こんなことを思ったり。ぼちぼちかんげき。

保護猫と同居人と暮らすアラフィフがビンボーと戦いながら、観劇したものなんかを感激しながら記録。

「死」を身近に感じてできるもの@シアタークリエ「TENTH」兵庫公演

7/31(火)18:30~ 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール

第一部 ミュージカル「ニュー・ブレイン」ダイジェスト出演者
石丸幹二赤坂泰彦、畑中洋、樹里咲穂、初風淳、マルシア、本間ひとし、五大輝一、中村百花、伊礼彼方
第二部 ガラコンサート 出演者
石丸幹二、伊礼彼方、上木彩矢、ジェニファー、藤岡正明宮本美季光永奏一朗、村井良太

念願の「ニューブレイン」関西上陸なのに、平日公演のみでほぼ観劇をあきらめていたのですが、当日になってなんとなくいける感じになり、昼休みにチケットを買いに走り、仕事を定時ダッシュしてなんとか見てきました。
というくらい「ニューブレイン」のことしか考えていなかったのです。

そんな未だに私を一番夢中にさせているミュージカル「ニューブレイン」についてはこの辺にいろいろ書いてますので、よろしければどうぞ。



 

stok0101.hatenablog.com

会場についてから、二部のガラコンが「RENT」特集だと気づくしまつ。
そしてそちら狙いでこられている観客がほどほどにいることに気づきました。
(よく見たらポスターも1番目立つ写真がRENTという涙)
それでも平日の晩ということで、観客の年齢層は高く、ミュージカルのコンサートを聴きに来られたのかなあという方々の中で、改めて「ニューブレイン」の楽曲のすばらしさを痛感したのでした。

客席の埋まり具合は8割方というところでしょうか。
おそらく「ニューブレイン」をご覧になるのはほとんどがはじめて、だったのではないでしょうか。
けれども最初3曲が終わって「Heart&Music」になって、ふりそそぐハーモニーが終わったとたんに大喝采が起こったのです。
そこからは観客がのってきているのも感じたので、より一層「再演してほしいな」という気持ちがつのりました。
あのシンプルに美しいセットで、本物のピアノで、ノーカットで「ニューブレイン」を見たい。
重なり広がり、ふりそそいでくるハーモニーの粒をめいっぱいあびたい、そして今ここにいるおそらくはじめてこれを聴いた方々にも見てもらいたい、という気持ちがおさえられませんでした。
本当にすばらしいミュージカルです。

なので、TENTHになると「ガラコンサート」の部分がどうしても点数が辛くなってしまうのです。
ちなみにセットリストはこちら。

1~3曲目は1月と同じナンバーでした。
そして、4曲目以降が「RENT」になりました。

もちろん「RENT」も死ぬほどみて、きいて、大好きな作品ですので、その音楽が流れるとやっぱり気持ちがあがります。
何より幻の藤岡くんのロジャーを私は運よく本公演で見ましたので、彼の変化と変わらなさに驚きました。
あれからかなりの時がたち、舞台での立ち姿とか演技とかがうまくなっているのですが、あの時の彼のロジャーが持っていたロジャーらしい部分はそのままだったのです。
焦燥感と淋しさに満ちた「One Song Glory」
藤岡くん自身なのかロジャーなのか分からなくなるほど溶け込んだ歌。
彼の中にはいつまでも「ロジャー」な部分が残っているのか、それとも演技が上達したのかはわかりませんが、とてもすばらしいロジャーでした。
あとははじめて見た宮本美季さんのジョアンが美しくて、上木さんのモーリーンとのビジュアルバランスが良くて「Take Me Or Leave Me」がかっこうよかったです。
しかし久々に日本語で「RENT」を聴くと訳詞がやっぱりイマイチだったのが残念。
「愛はRENTできる」とか改めて聞くとなんじゃこりゃと思ってしまいました。
意味が分からない。
「RENT」の元々の英語歌詞を残したい気持ちは本当によくわかるのですが、もう少し改善されると嬉しいです。
ただ、ガラコンサート用に「RENT」本編にはない「Love Heals」という曲が、日本語の意味を読み上げられたあと、英語で歌われたのですが、これはすばらしい演出でした。
「Love Heals」の曲の良さをじっくりと体感することができました。

ところで、誰でも「自分史」なら名作を書くことができるかもしれない、なんてことをきいたことがあるのですが、「ニューブレイン」はまさしく作詞・作曲家ウィリアム・フィンの現実の体験が元になっている作品です。
「RENT」のジョナサン・ラーソンも「Tick,Tick…BOOM!」という自叙伝的作品を作っています。
とはいえ「RENT」はオペラ「ラ・ボエーム」を元にした彼のオリジナル作品なので、「ニューブレイン」と比べるのはあれなんですが、二つとも「死」を身近に感じた人が作った作品なのだなということに今回きづきました。

「RENT」は1980年代、世紀末でエイズクライシスまっただ中のニューヨークが舞台です。
作詞・作曲家のジョナサン・ラーソン自身も、身近な人々がどんどんエイズで亡くなっていく現実を「RENT」という作品にのせました。だからこそ「RENT」の音楽はどこか刹那的なのです。
「ニューブレイン」は逆にウィリアム・フィン自身が脳死直前までいったけれども助かった経験を元に作られています。
「RENT」の音楽とともにきくと、改めて「ニューブレイン」の音楽が「生きていて音楽を作れる喜び」に満ちていることを感じたのです。
だから「RENT」の音楽は胸をしめつけられる思いがして、「ニューブレイン」の音楽は涙あふれるほどに幸せにしてくれるのかもしれません。

ところでこの日は「RENT」メンバーのアフタートークショーがあったのですが、なかなかに興味深かったです。
自分の役以外でやってみたい役に「ロジャー」が集中。
分かる!笑
だって私も若かりしころ、一番「ロジャー」に感情移入したからです。
もう「One Song Glory」の気持ちで生きていましたからね。笑
そんな時代もありました。
好きな曲や歌ってて難しい曲なども紹介されて、「RENT」ファンには楽しいひとときでした。

でも、今回マーク役を村井良太くんがやっていたのですが、彼が「RENT」のオーディション受けるときにはじめてこの作品を知り、「映像版のRENTを見て感動した」というエピソードに泣きました。
おそらく話の内容からこの映像かと思われます。

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レネー・エリス・ゴルズベリー,ロドニー・ヒックス,ジャスティン・ジョンストン
ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント


もはや映画版

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クリス・コロンバス,ロバート・デ・ニーロ
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ですらないという(涙)
そうかー、当時あんなに衝撃的に新しかった「RENT」も、もうそんな「昔の名作」になってしまったのね(涙)

ということで「RENT」に対しては「現代感」を残した「RENT Remixed」を作ってもいいと私は思っています。
オリジナル版はそれはそれで一つの歴史で名作だからそのままに、ジョナサン・ラーソンが目指した「新しいミュージカル」という側面をもった「RENT Remixed」をぜひ作ってもらいたいです。

そして「ニューブレイン」はそのまま再演を。
大人の耳の超えた観客に耐えうる音楽であることが今回証明されたと思うのです。
初演時のセットと演出で今、関西で再演、いかがでしょうか。