4月3日 15:30~ 宝塚大劇場
大江戸スクランブル
『夢介千両みやげ』
原作/山手 樹一郎「夢介千両みやげ」
脚本・演出/石田 昌也
キャスト
夢介 彩風 咲奈
お銀 朝月 希和
総太郎 朝美 絢
嘉平【夢介の爺や】 汝鳥 伶
鬼熊【一つ目の乾分】 久城 あす
梅次【五明楼の芸者】 杏野 このみ
春駒太夫【娘手品師】 愛 すみれ
三太【お銀の仲間でスリの少年、情報屋】 和希 そら
浜次【五明楼の芸者】 妃華 ゆきの
悪七【船頭、一つ目の御前の手下】 綾 凰華
斎藤新太郎【修行中の剣客】 諏訪 さき
お松【伊勢屋の女中】 野々花 ひまり
お滝【悪七の妻、小唄の師匠】 希良々 うみ
金の字【遊び人金さん、斎藤兄弟と剣客修行に帯同】 縣 千
斎藤新次郎【新太郎の弟】 一禾 あお
お糸【蕎麦屋の娘で春駒の付き人】 夢白 あや
このキャスト表を見て初めて知りました、斎藤兄弟と金の字が剣客修行していたことを‼ 十手持ちじゃないけれど、正義の人、くらいにしか把握していなかった哀しさよ。
この原因はどこにあるのかというと、やはり脚本、そしてセリフの届き方なんでしょうね。
しかしながら、全体には完全娯楽作な軽く楽しい作品で、宝塚歌劇としてはこういう作品も大事にしていってほしいなと個人的には思います。
原作はこちら。
小田原の庄屋の息子・夢介が父親から千両持たされ、江戸に「道楽修行」に来るところから物語は始まります。
ぼんやりしてておおらかな夢介は江戸のちょっとワルな人たちからいいカモ扱いを受けるのですが、それを上回る人の好さで、関わった人たちがどんどん夢介に魅せられ、改心していく、だけのお話です。
終始、夢介は何弁だか分からない訛りでゆったりしゃべるし、カッコつけるところも数か所しかない。けれども、プロローグ終わって、お銀が夢介をひっかけようと同じ旅籠に泊まって、とお願いするシーンで「おらあ、おおいびきをかくそうだよ」と夢介が言った瞬間、
夢介、惚れた・・・、ラブ❤️
と思わせた彩風咲奈が本当にすごいと思いました。
(そんなわけで訛りがかわいかったので、わたしは訛りあり推進派です笑)
ヒロインお銀がまだ心動かされる前に、この一言で夢介のおおらかさにキュンとさせてくれたから、この後のヒロインにも、そのほか夢介に次々惚れていく人々にも納得できるのです。
彩風咲奈の「影のない」魅力が存分に発揮された当たり役だと思います。
劇中でも表現されますが、「太陽のような人」というのはスキルだけで演じるのはなかなか難しい。むしろスキルで演じられない役だから、今回この役を当ててくれただけでも石田先生には感謝かなと思います。
で、スキルの部分は雪組の娘役の面々が全部担ってくれました。
お銀・朝月 希和さんはじめ、梅次・杏野 このみさん、春駒太夫・愛 すみれ さん 、浜次・妃華 ゆきのさん、お滝・希良々 うみ さん、みんな本当にかっこよく素晴らしかったです。
その中でお松の野々花 ひまりちゃんが光りました。
全体に婀娜っぽい女性が多い中、いもっぽくしても輝くいじらしさ。
終盤の大団円の主役は彼女で、その扱いにはもやっとするところもあるんですが、それでも彼女がいじらしくかわいくそこにいてくれることで、セリフ以外にもきっと総太郎 に届いたものがあったに違いない、と無理矢理納得させてくれた演技に感謝。
総太郎の朝美 絢さんもある意味当たり役。
というかこの美貌の人に「なにせこの顔、この器量、もててもててしょうがない」と言われると「あ、まあ、そうですよね。ご両親も甘やかしますよね。ろくでなしだけど、そうなっちゃうよね」という説得性がすごい。
そしてそこに説得性を持たせた朝美 絢さんのやりすぎない演技が適格で、素晴らしかったのです。
そんな個性的なメンバーに囲まれながら、ぐっちゃぐっちゃのこの話しを見やすくしてくれたのが、和希そらさんでした。
適格・明瞭なセリフまわし、役作り。
「夢千鳥」であんな病んだ人をやっていたとは思えない爽やかさに少年味もプラス。
色んな仮面とそれを表現できるだけのスキルを持ったこの人が、これから雪組で活躍してくれるのが楽しみです。
縣くんももちろん剣客修行三人組の中では普通に光って目について、そのスター性が楽しみなので、今後のために「長袴」のさばき方等、細々したスキルをしっかり身につけてくれると嬉しいなと思います。
その縣くんの「長袴」のシーン、子供の頃に娯楽時代劇が大好きで「暴れん坊将軍」「遠山の金さん」それからもちろん「桃太郎侍」も見ていたわたしとしては、大変なじみ深くかつ懐かしいテンションのあがるシーンだったのですが、今回2階席の前の方に男子高校生の団体さんがいらしてまして、彼らにとってはこのシーンどう映るんだろう、とちょっと気にはなりました。
細々とは気になる点や、ここはもっとスピード感を持って進めたらとか、ここはもっと会話のやり取りの間をしっかり詰めて演出したらもっと面白くなるだろうに、というところはたくさんあったので、本来の作品が持つだろう魅力を出し切れていない感じはあったのですが、総括したら「まあ、楽しかったからいいや」までくらいには仕上がっているので、あとは日を重ねて、新人公演を経て、全体にまとまりが出てくれるといいなと思います。
ので、完走を心より祈っています!
で、ショーですよ。
ショー・スプレンディッド
『Sensational!』
作・演出/中村 一徳
いつものテンプレショーですが、やっぱり楽しい。
踊る踊る彩風咲奈、踊る踊る和希そら、踊る踊る縣千。
その中で歌う人が歌い、綾 凰華さんのサヨナラシーンもきっちり用意して、上級生から若手まで見せ場を作るこのテンプレート、本当によくできていると思います。
ただ思ったのが、テンプレだけに、忘れてしまう・・・。
いや、いいんですよ、ショーなんてひと時の夢なんですから。
でもいつまでも心に残っているショーシーンとかもあるわけじゃないですか。
なんならこのシーンのために円盤買う!とかあるじゃないですか。
記憶をたどるに中村 一徳先生のショーでわたしが覚えているのは「Rhapsodic Moon」のときの「ノートルダム・ド・パリ」のシーンと、あとは全部ブライアント先生振付シーンだなということに気づいてしまいました。
そんなわけで身体全体でリズムが取れるダンスをする和希そらがいてくれるうちに、ブライアント先生振付の復活を心から願っております。