こんなことを思ったり。ぼちぼちかんげき。

アラフォー負け犬がビンボーと戦いながら、観劇したものなんかを感激しながら記録。

役替わりで見える二面性@National Theatre Live at home「フランケンシュタイン」

このままでいくと恐らく日本で演劇が見られる日が来るは、早くても7月以降だと思われます。

そんなわけで今現在、わたしの2020年度最後の観劇は2月22日梅田芸術劇場で公演されたミュージカル「フランケンシュタイン」です。

残念ながらわたしはこの作品をあまり楽しむことができず、これが現在最後の観劇となっている事実をとても哀しく思っていました。

 

ところでみなさんは「フランケンシュタイン」と聞くと、想像されるのはなんですか?

わたしはこれ↓↓↓でした。

TVアニメ 怪物くん DVD-BOX 下巻<最終巻>

しかしミュージカルを見るとフランケンシュタインはなんだか傲慢でエラソーで不器用な科学者で、親友となった人物がこの科学者の手によって「怪物くん」のフランケンみたいなものにされるのです。

さらにこの怪物がなぜか「北極」に行きたいと歌う。

原作を知らなかったために、頭にハテナマークが飛び交いました。

そこでWikipedia先生に頼り、最低限の情報を得たのでした。

 

さて新型インフルエンザの流行で、世界の主だった劇場は閉鎖し、代わりに4月上旬から寄付を目的とした過去上演作品のコンテンツ配信がはじまりました。

 

見たい作品はたくさんあったのですが、何しろ「英語」のみの上演。

とりあえず見るのはミュージカルだけにしていた頃、2015年に英国ナショナル・シアターで制作されたお芝居「フランケンシュタイン」が1週間限定配信されるよ、という情報が入ってきました。

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数年前まで英国留学していた友人曰く、チケット瞬殺した人気公演だったそう。

理由は、ドラマ「シャーロック」でシャーロック・ホームズを演じたベネディクト・カンバーバッチとドラマ「エレメンタリーホームズ&ワトソン in NY」でシャーロック・ホームズを演じたジョニー・リー・ミラーが、交代でフランケンシュタイン博士と彼が生みだした怪物を演じるから、でした。


Official Trailer | Frankenstein w Benedict Cumberbatch & Jonny Lee Miller | National Theatre at Home

ついでに演出はダニー・ボイルです。

ええ、あの「トレインスポッティング」の!あの「ザ・ビーチ」の!

(「スラムドッグ・ミリオネア」の方が有名なのはわかっていますが、わたしはこの2作が好きだったんだよ)

 

とそんなわけでお分かりのように、わたしはカンバーバッチさまに特に思入れも知識もありません。たまたま紹介されていて面白そうと思ってみた映画「イミテーション・ゲーム」の主役を演じていた姿しか知りません。

 

stok0101.hatenablog.com

ただミュージカル「フランケンシュタイン」が分からなかった理由がこれでわかるかも、と思ったのがこの英語の芝居を見ようと思った理由かもしれません。

運よく日本はゴールデンウイークに入るところでした。

今のところ会社員のため、現時点ではありがたいことに収入の心配はありません。

時間にも気持ちにもゆとりができたことに感謝したいと思います。

 

まず最初に配信がはじまったカンバーバッチが怪物バージョン。

冒頭10分、誕生して歩きだすまでの言葉のないカンバーバッチの芝居と身体能力に圧倒され、気づいたら2時間が経過してしまいました。

 

そして

これは何が何でも逆バージョンも見たい!

と終わった瞬間に思いました。

翌日に見たジョニー・リー・ミラー怪物バージョン。

昨晩見た印象と全く違う「何か」がそこにはありました。

そしてその答えを探すべく、両バージョンをもう一度見直していたら、ゴールデンウイークは明けていきました。

 

ここまでくると原作に手を出すのが正しいかと思うのですが、逆に手を出したのがこちら。

 劇中にも登場するミルトンの「失楽園」といい、原作の「フランケンシュタイン」は名著も多く登場し、その知識も必要なのですが、その辺もこの番組では補ってくれます。

長い前書きになりましたが、この番組を見たうえでの映像の感想を残したいと思います。

 

「怪物」と表記するのが分かりやすいとは思うのですが、劇中では「creature」と表現されています。

WEBの辞書でひいてみると

1.生き物、動物、人間
2.不快な[恐ろしい]生き物
3.創造された人[もの]
4.〔あるタイプの〕人間
5.〔他の人やものに〕支配されている[従属する]人

と出てきました。ちなみに発音は[US] kri't∫эr  [UK] kri':t∫э。

英国での上演ですので「クリーチャ」とカタカナ表記するのが正しいのかもしれませんが、どうもわたしの耳には「クリチャー」と聞こえるので、「クリチャー」と表記します。

「クリチャー」は上記5つの意味の中では「2.不快な[恐ろしい]生き物」と「3.創造された人[もの]」の両方を示していると思われますが、「怪物」ではないと思うからです。

そして「怪物ではない」ことがこの作品の、そしてこのお芝居の悲しいところであり、胸をうつところなのです。

 

両バージョンを見てみると、原作のイメージにはミラークリチャー、カンバーバッチフランケンシュタインの方が近いのかなと思いました。

カンバーバッチの終始子犬のようなあどけなさを残すクリチャーに対し、ミラーのクリチャーは成長します。だからこそ「なぜ自分がこのような生を受けたのか」を考え、苦しみます。

一方でカンバーバッチフランケンシュタインの感情の欠如を感じるからこそ、クリチャーとフランケンシュタイン、一体どちらが「人間」なのか、ということを考えさせてしまうのです。

おそらくこれは原作でも追求したい点であったような気がします。

カンバーバッチフランケンシュタインは、クリチャーに対する残酷さがナチュラルというか、こういう人だよね感が強いのです。

他者とのコミュニケーション不全、他人に対する想像力の欠如。そしてそれらを持ち合わせなかったけれども、美しい容姿と高いIQ、さらに金銭的に恵まれた家庭環境を授かり、より傲慢に独りよがりになったがゆえの「神の領域」への挑戦。

美意識の高さから自分の生み出したクリチャーの醜さを受け付けられなかったのも納得して見られます。

カンバーバッチフランケンシュタインはミラークリチャーを理解することは一切ないけれど、ミラークリチャーは最後にはカンバーバッチフランケンシュタインを理解し、許し、「Kill me」ではなく「Destroy me」とフランケンシュタインに呼び掛けたように思えるのが、哀しい。

しかしミラーがフランケンシュタインを演じると、科学者としての自分とその良心のなかでの迷いが見えるのがこの役替わりの面白いところでした。

上記の番組の解説で「科学者としての葛藤」もふれられましたが、それが見えるのはミラーの方のフランケンシュタインなのです。

クリチャーが「花嫁」を作るようにフランケンシュタインに要求するシーン。

なぜクリチャーが「花嫁」を希望したかについても、二人の演じ方によっても受け取るものは違いますし、ミルトンの「失楽園」がどのくらいクリチャーに影響を及ぼしたかは芝居だけでは見えづらい点なので、その辺を加味するかどうかでも変わってきます。

ただその「花嫁」をフランケンシュタインが作る動機もその後破壊してしまう理由も、二人の演技でわたしが受け取ったものは全く違いました。

カンバーバッチフランケンシュタインの動機は「より完璧な作品を作りたい」という欲望。そして破壊するのは、自分でさえ「愛」がわからないのに、クリチャーがそれを理解し手に入れ、大切に育てようとすることへの嫉妬。

ラーフランケンシュタインの動機はクリチャーへの恐れ。破壊するのは、もし本当に二人が結ばれたならその先にできてしまう「未来」、自分が作り出してしまったものへの恐怖。

その二人のフランケンシュタインが合わさったものが原作が描いているフランケンシュタインなのだとしたら、本当にいろいろなことが複合された作品なのだなと思いました。

もちろん演劇として複合したフランケンシュタインを見せることは可能です。

でもこの一方ずつを切り取って役替わりで見せたことにより、原作に潜んでいる多面性を分かりやすく引き出しているように感じます。

どちらのパターンでもフランケンシュタインが「クリチャーを産み出したことへの責務」を放棄しているのは確かで、上記番組でもこの状況が「ネグレクト」にも思えると紹介されていました。そういう視点で見たとき「ネグレクト」へ至る「親」の在り方もさまざまなパターンがあるんだろうな、ということも二人が演じることで想像が膨らみます。

もちろん約2時間の芝居ですので、原作どおりとはいきません。それでも原作で見せたかったものはきちんと見せられていた、それが一番この舞台の素晴らしかったところではないだろうかと思います。

 

ところで現在のこの状況の中でこの作品映像を見て、一番ゾッとしたのがフランケンシュタインがなぜクリチャーを作ったか、の理由の一つとして「School was so boring!」と言われたシーンでした。(このセリフも、ミラーフランケンシュタインバージョンではすごく耳に残ったのに、カンバーバッチフランケンシュタインバージョンではさらりと流れたのがおもしろかったです)

退屈がゆえに産まれてくるものが、この先の未来にあるとしたら、それはどんなものなのか、この作品を見ていると少し怖いような気分にもなったのでした。

宝塚ファンに40の質問

恐らくこのブログを読んでくださっている奇特な皆さまも、一枚また一枚と紙切れになっていくチケットを見ながら、仕方ない気持ちとやるせない悲しみを抱えていらっしゃることかと思います。

エンターテインメントの先行きを考えると暗澹たる気持ちにしかなれないですが、今は出演者、スタッフの皆さまの健康をただ祈りたいと思います。

そんな中、表題のような質問をakeneさんが作成してくださっていました。

note.com

わたしが「宝塚ファン」か、というと、これがyesともnoとも言い難いのですが、こういう「質問」自体が懐かしく、わたしが読んでて楽しかったので、広がればいいなという思いで答えてみます。

 

宝塚ファンに40の質問(作成者:akane)
1、 お名前、年齢、大体のお住まいを教えてください
おといーぬ、もうすぐアラフィフ、大阪在住


2、 観劇歴は?
89年〜92年くらいまではガッツリ見て、その後4年くらいかけてフェードアウト。

2008年からまた細々と見始めました。


3、 初めて観た舞台は?映像でもOK。

関西圏ですのでその昔「花の指定席」という宝塚歌劇の舞台が月に一度放映されていまして、それを偶然見た最初は、月組の「南の哀愁」になります。

今調べてみたら1988年の公演なんですね。

この時は本当になんの興味もわかなかったのですが、とあるシーンだけ覚えていて、それが天海祐希さんだったというのを後で知りました。

剣幸さんの帽子を持って引っ込む、だけの役なんですけど、印象に残ったのが天海祐希のすごさでしょうか。

次に見たのが運命の1989年3月18日「ムッシュ・ド・巴里」、杜けあきさんトップお披露目公演でした。もちろん初観劇はその年の8月「ベルサイユのばらアンドレとオスカル編~」ここから杜さんが卒業されるまでの4年間は「激しく宝塚ファン」でした。


4、 宝塚を好きなったきかっけは?

あ、もう上に書いちゃってる(;'∀')

ムッシュ・ド・巴里」で杜さんに一目ぼれです。


5、 年間どのくらい宝塚を見ますか?

去年、3回しか行ってない・・・。

たぶん3回~5回くらいだと思います。


6、 御贔屓の組は?

そんなわけで現在はありません。

今やや贔屓にしようと思っているのは花組なんですが、「はいからさん」が・・・涙

あとやっぱり雪組は永遠に好きです。


7、 各組の印象を教えてください

花組→ショーの組。華やかでオーラがある。

月組→形態が自由自在。対応力があるのかな。

雪組→芝居にきっちり取り組んでいる。真面目。

星組→ノリがよく、元気。

宙組→いろいろ自由そう。


8、 御贔屓の男役さんは?

杜けあきさま(別格)

大浦みずきさん、安寿ミラさん、麻路さきさん、霧矢大夢さん、柚希礼音さん

「映像、または写真集を買った」を基準にしてみました。

最近は柚香光くんが気になります。

あと割と若手のころから彩風咲奈ちゃんが好きでした。

好きな男役の見た目がさきちゃんです。


9、 御贔屓の娘役さんは?

夢咲ねねちゃん

はじめて夢中になった娘役でした。

あのスタイルが神すぎる。

 

昔なら紫ともさん、白城あやかさんが大好きでしたね。

あとわたしの中の永遠の美少女は麻乃佳世さんです。

そんなわけで華優希さんも好きです。


10、 おすすめの下級生はいますか?

これがね、本当、ファンじゃないなあと思う一番の理由なんですよ。

下級生が全くわからない・・・。


11、 知名度は高くなくても、この生徒さんは見るべき!という方のプレゼンお願いします。

同上です・・・。

知名度高いと思うんですけど、現在いる生徒さんで若い頃から好きだったのが、天寿光希さん。とにかくセリフ回しと、演劇的な動き方がうまい!個人的には一番杜さんに近い存在です。


12、 好きなお芝居は?

華麗なるギャツビー

原作はあるけれど宝塚オリジナルという点では、これを超える作品に宝塚でまだ出会えていないかな。

ニックの引っ越しからオープニングへの流れ、ギャツビーとデイジーの過去についてジョーダンとニックが語るシーンからアイスキャッスルへの転換は今見てもゾクゾクします。

ゴルフコンペのシーンをショーにしてくる作りもすごいし、その中に大事な芝居を入れ込みつつ、全体なコミカルさを持っているところにも惚れ惚れします。

一つも無駄なシーンがなく、作品自体にリズムがある。

本当に、二幕ものではなく、初演通りの再演を希望します。

比較的最近上演されたものでは「幕末太陽傳」。

この和製ミュージカルの作り方が素晴らしかったですね。

お気づきのようにストーリーより演出派、ビジュアル派です。

そして最も優れている演出はやっぱり「グランドホテル」ですね。

これはトミー・チューン版をフルバージョンを一度上演してほしいです。宝塚でなくてもいいから。


13、 好きなショーは?

生で見ていないけれど「メモワール・ド・パリ」。

もーおしゃれ!パッツィの館の好きだけど、それ以上にカフェのシーンがセットも振付も素敵すぎてしびれます。

ショーはダンスと振付が素晴らしければそれでいい派なので「ザ・フラッシュ」がめちゃくちゃ好きでした。

ロマンチックレビューシリーズは「ナルシス・ノワール」派。

比較的最近見てあがったショーは「ロック・オン」「ガトー・ボニート」くらいですかねえ。

あと「ノバ・ボサ・ノバ」はショーのソウルの基本だと思うので、定期的に再演してくれていいですよ。

 

そうそう和ものショーは「花幻抄」。

これね、本当に今のファンの方にも見てほしいんですよ。

いえ、素晴らしいよ、という押し付けじゃなくてね、「宝塚歌劇団はかつてこんな衣装にお金かけられたんだよ」という証拠に。

もうね、衣装と鬘が半端ないんですよ。え、日本物の鬘ってこんなバリエーションあるの?ってなりますから、ぜひ!


14、 好きなデュエットダンスは?

「1990年TMP音楽祭」大浦みずきさん&毬藻えりさんの「ニューヨーク・ニューヨーク」。

なぜ好きなのか全然わからないんですけど、すごく好きでこれが踊りたくて社交ダンスはじめたようなものです。

印象的だったのは「宝塚レビュー’90」、日向薫さん&毬藻えりさんの「レコード盤の上のデュエットダンス」。今や「レコード盤」すらもノスタルジックなアイテムになりましたね(;'∀')

デュエットダンスって美しいな、と思ったのは霧矢大夢さん&蒼乃夕妃さんの「スカーレット・ピンパーネル」フィナーレかな。

二人の身体能力の高さが本当にすばらしいデュエットダンスでした。


15、 歴代で一番好きだったトップコンビは?

上記デュエットダンスから、きりまり。

はじめて「コンビ萌え」というのを知りました。


16、 今まで一番感動した場面は?

感動って難しいですね。

ネット辞書をググってみると一番多かった答えが

「深い感銘を受けて強く心を動かされること」

 

必死で記憶をたどったのですけれど、この言葉自体だとやっぱり前述した「華麗なるギャツビー」のニックとジョーダンの電話からアイスキャッスルへの転換、なんです。

なんてかっこういいんだ、こんなかっこういい舞台を作る人になりたい、と思ったので。

ただこの質問の意義から考えると、たぶん、「泣いたシーン」だと思うんですよね。

はじめて泣いたのは「ヴァレンチノ」のラスト、若かりしルディがジューンにオレンジの枝を渡すところ、ですかね。

あと「ME & MY GIRL」のランベス・ウォークは泣く!何度見ても泣く!


17、 今まで一番笑った場面は?

いろいろあるけど「メランコリック・ジゴロ」(初演)のティーナがショッピングしたものを一つ一つ取り上げられて泣いちゃうシーンかな。

華陽子ちゃんが天才的にかわいくてキュンキュンしました。


18、 印象に残ったセリフは?

これ何度も書いてるのであれなんですけれど、まあやっぱりこれを超えるセリフには出会わないので書きます。

「あなたは終わったものにこだわりすぎるわ。女はそんなロマンチストじゃない」

by華麗なるギャツビー ジョーダン・ベイカーより


19、 宝塚の楽曲で好きなものは?

和ものの曲が好きです。

たまゆらの記、大江山花伝の主題歌

紫子「花吹雪」

ショーだと「花夢幻」とか、言葉がキレイなので。


20、 好きだった登場人物は?(男役)

炎のボレロ「ジェラール・クレマン」一択で(笑)

わたしの中で、唯一ロマンのある役がこれなんです。


21、 好きだった登場人物は?(娘役)

わたし、昔から女性の登場人物の方が好きでして、こっちはいっぱいあります。

紫子/お香、炎のボレロ/モニカ、秋・・・冬への前奏曲/レナーテ、華麗なるギャツビー/ジョーダン・ベイカー、ヴァレンチノ/ジューン・マシス、エリザベート/エリザベートロミオとジュリエット/キャピュレット夫人

まだまだあるのに、思い出せない!

思い出したらまた足します!


22、 ダンスが上手い!と思うのは?

今は水美舞斗さん。


23、 歌が上手い!と思うのは?

望海風斗&真彩希帆コンビ。

音程、リズムの確かさ、音域の広さ、聞き取りやすさという点では涼風真世さんを超える人はなかなかいないと思っています。

あと永遠の歌姫は峰丘奈知さん。


24、 このコンビ(またはペア)が好き!

これってヤンミキとか、まさみり、とかの枠でしょうか。

あんまりこういう萌えないんだよなあ。


25、 あなたの中の永遠のスターは?

ここは大浦みずきさんを書いておくべきな気がするので、そうします。


26、 タカスぺで見たいと思う演出はありますか?

1987年「TMP音楽祭」ラ・シャンソン みたいにしてほしい。

この映像を見たとき衝撃だったんですよ!

オケはオケボックス内で大きな舞台めいっぱい使って、4組選抜スターが普通に「ショー」をやっているんです。

しかもかなりおしゃれなレビューで、「贅沢なショー」感がすごかったんです。

実はわたし、「音楽を聴くだけ」という行為が苦手なんです。

だからダンスと組み合わさるショーが好きなんです。

それでも昔のTMP音楽祭はいろんな国の音楽とか知られて、それなり楽しかったのですが、現在のタカスペって通年全作品宝塚見てないとあんまりおもしろくないですよね。

その辺が残念だなあと思います。

 

27、 あなたの好きな演出家は?

小池修一郎先生。

仕方ないよね。小池先生の「華麗なるギャツビー」で「演出家になりたい」なんて大それた夢描いて、30歳手前まで人生突っ走っちゃったんだもん(;'∀')

大野拓史先生、小柳奈穂子先生も好きです。

あとテンプレといわれようと、かたくなに娘役ダンスシーン作ってくれる中村一徳先生が好きです。中村一徳先生のショーを大野先生がビジュアル担当してくれたら完璧なのになあ。


28、 この方の退団はもったいなかった…!と思う方は?

これね、昔はよく思ったんですよ。

でもね、大人になった今、生徒さんも節目節目に考えることはあるだろうと。

だからその時の決断は大事にしたいなと思うのです。

まあ無念の退団もあるだろうから、それは厳しいなとは思いますが。


29、 買ってよかった!と思う宝塚のグッズはありますか?こんなのあったらいいのにな~と思うのは?

水夏希さんのグッズが好きで、今もハンドタオル、愛用していますね。

水夏希さんを知る前にグッズ見て、普通に好みだと思って買ったくらいですからね。

だから在庫の再販をお願いします。後から映像でファンになった人とかも欲しいと思ったりすると思うんですよ。

未だに大事にしているのは初演「ロミオ&ジュリエット」の時のペアマグカップ

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この時のグッズは全体にセンスよかったですね。どなたが担当していたんだろう。


30、 宝塚を見たことない人にすすめるとしたらどのお芝居orショー?

これは「All for One」一択で。

ブログにも書きましたが、定期的に組変えて再演したらいいと思います。

毎夏休み、これでいいと思います。

ダルタニアンと三銃士、そしてベルナルドの誰かには惹かれると思うので。


31、 あなたが演出家だったら、どんな舞台を書きたいですか?(芝居、レビューどちらでも)

これは断然ショー。

昔はUAさんの「AMETORA」というアルバムを丸っと使って作りたかったのですが、今なら椎名林檎さんに楽曲お願いして、バーレスクっぽいショー作りたいですね。


32、 宝塚で舞台化してほしい作品はありますか?

今や2.5次元ミュージカルとかもあって、きれいな男の子も多いので、絶対宝塚、っていうのが難しいですよね。

でも木原敏江さんの「夢幻花伝」は宝塚でやってほしいなあと思います。

昔ほどでなくなったとはいえ、日本物の訓練を受けていること、華奢な体形の人が多い、という点で一番宝塚が再現にふさわしいのでは、と思っています。


33、 宝塚ファンとして人に自慢したいエピソードは?

うーん、今の宝塚大劇場こけら落としを見たよ、くらいですかね。

こけら落とし公演ではなくて、本当に劇場のこけら落としです。

当時「歌劇」かなんかで抽選があって、当選したような気がします。

杜ちゃんが「祝いの舞」的なものを踊られたので応募したのですが、本当にセリとかだけあがってぐるぐる回ったり、舞台機構の紹介だったの、今となっては面白かったです。


34、 劇場(どこでもOK)の中、周辺で美味しい食べ物や店はありますか?

これは「バー・ジュニパーベリー」と答えておかないといけないでしょう(笑)

単にわたしの行きつけのバーなんですけどね。

でも「新・宝塚ホテル」内にはバーがないらしいので、ぜひ!

お酒もチョコレートもおいしく、そして優しいマスターもステキなので、おすすめです!

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(チョコレートはバー専用ブランド、アトリエAirgeadさんのもの)
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(わがまま言って作ってもらったカクテル「月組」)
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(わがまま行って作ってもらったカクテル「シシィ」)


35、 宝塚を好きになって良かったことは?

良かったか悪かったか、死ぬときにしかわからないんですけど、ひと時でも「演劇」という夢を追う時期を持てたことは貴重だと思っています。

 

36、 「宝塚って見たことないんですよね。面白いんですか?」と聞かれたときの答えは?

あう、あわないがあるから、もし機会があったら見てみて。

で見るならその作品でいいか確認するから教えて。

と言ってます。


37、 観劇の感想をSNSなどで書いていますか?または人の感想を読みますか?おすすめのサイトなどあれば教えてください。

書きますね、つぶやきますね。もはやそれするためにブログもSNSもやってるので。

なのに人の感想はほぼ読みません(;'∀')

それでもお気に入りサイトあったんですが、今更新されなくなってしまいましたね、残念。


38、 宝塚以外にも好きな舞台はありますか?

えーと宝塚以外の方が本拠地でして、ジャンルでいうなら「ミュージカル」と「ストレートプレイ」が、パフォーミングアートの中でも好きです。

昔はブロードウェイやウエストエンドまで行ってみていたのですが、さすがに身持ちを崩したので、今は大阪で程よいおつきあいを心掛けております。


39、 あなたにとっての宝塚とは?

全てのはじまり。


40、 宝塚歌劇団への愛を叫んでください

そこにいてくれるだけで重要だったんだと今更ながら気づきました。

変わらずいつまでもありつづけてくれますように、祈りを込めて。

それ以上でも以下でもなく@映画版「CATS」

ミュージカル「CATS」というのは、不思議な演目でして、ミュージカルはそれほどでもないけれど「CATS」だけは好き、とか、「とにかくCATSファン」という方が多く存在する作品なのです。

一方でミュージカルオタク層の中には「CATSとライオンキング、どちらがマシ?」という議論が成り立つ、「嫌いじゃないけど、特に好きでもない。ちょっとつまらない」と感じている人も多い作品だったりもします。

ちなみに、わたしは後者。

昔、仲間内で「CATS派かライオンキング派か」を問うたときには、10人くらい中、わたしともう1人だけが「ライオンキング派」で、残り8人ほどは「CATSのがまだマシ」という回答を得たことがあります。

「CATS」派の意見としては、とにかく「曲が好き」。

これは反論するところもありません。

アンドリュー・ロイドウェバー最盛期の曲たちは、とにかく名曲ぞろい。

代表曲「メモリー」はミュージカルを知らなくても、この曲だけは知っているという人が多いことでしょう。


Cats Musical - Memory

 

さてそんな「CATS」が流行りにのっかり「ミュージカル映画」になりました。

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昨年も軒並みディズニーミュージカルが映画化されていたのですが、タイミングを逃してまだ見ないままなのに、この映画版「CATS」を見に行ったのにはわけがあります。

それは・・・あまりにも酷評されていたから!

もともと先行ヴィジュアルの「白猫」がかわいくてダンスもうまいなあ、と心惹かれていたのに、まさかの酷評で逆に「いったいどんな映画になっているのか」と興味シンシン!


Cats – Official Trailer (Universal Pictures) HD

 

そして見た感想は一言でした。

「期待以上でもなく期待以下でもない」

つまり舞台の「CATS」を見たときとほぼ同じ感想を抱きました。

 

宗教的だという意見も見かけたのですが、とりわけそれが舞台版より強調されているとも思いませんでした。

原作はT・Sエリオットの詩集『キャッツ - ポッサムおじさんの猫とつき合う法』(The Old Possum's Book of Practical Cats)。

 

キャッツ (ちくま文庫)

キャッツ (ちくま文庫)

 

 

読んだことがないので、どうなっているのか分かりませんが、詩集というところからも、おそらくストーリーらしいストーリーはないと推測しています。

 

ミュージカルは一匹ずつ猫が紹介されていって、最後に「ジェリクルキャッツ」が選ばれる、だけの物語です。

そして、それを歌とダンスで見せるショーです。

この「ジェリクルキャッツ」が一匹だけ選ばれ、転生できる、というところが宗教的に感じられる点なのだと思うのですが、それは映画版に限ったことではありません。

ただ映画では、白猫「ヴィクトリア」が主人公&ナビゲーター的に登場します。

野良猫になりたてのヴィクトリアに、周りの野良猫たちが「ジェリクルキャッツとは何ぞや」というところをセリフで説明していくのです。

この演出が「ジェリクルキャッツに選ばれるためにがんばる」という構図が強調されて、より宗教的に感じられたのかなと思います。

そして酷評の要因のもう1つ。

人間が演じるネコがグロすぎる、という意見。

これはわたしは「映画の方がアリ」と思いました。この辺は好みの問題ですね。

わたしが「CATS」より「ライオンキング」派の要因がここなんです。

わたしは「舞台版CATSの衣装とメイク、つまりヴィジュアルがダサい」と感じてしまうのです。

映画版CATSのヴィジュアルがとくべつ優れているとは思いませんが、わたしにとって少なくとも舞台版よりマシ。

特に上記の「メモリー」を歌うグリザベラのヴィジュアルが映画の方が断然よかったです。

ソバージュのカツラはないし、毛皮のコートはあったけれど、それよりも毛並みのボソボソさが現在のグリザベラを物語っていて好きでした。

さらに演じているジェニファー・ハドソンがいい!

さすがミュージカル映画「ドリーム・ガールズ」で鮮烈なデビューをしただけあります。


Jennifer Hudson - And I Am Telling You I'm Not Going

 

舞台版は20年以上も昔に、大阪とロンドンで計3度くらい見たことがあるのですが、グリザベラ役は全員「かなりおばさん感」があった記憶なんです。

でもジェニファー・ハドソンは「いい女感」がまだ残っていて若く見えた。

グリザベラの「一瞬の栄光」と現状をイメージできたからこそ、「メモリー」の歌詞が沁みました。

あのボサボサで抜けおちている部分も見えるカラダに「touch me」と訴えられる切なさは迫るものがありました。

 

あと映画版の方がよかったのは、長老猫オールドデュトロノミーがジュディ・デンチが演じていた点です。

舞台では男性が演じているのしか見たことがなかったので、「そうだよね、オールドデュトロノミー、別にメスだっていいんだ」と新たな発見。

ジュディ・デンチの圧倒的な重厚感、運命の支配者感がすごくマッチしていました。

 

ところでわたしが予告から気になっていた白猫・ヴィクトリア。

演じているのはフランチェスカ・ヘイワードさんという英国ロイヤルバレエ団のプリンシパルダンサーだそうです。

そりゃあもう動きがいちいちキレイ✨

ゆったりとしたデュエット・ダンスシーンなんて夢見てるのかってほど美しかったので、映画版に言いたいことは一つだけです。

 

もっとダンスをそのまま見せてほしかった・・・!

 

せっかく「ダンスでも魅せる数少ないウエストエンドミュージカル」なので、ダンスシーンをいっぱい、これでもかってくらい見たかったんです。

むしろ、そこだけが期待だったのに、見事に裏切られました。

 

それでも劇場猫ガスをイアン・マッケランが演じる贅沢感は期待以上。

 I have played in my time every possible part

 ってイアン・マッケランが歌うんですよ!なんちゅうホンモノ感!

(↑CATSの歌の中で「劇場猫ガス」が一番好きなので、大興奮!)

 

そんなわけで舞台版も映画版もたいくつなところはたいくつだし、好きな曲、好きな猫(推しネコ笑)のシーンは楽しい作品でした。

そして個人的に冒頭のピカデリーサーカス「エロスの像」に群がる野良猫たちのシーンに爆笑。

まさかの大ロングラン作品「The Mousetrap(ねずみとり)」の看板が野良猫たちとともに大きく映し出されるとは!

 

ということで、推しネコ、推し曲がある方は一回見といても損はないと思います。

描きたかったものの違い@劇団四季「ノートルダムの鐘」

1/13(月・祝)13:30~ 京都劇場

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スタッフ・キャスト表はこちら。

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わたしがロンドンで3度、来日公演で1度見ているフランス・ミュージカル「ノートルダム・ド・パリ」とは原作は同じでも違う作品です。

 

Notre Dame de Paris [DVD] [Import]

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  • 出版社/メーカー: Sony Music France
  • メディア: DVD
 

 

英語タイトルは「Hunchback of Notre dame」となっているので、日本語訳として有名だった「ノートルダムのせむし男」が英語になっている感じです。

 

 アラン・メンケンが作曲しているので、ディズニーアニメ版「ノートルダムの鐘」をミュージカル化したのかと思っていたら、一部同じ曲は使っていても歌詞が違ったり、キャラクター設定や物語の結末も違っていたりするようです。

 

 ストーリーはこんな感じ。

聖職者を目指すフロローの弟は放蕩者で、ジプシーの女性と駆け落ちし、子どもをなす。

死の間際、駆け付けたフロローにその子どもを預けるが、その子どもは醜い容姿をしていたため、フロローは「出来損ない」という意味のカジモドという名前をつけ、ノートルダム大聖堂の鐘楼に閉じ込め、鐘衝きとして育てる。

司教となったフロローは、外の世界は醜いカジモドにとって危険だと言い聞かせ、自分だけが保護するものだと洗脳する。

しかし外の世界への憧れを募らせるカジモドは、ある祭りの晩、大聖堂を飛び出しパリの町に出て、ジプシーの踊り子・エスメラルダと出会う。

エスメラルダのすすめで、とある祭りのイベントに出場したカジモドは、その容姿の醜さを民衆からあざ笑われ、暴力にあい、大聖堂に逃げ帰る。

このような結果になってしまったことに心痛めたエスメラルダはカジモドに謝罪しようと大聖堂へやってくる。心を通わせるカジモドとエスメラルダ。

一方でエスメラルダの踊っている姿を見たフロローも、大聖堂の護衛隊長フィーバスもエスメラルダに惹かれ・・・。

 

正直フランスミュージカル版の「ノートルダム・ド・パリ」を見た時には話しは一切分からず、その演出方法のせいもあって、主要キャラクターのストーリーには何の関心も抱かずに、ただ目の前で繰り広げられる夢のようなパフォーマンスに心奪われていたのです。

来日公演のときにやっと内容を知り、友人の「フロローが粘着質な恋心と宗教心のはざまで揺れ動く気持ちを見るのがいい」というような言葉にそんなもんか、と思った程度でした。

しかしこのスコット・シュワルツ版ミュージカル「ノートルダムの鐘」で描かれるのは、愛憎の紙一重、正常と狂気の紙一重ではなくて、「怪物と人間」の紙一重でした。

演出からして、前段が終わってカジモド役が登場するとその顔に墨を塗り、目の前で醜く変身させるのです。

そして「怪物と人間 どこに違いがあるか」というような問いかけがあります。

その後、起こる事件や駆け引きを通じて「怪物」と「人間」の違いは何なのか、を考えさせるというのは「BAT BOY the musical」を思い出させるなあと思っていたら、なんと「BAT BOY the musical」も同じスコット・シュワルツの演出だったのですね。

 

Bat Boy

Bat Boy

  • アーティスト:Original Cast
  • 出版社/メーカー: RCA Victor Broadway
  • 発売日: 2001/06/05
  • メディア: CD
 

これもたまたまロンドンで見て、日本版も見たのですが、こちらの最期の絶叫「I'm animal」に比べると、「ノートルダムの鐘」は全体に柔らかい印象を受けました。

そしてこの柔らかさ、問題提示の分かりやすさがこの作品を日本で受け入れやすくしたのではないかと個人的には思っています。

石像たちがたびたび登場人物の心情や、ストーリーの展開をセリフで説明してくれるという小劇場演劇っぽい手法を取っていて、取り立てて面白い演出方法ではないのですが、これも「わかりやすい」という意味では効果をなしている気がします。

そして「何をもって人間というのか」というのはスコット・シュワルツ氏の永遠のテーマで、観客に提示したい問題なのだな、というのがよくわかりました。

その辺に好き嫌いはでそうですが、アラン・メンケン&スティーヴン・シュワルツコンビの音楽がとにかくいい!素晴らしい!

フランスミュージカル版「ノートルダム・ド・パリ」の音楽が個人的にあまり好みではなかったというか、あんまり耳に残らなかったのですが、こちらは聞いている途中でも「この曲好き」と思わせる力がありました。まあこれももちろん好みの問題です。

そして好みというと、前述した友人のフロローに対する解釈、これは完全に好みがわかれるところではないでしょうか。

 

この「ノートルダムの鐘」のフロローはどこにも同情する余地のない人物です。

エスメラルダへの恋も恋と言っていいのか。自分の中に湧き出た感情を自分の知っている範囲でしか解釈できず、都合の悪いことは全部相手のせいにする。

あげくの果てに権力行使して、罪人に仕立て上げるさまはゾっとしました。

また演じられた野中万寿夫さんの見た目がグレイヘアで真面目一直線のおじさん、という感じだったので、今まで見た色気を残した「男」としてのフロローとは一線を画していたのも、そう感じた理由かもしれません。

こういう狭い考え方しかできない人物が、絶対的に自分は「正しい」と信じて疑わない人物が、権力を握ることへの恐怖感。

スコット・シュワルツ氏は「何が人間で、何が怪物か」の「問い」をフロローという人物に課したのかもしれません。

その分、エスメラルダへの愛憎で揺れ動く人間らしさ的なものは全く感じることはできず、結果的にエスメラルダそのものが「ファム・ファタール」的な位置づけにならなかったのは残念ではあります。

それでもエスメラルダを演じた松山育恵さんの踊りが美しくて、「エスメラルダの踊りに惹かれた」という部分がものすごく納得できたのがよかったです。フランスミュージカルは分業制ですから、歌のあるエスメラルダは歌手が演じることが多く、その「踊り」を魅せられる部分が少なかったことを思うと、「エスメラルダの踊り」を魅せてこれたのは、原作にも近くすばらしかった点でした。

 

ノートルダム・ド・パリ」と違って、タイトルも「ノートルダムのせむし男」であるこの「ノートルダムの鐘」の主役はカジモドです。

その分エスメラルダやフィーバスのそこそこに込み入った恋愛事情を描かれなかった部分は残念ですが、カジモドの寺元健一郎さんがまたよかった。

元々の素顔もイケメンの部類だとは思うのですが、醜いカジモドを演じているときの方がずっとかわいらしく、愛おしい存在だったのです。

きれいはきたない、きたないはきれい。

カジモドという人物にはそういう部分が求められると思うのですが、そこを軽々クリアしていて、とても惹かれました。

 

フランスミュージカル「ノートルダム・ド・パリ」とこのスコット・シュワルツ版「ノートルダムのせむし男」どっちがいいか、というのは、「オペラ座の怪人」と「ファントム」どっちが好きか、と同じかもしれません。

個人的にはフランスミュージカル「ノートルダム・ド・パリ」の振り付けとパフォーマンスがもたらした幻想的な光景ほどには、この「ノートルダムの鐘」には夢中になれる部分はありませんでしたが、日本ではこちらの方が好きな人が多いのではないかと思いますし、十分に興味深い作品でした。

過ぎた夢と恋の果て@宝塚雪組「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」

1/4(土)15:00~ 宝塚大劇場

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ヌードルス 望海 風斗  
デボラ 真彩 希帆   
マックス 彩風 咲奈  
ジミー 彩凪 翔    
キャロル 朝美 絢  
ファット・モー(壮年期) 奏乃 はると  
コックアイ 真那 春人   

サム 煌羽 レオ
ペギー 愛 すみれ  
チャン・ラオ 天月 翼  

ファット・モー(少年期・青年期) 橘 幸  

ニック 綾 凰華

エヴァ 彩 みちる

パッツィー 縣 千

ドミニク 彩海 せら
 

原作 ハリー・グレイ/セルジオ・レオーネ監督による同名映画
脚本・演出 小池修一郎
作曲・編曲 太田健

原作映画はこちらになります。

 

もちろん、わたしは何の予備知識もなしに見に行きました!←いばることではない・・・。

でも何の予備知識がなくても、ちゃんと「宝塚歌劇」になっています。

そんなあらすじはこちら。

 

1950年代アメリカ・ニューヨーク。

ファット・モーが経営するダイナーにヌードルスがやってくる。

かつて彼はユダヤ系移民でニューヨークのローワーイーストサイドで生きていた。

しかし今は違う名前で田舎で細々と暮らしているという。そんな彼のもとに大金と妙なパーティーの招待状が届いた。その理由を知るべくかつての故郷に戻ってきたのだった。

鍵は彼が捨てた人生にあるかもしれないと、過去を振り返るヌードルス

貧乏でどうしようもなかった少年時代(1920年代)。友情に恋にまっしぐらだった青年時代(1930年代)。

彼の人生が浮き彫りにされていく・・・。

 

観劇後に映画を見たのですが、映画ではこの3つの時代を行き来します。

しかし舞台は1950年代から過去に戻り順にヌードルスの人生を追い、1950年代に戻ってきます。

この辺の編集作業はさすがです。

特に第一部は圧巻。

小池修一郎先生の輸入ミュージカルではない一本モノでここまでショーアップされた作品を見たことがない気がします。

ヒロインのデボラはミュージカルスターになることを足掛かりにいずれ一国の王妃になることを夢見るキャラクターなのですが、彼女がみごとにミュージカルスターになったシーンの見せ方がすばらしい。

さらに「ショースター」であることをこれでもかと見せつけるまあや(真彩希帆)ちゃんの存在感と華と歌唱力がすごい。

ここだけでも圧倒されるのに、その後にマックスたちが経営する潜り酒場(スピークイージー)「クラブ・インフェルノ」の歌姫・キャロルとショーガールズの歌い踊るシーンが続くあたりが、本当に魅せられました。

キャロルは男役であるあーさ(朝美絢さん)が演じているのですが、音域的に女役の方が声が出やすいのか、歌も歌姫のまあやちゃんに劣らず魅せてくれたのです。

宝塚歌劇という特性上、仕方ないこととはいえ、女役が真ん中のショーシーンが続く、というショーをほぼ見ることができないので、この部分だけでも個人的にはすごい、と思うのです。

1930年代アメリカのショービズ界は本当にこんな感じじゃなかったんだろうか、と思わせる空気感を久々に味わいました。

何より一部のすばらしい点は、ヌードルスの恋を主軸に描いたこと。

子どもの頃からデボラが好きで好きでたまらなくて、とある事件をきっかけに刑務所に入ることになり、出所してもデボラへの恋心は募るばかりであることをしっかりと見せたからこそ、一部のラストシーンの「ヴィジュアル」が魅せるのです。

もちろん「男ってなんちゅうバカ!」と心から思いました。

もうほんと腹の底から。

怒りさえわくぐらい。

それでもヌードルスを演じるだいもん(望海風斗さん)の絶唱に「まあ、そんだけ好きだったんだもんな」とちょっとだけ同情できるくらい仕上げてきたことを心から評価したいです。

そんなわけで一部はいい意味でメロドラマに仕上がっているんです。ギャング映画をショーアップされたメロドラマに変換したのは「宝塚歌劇」として正しい選択だとわたしは思っています。

(正直「壬生義士伝」もこのくらいの変換が必要だったと思います)

 

だからその一部に比べると二部が弱かったのが残念と言えば残念。

幕開きのハバナと「サヨナラ禁酒法」のショーアップさ加減はよかったのですが、ここからはヌードルスとマックス、二人の人生の選択とその分かれ道となる大きな事件を描いていくので、どうしても暗い。というか二回目ですけれど「男ってバカ」。

それでもマックスの方は悲哀性をもって「バカ」の説明があったのですが、ヌードルスに関してはどこか中途半端なんです。

まあ映画を見ると一部のヌードルスをああいう風に描いてしまったので仕方ないのですが、そこを信仰心の方に傾けてしまったがゆえの歪みだったのかなあと思います。

とはいえ、アヘン窟での悪夢のシーンの作り方は、これを一本モノにした意味があるなあと感心しましたし、人生の帳尻というか、何が幸せで何が不幸かなんて本当にわからない、という小池先生が描きたかったところは、プログラムを読まずともちゃんと感じることができました。

まあこの辺はわたしが多感な時期に「ヴァレンチノ」と「華麗なるギャツビー」の二本をむさぼるように見たから、というのもあるかもしれません。

ヌードルスの生きる時代 | 雪組公演 『ONCE UPON A TIME IN AMERICA(ワンス アポン ア タイム イン アメリカ)』 | 宝塚歌劇公式ホームページ

(データないのは重々承知ですけれど、スキャンとか方法あったと思うので、初演のポスターも掲載してほしかったです)

 

何より1950年代の再会のシーンとセリフで、ああそう言えば一部の子ども時代にプレゼント持っていたな、と思い出させたところがすごくいいです。

(そして「壬生義士伝」でもこのくらい見せられただろう、と思わずにはいられませんでした。けっこう引きずっているな、わたし)

子ども時代からずっと交差している二人の人生。その選択と結末。どっちも「バカ」です。でも貧民街から生き抜き、大それた夢を必死につかもうとした生きざまは切なくもありました。

あれほど正しく努力を重ねて、駆け上がっていったデボラでさえ、最終的に戻っていくところはそこなのか、と思うと哀しくもありました。

その一部始終を見届けたヌードルスが今、何を思いここを立ち去っていくのか、その余韻が公演を重ねるごとに出てくることに期待します。

 

残念ながら1/4の時点では、まだだいもんの演技はそこまで追いついていなかったです。でも圧巻の歌唱力でその辺をねじ伏せてきました。これがトップスターの力です。

さき(彩風咲奈)ちゃんのマックスも、その二面性を自然に身体の中に取り込むにはまだまだという感じでした。けれどだいもんの横に立ち、張り合える存在感が備わってきていました。そして何より子ども時代がかわいい!だからデボラの選択もなんとなく理解できるのは大事。

デボラのまあやちゃんとキャロルのあーさはいうことなしですね。

華、美しさ、そして歌と魅せるべきところは魅せましたし、デボラのまっすぐな気性が「人を惹きつける」ものであること、そのヒロイン性を高めていました。

 

ジミーのなぎしょ(彩凪翔さん)、よかったです。

まさかなぎしょがここまでキーパーソン的なわき役をしっかり演じるとは。

そして映画を見ると、この役をこう描いたのも面白いです。

そしてニックの綾凰華ちゃんがかわいかった。かわいくていい人の役で、ちゃんと印象に残ってきたあたりが、美貌の若手としてちゃんと活躍してましたし、逆にワルを演じることが板についてきた煌羽レオも、とてもいい仕事をしていました。

 

こういう話ですから、ヌードルス、マックスとつるむコックアイ、パッツィ、ドミニクあたりはすごく美味しいかわりに娘役さんが割を食うのがかわいそうではありました。

エヴァ(映画の字幕ではイブ)もちょろっと登場しただけなので、ペギーあたりは映画くらいに役割分担させてもよかったように思います。まあどう描くかが宝塚歌劇の難しさではあります。

だから総括すると、本当にあの映画をよくぞここまで「宝塚歌劇化」したな、と思うのです。

これはギャングの物語ではなく、1人の男の物語で、その男が愛した女と友人の物語なのです。だから映画の人物像の在り方が好きな方には向かないと思います。

 

映画は映画で映像美がすごかったです。そしてロバート・デニーロが漂わせる雰囲気がめちゃくちゃかっこいい。

でも本当にギャング映画、なのですよね。

ヴァイオレンスはともかくとして、女に対する扱いがひどい。

舞台を見ながらも「男ってバカなの」と何度も思ったのですが、映画は「バカ」なんて柔らかい言葉では済みません。長い映画なのでインターミッションがあるのですが、ここでインターミッションに入られてもどういう気持ちでいたら・・・くらいの怒りしかありませんでした。

(おかげで後半は全くヌードルスが格好よく見えなかった。この犯罪者!みたいな気持ちでいっぱいでした涙)

ここで怒るか、しかけた方が悪いと思うかは人それぞれかもしれないですけれど、今ならかなりの問題になりそうです。

ただ映画に描かれていたマックスとヌードルスの友情というか愛憎というか、そういった複雑な感情から生まれたセリフで、使用してもよかったのにな、という部分はありました。

でも総じて「宝塚歌劇」としてはこれでよかったと思っています。

昔むかしアメリカで、こんなバカな男たちがこんな人生を送りましたよ。

そんなほろ苦さを味わえる作品でした。

2019かんげき振り返り

さて今年もこの時期がやってきてまいりました。

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(↑なんとなくオープニングイメージ画像笑)

毎年ここに書き出すとかかった費用がぼんやり見えてくるので、ちょっと…な気分になるのですが、記録して振り返っておきます。

★12月

新作歌舞伎「風の谷のナウシカ」昼の部、夜の部

★10月

A New Musical「FACTORY GIRLS~私が描く物語~」×2

来日公演「ボディーガード」

劇団☆新幹線「いのうえ歌舞伎《亞》けむりの軍団」

★8月

杜けあき40周年記念コンサート

★7月

柚希礼音ワンマンショー「LEMONADE」

日本版「ピピン

KERA MAP「キネマと恋人」

★6月

宝塚雪組壬生義士伝」「Music Revolution」

シアターコクーン・オンレパートリー「ハムレット

吉崎憲治&岡田敬二「ロマンチックコンサート」

★5月

日本版「キンキーブーツ」再演

 ★4月

宝塚月組夢現無双」「クルンテープ

★3月

キューティー・ブロンド 再演

宝塚花組「CASANOVA」

★2月

ベルサイユのばら45 ×2回

 

合計16本・・・しかもベルばら45とFACTORY GIRLSは2回行き、ナウシカは1本に見えつつ、実質2本分。

そして合間に花詩歌タカラヅカも追いかけ、NT Liveやら、ゲキシネドクロ6本制覇やらやっていたおかげで、完全に予算オーバーしております。

来年もうちょっと引き締めます、はい。

 

とりあえず今年の個人的な各賞。

★作品賞

A New Musical「FACTORY GIRLS~私が描く物語~」

今年、最もわたしを勉強させた作品。

ブログも1番いろいろ調べて書きました。

stok0101.hatenablog.com

 作品賞を「ナウシカ歌舞伎」じゃなくこちらを選んだのは、日本では「まだ誰も知らない作品」だったこと。そしてアメリカでも「ほとんど知られていない作品」でした。

そしてそういう作品を日本で新作として作る、という新たな日本発ミュージカルの可能性を広げたというところもかっています。

でも何よりこの作品が持っているメッセージ性が好きでした。

おかしいと感じることを声に出しておかしいと言い、そのために暴力ではなく、紙とペンと友情で闘うこと、の意味を考えさせてくれる作品でした。

 

★演出賞

新作歌舞伎「風の谷のナウシカ

これ以外ないでしょう!

あのマンガ全7巻を歌舞伎にしたんですよ!

stok0101.hatenablog.com

みごとな歌舞伎とナウシカの融合。

イヤホンガイドのおかげで、どうしてそういう演出にしたのか、歌舞伎の持つ意味合いも一つ一つ知れて、本当すごい、しか言葉がありませんでした。

その上であんなに美しい世界を、カッコいい登場人物たちを息づかせたのが素晴らしいです。

 

脚本賞

KERA MAP「キネマと恋人」

ナウシカ歌舞伎と比較すると面白いのですが、こちらは映画原作を舞台化してるんですよね。

stok0101.hatenablog.com

長さ的に当たり前なんですけれど、ナウシカ歌舞伎はあの原作マンガのどこをピックアップするか、という作業で本当に難しかっただろうなあと思うのです。

しかし序幕は、脚本的には、ほぼほぼアニメ映画とマンガ原作と同じでした。

それはナウシカ歌舞伎にとって重要なことだったので納得の選択でした。

でもそれがあったからこそ、この作品の脚本のすごさを改めて痛感したのです。

「映画」ならではのすごさ、「映画」というエンターテインメントの意義をまざまざと見せつけたすごい原作映画を、舞台化するにあたって「舞台」だから伝わることに書き換えてきたところ。

ポーの一族」を見たときに、ああ舞台化するということはこういうことか、と思ったのが、書かれている台詞でも、役者が言うことによって、感情が乗るということでした。

マンガや小説はそれを自由に想像できるのがいいところです。

けれど読み手によって想像できず伝わらないこともある。

ポーの一族」が特にわたしは全くもっていい読み手じゃなくて、マンガから読み取ること、想像することができなかった哀しみを、役者が演じてくれることではじめて心に響いたのです。

舞台の魅力ってそこじゃないかな、とナウシカ歌舞伎を見てやっと気づきました。

「キネマと恋人」でだだ泣きしたのは、いろいろなことが目の前で繰り広げられ、リアルに伝わってきた結果で、それを伝えることが「舞台」なのだと、「映画」とは違う「舞台」ならではの魅力を描いてきたところが、さすがだなと思わずにはいられなかったのです。

 

★主演俳優賞

満を持してFACTORY GIRLSのソニンに。

この荒削りの作品をここまでの完成度に導いたのは間違いなく彼女です。

このハリエット役を見ながら「血の婚礼」で花嫁役を演じていたソニンを思い出しました。

あの時ソニンの演技に圧倒されながらも、あまりにも100%入り込みすぎている、もっと洗練されたらすごくいいだろうと書いた記憶があるのですが、その洗練の結果をこのハリエット役で見れた気がしています。

徹底した調べと緻密な計算の上で、ハリエットに乗り移ったソニンの演技とペーパードールの歌、圧巻でした。

 

ということで、こちらのソニンさんのFACTORY GIRLS スペシャルページもぜひご一読ください。

SONIM’s Review Factory『FACTORY GIRLS~私が描く物語~』編 | アミューズモバイル

あー早くローウェル・オウファリング買って、ソニンさんが答えてくださったところだけでも読まなきゃ。

 

★助演俳優賞

風の谷のナウシカ中村七之助クシャナ殿下に。

いろいろ考えたのですが、わたしが七之助ファンということを置いておいても、新作歌舞伎「風の谷のナウシカ」を熱狂に導いた功労者じゃないかと思ったのです。

本当の1番の功労者は菊之助さんであることはよく分かっているのです。

まずこれをやろうとしたことが素晴らしい、やってくれたことが素晴らしい。この2点だけでもものすごい情熱がなければできないことだと思います。

その上であのナウシカを演じて作り上げて魅せたこと、本当にすごいです。

ただやはりマンガやアニメ原作のものって、観客はビジュアルから入りがちなわけですよ。

登場した瞬間に「クシャナ殿下」と思わせたそのビジュアル力をわたしは今回あえて評価したいと思うのです。

そして男性ばかりの中で男勝りなクシャナという女性、を演じることはそうたやすくもないとも思います。

今回のクシャナ女形独特の作った高い声を出すこともなく、割と低めの声音だったのに、それでも一度もクシャナが男性に見えなかった。

所作や着こなしも女性らしさを強調するものはなかったのに、クシャナが皇女であること、さらには臣下を魅了する人物であったことを魅せてきたところ、をわたしは評価したいと思っています。

 

舞台美術はもちろんナウシカ歌舞伎に。

あんなに美しいセットを見たのははじめてです。

音楽はFACTORY GIRLSに。

大学の卒論の課題でこういうのがあるところで、やはり日本は舞台に全体に対してまだまだだなあと思いました。

演劇教育、本当、やりませんかね、日本。

 

なんか最後はグチっぽくなってすみません。

でも2019年は「ベルばら45」「吉崎&岡田コン」からはじまり、杜けあきさま芸能生活40周年ということで、本当に杜けあきさま漬けになれた、かつてない幸せな一年でした。

 

30年前、杜さんに出会ってなければ、舞台を見る生活はおろか、演劇を学ぶ機会も、そのためにロンドンに行く機会もない人生だったはず。

杜さんと小池修一郎先生からもらった人生だと思っています。

 

そんなわけで、2020年は今年ないがしろにしすぎたくらい見なかった宝塚歌劇を観に行きたいなあと思っています。

観劇初めは雪組小池修一郎先生の新作から。

何気に順調に5月までの観劇がもう決まっていたりするので、お財布との相談しながら、今さらですが360°アラウンドシアターも体験したいです。

全てにおいて壮絶な作品@新作歌舞伎「風の谷のナウシカ」

12月14日(土) 11:00~(昼の部)13:00~(夜の部)新橋演舞場

作 漫画「風の谷のナウシカ宮崎駿

脚本 丹羽圭子/戸部和久

演出 G2

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[昼の部]

序 幕 青き衣の者、金色の野に立つ

二幕目 悪魔の法の復活
三幕目 白き魔女、血の道を征く 

[夜の部]

四幕目 大海嘯
五幕目 浄化の森
六幕目 巨神兵の覚醒
大 詰 シュワの墓所の秘密

[配役]

ナウシカ 尾上 菊之助
クシャナ 中村 七之助
ユパ 尾上 松 也
ミラルパ/ナムリス 坂東 巳之助
アスベル/口上/オーマの精 尾上 右 近
ケチャ 中村 米 吉
ミト/トルメキアの将軍 市村 橘太郎
クロトワ 片岡 亀 蔵
ジル 河原崎 権十郎
城ババ 市村 萬次郎
チャルカ 中村 錦之助
マニ族僧正 中村 又五郎

王蟲(声) 市川 中 車

セルム/墓の主の精 中村 歌 昇
道化 中村 種之助
第三皇子/神官 中村 吉之丞
上人 嵐  橘三郎
ヴ王 中村 歌 六

墓の主(声)中村 吉右衛門 

12/22令和最初の「M-1グランプリ」決勝戦かまいたちが「となりのトトロを全く見たことがない」自慢をするネタをやっていました。

同じくわたしも実は「風の谷のナウシカ」と「天空の城ラピュタ」を、レンタルすることもなく、繰り返される再放送の波をくぐり抜け、全く見たことがありませんでした。

そして3、4年前にはじめて「風の谷のナウシカ」を見る機会を得たのでした。

合わせて原作マンガ全7巻も読みました。

 

映画の感想→腐海の底がサグラダ・ファミリアの内観みたいで美しい。あとテトかわいい。

マンガの感想→読みづらい。よう分からん。

 

われながらヒドイ。

なのになぜこの歌舞伎版に挑んだのか。

中村七之助クシャナを演じるというのが大前提としてあって、そのうえで「あんなによう分からんかったマンガ7巻を昼夜通しでやるという狂気じみた試みはなかなかない。これは演劇ファンとして見るべきでは?」という訳の分からない義務感にかられた結果でした。

ちなみに先に言い訳しておくと、わたしの「歌舞伎知識」はほぼ初心者です。古典をイヤホンガイド付きで何度か見たことがある程度。

ましてや映画と原作マンガを一度見たきり、読んだきりの「ナウシカ」に対する知識はないに等しい。

そこでこの演目を見に行く前に下記ナウシカ解説動画を見て、

https://www.youtube.com/watch?v=_nrIY_5XhrA

https://www.youtube.com/watch?v=rfvAjSN6dMU

原作7巻を読み返し、当日を迎えました。

ちなみに同行した友人たちも試験勉強のように毎晩遅くまで原作再読に必死になっておりました。

この辺りからして、この演目の壮絶さが伝わるかと思います。

風の谷のナウシカ 全7巻箱入りセット「トルメキア戦役バージョン」

風の谷のナウシカ 全7巻箱入りセット「トルメキア戦役バージョン」

 

壮絶と書きましたが、われわれの「壮絶」は「すさまじい」を意味する誤った使い方です。

けれど上演されたものは「きわめて勇ましく激しいこと」という本来の意味で「壮絶」でした。

 

12/8(日)の公演で主役・ナウシカを演じている菊之助さんが怪我をされたというニュースが飛び込んできました。12/8の夜の部はキャンセルになったのですが、翌12/9から骨折したまま復帰されました。しかしながら、わたしが見た12/14の時点でも一部場面が割愛されたバージョンでした。

そんなわけで、割愛された時間配分がこちら。

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割愛されてこれですよ。

しかもこれを12/6~25まで毎日休みなくやってるんですよ。

これを壮絶といわず、なんといおう。

そして繰り広げられた舞台もまさに壮絶でした。

 

まず昼の部。

序幕のはじまりは口上で、ご挨拶とストーリーの中で大切なキーワードが紹介され、このタペストリー幕が披露されました。

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このタペストリー幕だけでも一級の芸術品。見る価値があるのに、この幕が開き、映画ナウシカの音楽がお囃子方によって奏でられると、世にも美しい「腐海」が舞台に現れたのです。

三重になった腐海の絵と紗幕の間をうごめく虫たち。

紗幕にライトの胞子が降り注ぎ、それはもう息をのむ美しさでした。

故・蜷川先生がおっしゃっていた「冒頭で観客をその世界に取り込むことが重要」という言葉が大好きなのですが、歌舞伎ナウシカはまずその第一関門を、今までに見たことのない圧倒的なセットの美をもって軽々飛び越えてきたのでした。

 

見てる方はもう語彙力皆無。

 

腐海あった!

王蟲いた!

クシャナクシャナ

テトかわいい!

 

とかバカ丸出しの発狂ぷりで、序幕1時間20分、引き込まれてあっという間でした。

そして、序幕で映画部分、終わりました。

来年2月にこの公演を録画したものが映画館で上演されるのですが、

新作歌舞伎『風の谷のナウシカ』ディレイビューイング|ローチケ[ローソンチケット] 映画チケット情報・販売・予約

これを見ようかな、でも両方は価格的にもしんどいな、て方は全力で「昼の部」をご覧になられることをおススメします。

というのも、もちろん序幕の美しい腐海のセットをぜひ見ていただきたい、というのもあるのですが、全体に「昼の部」の方が「歌舞伎のエンターテインメント性」を全面に押し出した演出だったからです。

二幕は水芸。本物の水が大量に使用されてあふれ出る中、大立ち回りを演じるユパさまとアスベル。一階席の前方席は水除ビニールーシートが渡され、それに必死に隠れても濡れるくらいの激しいアクションシーンです。

壮絶そのものです。

さらに有名な飛び六方も見られます。見ている方はおトクです!

 

三幕はおそらく私たちが見られなかったナウシカ出陣の激しい戦闘シーンや「メーヴェ宙乗り」も登場するはずです。

誰もが知ってる歌舞伎の大技や、歌舞伎ってここまでやるのっていう大仕掛けがこんなにいっぺんに見られる演目、他に知りません。

ナウシカファンで歌舞伎初心者にも楽しんでもらえるものにしたい、という心意気がビシビシ伝わってきます。

そうそう、イヤホンガイドもいつも以上に「歌舞伎の豆知識」を懇切丁寧に教えてくれるもので面白かったので、興味がある方はぜひ「イヤホンガイド」も借りてみてください。

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昼の部はどちらかと言うと、セットや仕掛けのすごさと七之助クシャナ殿下の格好よさに発狂して終わりましたが、夜の部は一転して、演劇としてナウシカの物語を刻んできたのです。

(4幕はじまりの演出も実に演劇的にオーソドックスで、だから歌舞伎でやると新鮮でした)

終末期を生きる人間を描いてきたのです。

 

ナウシカの原作が完結したのが1994年。

世紀末でした。

翌年には阪神大震災が起こりました。

バブルがはじけて、それまであった楽しそうな未来が見えなくなった時期でした。

それから残念なことに今の日本は変わらず自然災害に度々見舞われ、今の若者たちはわたし以上に希望の光の見えない「終末期」を生きているような気がします。

 

そんな今にリンクしたようなナウシカの世界。

舞台はマンガ全部を書くことはできませんが、人が演じることによって、マンガのシーンや感情をよりリアルに伝えることはできます。

 

戦争と混乱の中でも、儲けて楽しむ人々。

住むことができる土地が少ないのに、折り合わず争う人々。

ますます汚染されていく世界。

それに傷つきボロボロになりながらも立ち向かうナウシカ

菊之助さんが怪我をされているからこそ、傷ついてボロボロのナウシカがこれまたリアルに伝わってきました。(とはいえ骨折されているとは微塵も感じさせない演技がすごい)

一方で目の前の不満や恨みにとらわれ諍いを起こし続ける人々の感情は、わたしたち庶民のそれで、理解できるからこそ重く心にのしかかるのです。

そしてナウシカがたどり着く浄化された世界が美しければ美しいほど、感じる旧世界の人々の傲慢。

 

だんだんと重苦しくなっていく展開にぐったりしていたら、なんと大詰が連獅子になりました!

まさかの毛ぶりも見られるとは!

しかもこれがまた上手く原作の最後の闘いを表現しているんですよ!

こんな連獅子はじめて見ました。

そしてこんな闘いもはじめて見ました。

 

ここまで作った脚本・演出家に完敗。

そしてこの企画を情熱をもってプロデュースし、座長としてまとめあげ、怪我をおして最後までナウシカを演じられた尾上菊之助さんに感動。

もちろん、それぞれの役を務めあげた役者さんにも感謝。

(個人的にはミト爺がまんまミト爺でお気に入りでした。クシャナナウシカの行方を探さすくだりを歌舞伎口調にする演出も楽しかった!)

そして美しい音楽を奏でてくれたお囃子、義太夫の方々、大道具・小道具さん、お衣装さん、音響・照明スタッフ、このすごい舞台を作り上げた全ての方に、ただただもうありがとう、と言いたくなる贅沢な公演でした。

そういう公演ってそうないと思うのです。

 

ところで菊之助さんの怪我が原因で見られなかった「カイ」に乗った戦闘シーンとか、メーヴェ宙乗りとかは、多々テレビで放映された映像で保管できたし、なくても全然かまわなかったのですが、一つだけテレビで一瞬だけ映って「これ見たかった」というか、どういうシーンを表現していたのか気になるのが、 「京鹿子娘道成寺の傘」みたいなものを持って踊っているもの。

あの踊りはナウシカの何を表現したシーンだったのでしょうか。

ディレイビューイングで見られることを祈っています。

 

そしていつの日か再び、序幕だけでもいいから再演があることを期待します。

そのときイヤホンガイドのお決まりの「この後は〇〇何幕、こういうシーンへと続きます」という案内を、「うん、知ってる。初演見たもん!」と自慢げにほくそ笑む日を楽しみにしたりしています。