こんなことを思ったり。ぼちぼちかんげき。

保護猫と同居人と暮らすアラフィフがビンボーと戦いながら、観劇したものなんかを感激しながら記録。

ウェデイング・シンガー

2月17日(日)17:00~ 日生劇場
ロビー 井上芳雄
ジュリア 上原多香子
グレン 大澄賢也
ホリー 樹里咲穂
ジョージ 新納慎也
アンジー ちあきしん
リンダ 徳垣友子
ロージー 初風諄
サミー 鈴木綜馬

よし、じゃあ、まあ一つB級好きとして心して見に行こうじゃないか、と期待をほどほどに(←B級作品を見る前の大事な心得w)見に行ってみたら、これがまあ、「ラ・カージュ・オ・フォール」以来の日本版B級作品として素晴らしく楽しい仕上がりになっていて、心から堪能。終始、笑顔でエンディングを迎える。

いや、ストーリーはね、ほら、B級だから、なんてことない、ほんと。失恋したボーイが可愛いガールにミーツしちゃって、横槍が入ったりしながらもハッピーエンドっていうそういう立派なB級の王道の、ロマンティック・ラブ・コメディー。
ついでにいうと、演出もセットも衣装も取り立てて見所はない。セットと衣装はB級作品では重要な要素だと思うので、そこのところは残念ではあったけれども、この作品はとにかくキャスティングがいい。素晴らしい。

主演はともかくとして(彼はあんまりコメディ・センスが芝居にないのでね。でも、今まで見た彼の中では最高でした)、いや、彼は観客を呼べる主演としての義務をしっかり真っ当していたし、見た目も可愛く歌はばっちりで、これもナイス・キャスティング。

でも、まずは、大澄賢也がいい。むちゃくちゃいい。彼はアメリカンなB級作品が天職だと思う。典型的な憎めない悪役を、もうこれ以上文句なくチャーミングに演じる。演技どうこうより、ちょっと嫌味で、でもなんか可愛らしさを出せるミュージカル役者なんてきっと彼しかいないだろう。

脇役やダンサー陣もきちっと占めてくれるし、初風諄さんのおばあちゃんなラップには心からヤラレタ。凄すぎる、あれで60歳を超えてるだなんて脅威。初風さんのラップを見るだけでも、価値ある、この舞台、本当に。

さらに、ヒロインの上原多香子。前の「リトルショップ・オブ・ホラーズ」のときもその美貌に圧倒されたのだけど、今回前から二列目で見てみて、もう溜め息しか出なかった。個人的にB級のヒロインにいるものは、歌唱力でも演技力でもなくて、カラフルな衣装とハイヒールが着こなせて、頭カラッポでもとにかく可愛いからしょうがないやと思わせる容姿であることを実感。メルヘンチックな出窓にウェデイングドレス姿で佇む彼女は、後ろからの青い照明が反射して、もう一枚の絵のようだった。彼女以外の誰が、あんな立っているだけというシーンを芸術に変えれるだろうか。本当、蛇足だけど、歌唱力は前回よりもずっとマシだったことを一応、付け加えておく。彼女にはぜひとも「プロデューサーズ」のウーラ役を一度やってもらいたい。

そして何より、こういう楽しい作品をやるときに外せない「踊るコンダクター」塩田 明弘!多分、彼が指揮した「ラ・カージュ・オ・フォール」が私が始めてこんなに楽しい舞台はないと思った作品で、B級にはまらせるきっかけを作った人、である。
「踊るコンダクター」は、オケと役者以外にも、客席も指揮する。中日でリピーターも増えてきた頃なんで、彼の客席への指揮も完璧で、更に休演日の前日の二回目の公演ということで、役者のテンションも最大で、本当に本当に楽しい舞台だった。