こんなことを思ったり。ぼちぼちかんげき。

保護猫と同居人と暮らすアラフィフがビンボーと戦いながら、観劇したものなんかを感激しながら記録。

アベニューQ

12月18日(土)東京国際フォーラム ホールC 13:00~

ケリ・ブラッキン[ティッスルワット先生/ベアー/ほか]
アシュリー・アイリーン・バックナム[ケイト・モンスター/ルーシー/ほか]
デイヴィッド・コルストン・コリス[プリンストン/ロッド]
リサ・ヘルミ・ジョハンソン[クリスマス・イヴ]
ティム・コーンブラム[ブライアン]
マイケル・リシオ・ジュニア[ニッキー/トレッキー・モンスター/ベアー/ほか]
アニタウェルチ[ゲイリー・コールマン]
ベン・ハート[アンサンブル]
ケイティ・マクリアリー[アンサンブル]
ローラ・由美・スネル[アンサンブル]
ザック・トリマー[アンサンブル/ダンス・キャプテン/パペット・コーチ]
 
ロバート・ロペス [作曲/作詞/原案/アニメーションデザイン]
ジェフ・マークス [作曲/作詞/原案]
ジェフ・ウィッティ [脚本]
ジェイソン・ムーア [演出]

2004年のトニー賞で、この作品が最優秀作品賞を取ったとき、授賞式では「It Sucks To Be Me」のシーンが上演され、パペットと人間の入り交じった舞台に、どうしてこれが、と思った記憶がある。なんといっても2004年は「WICKED」が大成功を納めた年。大がかりなセットに華やかな衣装、ダイナミックでこれぞエンターテイメント、と言った風情の「WICKED」に比べ、「アベニューQ」はなんとも異色で地味なイメージが拭えなかった。

しかし、実際今回見る機会を得て、改めて、あの時「アベニューQ」が作品賞を取ったのがよく分かるな、と思った。
2001年の9・11以降、広がった不安。そして、宗教や人種による溝は深まった。そういうところを、「アベニューQ」は実に上手くフォローしているのだ。

アベニューAから順に下り、アベニューQでようやく住める家賃になったから、ということで、大学卒業仕立ての若者がやってくるところから物語は始まる。
そんな安アパートだから、住民たちは、一様にみんな、様々な問題を抱えている。職がなかったり、安い賃金だったり、請求書に追われる日々。
問題にぶつかったり、恋人や同居人とけんかしたり、誘惑に流されたり、彼らの姿はまんま自分のようで共感できる。
また、主人公プリンストンが「人生の目的」を探し求める物語は、本当に社会人みんなにどこかしら感じるところがあるように思う。


そして、いいミュージカルがそうであるように、「アベニューQ」の音楽がいい。
重厚さはないけれど、その分、耳なじみがよく、リズミカルで楽しい。
下ネタもたくさんあるけれど、「みんな少しは差別主義者(EVERYONE'S ALITTLE BIT RACIST)」など、コミュニケーションの一つのあり方を示してくれたり、心に残る言葉もたくさん。

もちろん、ゲイリー・コールマンがあんまり分からないなど、文化的な壁も、言語的な壁もある。それでも、たくさん笑って、たくさん共感して、ほんの少し、毎日溜めているものを溶かしてくれて、だから、最後の「今だけ(FOR NOW)」では涙した、いい作品だった。

ほんの少し疲れたときにこのミュージカルが側にいてくれたら、ちょっとだけ頑張るパワーをもらえる気がする。

オフ・ブロードウェイの作品だから、セットは1セット。衣装も地味。
そういうハード面での見せ所はないけれど、そんな簡素なものでも、良い脚本と音楽と、良いパフォーマンスがあれば、舞台は十分に楽しい、ということを改めて感じさせてくれる作品でもあった。