こんなことを思ったり。ぼちぼちかんげき。

アラフィフ負け犬がビンボーと戦いながら、観劇したものなんかを感激しながら記録。

一級品の中身のないエンターテインメント@宝塚月組「All for One」

8月11日(金)15:00~ 宝塚大劇場

脚本・演出:小池修一郎

ダルタニアン 珠城 りょう
ルイ14世 愛希 れいか
アラミス 美弥 るりか
アトス 宇月 颯
ベルナルド 月城 かなと
ポルトス 暁 千星
モンパンシェ公爵夫人 沙央 くらま
マザラン枢機卿 一樹 千尋
アンヌ 憧花 ゆりの
ボーフォール公爵 光月 るう
フィリップ 紫門 ゆりや
マリー・ルイーズ 早乙女 わかば
マリア・テレサ 海乃 美月
ジョルジュ 風間 柚乃

いやあ、このポスターが出回ったとき、どんな作品になるんだろうと戦々恐々だったのですが、初日があいて聞こえてくるのは好評ばかり。
ということで、楽しみに赴いたわけですが、口コミって正しいですね。
本当にすっごい中身のない素晴らしいエンターテインメントでした!
いいですか、「中身がない娯楽」って娯楽の中で最も難しいんです。
そこをね、小池先生は片手間でかるーく飛び越えてきました。さすがです。
昔、「めぐり合いはふたたび」を見たときに、座付き役者が作る良質の作品だと評価したことがあるのですが、これも同じことが言えます。
小池修一郎という宝塚歌劇団の演出家が、宝塚歌劇団の団員の特徴と、宝塚歌劇団の専用舞台を熟知したうえで作り上げた最高のエンターテインメントでした。
折しも夏休み中。そういうことも考えてこういう作品を持ってきた小池先生の座付き作家としての仕事に頭が下がります。
これ、小学生の男の子が見ても楽しいだろうなと思っていたら、後ろの席にそのくらいの男の子を含めたご家族がいらして、男の子がとてもニコニコとして楽しそうだったので、間違いないと思います。

ということで、中身はないので、ストーリーについては語りません。
三銃士をモチーフにした小池先生のオリジナルなので、三銃士の元々の物語のことは忘れて設定だけ楽しんでください。
浪漫活劇、アクション・ロマネスクという肩書がピッタリの痛快コメディです。
チャンバラシーンも多くて、笑いの部分も脚本の時点でしっかりしているので、本当に楽しいです。
その上で、小池先生の宝塚大劇場の機能を使いまくった演出が冴えわたってます。
この劇場はこんなこともやれるんやでー、な見せつけ感を感じたのは、今の宝塚大劇場こけら落とし公演の前の「劇場お披露目」の時以来です(笑)
あれは本当に、こんなセリがありますよ、こんな盆がありますよ、こんな風に回りますよーと本当に舞台機構だけ見せてくれたんですけれど、今回はそれを作品の中で、これでもか!と見せてくれます。セットフェチには堪りません。
あ、小学生の男の子にいいと書きましたが、これから舞台の裏方で働きたいとか演出家になりたいとか考えている人にもすごく向いています。

小池先生の演出にしては珍しく「プロローグ」があるんですけれど、これを見ながらアニメのオープニング的だなあと思っていたら、本当にアニメというか少年ジャンプ(正義、仲間、勇気)に少女漫画(壁ドン、胸キュン、シェイクスピアっぽい双子もの喜劇)をミックスさせた感じで、殆どどの層が見ても楽しめるという恐ろしく許容範囲の広い作品になってます。
だから、もう夏休みが来るたびにこの作品をかけたらいいよ、と思ってしまいました。
だって多分、ダルタニアンも三銃士もベルナルドもどの組の男役スターがやっても格好いいし、楽しいはずです。
なんですが、その場合の唯一の問題点が「ルイ14世」なのです。
ネタバレになるので、詳しくは書かないのですが、ルイ14世」がこの作品中、最もな難役で、今のミュージカル界を見渡してもこれをできるのは、愛希れいか(ちゃぴ)だけだと思います。
彼女の経歴と技術の両方がいる役で、それをなんなくやりとげて、「ちゃぴ、たまらんーーー!かわええーー!」と思わせる実力。すごすぎます。「グランドホテル」で中年のバレエダンサーをやっていた人とは思えない、トップになりたての頃のジュリエットを思い出させる瑞々しい可愛らしさ。もう年齢さえ自由自在に操れるようになったちゃぴが今後どうなっていくのか期待しかありません。

唯一この作品をおすすめできない層がいるとしたら、ショー的作品が苦手な方でしょうか。
ダルタニアンをはじめ、主要キャストには1、2シーン、ショー的なナンバーと見せ場が入っていていて、それを簡単な物語がゆるーくつないでいるので、がっつりストーリーを楽しみたいという方は苦手かもしれません。
しかし、そのショー的ナンバーがどれも本当に楽しい!
ちゃぴの圧巻のコミカルショーシーンも素敵だし、アラミスのモテモテ僧シーンも楽しかったですが、私は個人的に「マザランファミリー」シーンに爆笑しました。素敵すぎる。

ということで、もちろん、ちゃぴ以外のキャストにも大満足です。
というか、男役は宝塚スターならきっと誰でも楽しく格好良く演じられると思います。
私は個人的に美弥るりかのアラミスが、「そうだよ、この人の美貌でこういうモテモテシーンを見たかった」というものになっていて大満足でしたが、正統派まっすぐ逞しいダルタニアンとか、誠実だけど大人の男の色気たっぷりのアトスとか、やんちゃで可愛いポルトスとか、憎めない美貌の悪役ベルナルドとか、「乙女用ゲーム」のようによりどりみどりです。

でも娘役が今回良かったんですよね。
まあ三銃士なので男役に押されて、いつものように娘役は割りを食っているうえに、モンパンシェという美味しい女役を沙央くらまさん(コマ)がやられているので、本当に娘役たちはかわいそうなんです。
いや、コマはすんごい色っぽくてうまいんですよ。大好きです。
でも、この役、例えば白雪さち花さんとかにやらせてあげても良かったのになあと思います。
その上、今、月組には、二番手娘役的な早乙女わかばさんと海乃美月さんがいて、この二人がどうするかなあと思っていたら、二人ともきちんと自分の特性を活かして、ちゃんと魅せてくれたのです。
早乙女さんは華やかな見た目で、名前すらあんまり憶えてもらえない役ながらしっかりアピールしてきましたし、海乃美月さんは華やかさに欠ける代わりに実力者でして、そのスキルを存分に活かせる役であったことが本当に良かったです。

ところで、前評判ではフィナーレもちゃんとしているということだったのですが、フィナーレはいつもの小池先生一本もののテンプレート(二番手銀橋歌→ラインダンス→大階段トップスターと娘役たちの踊り→大階段男役燕尾服ダンス→二番手中心男役ダンス→主演カップルデュエットダンス)で最後の最後でちょっとがっかりしていまいました。
作品そのものがいいミュージカルショーなんですけれど、ダンスナンバーで魅せるシーンはないので、ここで1つくらいちゃぴダンスシーンを入れても良かったのに、とそれだけが残念です。
でもはじめて宝塚の老若男女も、私のような軽く宝塚好きも、生徒さんのファンもみんな楽しめる本当に面白い演目ですので、夏休みの思い出にぜひ一度体験されてはどうでしょうか。
あ、東京の方は今年は短いですけれど、シルバーウイークの際にオススメします。短い休みの気晴らしには最適の作品です!
終わるとAll for One!One for All!って叫ぶだけでハッピーになれます、きっと。