように映画版が大好きというのも一つです。

とりあえずマーク・レスターのかわいらしさに癒されるのでおススメです。

 

そしてはじめてロンドンに短期滞在した20歳の頃、ちょうどこのミュージカルが上演されていて、すぐに「はじめての英語ミュージカル観賞」に選んだのがこの演目だったのです。

いろんなことがはじめてすぎて記憶が曖昧なのですが、とにかく感動して、3週間の滞在中に2回見に行ったことだけ覚えています。

(当時の担当教授には2回見に行くほどいい作品か、と言われたけれど、好きだったのでね汗)

あとは子どもたちのパワフルさがすごかったこと。

ああこんな子どもがいっぱい出てくるミュージカルを日本で見るのはなかなかできないよなあ、としみじみ思ったものですが、まさかこのコロナ禍でこの作品が日本で上演されることになるとは思わなかったです。

 

新演出版、と謳われていましたが、どこが「新」だったのかはわかりませんでした。

ただこういう古いミュージカルにありがちなオーバーチュアはなく、すぐに少年たちの大合唱「Food Glorious Food」からはじまったのは、このミュージカルの特色をガツンと見せつけていて、さらに後半は食器を使ったリズムパフォーマンスも織り交ぜてあって、一気に物語へ引き込むよいオープニングだと感じました。

 

19世紀ヴィクトリア朝の英国、しかも貧民層を描いたこの作品は、救貧院で生活するオリバー・ツイストが、もろもろあって救貧院を追い出され、葬儀社に売り飛ばされ、そこから逃げてロンドンにたどり着き、すりの集団と出会うことからはじまります。

 

映画を見ていたころは、ただただ苦難から救済される少年に心温まり、その音楽に酔っていたのですが、今改めて見るとものすごく「人間」を感じるのです。

貧しさの中にも差があって、その中でそれぞれの価値観で生き抜いている大人や子どもたちのありようが刺さってきました。

その象徴が実はこのミュージカルの主役フェイギンなのです。

彼の行いは「悪」ではあるけれども、彼を一言で「悪人」と言い表すことができない、そのことが本当に「人間」だなと感じました。

そしてその人間を武田真治さんはちゃんとチャーミングに演じていました。

ただ実年齢よりも老けて見せさせるせいか、特殊メイクなみの舞台化粧が気にかかりました。

フェイギンの内面を歌った曲「Reviewing the Situation」は年老いて独り身で生きていく不安なども織り交ぜているのですが、武田真治さんの現在の年齢で歌っても特に違和感はないと思うのです。というかむしろそうした方が幅広い世代に響くような気がしただけに、メイクだけが残念でした。

このミュージカルを見に行ったもう一つの理由が、ナンシー役をソニンさんが演じるということでした。

珠玉のナンバーが揃うなかでもナンシーの「As Long As He Needs Me」が特に大好きな歌で、これをソニンさんがどう表現してくれるかを楽しみにしていたのです。

というのも、若いころはよく分かっていなかったけれど、ナンシーは恋人であるビル・サイクスからDVを受けているのですよね。

なのに「彼が自分を必要をしてくれる限り、彼を愛する、なんでもする」と歌う。

この状況を今ならどう感じるのだろうと思っていたのですが、ソニンナンシーは明るくふるまい、子どもたちに優しく接しながらも、孤独の闇を抱えている様をまざまざと伝えてきたのです。

ミュージカルを見るだけでは彼女の過去や育ってきた過程はわからない。けれどもそこには壮絶なものがあって、その中でビル・サイクスは小さなロウソクの炎のような、それしかない頼りない、けれども生きていくのにどうしても必要だった「希望」のように思えました。そしてそんな彼女が歌う「As Long As He Needs Me」はただ悲しくて、彼女がどうなるかわかっているのに、ラストシーンでは涙してしまいました。

もちろん「ウンパッパ」も楽しく、圧巻!

少年たちの「Consider Yourself」や「I’d Do Anything」もかわいくて楽しくて、歌声の層もオーケストラも音の厚みがすごいことを改めて感じました。

珠玉のミュージカルナンバーではありますが、やはり音楽としては古いです。でも逆にあれからたくさんの新しいミュージカル曲を聞いたからこそ、改めてこの古い音楽が、今のミュージカル曲にはない音の厚みを持っていることに気付きました。

そして何よりセットがすごい。

私がロンドンで見たときはパラディウムシアターで上演されていたのですが、その5年後にはここで「チキチキバンバン」を見たように、子ども向けのミュージカルがかけられる劇場でした。

そして学校行事で子どもたちが見に来ることも多い劇場でもありました。

でもだからこそ、ここでかけられる作品はキャストとセットは豪華で一流で、子どもに見せるからこそ一流品を、という心意気が見えてくるような気が当時したものです。

 

今回のセットも今どきこんなにお金かけられる?くらいの造りのしっかりしたもので、一つのシーンのセットが集約されていったかと思うと、その消失点から光が差し込み、セントポール大聖堂を軸にロンドンの町が広がっていくさまは、特に見事でした。

 

実はこの日、高校生たちの団体が校外学習として観劇にいらしていたのですが、彼らにもっと興味をもってもらえるような「今の音楽を使った、今のミュージカル」を見せた方がいいんじゃないかとか勝手に思ったりしたのですが、これだけのキャストとアンサンブル、オーケストラ、そしてこのセットを日本で見られる機会はそんなにないと思うので、ある意味、「基本を見る」という意味で正解だったのでは、と思います。

子どもたちはみんな本当にパワフルで素晴らしかったのですが、その中で選ばれただけあってオリバー役の小林佑玖くんは本当に透明で柔らかい音質の歌声がかわいくてオリバーそのものでした。「Where Is Love?」はもう歌声だけでキュン!

対するドジャー役の佐野航太郎くんはエネルギッシュで歌声も力強く、素晴らしい「Consider Yourself」や「I’d Do Anything」を見せてくれました。

 

正直、大好きだけど古いミュージカルだから退屈するかなと思っていたのですが、そしてやっぱりもうちょっとすっきりさせた方がいいなと思う部分や、ここはもうちょっと丁寧になり行きを伝えた方がいいなと感じた部分もあったのですが、全体には想像以上に圧倒されてしまいました。

そして、25年経って、今はじめて原作に手を出しました。

これがまたロンドンの地名が分かるだけに、旅行に行けない今、懐かしく思い出しながらもその描写に驚きながら読んでいます。

この作品が気に入られて原作が未読の方がおられましたらぜひ。オリバーの冒険はミュージカル版より波乱万丈です。そしてフェイギンをユダヤ人と表現しなかったことにミュージカル版のよさも感じます。 

でもフェイギンのラストシーンはやはり映画版が好きです。これはミュージカル版にも反映しても良かったように個人的には感じます。

 

ところでこの日はサンクストークという名のアフタートークがあって、ナンシー役のソニンさんと が登場。

せっかくなので記録としてうろ覚えですが内容を書き残したいと思います。

 

Q.特に心に残るセットまたは小道具は?

オリバー役の小林佑玖くん

A.小道具の本。中が英語なので読めないから。 

 

ドジャー役の佐野航太郎くん 

A.フェイギンの家?のベッド。

実は固くて寝にくくて、いつも身体のあちこちが痛くなっていたのに、大阪公演からスポンジが入ったみたいで快適になったから。

ちょっとウトウトしたこともある。

 

ナンシー役ソニンさん

A.衣装は1つしかないけれど、ショールだけ2枚あるので、それでイメージが違うように工夫している。ショールはビル・サイクスからもらったもの、と言う個人的な裏設定を作っている。

 

Q.ソニンさんは「ウンパッパ」を歌う前に毎回違う一言をアドリブで入れていますが、個人的に好きなものは?

A.二部の幕開きなので、カンパニーのみんなに元気になってもらえたらいいなと思って毎日違うものを考えている。ちなみに今日は、くる途中梅田が本当に人でいっぱいだったので「外は人でいっぱいだよ」にした。

印象的だったのは、東京千秋楽で「今日で終わりだよ」と言ったら客席から拍手をいただけたこと。

 

オリバーとドジャー、出会いの部分を入れ替わってやってみて、みたいなお題もあって、ちゃんと出来る2人に感動の一時でもありました。

 

天井に近いところから見ていたのですが

(そんなわけで撮影可のカーテンコールはこんな感じです)

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もっと前の方の席をとってもよかったなと後悔しました。セットの全貌も堪能したかったです。

時を戻して価値観を改める@宝塚花組「元禄バロックロック」

11/23(火・祝) 15:30~ 宝塚大劇場
忠臣蔵ファンタジー
『元禄バロックロック』
作・演出/谷 貴矢

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キャスト   
クロノスケ    柚香 光
キラ    星風 まどか
コウズケノスケ    水美 舞斗
ケイショウイン    美風 舞良        
リク    華雅 りりか        
クラノスケ    永久輝 せあ        
ツナヨシ    音 くり寿        
タクミノカミ    聖乃 あすか                
カエデ    美羽 愛        
ツバキ    星空 美咲

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ええと、この公演解説 | 花組公演 『元禄バロックロック』『The Fascination(ザ ファシネイション)!』 | 宝塚歌劇公式ホームページが出たときにはちょっとパニックになったことを告白します。
良く知ってる名前がカタカナになるだけで、こんなに混乱するものなのですね・・・。
しかも「タイムリープ」って何?な状況で見に行って大丈夫か、と思いながら足を運んだわけですが、杞憂でした。

ちなみに「タイプリープとは」で検索すると
SF小説などで、人が過去・現在・未来を瞬間的に移動すること、またその能力。時間跳躍。和製英語
と出てきました。和製英語なんですね。


ストーリーをザクっと紹介するならば
赤穂藩士で時を戻せる時計を持った時計職人のクロノスケが「松之廊下刃傷事件」以前の世界に戻れないかと考えながらも、人として今を大事にするという違う生き方もあるのではないかと迷っている。そんな中、不思議な魅力を持ったキラと出会って、本当の人生の在り方を模索していく。
というところでしょうか。

ここに結構がっつり「忠臣蔵」の話しが入ってきます。
なのでさらっと「忠臣蔵」は何かで知っておいたほうがより楽しめるかなとは思いました。
ちなみにわたしの行きつけバーのマスターはこの映画を見ていたので楽しかったとおっしゃっていたので、いいのかもです。

本来であれば、杜けあきさまファンとして、29年前の同じ時期に旧宝塚大劇場で上演された「忠臣蔵」を見て!と申し上げたいです。

だって、幕開き「松之廊下刃傷事件」ですよ!
事件の手紙を受け取ったクラノスケが「あんなにお優しい殿がどうして・・・」ですよ!
思い出しますよ、29年前に旧宝塚大劇場に通った日々を。
でもこれを見ちゃうと今回の「ファンタジー」部分が満喫できなくなるので、個人的にオススメできないのが残念です・・・。

 

話しとしては「ファンタジー」な設定や世界観が、個人的に高河ゆんさんの「源氏」や、小劇場演劇っぽくも感じましたが、曲の作り方はちゃんと大劇場ミュージカルしていましたし、セットも衣装も豪華で美しく、今からはこういう日本物もありだなあと思いました。
しかも役も多いので、みんなイキイキと活躍していたのも見ていて楽しかったです。
今回の赤穂事件解決部分をわたしは上記の理由で「えええー、それはないよ」と思ってしまったのですが、そんな個人的なことを除けば、ちゃんと「忠臣蔵ファンタジー」になっていて、それは今の時代にあっているとも思います。

寧ろこの解決法こそが、時代が進んだことを印象づけて、死ぬ美学から生きる大切さへの価値観が変わるのはいいなと思っただけに、その解決法が「えええー、それはないよ!てか、大石はそれを先にやったんだよ、だけどダメだったから討ち入りだったんだよ!」と思ってしまった自分がちょっと哀しい。

本当贅沢言って申し訳ないですが、他の解決法だともっとこの話しを楽しめたと思います。

(いやもしかしたら赤穂藩再建却下前までは時が戻っているのかもしれない。クロノスケが松ノ廊下から討ち入りまでのどのタイミングでキラと出会っているかは不明だしな、多分。ちょっと時系列がわからなくなったので不確かですが、そう思って見ればよかったです)

 

それにしても柚香光氏の「プロイケメン」な甘い言葉がなんと似合うこと。
その美貌の柚香光氏を支える水美舞斗さんと永久輝せあさんの安定感。
何より音くり寿ちゃんがオン・ステージ!
かわいらしく、おもしろく、でも素直で少年らしく素晴らしい将軍でした。
星風まどかちゃんは文句なくかわいいし上手いのですが、このお芝居においては、もっとクロノスケへの気持ちを強く感じさせる演技ができると、よりいいだろうなあと思いました。
タイムリープが関わっているので、その辺の塩梅はものすごい難しいと思うのですが、できる人だけに今後と東京公演に期待。キラのクロノスケへのラブ感強めになっているともっとキュンキュンもできる気がしています。

ところで、なぜ浅野内匠頭吉良上野介に斬りかかったのか、というのは、多分「これ」という確証が現在のところまだ出ていないのではないかと思います。
だからこそ色んな解釈が生まれて、現在に至るまでいろいろな「忠臣蔵ファンタジー」が生み出されているのでしょう。
今回の「元禄バロックロック」では、タクミノカミがコウズケノスケを切りつけた理由を、なんとなーく理解できるし、理解できるところまで話を持ってきたのは単純にすごいと思うのですが、それでもやはり浅野内匠頭がそうすることによって赤穂藩がどうなるかを藩主として先に考えなかったのか、という疑問はやっぱり残ります。
そんなわけで、わたし個人は「忠臣蔵」の世界においてはこの作品のファンタジーが一番納得できるものだったりします。

ちょっと怖くて面白いのでおすすめです。
そして吉良上野介大石内蔵助にも同情します。

 

さてそんな29年前の公演に思いを馳せた後、やってきたのがこれです。
レビュー・アニバーサリー
『The Fascination(ザ ファシネイション)!』 -花組誕生100周年 そして未来へ-
作・演出/中村 一徳 

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花組誕生100周年を記念して、1985年の公演「テンダーグリーン」の主題歌と1988年の公演「フォーエバー!タカラヅカ」から「ピアノ・ファンタジー」のシーンが入るよ、ということは聞いてはいたのですが、理解しているのと実際見るのとでは違う。
「テンダーグリーン」も「ピアノ・ファンタジー」もわたしは映像でしか見たことがないのですが、10年前に急逝された元花組トップスター大浦みずきさんにとても縁のある曲と作品で、大浦みずきさんが「宝塚ショースター」の基本形であるわたしにとっては、その存在を思って涙なしでは見られませんでした。


全体に本当に正統派レビューな作りになっていて、またそれをきっちり魅せられる花組の皆さんがすばらしい。
そんな正統派レビューな中、中村一徳先生お得意の銀橋を何度も何度も手を変え品を変え、組合せを変え、歌を変え、いろんなスターが渡ってくれるので単純に楽しいです。
その上でかつての「ダンスの花組」を思い出させるダンスダンスダンスなショーになっていて、それをまた柚香光さんと水美舞斗さんがよく踊る!
聖乃あすかさんもキラキラと輝いているし、ここでもがっつりちゃんと2番手娘役スターとして立てる音くり寿ちゃんの存在がありがたい。
柚香光&水美舞斗ダンサーコンビがガンガン踊って2人で魅せるのならば、星風まどか&音くり寿歌うまコンビでガンガン歌うシーンがあっても楽しかったのになあと、そこだけがちょっと残念でした。
でも永久輝せあさんもがっつりロマチックレビューなシーンをワンシーン持っても、問題なく美しく存在できるので、花組の層の厚さが終始心地いいショーでした。
柚香光氏は白燕尾も黒燕尾も本当にすばらしくよく似合うのですが、「食虫花」みたいな「人でないもの」の不思議な衣装や鬘もよく似合って美しくて、本当に堪能。
そういえば、星風まどかちゃんが真ん中でダルマ衣装で踊ってその後すぐに銀橋で歌う、というシーンがあったのですが、踊った後に歌うのがしんどそうで、「踊って歌う」大変さを痛感。

なのに帰宅してから「ピアノ・ファンタジー」の過去映像を見たら、聖乃あすかちゃんのソロ曲&ロケットから柚香光さん率いる組子たちのダンスダンスダンスシーン全部、大浦みずきさんがやられていて、やっぱり大浦みずきさんはすごかったのだなあと改めて痛感したりもしたのでした。

心を打つ市井の人の物語@宝塚月組「川霧の橋」「Dream Chaser」

10/23(土)16:00 博多座

スタッフ

原作/山本 周五郎
脚本/柴田 侑宏 
演出/小柳 奈穂子

キャスト

幸次郎    月城 かなと
お光    海乃 美月
扇寿恵    京 三紗
お常    梨花 ますみ
源六    光月 るう
お蝶    夏月 都
半次    鳳月 杏
小りん    晴音 アキ
清吉    暁 千星
お甲    麗 泉里
お組    天紫 珠李
およし    結愛 かれん

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1990年の初演は、わたしにとって初月組生観劇で、初めて見たトップコンビのサヨナラ公演でした。
華やかな衣装もない、江戸時代の市井の人のお話しを観客が楽しんでくれるのか不安だったと当時主演された剣幸さんが語っておられましたが、当時14歳だったわたしは、地味だとかは全く感じず、ラストシーンにキュンとした記憶が残っています。
ただ人々の機微を感じ取るにはまだ若く、当時一緒に見た母が「いいお話だったねえ」というのを、後に映像で見て改めて思ったものでした。
そんな「川霧の橋」は山本周五郎の「柳橋物語」「ひとでなし」が原作です。

図書カード:ひとでなし



大工の棟梁・杉田屋では子どもに恵まれなかったこともあり、腕利きの弟子の中から幸次郎を後継ぎに決め、同じく腕利きだった半次と清吉を幸次郎の後見人とすることにした。
しかしそのことを快く思わなかった清吉は、杉田屋を去り上方で稼いで自分の棟梁株を買うことを考える。そしてお光に好きだと告げ、3年で帰るから待っていてくれと乞う。驚きながらも承知するお光。そして幸次郎もお光のことを好きだから気を付けるようにと伝えて、清吉は江戸を去っていった。
後日、杉田屋からお光を幸次郎の嫁にほしいという申し入れがあるが、お光の祖父・源六は断ってしまう。そこには何気ないが源六にとってはとても受け入れがたい杉田屋のおかみ・お蝶の昔の言葉があった。
源六の断りだけでは納得できない幸次郎はお光に詰め寄るが、清吉と約束したお光は受け入れられないことを幸次郎に伝え、距離を置くことを求める。
そんな中江戸の町に大火事が起こり、いろんな人々の人生を変えてしまう。


作中では江戸のどの時代というのは語られないのですが、原作の1つ「柳橋物語」では徳川綱吉の御代・元禄時代であることが示されています。
作品の大枠は「柳橋物語」で、火事の後の物語に「ろくでなし」が差し込まれ、合体しているイメージです。
柳橋物語」の中では、赤穂浪士討ち入り事件の後で、小田原から房洲(千葉)にかけて地震津波が起こった後の大火事、として描かれ、その約1年半後には空梅雨のちの豪雨被害も描かれます。


なので、現実にあった元禄16年(1703年)の元禄地震・火事、宝永元年(1704年)前後の浅間山噴火・諸国の洪水の辺りの時代かな、と思うのですが、まあそんなことはあまり考えなくても大丈夫です。
だた初演を見たときは災害はありがたくも当時のわたしに身近なものではなかったのに、この30年の間にずいぶんと災害に対する感覚というのは変わってきたなと再演を見て思いました。
芝居の中で大火事に対する市民の心構えなんかもミュージカルナンバーとして歌い上げられるのですが、これがとても身近なこととして響くのです。
そういう意味でも今、この作品を再演することはとても意味があったように思いました。

 

脚本の柴田先生がお亡くなりになられているので、演出は小柳先生になっていますが、演出やセットの違いはあまり感じませんでした。この辺りは実家に初演映像を残しているので、再度見直して検討したいと思います。

 

大火事からのモノローグが入り、和太鼓、祭りの日の楽しさをプロローグに据えているのがまず改めていいです。
たしかに豪華な衣装はないかもしれない。けれども身近にそこにあって心ワクワクする始まり方は、やはりこの物語に親しみを覚えます。
だからヒロインのお光ちゃんの気持ちがよく分かる。
15歳やそこらで、幼なじみの男性から「好きだ」と告げられて舞い上がっちゃうのも、自分も好きなんだと思い込むのもとても分かるのです。
そして幸次郎が言うに言えないシャイな気質なのも、とてもよく分かります。
もちろん清吉の悔しさも理解できる。
だから切ないのです。

 

でもそう思わせるのは、お光が最初はちゃんと少女で、それから大変な経験をして成長していく姿をきっちりと演じられることが必須だと思います。
それを海乃美月ちゃんは見事に演じていました。
元々この役は高い演技力がないとできないと感じていたのですが、海乃美月ちゃんがやると決まり、初博多座への遠征を決めました。
少女の頃の純粋であどけない演技から、火事のあとの呆けたようになる姿、世を知りあきらめたような、疲れたような演技、それでも周りの人に助けられ、友人を介抱し、懸命に生きていく姿を細やかに、でもしっかりと3階席でオペラグラスなしでも感じられる海乃美月ちゃんの演技が本当に素晴らしかったです。
光ちゃんがリアルに舞台にいてくれるから、この物語が息づきます。

 

月城さんは「ちょっと不良なところもあって、喧嘩っ早い」感じが全くないのは残念でしたが(そこも幸次郎の魅力だと思うのです)、この辺りは演技というより本人の持ち味違いなので仕方ないかなと思います。
というかトップ男役にあわせた演目が選ばれがちな中、トップ娘役にあわせてこれが再演に選ばれた感じを受けるのが個人的にはいいなと思いました。
でも冒頭の和太鼓もしっかり練習されてて魅せましたし、幸次郎の不器用な優しさが物語を包み込んでいて、とてもよかったです。

 

光ちゃんが初演に全く劣らないで魅せた、幸次郎は初演は若干アテ書きっぽい役を健闘した中で、初演より格段に勝っていたのが半次の鳳月杏さんでした。
というか、半さんという役がこういう役だったということを今回はじめて知りました。

半次は「ろくでなし」の方に登場する片割れを担う役割として描かれた役だと思うのですが、役としては完全なオリジナルキャラクターなんですよね。
で、冒頭で狂言回し的なモノローグがあることもあって、物語から一歩下がって全体を見ている人、というのが初演のイメージでした。
しかし今回、鳳月さんの半次はしっかり物語の中にも存在しているのです。
まずそのバランスが素晴らしい。

そして、物語の中で生きる半次さんが切なくて愛おしいのです。
礼儀正しく人当たりの良さそうな半さんが、シャイでぶっきらぼうな幸さんの「後見」という設定がめちゃくちゃ活きています。清吉と違って半さんは後継ぎに選ばれなかったことには特に遺恨はなく、自分のキャパシティと実力を自覚して、幸さんを支えて世話になった杉田屋を盛り立てつつ、自分の身丈に合う目標を持つというような堅実な人柄が見えるのです。
でも一方で相模屋のお嬢さん・お組ちゃんに身分違いの片思いをしている。
身分違いであることは誰よりも半さんが分かっていて、だから程よい距離感をきちんと保ちながらも、少しでも顔を見たい、少しでも話したいという気持ちが見え隠れするのが心ときめくのです。
火事で一番人生が変わるのがお組ちゃんなんですが、変わっても半さんにとってはいつまでも「相模屋のお嬢さん」で、お組ちゃんも心はずっと「相模屋のお嬢さん」で半さんは自然に恋愛対象にはならないのも切ない。
ちょっとお組ちゃんの見せ場シーンの演技(セリフ回し)がいまいちで、その場では天紫珠李さんを辛口評価をしてしまったのですが、「心はずっとお嬢様」というところを疑いなく見せられたのは素晴らしいことだなと改めて思います。
そして半さん最後のセリフの凄みが強く心に響くからこそ、あのラストシーンがより際立つのだなあと、もう本当鳳月さんに完敗でした。切れ長の目が和物化粧によく似合っていたのもステキでした。
初演では気付かなかった魅力が見える、という再演の醍醐味を鳳月さんが魅せてくださり、大満足。

この物語には芸者の小りん、夜鷹のお甲と初演のときからすごく魅力的に感じていたキャラクターが登場するのですが、この2人を演じられた晴音アキさん、麗泉里さんもとてもがんばっておられたと思います。
しかしながらこれは初演時の方が日本物に慣れている、という点でやはり初演を超えることはできず、もう少し生徒さんたちに時間の余裕があって、日本物の所作とかをきちんと学べる機会があるといいなあと改めて思いました。
宝塚歌劇の日本物には、こういう庶民の物語でも独特の美しさがあると思います。
また日本の劇団として、日本物がきちんとできるというのは強みでもあると思うのです。
なので、このような良作を通じて、宝塚歌劇の日本物がなくならないで続いていかれることを切に願っています。

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さてショー「Dream Chaser」ですが、わたしは配信で見たのみだったので、その時は若干地味で退屈だなと感じていました。
でも生で見るとすごく楽しかったです!
改めて配信とライブの差を感じました。ライブ感に勝るものはないですね。
お芝居の方ではまずまずかな、だった暁さんもショーでは大活躍(清吉って結構難しい役なんですよね。初演の天海祐希さんも研4という若さもあってまだまだでしたし、次回また再演されることがあれば、今度はトップスターと張り合える方に一度清吉を演じてもらいたいです)。とにかく踊れる、というのが強いです。
何よりここでも海乃美月ちゃんがいい!
特にデュエットダンスはドレスの長い裾をめいっぱい魅せる踊りに感動。
ディズニープリンセスのアニメーションのように動く美しいドレス裾捌きもやはり娘役芸の見せどころで、そして夢みたい…と思わせてくれる宝塚歌劇の非日常感はこういうところで感じられるものなのかもしれないと思いました。

 

ということで、残念ながらわたしは見られないのですが、気になっていたけれど博多座まで行けなかったよ、という方はぜひ配信をご覧になってほしいなと思います。

月組 博多座公演 『川霧の橋』『Dream Chaser -新たな夢へ-』 LIVE配信 | 動画配信/レンタル | 楽天TV

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ところでこの日、偶然にも初演の剣幸さん、こだま愛さんが観劇されていて、久しぶりに3階席から、客席をオペラグラスで除くという行動を取りました。お2人のお姿に感涙。

しかしなぜ、初演のプログラムを捨ててしまった、わたし!

初演のプログラムには脚本がついていたのですが、今、あれを読みたいです。

ヒーロー像、ここに極めり@宝塚星組「柳生忍法帖」「モアーダンディズム」

9/25(土)15:30~ 宝塚大劇場

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スタッフ

原作 山田風太郎
脚本・演出 大野拓史
殺陣 清家光彦

キャスト

柳生十兵衛 礼 真琴    
ゆら 舞空 瞳        
芦名銅伯 愛月 ひかる    
堀主水    美稀 千種        
千姫【天樹院】    白妙 なつ    

加藤明成 輝咲 玲央

沢庵和尚 天寿 光希        
お圭(堀一族の女) 音波 みのり        
お品(堀一族の女) 紫月 音寧        
お沙和(堀一族の女) 夢妃 杏瑠        
具足丈之進(七本槍) 漣 レイラ        
司馬一眼房(七本槍) ひろ香 祐        
さくら(堀一族の女) 紫 りら        
漆戸虹七郎(七本槍) 瀬央 ゆりあ        
お鳥(堀一族の女) 音咲 いつき        
柳生宗矩 朝水 りょう        
鷲ノ巣廉助(七本槍) 綺城 ひか理        
平賀孫兵衛(七本槍) 天華 えま    
天秀尼    有沙 瞳    
お笛(堀一族の女) 澪乃 桜季        
お千絵(堀一族の女) 小桜 ほのか        
香炉銀四郎(七本槍) 極美 慎        
大道寺鉄斎(七本槍) 碧海 さりお    

 

原作はこちら。

わたしは原作は未読。柳生十兵衛についても「奈良に“柳生街道”ってのがあったけど、なんか関係あるんだろうなあ」くらいのうっすーい知識で見に行きました。

 

でも大丈夫です!

柳生忍法帖」はわかりやすい勧善懲悪な娯楽作品でした。

原作はエログロ味が強いと聞きかじっていましたし、見ながらもきっと小説ではこういうところをエログロで書いて読者を楽しませているんだろうなあということは推察できました。

がしかし宝塚歌劇の舞台ではそれは描かれず、かっこいいヒーロー物に仕上がっています。

 

ストーリーは史実にもある「会津騒動」をベースに描かれているそうです。

ちなみに「会津騒動」についても今回はじめて知りましたが、知らなくても問題ないです。本来の「会津騒動」がどのようなものであったかは分からないのですが、「会津騒動」は物語の発端となる部分ですので、史実とは異なるでしょうが設定としてきっちり描かれます。

 

会津藩主・加藤明成は藩主の立場を利用しての悪行三昧を働いている。

そんな藩主に手を焼き業を煮やした老中・堀主水が反乱を起こすが失敗し、処刑される。

藩主の魔の手は天樹院が庇護する東慶寺に匿われた堀一族の女たちにも迫る。

戦乱の世に翻弄され、男たちに自身の人生を翻弄された千姫(天樹院)は、敵討ちを願う堀一族の女に、その指南役として隻眼の剣士・柳生十兵衛を招聘。

十兵衛と女たちは知恵と技を磨き、会津藩へ乗り組む。

しかしながらそこには藩主の愛人で妖しげな術を使うゆらとその父・芦名銅伯、彼が率いる剣豪集団「会津七本槍」が待ち受けていた。

 

文字に起こすとこんな感じですが、

会津七本槍→敵、加藤明成→敵のボス、芦名銅伯→実のラスボス

柳生十兵衛と堀一族の女たちがいっぱい工夫しながらやっつけていくという痛快SF時代劇です。

この作品の何がいいって、「千姫含む男の都合で振り回された女たちが結託して復讐をはたす」のをメインに描いているところです。

千姫については色んな大河ドラマで登場しているかと思うのですが、個人的に心に残っているのは「真田丸」でしたね。

そして千姫の存在でだいたいの時代感を把握できて有難かったです)

十兵衛はあくまで彼女たちを助ける存在でしかなく、しかも十兵衛が彼女たちを決して「女だから」と見下したりはしないのです。

彼女たちの現状の実力をしっかりと理解し、目的達成のために彼女たちができることを考え指南する。

これをできる指導者がどれくらいいるでしょうか。

にっくき敵を一生懸命倒そうとがんばる女たちをちゃんと見守り、彼女たちができること、できそうなことはアドバイスしながら自らの手で果たさせる。どうしても難しく命が脅かされることがあれば、もちろんガッツリ助けに行く十兵衛の格好いいこと!

これこそが今の時代のヒーローだな、と痛感しました。

原作とどのくらい違うのか分からないのですが、こんなヒーローが昭和30年代に生まれていたのでしょうか。それともこれは大野先生の今の時代ならでは味付けなのでしょうか。

その辺も気になるので、小説、読みたいなと思っております。

 

そんな柳生十兵衛を何と魅力的に礼真琴が演じることか。

全体的に武士言葉、古い言葉が多く、セリフが聞き取りにくい中、礼真琴と沢庵和尚を演じた天寿光希だけが、滑舌も明瞭に話してくれるのです。

そのうえで元々のダンスの素養も活かした殺陣がまた格好いい。

宝塚歌劇の殺陣ではじめてそこそこ満足できるものを見た気がしました。

セリフを言いながら殺陣も魅せる、というのは決して簡単なことではない。

それを魅せ場シーンとして成り立たせられる礼真琴は、改めてすごい能力を持った舞台人だなと思いました。

それから多分はじめて刀とか持つ役で勉強されたのか、堀一族の女たちが刀の扱いも型もちゃんとしていたのも好感でした。何しろこの復讐劇自体の主役は彼女たちですし、彼女たちのがんばる姿がこの話を好感を持って見られる要素の一つだと思います。

もちろん会津七本槍も殺陣はがんばっているのですが、みんなとりあえず発声と滑舌という基本スキルのアップを願います。何を言っているのか聞き取れない(涙)

そして一番そこが辛かったのが芦名銅伯でした。

多分ほとんどの方が登場人物の名前くらい勉強して行かれると思うので、わたしの前知識なしが本当に申し訳なかったのですが、まず「芦名」が聞き取れなくて、しばらく困りました。それからゆらの使う「香」。これも最初のシーンでは聞き取れなくて、とりあえず演出と小道具から魔術っぽいことをやっているんだなという認識する始末。

だからこそ余計思ってしまったんですね。

銅伯の歌をカットして、ゆらの十兵衛へ惹かれる気持ちの歌に差し替えては、と。

この作品もシティーハンター同様、全体に詰め込み感はあるんです。

でもどのシーンもカットできないくらいには削り込まれているんです。

しかし今のままでは、ゆらの心の変化は全く伝わらないという大欠陥がある。

それを解消するには「ゆらの心情を伝える歌を30秒でもいいから作る」くらいしか思いつかないわけですよ、素人としては。

そうなると、とりあえず銅伯は妖しげな風貌で何か企んでいるのは存在だけで伝わるので、その銅伯が何を思っているかは別に歌にしてまで伝えなくても大丈夫だから、その分ゆらに、と出来ない宝塚歌劇ルールが久々に厳しいなと思わざるを得ない演目でもありました。

しかしながら大野先生の作品なので、相変わらずセットの美しさが眼福でした。衣装の色合いのバランスもさすがです。

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そして、最後の十兵衛のセリフが「くぅぅぅぅー!」と思わず唸ってしまうほど、格好良い。そしてこのセリフがある限り、ゆらが相手役であることは必須なので、東京公演までにゆらの気持ちの変化が確実に伝わるシーンができるといいなと思っています。

本当に十兵衛がかっこういいし、女たちが大活躍でスカッとするし、個人的にはとてもいい娯楽作だと思うんです。だからちょっぴり惜しい。

ただこういう劇団☆新感線的エンターテインメントを品あってキレイな日本物にもできるのは宝塚歌劇団として他ミュージカルにはない魅力になり得る気がするので、今後も期待したいです。

 

さて岡田 敬二先生のロマンチック・レビュー「ダンディズム!」シリーズの第3弾「モアーダンディズム!」ですが、実はわたしは「ダンディズム!」も「ネオ・ダンディズム!」も未見でした。

とりあえず知っておいた方が楽しそうだったので、過去映像を見て参戦しましたが、まあこれはどちらでもよいかな、という気がします。

ただ「ダンディズム!」シリーズが「宝塚男役の魅力を追求する」というテーマなので、礼真琴・舞空瞳実力派ダンサーコンビがやるにはちょっぴりもったいなかったかな、とは個人的には思いました。

もっと踊りまくる舞空ちゃんを見たかった!

レビュー的には可もなく不可もなく、まあ普通に楽しいです。

だたクラシカルはクラシカルなので「柳生忍法帖」目当てで来られた方が今楽しむにはちょっと厳しいかも、と思いました。

そうなると人気の原作がある作品を芝居の演目とする際に併用するショー・レビューをどうするか、というのも今後の宝塚歌劇の課題かもしれません。

「すごい」しか言えないもどかしさ@ケムリ研究室「砂の女」

9/4 シアタートラム 18:00~

9/9 兵庫県立芸術文化センター 中ホール 18:00~

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原作:安部公房

上演台本・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ

音楽・演奏:上野 洋子

振付け:小野寺修二

 

出演者

緒川たまき

仲村トオル

 

オクイシュージ

武谷公雄

𠮷増祐士

廣川三憲

 

原作は有名なこちら。

とは言え、存在は知っているものの、中身は何も知らず、全くの未読で見に行きました。

 

観劇後に原作を読んだのですが、読まずに行ってよかったかもなと思っています。

というのも、元々原作が持つサスペンス的要素にまんまとはまり、1回目の観劇は主人公である「男」がどうなるか、という1点に惹きつけられ、文字通りドキドキハラハラの連続でした。

そしてそのドキドキハラハラに誘い込む導入部分がまずすごい。

男が淡々と旅する様子を語る。パペットが男の代わりに動く。

布に包まれたシンプルなセットに投影される影、光。

それだけで一瞬にして物語の中に引き込まれてしまったのです。

緊張感高まる中でタイトルが現れたときの衝撃。

まだ物語の導入部分でしかないところですでに「すごい」と息をのんでしまいました。

 

とある貧しい部落の砂のくぼみの中にある家に女が一人で住んでいる。その女の家に捕らわれる男。

舞台の真ん中にはあばら家が一軒あり、周りは布で覆われています。

ただそれだけなのに、そこが深い砂の穴の底である閉塞感が漂います。そして舞台の上にほぼ砂はないのに、登場人物たちの動きと砂の音、そして照明で映し出されるサンドアートが奇妙に美しく彩り、そこにある砂の異常さを際立たせていました。

絶えず砂がけぶっていて、鬱陶しい様子がありありと伝わるすごさ。

その中でなんとか砂底の家から抜け出そうと努力する男と、砂と共存している女との奇妙なやり取りが、おかしさと焦燥感、恐怖感とともに妙な一体感を増幅させていくのです。

 

そんな続く緊張感の中で男の妄想だったり過去だったり、現実かもしれないことがふいに舞台に現れて、ふっと空気を和らげ笑いをおこすこの緩急がまたすごい。

(警官のくだりは原作には一切ないので、ここはケラさまの創作部分に当たります。でもこれがあることで、より緊張の糸をゴムのように伸縮させていて、観客はいいように操られたような気がします)

 

背景の砂の崖は同じままなのに、家だけがグルグルと回転することに不自然さを感じず、魅せてしまう不思議。

完全に物語と演出の魔法にかけられた状態になる、そしてそれこそが演劇の醍醐味なのかもしれないと思ったりもしました。

 

原作小説は男の一人称で語られていて、男の理屈っぽさや上から目線が鼻についたりするのですが、それを仲村トオルさんが演じることでまろやかになり、男にチャーミングさがあった点が原作小説との大きな違いなような気がします。

そうやってしか生きていけないとは言え、女が男を受け入れることに抵抗感をもたないことを納得して見ていられるというのは、絵として見るときに割と大事な気がするのです。

とはいえ、男を演じる仲村トオルさんはほぼ出ずっぱりでセリフ量も多く、後から思えばものすごい大変なはずなのに、それを見ている間はちっとも感じさせないプロっぷり。

 

砂の底の生活に疑問も不満も持たず、日々を過ごす女を演じる緒川たまきさんの説得性と妖しさ。緩慢な動作、ゆったりとしたセリフ回しが自然で、それがより男を苛立たせるのが分かります。

絶えず砂が家に入り込むため、砂かぶれをするからと裸で顔に手ぬぐいをかけて眠る姿は照明も相まって実になまめかしく、男がこの女を最初警戒し、そして惹かれるのにも納得。

ラジオの音楽にはしゃぐ姿や、なんとか少しでも快適にこの生活を維持しようとするいじらしさが本当に可愛らしく、だからこそ切ないような気持ちにもなってしまいました。

そして何もかもを達観したような女でも、人間としての尊厳があるのだと痛感するシーンの激しさがまた胸を打つのです。

どれほど奪われ支配されようとも譲れないものは人にはある。

 

それでも物語が大きな転換点を迎え、あのラストシーンに結び付くとき、人は慣れる、その哀しさと開放感を突き付けられて、身動きができなくなってしまうような、そんな作品でした。

どんなに理不尽でも、いつかは慣れる、そして一度受け入れてしまえば慣れて、希望を作りだし、そこに快適ささえも感じる、だから人間は生きていける。だけど慣れた先には、ある日共存していたはずの脅威が襲ってくるかもしれない、と思うと背筋が凍るような思いもする作品でした。

 

登場人物は男と女以外の部落の人間や警察官や男の同僚などは他4名の俳優たちが全て演じているのに、何人も登場人物がいるように思えるのもやっぱり単純にすごいです。

でもその中で浮きだっていたのは音楽演奏の上野洋子さんでした。

舞台の下手上側にいらして音楽演奏の様子も見えるのですが、まずその存在感がすごい。そして多種多様な楽器と声で、砂に呼応し、流れに呼応し、そして女にも呼応しているようにも見える。

一方でこの世界を全てを支配しているような存在にも見える。

彼女の存在と音がこの作品をもう一つ深いところまで導いたことだけは確かだと思います。

 

シアタートラムで見たときは、その空間の狭さから一緒に砂の穴に閉じ込められたような感覚で見ていたのですが、兵庫県立芸術文化センター中ホールではまた違った感覚が味わえたことも醍醐味でした。

というのもシアタートラムで見て、この作品をとりあえず一度体験したら、どうしても2階席から見てみたくなったのです。

砂の底の家に住む男と女は常に上にいる部落の人から見られている。

2階席から見るとき、今度はあの上で働く部落の人の視線で見られるのではと思ったのですが、仕事次第では劇場に駆けつけられないかもしれない可能性もあって、2階の一番後ろの安い席を選択してみたら、なんとこのセリフを痛感することに。

いつも誰かが、火の見から、双眼鏡でのぞいていますから・・・

部落で働く人たちよりも高いところで双眼鏡をときどき使いながら砂の底にいる男と女をみている自分と思いっきり重なってドキッとしました。

(ついでにこれは1回目の時から思ったけれど

役所なんぞに、まかせておいたら、それこそ、そろばんはじいている間に、こちとら、とっとと砂の中でさあ・・・

が、まさしく今までずっとつながっているこの社会の問題そのものでやるせない)

 

そして兵庫県立芸術文化センター中ホール2階席最大の見どころは、この作品の大きな転換点であるシーンでした。

どこまでも果てしなく続く砂丘。砂がうねるさまが投影されたサンドアートの美しさは、圧巻、の一言でした。

 

ここまで読んでくださった奇特な方がいらっしゃたら大変申し訳ないのですが、本当にこの作品から受けた衝撃を1%も言葉にできていないのです。

いやほんと「貼付された写真」の切り取り方とか、砂の中に浮かび上がる砂をいじる女の指とか顔とか、最後の女の「やだよう。やだよう。」のセリフとか、もっと細かくいろいろとすごいところがいっぱいあるんです。

(兵庫県立芸術文化センター中ホールの2階1番後ろの席でも映像部分がちゃんと見えたのもすごい。てかこういう見え方チェックは全ての演劇公演が確認してほしいです)

なのでぜひ配信をご覧になっていただきたいと思います。

 

9/30~10/6

ぴあストリーム

https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2174162

e+ Streaming+

eplus.jp

ケラさまのおっしゃるとおりだとは思うのですが、きっと映像だけで見ても、この「すごい」しかいえない理由をわかっていただけると思います。

そしてその「すごい」の理由をもっと知りたいので、配信で見られるのも楽しみにしています。

 

そしてこうなると映画も見たい!

適正価格での円盤販売か、有料配信をお願いします、偉い方。

ごちゃごちゃだけど楽しいは大事かもしれない@宝塚雪組「CITY HUNTER」「Fire Fever!」

8/14(土)15:30~ 宝塚大劇場

ミュージカル「CITY HUNTER-盗まれたXYZ-」

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スタッフ

原作 北条 司

脚本・演出 齋藤吉正

作曲・編曲 青木朝子

作曲・編曲 宮崎朝子(SHISHAMO

キャスト

冴羽 獠 彩風 咲奈
槇村 香 朝月 希和
ミック・エンジェル 朝美 絢
槇村 秀幸 綾 凰華
海坊主【伊集院 隼人】 縣 千
海原 神 夏美 よう
野上警視総監 奏乃 はると
宇都宮 乙【小林 知花是】 千風 カレン
ジェネラル【将軍】 真那 春人
サリナ 妃華 ゆきの
美樹 星南 のぞみ
政 諏訪 さき
冬野 葉子 野々花 ひまり
野上 冴子 彩 みちる
野上 麗香 希良々 うみ
エラン・ダヤン 汐聖 風美
アルマ・ダヤン 夢白 あや
竜神 さやか 花束 ゆめ

 

人気コミック原作ということで、やはりわたしの「シティーハンター」認識度からお知らせしておくのがいいのかなと思います。

1985年に少年ジャンプで連載がはじまった原作「シティーハンター」。アニメ版も1987年にはじまり、当時小学生だったわたしは、どちらも読んで、見ていた記憶があります。

そして2019年に公開された映画を映画館に見に行ったくらいには「シティーハンター」が好きです。

 ただ原作を読み返したり、アニメを見直したりするほどにはファンというわけではないので、この作品が宝塚化、しかも斎藤先生の手でミュージカル化されると聞いたときには不安しかありませんでした。

 

しかしながらポスターが公開され、普段は宝塚を見ない世代の男性陣から「シティーハンターなら見てみたい」という言葉を聞いたとき、上演する意味はあるのかなと思い始めました。

そんな不安と期待を半々に抱きながら向かった阪急電車の中で見た中づりポスター!

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左の方もめちゃくちゃかっこういい仕上がりになっていて、テンションは少しずつあがりました。

公演グッズも今回とてもいい出来なんですよね。(はじめて観劇バッグ買ったよ←それくらいにはシティーハンター好き。プログラム入れじゃなくて普通に使います!)

公演グッズ一覧|キャトルレーヴ|宝塚歌劇をグッズで楽しむ|宝塚クリエイティブアーツ公式ショッピングサイト

グッズに関してはこのクオリティを毎回期待したいものです。

 

さて、その公演内容ですが、この相関図を見ていただいたらわかるように、色んなエピソードと、「グジャマラ王国」等の宝塚オリジナル設定などがごっちゃごちゃに詰め込まれています。

公演解説 | 雪組公演 『CITY HUNTER』『Fire Fever!』 | 宝塚歌劇公式ホームページ

(すみません、あまりにぐっちゃぐちゃに詰め込まれすぎていて、ストーリーを整理して書くのを放棄しました・・・)

それでも、開演前のこのアニメーションといい、

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プロローグのメインキャラクターの紹介アニメーションからの、香役が「City Hunter〜愛よ消えないで〜」を歌ったりして、アニメで夢中になった層には大変楽しい作りになっています。

宝塚ファンを不安にさせた「もっこり」は「ハッスル」に置き換えられました。

ただセクハラ部分は原作より取扱いがひどい。

原作では香のハンマーでだけでなく、多くの女性たちが獠や男性たちからそういった行為を受けたら、平手打ちをはじめとした色んなパターンで報復しています。しかし宝塚版では、「キャッ」だけで終わったり、女性自ら尻を触るよう差し出すシーンなんかもあったりして、その辺りの「原作リスペクト」はないんだろうか・・・と思わずにはいられませんでした。(こういうことをされたら少なくとも平手打ちしていいんだぞ、こういうことしたら報復されるんだぞ、というのを教えてくれるのが「シティーハンター」だと思っていたんですがね。)

ストーリーはぐっちゃぐちゃで、見せ場がいまいち盛り上がらない演出になっていて「とりあえず1から整理してみようか、斎藤くん・・・」と言いたくなるので、本当にいろいろもったいない。

個人的には最初に「シティーハンターの仕事」紹介的に宇都宮乙とその息子のエピソードを原作1話目の形に戻してさらっと見せてから、獠の過去が絡む槇村、海原、海坊主、ミック・エンジェルとエンジェル・ダストの話しをグジャマラ王国の設定でやった方が見やすかったと思います。(好演していたので心苦しいけれど、シティーハンターを追いかけるフリージャーナリストの辺りにいる人たちはただの喫茶店の店員と客にして、警察官と暴力団の方も最低限だけ残した方がわかりやすい気がしました。)

そして原作ファンなら説明はいらないだろうけれど、アイテムとして出してくるのであれば、「槇村から託された指輪」と「エンジェル・ダスト」はしっかり描かないと、原作知らない観客には分からないです。

(1発券の100枚つづりも説明なく出てくるけれど、これは原作ファンだけ分かればいいと思うので、あの出し方でよし)

見終わってから、フランス映画版を見たのですが

 こちらでは「槇村から託された指輪」の存在はカットされていたので、今回もなくてよかったのでは。

(あ、フランス映画版は全く違う話しで、いい意味でサイコーにくだらないです)

ただ「エンジェル・ダスト」はどれくらい危険なドラッグなのかはもうちょっと突っ込んで描いてほしかった。シリアスとギャグのバランスこそ「シティーハンター」で大事にされるところだと思うのです。

ところで男性が獠ちゃんに憧れるのは分かるのですが、獠ちゃんが「初恋の人」という世代の女性がいる、というツイートを見かけて驚くくらいに、わたしは冴羽獠に全く興味がありませんでした。

そんなわたしでも咲ちゃん(彩風咲奈)が演じる獠がGet Wildを歌いながら、銀橋を渡ってくれるところではときめいてしまう宝塚マジック。

(ちなみに同じくTM NETWORKの曲でアニメで使われた「STILL LOVE HER(失われた風景」も獠ちゃんが歌ってくれます。)

それからミック・エンジェルの登場シーンも「Catch Me If You Can」みたいでミュージカルとして魅せてくれたりするのです。

さらに映像をメインに置いたセットは2階席で見るとさびしい、と聞いていたのですが、とにかく舞台上に人がいっぱい登場して、それぞれに魅せるし、槇村は踊るしで楽しい部分も多いにあったので、本当にいろいろ惜しいなと思います。

北条司さんが描く男性に全く興味を抱けないかわりに、彼の描く女性は大好きでした。

とりわけ今回も登場している「野上冴子」に小学生の頃から憧れ続けているのですが、その彼女が今回「胸の谷間」を描いていたことは、またもう一つがっかりしたところでもありました。冴子の魅力はそういうところではない。というか北条司さんが描く女性の魅力はそういうところではない。刑事、科学者、医者などハイキャリアの職業に就いて自立し、知性があって強く、自分の信念で生きているところが魅力に感じていたのです。宝塚化するにあたって、現在のファンのほとんどが女性なわけですがら、宝塚ファン向けにそういう女性をきちんと描く方がよかったと思います。

そんな中、出演者はみんな好演していました。

特に香役の朝月 希和ちゃんと、海坊主役の縣 千くんが素晴らしい。鬘や衣装の着こなし、動き方、セリフの言い方、そういう技術をさらりとこなして「香」をキュートに演じていたひらめ(朝月 希和)ちゃんに完敗。

さらに役が決まる前から「登場するのかしないのか、登場するなら誰がどうやるのか」と話題だった海坊主を全く違和感なく、なんか1.5倍くらいの大きさにみせてきた縣くんの凄さ。まだまだ若いだけに末恐ろしく、これからがますます楽しみです。

ラストシーン直前までは「ううーん」という感想だったのですが、最後の辺りで彩風・朝月新コンビの関係性を彷彿とさせるセリフで宝塚ファンを制し、ラストシーンの絵で原作ファンを制してきて、終わってお手洗いに向かったら、新大劇場になってから見たことのない男性トイレの利用率で、やっぱりなんだかんだとファンの裾野を広げるためにはこういう作品もいるのだな、と思いました。

そしてなんだかんだ言っても、まあそこそこ楽しい。

雪組は本公演でシリアスなものばかり続いていたので、特に今、それなりに楽しいって大事だな、と思いました。

なので宝塚ファンの方にはおススメするかどうかは激しく迷うけれど、原作ファンの方はよかったら一度見に行ってもらえたらいいなと思います。

こんな状況下で、前トップコンビがとても人気を博していた組だけに、新しく劇場に足を運んでくれるファンは必要なので。あ、一瞬だけどキャッツ・アイも登場しますし!(←こういう釣りだけのための登場ですけどね。まあ演目的に釣るのも大事、たぶん)

 

そして前の花組の感想でも書いたけれど、どんなに芝居があれでも宝塚には、そして宝塚ファンにはショーがある!

ショー オルケスタ
『Fire Fever!』
作・演出/稲葉 太地

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サイコーでした、楽しかったです!!

と言い切りたいのですが、ワンシーンだけ「シティーハンター」よりも今の時代的に問題なところがありました。

「宝塚初観劇観客用に輪っかのドレスを見せたい」意図は分かりますが、その宝塚初観劇観客が、このオチを問題とする認識をもたない方が多いと思うので、よりこれを見せてしまうのは危険な気がするのです。

セクハラがコミュニケーションだと信じられていた時代も終わったと同時に、セクシャリティや見た目を笑いにする時代も終わりました。

このオチは速攻に止めて差し替えてください。

【10/2追記】

東京公演でちゃんとこのオチが改変されていることをTwitterで知りました。

ああ、東京公演を見たい!

ということで、全力でショーはオススメします!

 

それ以外はもう本当に個人的に大満足。

プロローグで妖精のように産まれるあーさ(朝美 絢)の輝く美貌。

そしてその後ろからやってくる火の鳥のようにゴージャスな咲ちゃん。

その咲ちゃんのパートナーとして、組子を率いて真ん中でバキバキに踊ってきめてくれるひらめちゃん(朝月希和)。

支えるのではなくて一緒に組を率いていく存在、としてトップ娘役が、そしてその関係性がまぶしてステキでした。

あやなくん(綾 凰華)、縣くんもバンバン銀橋渡ってアピールするし、スーツ姿の男役だけの歌もセリフもなくストーリーもないダンスシーンはかっこいいし、その後は娘役だけで歌い踊るのもこれまたかっこよくて素敵でした。

でも何より71人ラインダンスですね。

ラインダンスになる前も特技のあるコたちが、それをバシバシ披露してくれて見せ場があるし、トップスターのみロケットボーイで他はみんな普通にロケットダンサーとしてラインダンスを見せてくれたのが圧巻でした。

ここのところ感染症対策としてラインダンスの人数も少ないことが多かったので、やはりこの大人数で魅せるのも宝塚の魅力なんだなと改めて思いました。

衣装もスパンコールと羽をふんだん使ってとにかくぱっと見、豪華そのもの。

そのギラギラ衣装が似合うトップスター彩風咲奈が最高のパートナー朝月希和とともに雪組を率いる時間は短いかもしれないけれど、この先も楽しみにしたいです。