こんなことを思ったり。ぼちぼちかんげき。

保護猫と同居人と暮らすアラフィフがビンボーと戦いながら、観劇したものなんかを感激しながら記録。

役と個性が一致する輝き@ミュージカル「フラッシュダンス」

10/10(土)12:00~ シアター・ドラマシティ
脚本
Tom Hedley & Robert Cary
音楽
Robbie Roth

日本版脚本・訳詞・演出
岸谷 五朗
訳詞
長島 祥
 

出演
アレックス 愛希れいか
ニック・ハーレイ 廣瀬友祐
グロリア 桜井玲香
ジミー 福田悠太(ふぉ〜ゆ〜)
C.C. 植原卓也
キキ Dream Shizuka
テス 石田ニコル
ハンナ 春風ひとみ
ハリー なだぎ武 
ルイーズ 秋園美緒  
アンディ 松田凌  
ジョー 大村俊介(SHUN)

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映画「フラッシュダンス

 

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は若き頃に見たのですが、最後のアレックスのダンスでがっかりした記憶しかありませんでした。
でもダンスでがっかりした映画のミュージカル化はうまく行く可能性がある、というのを見せてくれたのが「ビリー・エリオット」でした。
ただ「ビリー・エリオット」は英国映画お得意の炭鉱労働者なんとかしようぜ問題と、父子の関係や少年の夢をうまく織り交ぜて描いていたからなんとかなったんだなあとしみじみ思いました。

まあわかってはいたけれど「フラッシュダンス」はストーリーが薄い。
1980年代のピッツバーグ
製鉄所で働きつつ夜はバーダンサーとして踊りながら、伝統あるダンス学校への入学を目指すアレックスの夢と恋と友情の物語です。
でもそれはそれでいいんです、ダンスと歌でショーアップしてくれれば。
そこもあまり作用しなかったのが、英国でも4ヵ月でクローズした理由なのかなあとか邪推してしまいました。

 

オリジナル版を見ていないので、今回の日本版がどこまで演出やセット等を踏襲していたのかは分かりません。
セットは下記のような感じで 

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二つの円錐を切り取ったような大道具が動き、そこに背景が映し出され、動き組み合わさることで見せていきます。
2004年からロンドンで上演されていた「ウーマン・イン・ホワイト」という作品では、この大規模版のようなセットをとても効果的に使っていたのですが、今回のセットではそこまでの効果を見せられなかったのは、ちょっと残念でした。
特にこの円錐形の一部のようなものとは別に、もう少し小さい物体にも映像を投影していたのですが、これが登場人物の影で映像が消えてしまうのは粗さが見えてもったいないので、万が一再演があったら改善してもらいたいです。
あと映像は背景だけで十分です。心情表現のような映像は過多なような気がしました。それよりももっと歌と踊りで心情を魅せる方に注力してほしかったなと思います。
そして楽屋のセットのランプの光が強いのも気になります。キャラクターの表情を隠す光の表現が何らかの演出だったのだとは思いますが、残念ながらわたしは感じ取ることができませんでした。
それでもこれくらい色々思うことができる興味深いセットではありました。
 
いろいろと制作側の粗さは気になる作品ではありましたが、それでもとにかく楽しく見られたのは、主演の愛希れいかさん(ちゃぴ)の実力とかわいさを100%出し切れる作品であったことと、彼女の主演を支えた他キャストの力だと思います。

アメリカのドラマ「SMASH

 

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トニー賞を取るには「実力があることは大前提で、その役と一致していること」というようなセリフがありました。
等身大の役がやりやすいのか難しいのかはわかりませんが、確実に言えることはちゃぴのアレックスは非常に魅力的だったということです。
踊りが大好きで、踊りたくてたまらない、彼女の「情熱」がそのまんま表現されていて、一つ一つの表情がとにかくかわいい。
そしてその踊りたい気持ちを爆発させるように「踊る」アレックスは美しい、ただその一言に尽きました。
だからこそその「踊り」をもっと大事にしてほしかった。

わたしが映画で最大限にがっかりしたアレックスのダンスシーン。
振付も悪くなく、ちゃぴのダンスの実力は十分で、だからこそそれだけで魅せられるものだったはずなのです。
友人たちが「What a Feelin’」を歌うのはいい演出です。
アレックスがハンナの、そして友人たちの顔を思い出し、再度立ち上がる、その友情が伝わります。
でもダンスの最中でアレックスを囲む必要はなかったと思うし、さらにもっと気になったのがぐるぐる回る審査員でした。
アレックスが審査員にアピールするのを見せるのは一度だけでいいと思うし、その審査員はもう客席でいいと思うんです。
そうやって観客を取り込むことが舞台の魅力ではないでしょうか。

 

アレックスの踊るバーとC.C.が経営するバーとの違いをもっと見せられたら、グロリアの物語も際立ったと思うのですが、映画ではストリップダンサーだったところをセクシーダンサーなだけにしたのはミュージカル版全体の変更だったようですね。
そうするとやはりもうちょっとドラッグなどの違法性を分かりやすく見せてほしかった。
とはいえC.C.役植原卓也さんは雰囲気があって動きがキレイだったので、個人的にはとてもいいなと思いました。演技と歌のスキル向上に期待します。

そして、このちゃぴアレックスを持ってきてくれたことに何よりの感謝を。
贅沢をいうならもっと「踊りに熱中しているアレックス」を見たかったし、それをしっかり描く方がメッセージもシンプルに伝わったとも思います。
例えば部屋でオーディション用の振付を一心に踊りながら考えているアレックスのシーンを差し込むとか。
でもそんなことまで想像させてくれたことがこの作品の魅力だったのかもしれません。