6月と言えばトニー賞。
今、金銭的な事情のため、なかなか舞台を見に行くこともできず、しかも5月は宝塚だけしか見てなくて、ブロードウェイミュージカルに飢えていたんだなあと思う。
ということで、今年のトニー賞がとにかく好き!
シルクドソレイユの公演と被ったとかで、いつものラジオシティミュージックホールではなく、ビーコンシアターでの上演だったのだけど、それさえもジョークに取り入れてくるオープニングが最高。
ニール・パトリック・ハリスがオープニングから
Musical is not just for gay anymore
と歌い踊るのだ、びっくり!
ザッツ・ブロードウェイそのものの音楽と振り付けで、ノミネート作が次々と軽やかに登場する。
オタクや芸術家かぶれ
のものじゃない、
普通の人よ、ぜひミュージカルを見に来て、
と歌い踊る感じが、自虐的でもあって、思いっきりつぼ!
いいのか、これで、と思うほどの作り方。今回のトニーを演出した人、本当にステキだと思う。
ここ数年の習いどおり、ノミネート作には活気がない。
目新しさもない。
そのかわり、今年のノミネート作、4作はとてもミュージカルらしさに溢れていた。
特に、ディカプリオの映画が原作のキャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン。
衣装もセットも照明も可愛い!
きっと気軽で気楽な作品なんだろうなと思う。
そして、そういう楽しい気持ちを増幅させるのに、ミュージカルという手段はとても有効に働く。
音楽も昔っぽくて、古き良きMGMミュージカルを彷彿とさせる感じが堪らない。
一方で、やはり見たいなーと思ったのは、ブック・オブ・モルモン。アベニューQに出会って以来、ああいうブラックジョークの世界がとても好きだなと思うし、宗教、しかもモルモン教という特殊で触れていいのかためらう素材を、ショーアップしてくる技術とセンスがすごいなと思う。
後は全体に、やはりセットが素晴らしい。
ハウトゥ・サクシードにしたって、クラシックミュージカルをあそこまで洗練されたセットに乗せてくれれば、見る気持ちが起こるというものだ。
ショーの作り方、特にビジュアル面に置いて、やはり本場の域というのは、日本よりもずいぶん高いところにあるのだな、と思わずにいられなかった。
ところで、ミュージカルは一部のマニアやゲイのためのものじゃないんだよ、と歌いあげたオープニングから一転、中盤ではヒュー・ジャックマンとニール・パトリック・ハリスが、クラシック・ミュージカルの音楽を替え歌で歌い踊るというシーンが登場。
まさしくミュージカルオタクのためのナンバー(笑)
掛け合いも可愛くて面白くて堪能。
そして、なにより、トニー賞の常連のサットン・フォスターが素晴らしかった!
作品はエニシング・ゴーズ。
エセル・マーマンの代表作。ブロードウェイの偉大なる遺産。つまり、ふるーい、ミュージカル。
おそらくは、今見ると、テンポが遅くて退屈したりもするんだろうなと思うのだけど、サットン・フォスターはそれを実に軽やかに鮮やかに魅せるのだ。
あのタップの軽やかさ。
よくよく見たら結構激しい振り付け。
なのに、サットン・フォスターは、今60%くらいの力ですよというような涼しい顔をして、実に軽やかに踊る。力みのない、余裕でだから100%そのシーンの楽しさを伝えるパフォーマンス。プロだ、と思った。
重いシーンの波動を伝えるよりも明るいシーンをより軽く伝えることは難しい。それをサットン・フォスターは軽々とやってのける。
ああ、ブロードウェイってやっぱりいいなあ、と心底思った受賞式だった。
ということで、トニー合わせで去年の受賞作やらも放映してくれたので、その録画を次の週末には楽しみに消化していきたいな、と思う。