5/21(土)17:30~ 梅田芸術劇場
キャスト
メリー・ポピンズ:笹本玲奈
バート:大貫勇輔
ジョージ・バンクス:駒田一
ウィニフレッド・バンクス:知念里奈
バードウーマン/ミス・アンドリュー:鈴木ほのか
ブーム提督/頭取:コング桑田
ミセス・ブリル:久保田磨希
ロバートソン・アイ:内藤大希/石川新太(Wキャスト)
ジェーン・バンクス:西光里咲
マイケル・バンクス:井伊 巧
わたしのメリーポピンズ好きはこの辺に書いているのですが、
2018年の初演を見に行っていなかったのは、2005年にロンドンでこの作品を見て、「やっぱり映画版が好きだ」という結論に達したからです。
しかし再演は大好きな笹本玲奈ちゃんが、念願だったメリーポピンズ役を射止めたということで、それなら見に行こうか、と赴きました。
そして、反省。
ロンドンで見たときに全然英語が聞き取れていなかったことに(涙)
映画版とは登場人物も物語もキャラクター設定も微妙に違うのです。
なので「もしやこっちの方が原作に近いのでは」と思って、見終わった後、大慌てで原作の最初の2冊を読みました。
そして、理解。
舞台のミュージカル版は原作とも映画とも違うメリー・ポピンズの物語なのです。
そして思っていた以上にバンクス氏の物語でした。
この映画が大好きなわたしにとっては、
それがとても琴線に響いて、初演を見なかったことを後悔しました。
とりあえず上記の映画がお好きな方にはぜひ舞台ミュージカル版も見ていただきたいです。
Mr.BanksがSavingされることに心がぎゅっとします。
そして、舞台版ミュージカルが好きでこの映画を見ていない方は、ぜひ映画もご覧になってください。
きっと原作者のP.L.トラヴァースはこのミュージカル版も好きではなかったと思うのですが、少なくともディズニーアニメ版よりは溜飲が下がったんじゃないでしょうか。
2005年にロンドンで見たときには演出や振付も全くチェックしていなかったのですが、共同演出と振付がマシュー・ボーンじゃないですか!
そりゃあ「Jolly Holiday」も「Step In Time」も見事なダンスシーンになっているはずです!
さらにやっぱりセットがいい。
とりわけバンクス氏が勤務している銀行の、ある視点から見上げたような形で作られたセットが素晴らしかったです。
こういうセットがまだまだ日本では生み出せないのだよなあとしみじみしました。
そしてそのマシュー・ボーンの振付を活き活きと踊る笹本玲奈メリー・ポピンズがとても魅力的でした。
彼女の持つ甘い雰囲気は本来メリー・ポピンズ向きではないでしょう。
けれど映画のように「指をはじくと部屋が片付く」のをサクッと見せて、子どもたちを夢中にさせるシーンが作れない限り、メリー・ポピンズが今までのナニーと違って「若くてかわいい」ことは子どもに親しみを持たせるという点で納得しやすくもありました。
あとミス・アンドリューに「小娘」扱いされるのも自然に見られて、指先まで動きにこだわった彼女のメリー・ポピンズ、わたしは大好きです。
大貫くんのバートはダンスはさすがでしたが、やはりもう少し歌をがんばってほしかったかな。特にバートの曲は映画版からの名曲が多いので、難しいところですね。
2005年ロンドンでこの作品を見たときのわたしの一番のがっかり点は、最初のメリー・ポピンズの登場の仕方でした。そして2番目が、公園でバートが書く絵が普通に紙に書かれて壁にぶら下げられていることでした。
2番目は舞台の性質上どうしようもないですが、やはり最初のメリー・ポピンズの登場は東風に吹かれてやってきてほしいなと思います。
子どもも多い客席だったからこそ、最初で理屈なく「うわーっ」と思わせることは大事だと思うんですよね。
正直ロンドンで見たときは最後のシーンも、やっとここでか、みたいな気持ちになってしまったので、役者とスタッフの負担が増えてしまうことはものすごく理解できるのですが、もし演出変更が可能なら、次の再演時にはぜひとも「東風に吹かれてやってくるメリー・ポピンズ」を最初にがっと魅せてほしいな、と思います。
そうすれば「西風に吹かれて帰るメリー・ポピンズ」も、もっともっと際立つような気がするのです。
舞台版の脚本で興味深かった点は、バンクス氏の仕事の仕方の描き方とその育てられ方から、家族との(身体的にも)コミュニケーションを取るのが難しいことがわかるところでした。
そしてバンクス一家で一番問題なのは「ジョージ・バンクスだ」とはっきり示されている点でした。
ただそれをあべこべに「子どもが親に歩みよることも必要」的なセリフがあったのには、ちょっとモヤっとしました。
確かにバンクス氏には同情すべき点がたくさんある。
そして今と違って、結婚して子どもを持って家庭を作ってこそ男、みたいな部分も多いにあったでしょう。
けれども個人的には、子どもが親をケアする、のはちょっとひっかかってしまうのですよね。
「Saving Mr.Banks」(邦題:ウォルト・ディズニーの約束)で描かれているトラヴァースの父親は、社会になじめなくて大人になれない人だったけれど、少なくとも子どもへの愛情はたっぷり持っていて、だからトラヴァースがメリー・ポピンズを生み出すほどに、父親を愛して救ってあげたかったと思うのは納得できるのですが。
あとウィニフレッドの元女優設定はいるんでしょうか。
よき妻、母であらねば、みたいな感じもモヤっとポイントでした。
そう思うとこのミュージカル版はとてもよくできているけれど、ディズニー映画版はそういうところのストレスもないのがさすがだなと改めて思います。
特に「Let's Go Fly A Kite」の多幸感の中で、家族の知らぬ間にメリー・ポピンズが旅立つところがまた映画版の心憎いところ。
ただ、本当に演出、セット、振付は一流だし、普通にマジックのような小道具トリックを混ぜてくるので、大人から子どもまで楽しめる良いパフォーミングアートであることは確かです。
実はロンドンの時も上の方の席で見たので、次回もし再演があればぜひ1階席でも見てみたいなと思います。
あ、蛇足ですが、今回グッズよかったですね。
「A Spoonful of Sugar」はメリー・ポピンズファンなら買っちゃいますよね、ね!
タオルやTシャツも、このスプーンのメリーポピンズ柄があったら買ったんですが。
そしてコスチューム巾着をハンドタオルでほしかった。
そんなわけで、いろいろパワーアップしての再演、今からお待ちしています!