こんなことを思ったり。ぼちぼちかんげき。

アラフィフ負け犬がビンボーと戦いながら、観劇したものなんかを感激しながら記録。

楽しい、きれい。だけど惜しい@宝塚花組「CASANOVA」

3/2(土)15:00~ 宝塚大劇場

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脚本・演出 生田大和
音楽 ドーヴ・アチア

ジャコモ・カサノヴァ 明日海 りお
ベアトリーチェ 仙名 彩世
アントーニオ・コンデュルメル・ディ・ピエトロ 柚香 光
ゾルチ夫人 花野 じゅりあ
コンスタンティーノ 瀬戸 かずや
コンデュルメル夫人 鳳月 杏
マリノ・バルビ神父 水美 舞斗

 

多くの女性と浮名を流し、人生を謳歌していたカサノヴァ。しかしそれが仇となりヴェネツィアの風紀を乱した罪で投獄されてしまう。こんなところで一生を終えられないと同室だったバルビ神父と協力してみごと脱獄に成功。それを追う野心に燃えたアントーニオ。
その頃ベアトリーチェベネツィア総督である叔父に引き取られ、政略結婚をせまられていた。
ベネツィアはカーニバルの季節。人混みに紛れて逃亡しようとするカサノヴァとベアトリーチェはひょんなことで知り合い…。

 

ストーリーをざっと書いてみたのですが、ここからもわかるようにこの「カサノヴァ」には大したストーリーはありません。「祝祭劇」の名にふさわしい軽くきれいで楽しい恋物語です。
そのうえ「1789」でおなじみのドーヴ・アチア氏の音楽がちりばめられているので、聞いても楽しいし、セットも衣装もとてもきれいでしたので、見ても美しい娯楽作になっていたと思います。

こういう「祝祭劇」「娯楽作」は個人的には大好物です。
むしろこういう何もないはなしを「魅せられる」ものにすることこそがエンターテインメントだと思っています。
ただそれってやっぱりひじょうに高度な技なんだなあと感じる作品でもありました。
音楽も衣装やセットも、そして出演者もいいので、それなりに楽しめる。
逆にいうとそれだけ「いい条件」がそろっているのに、退屈するところも多々あったその原因はなんだろうと考えてしまったのですね。

原因の一つは、カサノヴァとベアトリーチェのソロ歌唱が多いことじゃないかと。
いやもちろん、明日海さんも仙名さんもうまいので聞きごたえあるんですよ。
しかも音楽そのものもいいんですよ。

サブタイトルが「祝祭歌劇」だから歌が多いのは仕方ないのですが、それが繰り返されるとさすがに飽きる。
しかも心情を吐露するばかりの内容のものが多かったのも残念です。
カサノヴァのソロ歌唱シーンは、女役が後ろで踊ってくれてたりするんですけれど、それもワンパターンで、そのあたりはもっと「ショー」的に「魅せる」シーンに変換する必要があったんじゃないのかなと思います。

そして、カサノヴァとベアトリーチェの歌が多いということは、他は二番手&三番手のコンデュルメル夫妻以外、あんまり説明されないというか、見せ所が少ないのです。

比較をするのはあれなんですけど、やっぱり「All for One」

月組宝塚大劇場公演 三井住友VISAカードシアター 浪漫活劇  『 All for One 』 [DVD]

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stok0101.hatenablog.com

が娯楽作品として完ぺきだった要因の一つは、キャラクターそれぞれに見せ場を作って「ショー的に魅せた」ところで、この「カサノヴァ」にはそれが極端に少なかったのも退屈した原因だったのじゃないかなあと思います。

コンデュルメル夫妻もそれぞれの心情を吐露する歌唱シーンはあるんですけど、この夫妻がどうして今のような関係になったのかについては説明がないんですよね。

まあ「想像にお任せします」でも、もちろんいいんですけれど、夫人の方の設定がけっこうおもしろいので、その辺をさらっとダンスシーンで魅せたらいいのにとか、いろいろ考えてしまいました。
ワンシーン、ワンシーンが長尺だと思わせるとやっぱり疑問は「どうして一本モノのしたの?」になっちゃうんですよ。
正直このくらい内容だと100分くらいで処理できます。(例えば「グランドホテル」フルバージョンが約100分なんですけれど、濃密で優れた作品になっています)その方がスピード感もあっておもしろかった気さえします。

で、短めのショーがついてた方が嬉しかった人は多いんじゃないかなあと思うと、ちょっとばかり残念でした。

 

あ、キャストに対してはみんなすばらしかったです。
カサノヴァの知性については一切説明がないにもかかわらず(一応カサノヴァとはという宝塚歌劇団公式の説明はこちらをどうぞ→時代を駆け抜けた男・カサノヴァ | 花組公演 『CASANOVA』 | 宝塚歌劇公式ホームページ)、そういうこともぽーんと納得させる「あまたの女に愛される」男性像を作ってきた明日海さんに脱帽。歌のリズムの完ぺきでしたし、本当円熟されていました。
そして数々のすてきなドレスを着こなし、どんな曲調でもリズムでも歌いこなす仙名さんのすばらしさといったら!卒業後はぜひとも全ディズニープリンセスの吹き替えをしてもらいたい!と思ってしまいました。仙名さんの「プリンセスボイス」は本当に貴重だと思うので、これからの活躍も期待したいです。
ただ仙名さんの個性としては、こういうただのプリンセスみたいな役よりももっと「色気と知性」がある方が似合うし魅力的なんですよねえ。
だからどうしてもこの作品が生まれる1つのきっかけにもなったという「カサノヴァ・夢のかたみ」のポンパドゥール夫人を見たかったなあと思いました。

柚香光くんは敵役という二番手ならではの美味しい役を、ギラギラキラキラ演じていて本当まぶしかったです。
特筆したいのはコンスタンティーノあきらとゾルチ夫人じゅりあ。
コメディをちゃんと演じられる。しかもセリフのリズムと間だけで笑わせるというのは、本当にむずかしいんですけれど、なんなくやっちゃう2人の経験と技術がすばらしい。
この二人も本当に魅力的だっただけに、もうちょっと魅せ方なかったかなあと思うんです。

あと女役を演じた鳳月杏ちゃんのお付きの娘役ちゃんたちも。けっこうおもしろいモチーフで抽象的な存在なだけに、鳳月杏ちゃんと彼女たちのどこかのシーンが「バーン」とショーっぽく魅せるものになっていたら、これまたもうちょっと違っていたような気がするんです。

 

そう思うと総括して「いろいろ惜しい」作品でした。
あと三歩くらい何かが足りない。その三歩を詰めることがこれからの生田先生の課題かもしれないですね。

とはいえ前作の「ひかりふる路」

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とは正反対の娯楽作をここまで作ったことは、幅広い対応力を示したと思うので、今後に期待しています。