こんなことを思ったり。ぼちぼちかんげき。

保護猫と同居人と暮らすアラフィフがビンボーと戦いながら、観劇したものなんかを感激しながら記録。

ガーネット・オペラ

3/16(火)19:00~ シアタークリエ

作・演出: 西田大輔

織田信長中村誠治郎
明智光秀宮野真守
羽柴秀吉入野自由

随分昔に何かで読んだ気がするのだけど、舞台を見に行く時に有る程度、心構えというものがあるというフレーズ、その言葉がふと蘇る公演だった。
宝塚なら宝塚、歌舞伎なら歌舞伎、ストレート・プレイ、ミュージカル、ミュージカルの中でも四季とか、よし今日はこういうものを見に行くぞ、という心の準備みたいなものは確かに出来あがるのだなあと痛感。
一番のこの公演の違和感はやはり、これをシアター・クリエで見る、ということだったように思う。ミュージカルファン的には無名の若手キャスト。知らない演出家。でも、クリエだし、みたいな思い込みがどこかにあったような気がする。

実際のところ、この公演は良くも悪くも小劇場演劇、そのままである。
私個人は小劇場演劇はあまり見ないので、多くの対象と比較しているわけではないのだけれど、舞台のハイライトシーン、イメージシーンを一瞬見せる幕開きから、音の入れ方、踊りの入れ方、演出の方法まで、アクション系小劇場演劇で良く見た、小劇場演劇らしいセンスだった。
それをまた、一般の舞台、ミュージカル界から見ると殆ど無名の若いキャストがやってしまうと、本当「シアタークリエ」で上演していることだけが違っている小劇場演劇そのものに感じたのだ。

例えば5000円くらいまでの値段で、紀伊国屋とかでこれが上演されていたら、まあこんなものかな、と思って見たと思う。とりあえず、若い男の子たちはエネルギッシュで可愛いし、これも小劇場センスだけど、会話とか面白いし、楽しめる。役者の舞台に対するスキルもこんなもんかな、と思うだろう。
けれど、ここは、シアタークリエ、だった。そこが問題だったように思う。

例えば、通常シアタークリエに来るような観客に、新しい日本の若い才能を見せたいということであれば、このままではあまりに未熟だ。新感線の「SHIROH」のように「荒削りだけど魅力的」と思わせるものは何もなかった。戦国時代という素材も演出も脚本も目新しいものはない。唯一殺陣のシーンが迫力があって、よく訓練され、良かったくらい。
もしくは、若いキャストに経験を積ませたい、のであれば、主要キャスト以外のキャストに、演劇界の実力派的なキャストを混ぜた方が良かったと思う。若い舞台の経験の少ないキャストに舞台のスキルとは何かということを感じてもらうことが出来ただろうし、逆に、小劇場出身の演出家やその他の世界でのキャストと関わることで、演劇界実力派の方にも何か新しいものを吸収するきっかけとなったかもしれない。
また、通常舞台を見に来ないキャスト個々のファンや、流行りの歴女を演劇界に取り込むためとしても、そうすると今度は価格の面でクリエで上演することによって、敷居が高くなってる気がするのだ。
だから、終わって思ったのは、一体何がしたかったのだろう、ということだった。

とりあえず、宮野真守くんは、見栄えと声が良くて格好良かった。これは大きなポイント。
ただ、舞台の仕事を続けていくのなら、舞台のセリフ回し、というものと、動き、所作、姿勢など勉強していくところがたくさんあると思う。
一番良かったのは秀吉の入野自由くん。技術はまだ未熟ながら、しっかりと彼の「秀吉」を作り上げていて、役として見ているものの心を掴む力があったので、ぜひともこれからもがんばってもらいたいと思う。