こんなことを思ったり。ぼちぼちかんげき。

アラフィフ負け犬がビンボーと戦いながら、観劇したものなんかを感激しながら記録。

歴史を学ぶということは人を学ぶということ@ミュージカル「日本の歴史」

7/25(日)13:00~ シアター・ドラマシティ

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脚本・演出 三谷幸喜

音楽  荻野清子

キャスト

中井貴一 シルビア・グラブ 新納慎也 香取慎吾 瀬戸康史 秋元才加 宮澤エマ

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三谷幸喜作のミュージカルは今まで「オケピ!」と「トーク・ライク・シンギング」

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(写真はニューヨーク在住の方がくださったもの。わたしは日本で見ました😅)

を見ていて、芝居はともかく彼の作る「ミュージカル」は苦手だなあと感じていました。なのでこの作品も初演を見ていなかったのですが、今回その考えを改めました。

タイトルは「日本の歴史」ですが、ストーリーはこんな感じです。

20世紀初頭、テキサスに広大な土地を購入したシュルツ一家がやってくる。ドイツからニューヨークへ移民としてやってきた夫が必死で働き残した金で、彼の夢だった牧場経営をはじめるためだった。

夫の夢を継ぐべく荒地を牧場に育て、隣接する牧場主との土地権利争い等を経て、牧場主となるシュルツ夫人。小作人としてアイルランド移民のオブライエン一家を雇い、権力を持つようになる。

このシュルツ一家とオブライエン一家の人生と重ねながら「日本の歴史」を紹介していく。

 

「日本の歴史」は土地争いを経て広大な土地を手に入れ、権力を手にすることになってしまった卑弥呼から、武士・平清盛の隆盛、源頼朝義経兄弟の葛藤、明智光秀による織田信長の殺害など有名なエピソードもありながら、藤原仲麻呂徳川家重、宣教師シドッチなど、歴史的にはちょっとマイナーな人たちも登場します。

その中でも秩父困民党として立ち上がった人が紹介されたのですが、名前すら知らず、見終わったあと忘れてしまうという不始末・・・。

でも大きな歴史の流れの中で、彼のような市井の人が簡単に踏みつぶされてしまうのはよくあることで、その厳しさが身につまされました。

 

個人的になんとなく幼少期から歴史を学ぶのが単純に好きで、歴史の授業は楽しく受けていたのですが、そうではない人により見てもらいたいなと思う作品でもありました。

歴史は結局は人が生きてきた積み重ねで、この作品の中でも歌われてもいたけれど「今まで生きた誰かと同じ悩み」を抱えているのかもしれないと考えたら、歴史を学ぶ意味を見つけられるかもしれないなと思います。

何より2つの家族を軸に描くことで、「歴史」というなんかよくわからない「大きなもの」が、身近な問題や悩みとして共有できるのです。そうすると一気に理解はしやすくなります。

小学生とか、とりあえずこの作品でザクっと日本の歴史を知ってみるのは、とてもいいんじゃないかと思います。

興味が沸いて深堀するのはいくらでも自分でできる。

でも最初に興味を持たせるのは容易ではない。

そういう意味でこの作品は価値があるなと思いました。

またこの状況下なので、特にシニカルに響くセリフなんかもあって、とても楽しめる、そして考えるいい作品になっていると思います。

何より音楽がいい!

「アイ・エヌ・ジー・エー 因果♪」とかついつい終わったあとも口ずさんでしまうくらいキャッチーな曲があるというのは、ミュージカルとして強い!(明智ッチとシンコペーションの歌が個人的にはお気に入り)


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その上で物語のラストシーンでは、シュルツ夫人とその娘・パットが歌う迫力の一曲もあったりして、そのバランスがとてもよかったです。

 

そして、その曲を歌うシルビア・グラブさんと宮澤エマちゃんがうまい!

歌だけじゃなく演技も踊りも動きもうまい。いろんな人物が入り乱れる作品で、いろんな人がいろんな役を演じますが、軸となる2人をシルビア・グラブと宮澤エマに配したところがこの作品を成功に導いたと思います。

この2人が「一生」を自然に演じられるから、時の流れをちゃんと感じられる。変わっていく時代、変われない心、次の時代に繋がっていくということ、そういうことをじんわり感じさせてくれました。

シュルツ家のすごい女性2人の元で、落ちこぼれの長男を演じた新納さんも、この2人に見劣りしないくらいには歌もちゃんとしていましたし、ダンスと演技はさすがでした。

そこへいくともう一つのオブライエン家が弱いかな、とは思ったのですが、オブライエン家の主軸は初演では川平慈英さんだったんですね。

川平さんバージョンはきっと今回よりもいろんな面でバージョンアップしていただろうなとは思うのですが、逆にそれを思うとこの川平さんパートを演じきった瀬戸康史くんがすごい。

ダンスはまだまだでしたが、演劇的な動き方という部分や歌唱力は及第点。それに何より、かわいい。そりゃあ宮澤エマちゃん演じるパットも惚れるよね、と自然に納得できたところがよいです。さらに女性役もあったのですが、すごいかわいい。この部分だけは川平さんよりよかったんじゃないかと推察します。

もちろん香取くんは前の出るときのスターオーラはさすがだったし、他2人の女性キャストがうますぎただけで、秋元才加さんもしっかりとした演技と歌で「日本の歴史」を伝えていました。

そして中井貴一さん。踊りと歌の部分で少し見劣りするものの演技はさすがですし、何より歴史上の人物を演じるときの和服の着こなしが素晴らしかったです。中井貴一さんが和服を、しかも時代よって変わる和服をそれぞれちゃんと着こなして動いておられたことも「日本の歴史」をきちんと感じさせる重要な点だったと思っています。

 

セットや照明はシンプルというか、簡素で、この辺りをもう少しセンスアップできれば、舞台作品としての質ももっとあがっていくと思います。

香取慎吾くんあっての集客だったかもしれませんが、作品としてはシルビア・グラブさんと宮澤エマちゃんがいれば他キャストは変わっても大丈夫だと思うので、またの再演を期待したいと思います。