こんなことを思ったり。ぼちぼちかんげき。

保護猫と同居人と暮らすアラフィフがビンボーと戦いながら、観劇したものなんかを感激しながら記録。

時を戻して価値観を改める@宝塚花組「元禄バロックロック」

11/23(火・祝) 15:30~ 宝塚大劇場
忠臣蔵ファンタジー
『元禄バロックロック』
作・演出/谷 貴矢

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キャスト   
クロノスケ    柚香 光
キラ    星風 まどか
コウズケノスケ    水美 舞斗
ケイショウイン    美風 舞良        
リク    華雅 りりか        
クラノスケ    永久輝 せあ        
ツナヨシ    音 くり寿        
タクミノカミ    聖乃 あすか                
カエデ    美羽 愛        
ツバキ    星空 美咲

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ええと、このhttps://kageki.hankyu.co.jp/sp/revue/2021/baroquerock/info.html#correlationが出たときにはちょっとパニックになったことを告白します。
良く知ってる名前がカタカナになるだけで、こんなに混乱するものなのですね・・・。
しかも「タイムリープ」って何?な状況で見に行って大丈夫か、と思いながら足を運んだわけですが、杞憂でした。

ちなみに「タイプリープとは」で検索すると
SF小説などで、人が過去・現在・未来を瞬間的に移動すること、またその能力。時間跳躍。和製英語
と出てきました。和製英語なんですね。


ストーリーをザクっと紹介するならば
赤穂藩士で時を戻せる時計を持った時計職人のクロノスケが「松之廊下刃傷事件」以前の世界に戻れないかと考えながらも、人として今を大事にするという違う生き方もあるのではないかと迷っている。そんな中、不思議な魅力を持ったキラと出会って、本当の人生の在り方を模索していく。
というところでしょうか。

ここに結構がっつり「忠臣蔵」の話しが入ってきます。
なのでさらっと「忠臣蔵」は何かで知っておいたほうがより楽しめるかなとは思いました。
ちなみにわたしの行きつけバーのマスターはこの映画を見ていたので楽しかったとおっしゃっていたので、いいのかもです。

本来であれば、杜けあきさまファンとして、29年前の同じ時期に旧宝塚大劇場で上演された「忠臣蔵」を見て!と申し上げたいです。

だって、幕開き「松之廊下刃傷事件」ですよ!
事件の手紙を受け取ったクラノスケが「あんなにお優しい殿がどうして・・・」ですよ!
思い出しますよ、29年前に旧宝塚大劇場に通った日々を。
でもこれを見ちゃうと今回の「ファンタジー」部分が満喫できなくなるので、個人的にオススメできないのが残念です・・・。

 

話しとしては「ファンタジー」な設定や世界観が、個人的に高河ゆんさんの「源氏」や、小劇場演劇っぽくも感じましたが、曲の作り方はちゃんと大劇場ミュージカルしていましたし、セットも衣装も豪華で美しく、今からはこういう日本物もありだなあと思いました。
しかも役も多いので、みんなイキイキと活躍していたのも見ていて楽しかったです。
今回の赤穂事件解決部分をわたしは上記の理由で「えええー、それはないよ」と思ってしまったのですが、そんな個人的なことを除けば、ちゃんと「忠臣蔵ファンタジー」になっていて、それは今の時代にあっているとも思います。

寧ろこの解決法こそが、時代が進んだことを印象づけて、死ぬ美学から生きる大切さへの価値観が変わるのはいいなと思っただけに、その解決法が「えええー、それはないよ!てか、大石はそれを先にやったんだよ、だけどダメだったから討ち入りだったんだよ!」と思ってしまった自分がちょっと哀しい。

本当贅沢言って申し訳ないですが、他の解決法だともっとこの話しを楽しめたと思います。

(いやもしかしたら赤穂藩再建却下前までは時が戻っているのかもしれない。クロノスケが松ノ廊下から討ち入りまでのどのタイミングでキラと出会っているかは不明だしな、多分。ちょっと時系列がわからなくなったので不確かですが、そう思って見ればよかったです)

 

それにしても柚香光氏の「プロイケメン」な甘い言葉がなんと似合うこと。
その美貌の柚香光氏を支える水美舞斗さんと永久輝せあさんの安定感。
何より音くり寿ちゃんがオン・ステージ!
かわいらしく、おもしろく、でも素直で少年らしく素晴らしい将軍でした。
星風まどかちゃんは文句なくかわいいし上手いのですが、このお芝居においては、もっとクロノスケへの気持ちを強く感じさせる演技ができると、よりいいだろうなあと思いました。
タイムリープが関わっているので、その辺の塩梅はものすごい難しいと思うのですが、できる人だけに今後と東京公演に期待。キラのクロノスケへのラブ感強めになっているともっとキュンキュンもできる気がしています。

ところで、なぜ浅野内匠頭吉良上野介に斬りかかったのか、というのは、多分「これ」という確証が現在のところまだ出ていないのではないかと思います。
だからこそ色んな解釈が生まれて、現在に至るまでいろいろな「忠臣蔵ファンタジー」が生み出されているのでしょう。
今回の「元禄バロックロック」では、タクミノカミがコウズケノスケを切りつけた理由を、なんとなーく理解できるし、理解できるところまで話を持ってきたのは単純にすごいと思うのですが、それでもやはり浅野内匠頭がそうすることによって赤穂藩がどうなるかを藩主として先に考えなかったのか、という疑問はやっぱり残ります。
そんなわけで、わたし個人は「忠臣蔵」の世界においてはこの作品のファンタジーが一番納得できるものだったりします。

ちょっと怖くて面白いのでおすすめです。
そして吉良上野介大石内蔵助にも同情します。

 

さてそんな29年前の公演に思いを馳せた後、やってきたのがこれです。
レビュー・アニバーサリー
『The Fascination(ザ ファシネイション)!』 -花組誕生100周年 そして未来へ-
作・演出/中村 一徳 

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花組誕生100周年を記念して、1985年の公演「テンダーグリーン」の主題歌と1988年の公演「フォーエバー!タカラヅカ」から「ピアノ・ファンタジー」のシーンが入るよ、ということは聞いてはいたのですが、理解しているのと実際見るのとでは違う。
「テンダーグリーン」も「ピアノ・ファンタジー」もわたしは映像でしか見たことがないのですが、10年前に急逝された元花組トップスター大浦みずきさんにとても縁のある曲と作品で、大浦みずきさんが「宝塚ショースター」の基本形であるわたしにとっては、その存在を思って涙なしでは見られませんでした。


全体に本当に正統派レビューな作りになっていて、またそれをきっちり魅せられる花組の皆さんがすばらしい。
そんな正統派レビューな中、中村一徳先生お得意の銀橋を何度も何度も手を変え品を変え、組合せを変え、歌を変え、いろんなスターが渡ってくれるので単純に楽しいです。
その上でかつての「ダンスの花組」を思い出させるダンスダンスダンスなショーになっていて、それをまた柚香光さんと水美舞斗さんがよく踊る!
聖乃あすかさんもキラキラと輝いているし、ここでもがっつりちゃんと2番手娘役スターとして立てる音くり寿ちゃんの存在がありがたい。
柚香光&水美舞斗ダンサーコンビがガンガン踊って2人で魅せるのならば、星風まどか&音くり寿歌うまコンビでガンガン歌うシーンがあっても楽しかったのになあと、そこだけがちょっと残念でした。
でも永久輝せあさんもがっつりロマチックレビューなシーンをワンシーン持っても、問題なく美しく存在できるので、花組の層の厚さが終始心地いいショーでした。
柚香光氏は白燕尾も黒燕尾も本当にすばらしくよく似合うのですが、「食虫花」みたいな「人でないもの」の不思議な衣装や鬘もよく似合って美しくて、本当に堪能。
そういえば、星風まどかちゃんが真ん中でダルマ衣装で踊ってその後すぐに銀橋で歌う、というシーンがあったのですが、踊った後に歌うのがしんどそうで、「踊って歌う」大変さを痛感。

なのに帰宅してから「ピアノ・ファンタジー」の過去映像を見たら、聖乃あすかちゃんのソロ曲&ロケットから柚香光さん率いる組子たちのダンスダンスダンスシーン全部、大浦みずきさんがやられていて、やっぱり大浦みずきさんはすごかったのだなあと改めて痛感したりもしたのでした。