こんなことを思ったり。ぼちぼちかんげき。

アラフィフ負け犬がビンボーと戦いながら、観劇したものなんかを感激しながら記録。

孤独の重み@宝塚花組「ポーの一族」

すっかり遅くなりましたが明けましておめでとうございます。
本年も何卒よろしくお願いいたします。
2018年の観劇はじめは話題の「ポーの一族」になりました。
さてこの作品の感想なんですが、先に私の「ポーの一族」の認識を書いておいた方がいいですよね、きっと。

えっと、私はうら若き乙女だったころ(多分18、9才くらい)に萩尾望都作品を一気に読んだ記憶があります。
そして今も大好きで大事に実家に置いてある「11人いる!」とか、処分しちゃったけれど、これはもはや「娯楽」ではない「芸術だ」と思った「半神」、何度かスタジオライフで見た「トーマの心臓」あたりはさすがにしっかり記憶に残っています。
もちろんこの時に「ポーの一族」も読んだのですが、たぶん何かが合わなくて読み直すことがなかったのでしょうね。この作品に関しては記憶が白紙なんです、すみません。

でまあ、宝塚でやるよ、ということが決まったころかKindleで1巻が無料配信されたことがあったんですよね。
なのでふたたび読んでみたのですが、完全にはじめて読む作品な感じでした。

そんなわけでお分かりのように、私は「ポーの一族」への思入れはなく、知識もKindleで無料配信された1巻分のみ、となります。

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萩尾 望都
小学館


チケットが取れてから読み直して見ようかとも思ったのですが、ツイッターで流れてくる感想がほとんど原作ファンのものばかりだったので、じゃあほぼ知らない状態で見たらどうなるかを試してみたいなと思って、そのまま赴きました。

ということで、以下、感想です。

1月6日(土) 15:00〜 宝塚大劇場
作・演出 小池修一郎

エドガー・ポーツネル 明日海 りお
シーラ・ポーツネル男爵夫人 仙名 彩世
アラン・トワイライト 柚香 光
大老ポー 一樹 千尋
老ハンナ 高翔 みず希
フランク・ポーツネル男爵 瀬戸 かずや
リーベル 華 優希

キャストどこまで載せるべきか迷ったんですけれど、原作ファンの方はキャストだけでどのエピソードを描いているかわかってしまいそうで、最低限にしました。
あとあらすじもですね、書くと原作ファンの方にネタバレしそうなのでやめておきます。
とりあえず、エドガーという少年が吸血鬼(バンパネラ)として、老いもせず、永遠に生き続ける宿命を背負いながら時空を旅する話です、はい。

最初ちょっと物語の始まりのお芝居があって、バーンと舞台にポーの一族が現れた瞬間、その迫力、その絵面に取り込まれました。
一瞬にして観客をその世界に取り込むことは、どんな舞台でも1番大事にされるところだと私は思っていて、小池先生という演出家はこういう基礎的なところは当たり前だけどうまい、のです。
そしてその迫力のプロローグに、それなりに長い原作のエピソードをさりげなく突っ込んでくるあたりの処理能力はもうさすがですよね。

ということで、宝塚版「ポーの一族」私は非常に面白かったです!

プロローグ後は漫画と違って時系列でストーリーが進みます。
なので無料配信1巻分しか読んでいない私には、なるほどなるほどエドガーとメリーベルって、そうだったんだ、そしてポーツネル男爵とシーラ、ポーの一族ってそういうことなのか、と発見の連続。

結局のところ、吸血鬼ということは、その他のものにとっては「モンスター」ということになるので、その辺で行われることは「美女と野獣

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と一緒なわけですよね。
一方的に「モンスター」扱いされて追い詰められていくバンパネラたち。
そうと知らなかったころは陽気に日々を過ごしていた人々が、恐怖でパニック状態になり、狂気じみていくさまは、他の作品でも多々描かれてきましたが、そのうねりみたいな迫力を舞台に乗せるのもやはり小池先生はとても上手いです。

その中で描かれるエドガーの苛立ちと淋しさが、何度も書いて申し訳ないですけれど、Kindle無料配信1巻分しか読んでない身には、はじめて切々と沁みてきて、ああそういうことなのか、ああ哀しいな、とシミジミ感じました。

無料配信1巻分を読んだとき、なんでエドガーはこんなにイライラしているんだろうと思っていたのですが、流れを追って見せられるとよく分かる。
だからエドガーの苛立ちと、アランの複雑な家庭環境に身を置かれた多感な年頃のコ特有の苛立ちが共鳴したように見えたのです。

エドガーが何もかも失い、アランに「おいでよ、一人では淋しすぎると言ったときには、うっかり涙してしまいました。
だって本当に1人では淋しすぎる。
永遠の時を漂うのは淋しすぎる。

その淋しさが、原作を読んだときの若かった私には分からなかったものなのかもしれません。
そしてその淋しさを抱えて漂うエドガーをもっと見たくなりました。
そこに描かれるものは何なのか。

原作ファンで初宝塚の方が、これを見てまた舞台を観たいと思われるかはわからないのですが、少なくとも舞台を見て漫画を読みたい気持ちにはなりました。

ということで、今から原作漫画を読む所存です。
そして改めて比較してこの舞台を語ってみたいとと思います。

それにしても、明日海りおさん(みりお)のエドガーが素晴らしい!
私がみりおを最後に見たのは、まだ月組時代の「ロミオとジュリエット

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でして、当たり前なんですけど、すっごく上手くなってるんですよ。
まあ元々うまい人だったんですけれど、ロミオみたいないいコな役をやると、元々の人柄が出ちゃって面白みに欠けていたし、ティボルトみたいなひねくれた荒くれ者をやるとすごい無理感が出てしまっていたのですよね。
でもエドガーは見事に完成されています。
それこそ「ロミオとジュリエット」の新人公演を見たときに思ったのですが、少年役というのは新人公演の方が有利なようで、そうではないのです。
年齢は近くとも男役として完成されていなければ、女性的なものが出てしまうのです。
みりおはもちろん完全に「少年」を作り上げてきました。そしてバンパネラの哀しみも伝えてきました。その完成されたモノが、アラン役の柚香光さんのまだ粗削り感の残る少年と素晴らしい対比を魅せてきたのです。

なぜかみりおのエドガーを見ながら思い出したのが、霧矢大夢さんの「バラの国の王子」

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の野獣で、ああ、みりおは霧矢くん並みのスキルを持って、今エドガーとして完成したものを見せているんだと感動しました。歌も朗々と歌えるものばかりだったので、リズム感という粗が見えなくて、情感のある歌声に切なくなりました。
多分見た目とキャラクターということだけなら、みりおよりエドガー向きのタカラジェンヌはいます。
でもみりおほどのスキルをもってエドガーになれるか、というとやっぱり今はみりおしかいなかったんじゃないの、と思っています。
そしてそう思わせたみりおがすごい!
正直にいうと私はみりおがあんまり得意じゃなくて、だから花組は今まで全く見てなかったくらいなので、贔屓目ではないことだけは信頼してください笑

そんなわけではじめてトップ娘役として見た仙名彩世さん。声が可愛い!大きな舞台で声が可愛いということは武器です。クリアな透る声質なので、歌が上手いのはもちろん歌詞も明瞭で、すごくミュージカルにとって強みです。シーラのソロが明るいディズニープリンセスみたいな感じの歌でしてね。これが本当にエドガーの初恋の人になり得るのが納得だったのですよ。いやあ、いいですね。

アランの柚香光さんは先ほど述べたようにまだ粗削りです。でも男役としては完成しているので、少年にきちんと見えました。そしてその上で粗削り加減がエドガーとの違いを明確に見せて納得。歌はもうちょいがんばりましょうかね、とは思いましたが、フィナーレのダンスのとき格好よかったので、もういいです、もう十分です笑

で、メリーベルですよ、リーベル
ゴスロリファッションとかのヘッドセットが個人的に苦手なんですけれど、あれって正しく使うとこんなにかわいいんですね
もうね、かわゆーて、かわゆーて!!
そんでもって美少女特有の魔性性もあって、たまりませんでした!
宝塚ってどこに隠し玉があるかわかりませんね。スターもですし、観客自身も。
私、こんなゴスロリ美少女に萌える日が来るとは思いませんでしたよ。
動くメリーベル見るだけでも価値あるんじゃないですか?
とりあえず早くメリーベルの舞台写真をください笑

ところで、舞台に映像を使うのはありかなしか、というのは舞台ファンだと一度は考えると思います。
私は基本的に舞台として面白ければ何でもオッケー派なので、効果的であれば使えばいいじゃないのと思ってます。逆に効果のない映像は嫌いですが、今回の馬車のシーンの映像はとても好きでした。
日が暮れて明けて、場所が移り変わっていく。
それと呼応するかのように、エドガーも「ゆうるり」と変わっていく。
あの時間の経過をセリフだけでやられてもちょっと乗れなかったし、何より、馬車とそれに乗っているポーツネル夫妻とエドガー、そして移りゆく映像の絵面がとても美しかったのです。

(因みに二階のほぼてっぺんで観劇。こんな感じの見え方でした)


こんな物語だから暗いだけかと思ったらちゃんと、明るく楽しく盛り上がるシーンも作って緩急が見事だし、やっぱり小池先生、好きだ!と思えた作品でした。