こんなことを思ったり。ぼちぼちかんげき。

保護猫と同居人と暮らすアラフィフがビンボーと戦いながら、観劇したものなんかを感激しながら記録。

主役を主役にできない難しさ@宝塚宙組「黒蜥蜴」「Diamonnd IMPULSE」

6/6(土)15:30~ @宝塚大劇場

ミュージカル・ロマン
『黒蜥蜴』
原作/江戸川乱歩
戯曲/三島由紀夫
潤色・演出/生田大和
作曲・編曲/太田健
装置/松井るみ
衣装/加藤真美

キャスト
明智小五郎    桜木みなと        
黒蜥蜴(緑川夫人)春乃さくら        
雨宮潤一(山川健作)水美 舞斗
岩瀬早苗/桜山葉子    天彩 峰里    
岩瀬庄兵衛    悠真 倫    
松吉    松風 輝
ひな/青い亀    山吹ひばり
    
岩瀬夫人    愛 すみれ        
御用聞き・五郎    秋奈 るい        
浪越警部    叶 ゆうり        
女中・夢子    花菱 りず        
女中・愛子    小春乃さよ
女中・色江    湖々さくら    
岐阜[明智の部下]若翔 りつ        
堺[明智の部下] 風色 日向
木津[明智の部下]亜音 有星
近江[明智の部下]大路 りせ
吉野[明智の秘書]きよら羽龍    
第一の女  夢風咲也花        
第二の女  楓姫 るる
第三の女/女中・花江    二葉 ゆゆ

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アナスタシアぶりに宙組を見に行こうと思ったのは、デヴィット・ルヴォー演出、中谷美紀主演の「黒蜥蜴」の舞台が素晴らしく、それをどうミュージカル化するのか、というか宝塚歌劇化するのか興味があったからです。

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とりあえず戯曲を読み直して、ここを歌にするのかな、とか色々想像して見に行きました。

ちなみに江戸川乱歩の原作をモチーフにしたバージョンの宝塚歌劇「黒蜥蜴」は見たことがありません。

ただ三島版の「黒蜥蜴」が面白かったので、原作小説も後で読んで、フェチズムあふれるけれど娯楽小説だなと思った記憶はありました。

今回、見て思ったのは、やっぱり宝塚歌劇化するためには、明智小五郎が主役である必要があって、そのためには三島版だけではどうすることもできないのだなということでした。

ということで、三島版が好きで今回見に行くよ、という方は原作小説から読み直していかれると楽しいと思います。

三島版は緑川夫人と早苗さんの会話から始まるのですが、これはもちろんできない。 そのためオープニング明けに原作の方の雨宮の事件と、原作冒頭の怪しげなパーティーのシーンが組み合わされています。

そして三島版冒頭に行くまでも、最初から明智小五郎がいて、早苗の誘拐予告の話があって、宝石商の岩瀬もいて、二人でバーに行ってから、ようやく、緑川夫人と早苗さんの会話になるわけです。

でもこの処理は宝塚歌劇化に当たって正解だったと思いますし、少ないながらも早苗さんと雨宮が合わせられるシーンで、早苗さんの言葉が歌になり、それに絡めるように緑川夫人の「あなた方が黙っていられるように、私が喋りつづけていてあげる」辺りのセリフが流れるあたりは、三島のセリフの流麗さと音楽が調和して、いいミュージカル化だったと思います。

あと明智が「犯罪というものには、何か或る資格が要るのです」と、例え話として、3人の女と薔薇の花束を語るのですが、ここを視覚的に見せてきたのも、出演者の少ない題材で大人数の宝塚歌劇化する工夫が見えました。

まあこの辺の「例え話」が三島独特の価値観とか美学とかを感じるところで、なんのこっちゃ、になる方も多いと思うので、よく分からないけど娘役ちゃんたち可愛かったよ、となれば正解なのかな、という気もします。

ルヴォー演出を意識してる?と思わず思ってしまうほど、ぐるぐる回るセットとアンモナイトのようなぐるぐる映像も大変面白かったし、最終的な黒蜥蜴の美術館の魅せ方なんかは若干、藤田俊太郎版NINEを思い出したりもしましたが、美しい人々を魅せるという宝塚歌劇の強みを押しだしてきて、これはこれで正解だとも思いました。

ミュージカル化において、緩急のために岩瀬家のお屋敷やら街の人々とかで盛り上げるシーンがあったのですが、個人的には全体に静かな舞台にしてもよかったんじゃないかなと思うと、大劇場より別箱の方が向いている気はしました。

でも大劇場でやることで、かつての私のように三島版の戯曲に出会う若い人たちがいるかも、とも思うと、文学作品、戯曲の紹介としてのこの宝塚歌劇化はありだなと思っています。

一番いらないかなと思ったのが桜山葉子の街娼設定。これは三島版にも原作にもないので、仕事をクビになって死んでもいいと考えているだけの設定にしなかったのが不思議です。そして雨宮の事件を冒頭に置いているため、黒蜥蜴と雨宮の過去話シーンという雨宮の気持ちの見せ場がなくなってしまったのも残念です。

とは言え、ここは絶対やってほしかった「明智の事務所」と「黒蜥蜴の隠れ家」でお互いにお互いと自分のことを思っていうセリフの応酬が(この辺りの言葉が主題歌にも使われていたので)たしか少し歌になり、そこからのポスターコピーにもなった「法律が私の恋文になり」「牢屋が私の贈り物になる」の前あたりからセリフになって、二人での決めセリフ「そして最後に勝つのはこっちさ」が想像どおり銀橋の上手下手でバシッと決まって暗転は本当に気持ちよかったし、自然に拍手も起こっていたので、こういうシーンがワンシーンあれば、個人的には大変満足です。そしてセリフでバシッと終わるシーンに拍手が湧くというのもなかなかないので、ちゃんとここを決めるように作ってくれただけで感謝でした。

そして中谷美紀さんの黒蜥蜴が素晴らしかっただけに心配していた春乃さくらさんの黒蜥蜴なんですけれど、本当に美しく、声もセリフもキレイで素晴らしかったです。早苗さんを演じた天彩さんが可愛いし上手いので、この二人のシーンのビジュアルと歌は眼福、耳福でしたね!東京公演で舞台写真出してくれませんか。明智とのトランプシーンもよかったけれど

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個人的には緑川夫人×早苗のビジュアルこそが今回の本当に素晴らしいところだったと思うので、お願いします。

桜木さんはトップスターとしてしっかりと作品を引っ張っていましたし、役としても居方としてもバランスが難しいなか、格好良さと愛を見せてくれたと思います。 より難しかったのは雨宮の水美さんでしょうか。雨宮自体がかなり陰な人間に、特に三島版では描かれているのですが、水美さんの個性としては明るさがあるので、鬱屈した感じを表現するまでにはあと一歩、という感じでしょうか。

ひな役の山吹ひばりさんは「青い亀」のときにきちんと光っていたので、それで十分だと思います。

個人的には最後の見せ場「でも心の世界では、あなたが泥棒で、私が探偵だったわ」辺りをあのセットの小さな螺旋階段の上でやるよりも、もっとドーンと真ん中で、ほぼラストシーンくらいの迫力で大きくやってくれたら嬉しかったかな、とかはありますが、総じて楽しい観劇でしたし、もう何度か見てみたいなと思いました。

 

スパーキング・イルミネイト
『Diamonnd IMPULSE』
作・演出/竹田悠一朗
装置/斎藤万希子
衣装/植村麻衣子
照明/平居 優美  

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実は大劇場でははじめましての竹田先生ショーでしたが、中詰めから急にめちゃくちゃ楽しくなりました。

いやそこまでも別に不満はないんですけれど、中詰めの「ワッチコン」がリズムの入りといい、音楽のアレンジといい、ちょっと変わっていて面白かったんですよね。

で、中詰めでこれだけ盛り上げられたらもうショーは勝ちです。

初舞台生のラインダンスにセット有は、私は初めて見たような気がします。

しかもセットに「112」とか入っていたので、あれは東京公演では消えるんだろうな、と思うと、大劇場ならではのよさも味わえましたし、曲が「Diamonds Are A girl's Best Friends」なのも「いつまでも宝石のように輝いてね」というメッセージのようでグッときました。

そして群舞と若手スターの歌を経て、フィナーレ大階段群舞からはモノトーンの衣装がステキでしたし、デュエットダンスの曲がこれまた「Stand By Me」で、これはなかなかトップコンビが踊る曲としてはナイス選曲、と思わずにはいられませんでしたし、何も知らない私のような観客には桜木さん、春乃さんの絆的なものを勝手に感じさせて、とてもよき、と感じました。

そして水美さんはショーがやっぱり輝く!てか踊りもキレイだけど、ただポーズを取っているときとかの身体のラインの作り方がキレイ!

あとは愛すみれが無双すぎる!今回、唯一変な悪魔っぽいカチューシャ付けさせられて、ホットパンツに黒網タイツと、とんでも衣装だったんですが、着こなしちゃう愛すみれがさすが!

ほぼほぼ初めましてな宙組だったので、お気に入りの人を見つけたいなと割とショーではオペラグラスを覗いてあちこち見ていたんですが、愛すみれから逃れられませんでした。

 

今回、前日に照明トラブルでのショーの中断があって、無事幕が開くかという不安を久しぶりに抱えて当日を迎えたのですが、無事見られたこと、そして、幕を開けるために恐らく前日から必死でがんばってくださった方々に改めて感謝します。

「黒蜥蜴」の方は賛否両論あるようですが、ショーは総じて楽しいので、これからの公演も東京公演も、何事もなく安全に終わることを願っています。

美しい劇場の最後にふさわしい豪華さ@大阪松竹座さよなら公演「御名残五月大歌舞伎」

5/25(土)16:30~ @大阪松竹座

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夜の部
一、近江源氏先陣館(おうみげんじせんじんやかた)
盛綱陣屋
佐々木盛綱 仁左衛門
高綱妻篝火 孝太郎
和田兵衛秀盛 愛之助
盛綱妻早瀬 壱太郎
竹下孫八 隼人
高綱一子小四郎 種太郎
盛綱一子小三郎 秀乃介
古郡新左衛門 橘三郎
伊吹藤太 歌昇
信楽太郎 勘九郎
北條時政 歌六
盛綱母微妙 魁春

 

落語「星野屋」より
小佐田定雄 脚本
今井豊茂 演出
二、心中月夜星野屋(しんじゅうつきよのほしのや)
おたか 七之助
星野屋照蔵 扇雀
和泉屋藤助 虎之介
母お熊 鴈治郎


片岡仁左衛門 監修
藤間勘十郎 演出・振付
三、當繋藝招西姿繪(つなぐわざおぎにしのすがたえ)
立田屋亭主豊吉/役者鴈治郎 鴈治郎
伊之助女房お孝/役者孝太郎 孝太郎
山本屋伊之助/役者愛之助 愛之助
役者勘九郎 勘九郎
役者七之助 七之助
役者歌昇 歌昇
三河屋信之介妹お陽/役者壱太郎 壱太郎
役者米吉 米吉
役者隼人 隼人
立田屋若旦那蝶之介/役者虎之介 虎之介
立田屋番頭清兵衛/役者松之助 松之助
三河屋番頭三郎兵衛/役者橘三郎 橘三郎
三河屋女中およし/役者吉弥 吉弥
立田屋番頭彦六/役者亀鶴 亀鶴
三河屋若旦那信之介/役者進之介 進之介
立田屋女将お駒/役者扇雀 扇雀

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友人が遠征してきてくれるというので乗っかって見に行ったのですが、本当乗っかってよかったなと思いました。改めて友人に感謝。

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特に三部の芝居町だった頃の道頓堀お茶屋芝居からはじまる上方歌舞伎名場面集からの、東西の歌舞伎役者勢ぞろいの総踊りは、それはもう華やかで、はじめて「目が足りない」状態になりました。そしてだからこそ、ああ本当にこれで松竹座は閉館してしまうのだと胸にせまるものがありました。

 

一部の「盛綱陣屋」は大坂冬の陣における真田信之・幸村兄弟をモデルにして、舞台を鎌倉時代に置き換えたもので、しかも真田信之がモデルである「佐々木盛綱」は近江の武将になっていて、ものすごく関西を意識した演目であるのが素人でもわかるのが嬉しかったです。

内容的にはいわゆる「ザ・古典歌舞伎」で、子どもに犠牲を強いる忠義な世界線なので、個人的には苦手ではあるのですが、仁左衛門さんの品と小四郎を演じた種太郎くんのかわいらしさで、そういう時代だもんねと納得して見ることができましたし、ラストシーンの盛綱陣屋の背景の琵琶湖が美しく、堪能しました。

まあ首実験のあたりはイヤホンガイドで下手に「大阪冬の陣」のことと聞いていたので、割とネタバレになっちゃっていて、素人としては、その首は偽物と分かっているのに切腹しちゃう小四郎の辺りがよく分からなかったので、その辺を説明してもらえるとありがたかったかなあと思います。

全体にイヤホンガイドの説明が少なくて、松竹座さよなら公演に駆けつける観客は「盛綱陣屋」は「よくご存知ですよね?」案件なのかもしれないです。

 

からの二部の「心中月夜星野屋」は、七之助から提案依頼した落語原案の新作歌舞伎の再々々演とのこと。セリフも普通に聞き取れるので、こっちの方はイヤホンガイドもっと静かでいいのだよ?とか思ったりしました。

そして原作落語も知らなかったので、めちゃくちゃ新鮮に楽しめました。

さすが七之助にアテガキされているだけあって(イヤホンガイドによると役名の「おたか」も七之助の本名から付けられたとのこと)、とにかく七之助の女形の魅力、つまり七之助のチャーミングさがこれでもか!と盛ってあるので、もうファンとしては「かわいい、かわいい」の連続。もはやあの心中シーンの海老曲げポーズの舞台写真も売ってください!

内容的には「品川心中」や「辻占茶屋」と近くて、人形浄瑠璃から発展した歌舞伎の心中物は悲恋になるのに、落語の「心中物」は逆に「生きるぞ!」という方向になるのが面白いなと思いました。

今回は相手役の照蔵を扇雀さんが演じられる&松竹座さよなら公演ということで、関西出身の青物問屋のご主人にアレンジされていたのも憎い演出でした。

でもそれ以上に関西の血を感じたのが鴈治郎さんのお熊お母さん!

もうアドリブもキレッキレでサイコーでした。時事ネタ(油不足、地獄に堕ちるわよ等)も盛りだくさんで終始笑いっぱなし。「心中の経験は3、4回ある」というセリフの後に「死ぬる覚悟が・・・」とお初のあの仕草もやってくださって大爆笑。本当に楽しい演目だったし、調べたら衛生劇場で放映されたこともあるようなので、いつか映像を手に入れたいくらい大好きな作品になりました。

というかまあ男も女も化かしあいの内容ですが、それでも「女」が完全にしてやられず、なんなら「やったった!」くらいまでの後味に仕上げてあるのが本当に嬉しいです。

古典落語もなかなか女性の扱い方はひどいものが多いのですが、こんな風に落語そのものも、歌舞伎も、少なくとも新作にする際に、こんなふうに女性像をアップデートしてくれると嬉しいなと思っています。

そしてこの演目はまた見たい!壱太郎くん、鴈治郎さんの本物の親子共演でも見てみたい気もするのですが、中村屋さんが依頼して作られた新作だとその辺の上演権とかってどうなるのでしょうか。

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松竹座の閉館は本当に残念で、何よりあの美しい建物がゆくゆくは見られなくなってしまうことが哀しいので、せめてファサードだけでも「ポルトヨーロッパ」とかに移築して、昭和初期の大阪が舞台の朝ドラ撮影とかに活躍させてくれないかなと思ってしまいました。

それでも二部、三部と明るく楽しく華やかに終わったのは、とても大阪らしくてよかったです。

そしてその中での大阪締め、心に刻みました。

人間賛歌の物語@シス・カンパニー公演「新宿発8時15分」

5/9(土)18:00~ @SkyシアターMBS

作・演出・音楽
作・演出 三谷幸喜
音楽 荻野清子

スタッフ
美術・・・・・・・松井 るみ
照明・・・・・・・三澤 裕史
音響・・・・・・・井上 正弘
衣装・・・・・・・前田 文子
ヘアメイク・・・・宮内 宏明
振付・・・・・・・本間 憲一
歌唱指導・・やまぐちあきこ/横山 達夫
演出助手・・・・・西 祐子
舞台監督・・・・・瀧原 寿子
プロデューサー・・北村 明子

演奏
荻野清子(ピアノ) 
近藤淳(リード) 
岸徹至(ベース) 
萱谷亮一(ドラム・パーカッション)

キャスト
天海祐希/香取慎吾/尾上松也/ウエンツ瑛士/シルビア・グラブ/新納慎也
今井朋彦/藤本隆宏/小澤雄太/中島亜梨沙/大野泰広/峯村リエ/小林隆/秋元才加/浅野和之

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前回見た三谷幸喜さん作のオリジナル・ミュージカル「日本の歴史」で荻野清子さんの音楽を聴いて、なんて魅力的なミュージカル作曲をされる方だろうと驚いたのですが、

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その後にG2作のオリジナル・ミュージカル「スワンキング」も担当されていて、こちらはグランドミュージカルのようなクラシカルで重厚な音楽を産み出されていたのが本当にすごいなと思っていました。

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その荻野清子さん作曲で三谷幸喜さんが新たなオリジナル・ミュージカルを作られる、さらに大好きな新納さんが出演されるということで、いそいそと出かけました。

(「コレット」も改めて見たかったです)

 

お話しは「日本の歴史」よりももっと何でもない、今ここに生きている人たちの群像劇でした。

新宿発8時15分の「カマタマ線」が踏切での接触事故で止まってしまう。運転中に少女が見えたけれど、その安否確認ができるまで発車はできない。電鉄側の安否確認におけるドタバタと、止まった車両に乗り合わせて、それぞれさまざまな事情で困っている乗客側のドタバタがちょうど上演時間(今回は約1時間40分)と同じ時間分だけ繰り広げられるのです。

 

荻野清子さんのミュージカル音楽としての強さはなんといってもキャッチ―さだと思います。「カマタマセン♪カマタマセン♪カマタマセン♪」と繰り返されるコーラスは最初から最後まで効果的に使われ、観劇後は思わず口ずさんでしまうのがすごい。その上で、多様な種類の音楽も混ぜて、さらにちゃんと心に響く大曲みたいなものも聴かせてくれるのです。

そして音楽が成功していればミュージカル作品としては、ほぼほぼ成功している、と私個人は思っています。

その上で、誰でも明日遭遇するかもしれない日常、をコメディタッチで描きながら、「やらない後悔よりやる後悔」「それぞれに一生懸命生きることは素晴らしい」的な人間賛歌のよきミュージカルになっていたと思いました。

あとミュージカルとして、そして演劇としてにくいな、と思ったのが、松也さんの役が歌う二曲でした。「ラ・マンチャの男」の「見果てぬ夢」っぽい曲に、「ゴドーを待ちながら」をもしミュージカルにしたらこんな曲になる?的な内容の歌で、「日本の歴史」がとても真面目にミュージカルに取り組んだ印象なら、今回の作品はそこに遊び心を入れて、より軽やかで身近なミュージカル作品になったんじゃないかと思います。

「きみはいい人、チャーリー・ブラウン」的な、なんでもなくて優しくて愛される作品ってなかなか生み出すのは難しいと思うので、日本のオリジナル・ミュージカルの一作としては、すごく意欲的な作品で意味あるものだったと感じています。

ポスターもこれだけ豪華キャストを集めながら、写真なし、だったことも個人的にはいいなと思っていますし、電車モチーフの公演日程とかも面白かったです。そしてキャスター付き椅子を活かしたステージングも面白いなと感じただけに、セットがもう少しシンプルでも「お!」と思うものになったら文句なしでした。

 

豪華キャストでありましたが、歌を聴かせられるキャストは尾上松也さん、ウエンツ瑛士さん、シルビア・グラブさん、新納慎也さん、秋元才加さんかなと思う布陣で、主役としての華を香取慎吾さん、天海祐希さんに全振りして、その他の歌を歌えるキャストに振ったのも面白い試みだったかもしれません。

もちろん圧巻はシルビア・グラブさん。最後の大曲が締まる!訴えかけてくる!何かいいものを聴いた気がする!大事です。

ウエンツさんは声がキレイだし、ハモリが上手いので、どんな相手でもしっかりステキなハーモニーにしてくれるのがすごかったです。

松也さんはもう「ラ・マンチャの男」受け継ぎ再演していいんじゃないんですか?くらいの聞かせっぷりで、大満足。

で、新納さんですよ。三谷さん作品に出演されるときの新納さんって、なぜかピュアっぽい役が多いのですが(三谷さんの中の新納さんのミュージカルのイメージが「ゴッドスペル」のジーザスだからだと勝手に思っているのですが、真偽のほどはどうなんでしょう)今回もメインの1つはそういう感じで、その上であの天海祐希さんも入った女性キャストのみをバックコーラスにつけて、今回のテーマっぽいものの1つでもあるような歌をメインで歌い上げるシーンがあって、感動してしまいました。歌そのものよりも「天海祐希」よりも前で歌うという事実に驚いてしまって、ファンとして、新納さんここまで来たか、という思いでいっぱいになってしまったのです。申し訳ない。

でもだって「天海祐希」ですよ!私がはじめて「天海祐希」さんを見たのが35年以上前のことで、その時に天海さんはもうすでに若手ながらもスターだったんです。今回色んな人がたくさんの役をやる中で、天海さんが一番役数が多かったんじゃないかなと思うくらい、男役時代を思い出す、おっちゃんの役からあんちゃんの役も見せてくれて、テレビドラマでよく見るようなかっこいいハイキャリア女性の役もメインであって、かつ、女性だけど、どこか「ミー&マイガール」のビルを思い出させるようなかわいらしさも見せてくれて、これ、往年の天海祐希ファンは文句なしの見ごたえだったんじゃないでしょうか。香取さんとのかわいいペアダンスも見られて、久々に踊っている天海さんを見たよー!とテンション爆上がりでした。

 

もちろん、その他のキャストも手練れの布陣なので、だからこそより98%軽やかな作品に仕上げることができたのだと思います。そして最後で示される残りの2%の重さもそこまで積み重ねたシーンがあったので想像はできたのですが、幕切れをああしたことは個人的にはとても好みでした。

 

日本オリジナル・ミュージカル、となると、どうしてもグランドミュージカルのようなものを目指してしまうのも分かるのですが、こういう小作品を積み重ねることも大事じゃないかなと思うので、三谷さんにはこういう形の軽やかなミュージカルを今後も期待したいと思います。

そして荻野さんが次、どなたと組まれるのか分からないのですが、なるべく追って行けたらいいなと思っています。

渇きを潤す愛の物語@宝塚月組「RYOFU」「水晶宮殿」

4/28(火)15:30~ @宝塚大劇場

三国志炎戯
『RYOFU』
スタッフ
脚本・演出 栗田 優香
作曲・編曲 手島 恭子
振付 御織ゆみ乃、麻咲 梨乃
装置    國包 洋子
音響    瀬谷 正夫

キャスト
呂布(りょふ)    鳳月 杏        
雪蓮(せつれん)天紫 珠李        
董卓(とうたく)風間 柚乃

李粛(りしゅく) 礼華 はる
李儒(りじゅ)    彩海 せら
牛輔(ぎゅうほ)英 かおと
華雄(かゆう)    天つ風朱李
        
王慈寧(おうじねい)梨花ますみ        
王允(おういん) 夢奈 瑠音        
王瑤華(おうようか)白河 りり
貂蝉(ちょうせん)花妃 舞音 
何皇后(かこうごう)妃純 凛
劉弁(りゅうべん)/王蓋(おうがい)柊木 絢斗
劉協(りゅうきょう)雅 耀


丁原(ていげん)佳城 葵
丁芷若(ていしじゃく)奏羽 美緒
丁徳(ていとく)真弘 蓮
丁成(ていせい)/袁紹(えんしょう)瑠皇 りあ
孫堅(そんけん)七城 雅
曹操(そうそう)和真あさ乃
公孫瓚(こうそんさん)雅 耀
劉備(りゅうび)彩路ゆりか
張飛(ちょうひ)月乃だい亜
関羽(かんう)    遥稀 れお

赤兎馬(せきとば) 羽音 みか

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古典・三国志演義を踏襲しているということなのですが、本当に知識0で(曹操と劉備、関羽辺りは世界史で名前聞いたことあるな程度の、中国の戦国時代くらいの認識です)、何か予習すべき?とは思いましたが、基本はオリジナルストーリーだから大丈夫、みたいな言葉を見かけ、全くの予習なしで行きましたが、本当に大丈夫です!

たぶん「三国志演義」の方を知っていれば、多分「おお、ここをこういうことにするか!」的な楽しみは増えるんじゃないかとは思います。(そして歴史書の方の「三国志」だと本当に第1巻的な部分ぽいです。「三国志」好きの皆さんにとってメジャーなのは、「三国志演義」をベースにした方なんでしょうか。)

そして、この作品、一度目は「そうか!そういう話しだったのか!」という衝撃があるため、二度目にじっくり楽しむのがあいそうなので、最大限ネタバレなしの方向で感想をつづりたいと思います。

 

とりあえず、最初のプロローグから素晴らしかったのです。風のSEが入り、兵を切って切りまくる呂布(りょふ)が描かれ、それに圧倒されていたら、トップスターの開演アナウンスが響き、「そういや開演アナウンス、まだ聞いてなかった!ここで入れるのか、かっけーーー!」てまず、なりました。

 

そして始まってみたら、丁原(ていげん)家での割と穏やかなやり取りの中、丁徳(ていとく)が兄を殺したのは実は呂布(りょふ)じゃないかと疑っているわけです。

そんな中、呂布(りょふ)と丁原(ていげん)の妹・雪蓮(せつれん)の甘やかな逢瀬が描かれて、ここが本当に「ベルサイユのばら~フェルゼン編~、または、~フェルゼンとアントワネット編~」の「愛の小舟シーン」のオマージュになっていて、「三国志演義」を知らない宝塚好きにもちょっと刺さる作りにしてあるのが、もう本当にさすがだと思いました。「雪蓮(せつれん)様」「ただ雪蓮(せつれん)と呼んでください」「雪蓮(せつれん)!」のセリフももう「愛の小舟」ですよね。シーンの作り方もそうなんですよ。それを違和感なく作品に溶け込ませてくる、栗田先生の手腕、感服です!

しかし栗田先生はこんなお遊びを交えるだけではないのです。この時点では呂布(りょふ)が本当はどんなキャラクターか分からない。それでもロマンチックに酔わせ、そこから董卓(とうたく)が放つ赤兎馬(せきとば)に魅せられ、殺しまくる呂布(りょふ)が、怖くてゾクゾクするのです。(赤兎馬の使い方も見事でした)

呂布(りょふ)自身も自分は獣だ、と何度も繰り返すのですが、そうなってしまった理由の子ども時代も描かれるので、怖くてゾクゾクしながらも、呂布(りょふ)の「空洞の心」を感じさせる演出と鳳月さんの演技が素晴らしくて、観客としては呂布(りょふ)に同情心を抱く感じに持ってくるのが、本当にすごい。

そして本格的に「獣として覚醒した呂布(りょふ)」の見せ方がもう本当に格好よすぎて、悪の魅力放ちまくりで、この辺りでもう何やっても「ギャーッ、かっこいい」みたいになってしまうのが怖くてすごすぎるのです。

その「獣として覚醒した呂布(りょふ)」を飼いならそうとするのが董卓(とうたく)なんですけれど、董卓(とうたく)自身も本気の「悪役」です。呂布(りょふ)が荒れ狂う獣なら、董卓(とうたく)は野心にまみれ、傀儡政権を擁立する悪徳策略家。これを演じる風間さんがまた上手いものだから、董卓(とうたく)の下で働く李粛(りしゅく) と李儒(りじゅ)の成り行きも、ものすごく納得して見られるわけです。

こんな物語ですので、娘役さんの出番は限られていて、緩衝材的な使われ方にはなってしまうのですが、その中でも王允(おういん)家のやり取りは、策略と殺りくが渦巻く中で、話しの内容的にはその中でどの立ち位置を取るか、どう生き残りを図るかをあえいでいるわけですが、場面的には少し和らいで見える緩急の付け方もさすがです。

しかしこの辺りから話しは多分「三国時代」に入っていく(虎牢関の戦い、というやつでしょうか?)。知らないけれど多分「三国志」で有名な武将たちが名乗るシーンは、戦闘ものみたいで格好いいですし(やってる方も楽しいだろうな、あれ。てかちょっとやりたい。笑)、動乱が激しくなっていく中、これはどういう終わりにたどりつくのだろう、とハラハラしてたら、最後に盛大に「愛」を浴びます。宝塚歌劇なんです!もう「そうか、そうだったのか、これをきっと栗田先生は鳳月さんと天紫さんで見せたかったんだな、サイコー!サイコーすぎる!」と大興奮したところで終幕。痺れます!

台詞も終始、格好良かったし、ビジュアル作りは最高で、あの「終幕」、本当、大満足すぎました。

でもちょっと気になるところが2点あって、1点が上手、下手のセットのスカスカ感でした。これは予算の問題でもあるので、どうしようもなかったところですが、逆に東京宝塚劇場は幅が多分、宝塚大劇場より狭いはずなので、東京宝塚劇場では全く気にならないかもしれません。

もう1点は1回見ただけでは判断できなかったので、千秋楽配信を今から心待ちにしています。

live.tv.rakuten.co.jp


Amazing Fantasy
『水晶宮殿(クリスタルパレス)』
作・演出 齋藤 吉正

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サイトーショーが本当に苦手なので、かなり構えていたのですが、思っていたよりマシでした。鳳月さんが変な衣装でも違和感なく着こなすのがさすがでしたよ。

でもこの「水晶宮殿」のフォントと間のイラスト、そして色合いを見るだけでテンションは下がるのに何度も登場するので、何でもう一つ登場する多少は見た目がマシな「CRYSTAL PALACE」の方に統一しなかったんだろうと思いながら、遠目でぼんやり見ていました。

ただショーが見る前から苦手なのは分かっていたから安い席(B席)で見たので、結果として配信代を心置きなく払えるところには感謝しています。RYOFU1回目ではこの物語はどうやって転がるんだろうというハラハラ感でいっぱいだったので、ラストシーンがわかった今、改めてちゃんとあれこれ見られる配信、本当にありがとうございます!

そして思うのは、お芝居とショーの円盤、別売りしてくれないかな、ということだったりします…。

スカイステージを待つまで長いので、値段は7割くらいでどちらか一方だけの円盤が買いたいってニーズは、それなりにあるような気がするのですが、どうでしょう。

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弱いままで生きていけるように@ケムリ研究室no.5「サボテンの微笑み」

4/25(土)17:30~ @兵庫県立芸術文化センター 中ホール

作・演出 ケラリーノ・サンドロヴィッチ

出演・配役

空子 緒川たまき

日乃出 瀬戸 康史

マユミ 瀬戸さおり

能見 清水 伸

学  赤堀 雅秋

鳥羽 荻原 聖人

学と空子の父 鈴木 慶一

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基本的にKERAさんの作品を見に行くときは、上演時間以外の一切の前情報を入れずに赴くようにしています。東京公演の感想も見ません。何も知らない状態で見て、何を感じるのかを、なぜかKERAさんの作品では自分の中でとても大事にしたいなと思っているのです。

そんなわけでこの「サボテンの微笑み」が岸田國士のこの戯曲をモチーフに作られていることは見終わってから知りました。

www.aozora.gr.jp

見終わって読むと、なるほど、と思うところもあるのですが、純粋に「サボテンの微笑み」だけを見終わった感想をなんとか自分のために綴れたらいいなと思います。

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この作品は東京ではシアター・トラムで上演されましたので、どうしても「兵庫県立芸術文化センター 中ホール」では大きすぎて、実際に舞台セットが舞台よりも少し奥まったところでの設置となっていました。

その分、最前列でも観客との距離感が出てしまう。なので、本当にシアター・トラムに遠征して見たかったなと思います。

とは言え、作品そのもののクオリティは劇場が広くなったからといって劣るわけではなく、寧ろ色んなものが響きすぎて、苦しいようなそれでいて憧れのような、そんな感情が渦巻くお芝居でした。

 

セットの下手に蓄音機があり、その横に古めかしい柱時計、中央の洋式テーブルセットなどから昭和初期くらいの舞台設定かなと思ったのですが、実際は昭和3年の設定とのことです。

空子と学の兄妹が住む部屋のセットの奥には、温室があって、それが本当に美しく、こんなお屋敷に住んでいるなんて羨ましいな、というのが、最初の感想でした。

序章の大晦日の二人の会話を聞いていても、二人がとても「狭い」世界で生きていて、少し感覚がずれていることは分かるのですが、この温室付きの広い洋館が2人を守っているようにさえ感じました。

 

そこから日乃出とマユミが「離婚したこと」を報告にやってくるのですが、ここでの空子とこの屋敷に出入りしている花屋・能見との会話で、どんどんと空子の「世慣れない」感じが分かっていきます。

さらに学の旧友で作家の鳥羽の登場で、この兄妹のほとんど共依存のような関係性と、2人ともが本当に「閉じ気味」の人たちであることが分かるわけです。

それは見ているとほんの少し「気持ち悪い」。そして、この「少しの気持ち悪さ」を醸し出した緒川さんと赤堀さんの演技が素晴らしかったです。

もう空子が浮かれて子どもの頃と同じように1人で人形遊びをするシーンなんて、本当にいい意味で「気味が悪かった」ですし、あんなに美しい緒川さんが、ここまで、なんかちょっと気持ち悪く見えてしまうのが衝撃でした。

 

多分、空子の方は本当に自宅から半径1㎞くらいの世界でしか生きていなくて、学はもうちょっとそこから飛び出しているだろうけれど、基本的には似たような感じで、他人とコミュニケーションを取ることが苦手だろうし、実際に他の登場人物との距離感の取り方がおかしいのです。

でも空子も学も、真面目で一生懸命に生きていて、いわゆるこの時代の「普通」の生活に憧れがあるようにも見えました。つまりは好きな人と結婚し、新しい生活を始める、という希望です。そしてそれをお互いにそうあってほしいと願っていたりするのです。でも学は38歳ということが劇中で分かりますので、空子もこの時代に結婚するならば、かなり不利な状況の年齢であることが想像されます。

 

はじめ学と空子を見たときは「赤毛のアン」のマシューとマリアのような関係かと思いましたが、改めて考えるとマシューは口数が少なすぎるにしても仕事には熱心で、やるときはやる人だったし、マリアはちゃんとあの村のコミュニティに属して、いわゆる「社交」的な活動をしているんですが、学と空子にはその部分がかなり欠けているのです。マシューとマリアは「独身」という部分を、生活のために割り切ってお互いに補い合って生きているように感じるのですが、この二人はそういうわけではなくて、お互いに「好きな人と結婚したい」と思いながらも、二人きりの世界に生きている雰囲気が、これまた絶妙に奇妙で違和感を感じさせるのです。

 

それでも空子が精一杯の勇気を振り絞り、自分の望みを鳥羽に告げるシーンは、「空子、がんばったね」と抱きしめてあげたい気持ちでいっぱいでした。

二人は自分たちの問題に気付いているのか分からないし、彼ら二人の性格や生き方を「問題」と呼んでいいのかも分かりませんが、本当に一生懸命に生きているのです。

鳥羽のセリフで「効率的ではないからこそ、(学は)高潔だと思う」みたいな感じのものがあったのですが(覚えていない自分の能力が本当に残念です)、二人の生き方を見ていると高潔かどうかは私には分からないけれど、繕わず自分そのままで生きていけている事実がとてもいいなと思ったのです。

二人は本当に不器用で、あのお屋敷と財産があるからいいけれど、多分、現代社会で働くとしたら、割と大変だと思います。

でもあの二人みたいなところは、持つ人は持っていて、それは私も例外ではなくて、だからこそ、最低な父親に哀しい母親の死という事実がどのくらいあの二人の精神に何かを与えたかはわかりませんが、現状、二人はその事実を受け入れているように見えたし、あの状況が「幸せ」かどうかは分からないけれど、「不幸」では絶対なくて、あのお屋敷の中に閉じこもってさえいれば、それなりに心地よい生活がおくれる羨ましさが終幕にはより強まり、弱い者が弱いまま生きていける「どこか」を見ているようで、最後は涙がこぼれて仕方ありませんでした。狭い世界でも、思い通りにならない人生でも、彼らはあのお屋敷に守られて、そのままの彼らで生きられる。それは一種の「自由」ですらあるように思えたのです。

裕福な人は今でも、学や空子と同じように生きていけているのかもしれません。しかしそうできない人々にも、社会が「あのお屋敷」みたいに包んでくれたらいいのにな、と思わずにいられなかったのです。

 

キレイな見た目を存分にズルく発した瀬戸康史さん、快活でアクティブな魅力あふれる女性を思いっきり見せた瀬戸さおりさん、そしてやっぱりこの人、上手いし格好良いなとしみじみ感じた萩原聖人さんらも光っていましたし、鈴木さんのなんとも言えない存在感と、あのうろんなお屋敷にずけずけ入っていくウザさの塩梅が絶妙だった清水さんも素晴らしく、改めてシアター・トラムでも見てみたかったなと思う作品でした。

その一瞬の幸せを大切に生きる@宝塚雪組「波うららかに、めおと日和」

4/14(火)11:00~ @梅田芸術劇場

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スタッフ
脚本・演出/小柳奈穂子
演出/雑賀ヒカル
作曲・編曲/手島恭子
装置/木戸真梨乃
衣裳/加藤真美
照明/勝柴次郎
音響/大坪正仁
映像/九頭竜ちあき
海軍監修/土肥 修
海軍指導/越 康広

キャスト
江端瀧昌/朝美 絢
江端なつ美/音彩 唯
深見龍之介/縣 千
芳森芙美子/華純沙那
橋本峰/五峰亜季
柴原邦光/真那春人
柴原郁子/麻花すわん
江端大尉/桜路 薫
秋山大尉/稀羽りんと
宇喜多/壮海はるま
熊谷/眞ノ宮るい
宮口大尉/蒼波黎也
市原/律希 奏
関谷さつき/瀧昌の母/妃華ゆきの
関谷ふゆ子/琴峰紗あら
はる江/清羽美伶
はる江の夫/海咲 圭
あき奈/祈菜さあや
あき奈の夫/月瀬 陽
瀬田準太郎/咲城けい
嘉治/絢斗しおん
嘉治の弟/絢月晴斗
秋山潤子/美影くらら
小菊/夢翔みわ
久桃/白綺 華
瀧昌(少年)/結翔 恋
郁子(回想)/桜菜みのり

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原作漫画も

テレビドラマも

全く触れずに、前知識は「戦前のほのぼのした日常を描いた物語」という情報のみで赴きました。

なのでどのくらい原作漫画から割愛されているのかは分かりませんが、現在も原作漫画は続いているので、観劇した今としては、この物語がどうやって終わっていくのか気になりすぎて、最新刊を購入してしまいました。(もちろん特装版。朝美さんのファンの方は購入マストな内容ですよ!)

原作漫画最新刊もかなり厳しい時代になってきていましたが、舞台も時は昭和11年、から始まりますので、普通に5年後には「太平洋戦争」がはじまって、9年後には敗戦するのがわかっている中、どんな「ほのぼの日常」なのか、今、世界情勢がこんなですし、割とドキドキしながら見に行きました。

一幕は、冒頭に縣くんが登場して「第一次世界大戦終結後、ワシントン軍縮条約が締結(1922〈大正11〉年)されて、軍艦製造が制限された。ロンドン海軍軍縮条約の失効(1936〈昭和11〉年)までの15年間を、海軍休日、ネイバルホリデーと呼ばれる」みたいな説明をしてくれるのですが、この辺りがすっと頭に入ってきづらいのが難しいところかな、と感じました。

でもここから「ネイバルホリデー♪」な感じの明るいプロローグが始まって、とりあえず冒頭の口上的なものに対する戸惑いは払拭されて、なんか楽しい、となる辺りは、本当に上手く作っているな、と思います。

なつ美の結婚が一週間前に急に決まったこと、海軍任務のためその結婚式に花婿である瀧昌は欠席し、一度も会わないまま写真で結婚式が執り行われたこと、からの、ようやく瀧昌が帰国して、二人が初めて会う、までを分かりやすくさらっと流してきたのもさすがでしたし、昭和初期が舞台設定ということで、その後、半玉さん(芸者見習い)の二人(小菊、久桃)をストーリーテラーに置いて、昭和初期の流行歌とともに上手下手でラジオの中を視覚化したのも、面白い演出だと思いました。(そしてここの咲城けいさんはいい使い方!ピッタリ!華純沙那さんも色っぽく美しくてうまくてさすがでしたが、他の娘役さんにチャンスを与えてもよかったかなと思います)

なつ美が「のんびり素直ないいとこのお嬢さん」であることは、その言動から割とすぐに納得してしまえるのですけれど、瀧昌のあれはなんて言葉が正しいんでしょうか。「恋愛不器用男子」であることは間違いないんですけれど、まず鉄壁の美貌を誇る朝美さんが「恋愛不器用男子」であることが新鮮だし、その割にめちゃくちゃ心の中ではなつ美に「デレてる」演技が面白くて、なつ美の「天然さ」と相まって、一幕はもう可笑しくて可愛くてキュンキュンでした。

改めて朝美さんへの演技の信頼感は増しましたし、新しくトップ娘役となった音彩さんの演技・歌・ダンスという技術が三拍子そろっていることにも感動しました。その上で、音彩さんがかわいい!

二人の2回目の対面が「鳥羽への新婚旅行」なんですけれど、はじめて瀧昌の白軍服姿を見たなつ美が「かっこいい・・・」と思うのも、朝美さんの美貌なので大納得の心の声だったんですが、和服じゃなくて麦わら帽に三つ編みワンピース姿のなつ美を見た瀧昌の「か、かわいい・・・」という心の声に大共感。

そんなわけで海軍軍人の妻、の大変さなども描きながらも、一幕は会うごとに二人の心の距離が縮まっていく様子がちゃんと伝わるので、キュンキュンしながら見て、文字そのまま「キャーッ(〃▽〃)」な感じで幕間に入るので、本当に楽しいです。

 

多分、問題は二幕で、むずキュンデパートデートからのカフェデート、深見と芙美子さんのツンデレ恋愛なども描きながら(縣くんの見た目で深見の性格は本当罪…ステキすぎる…。私も結婚するなら深見だよ。そして華純さんの芙美子さん、かっこいいしツンデレ具合がかわいい!トップ娘役、二番手娘役の実力の安定感が本当見ていて心地いい。少しだけだったけれど、音彩さんと華純さんのデュエット最高でした!)、音楽も当時の軍歌なども交えて、戦争の影がすこーしずつ、でも確実に濃くなっていっていることもしっかり描かれます。

残念ながら今、現実がこんな状況だからこそ、私は見ながらいつまで呑気にデパートで買い物したり、カフェでケーキとコーヒー味わったりできるのだろうか、ということを考えてしまいました。このような「恋愛に不器用な海軍軍人の新婚生活をコミカルに描く宝塚歌劇」は、決して上演を許されないよな、とかまで考える(ちなみに検閲はやはり太平洋戦争とともに始まったようなので、二幕の設定からは4年後になります)と、この先何があったとしても自分が後悔しない行動を今しておきたいなと思いましたし、何よりこれから厳しい状況にしか進んでいかないことが分かっている「舞台上で演じられている人々」がそれでも「今この瞬間が最後になっても後悔しないように」と、それぞれの小さな幸せを大切にする様子は、今だからこそ、私も心しておきたい、と思いました。

過酷なシーンも描きつつも、舞台は「その瞬間の幸せな時」をかみ締めながらフィナーレに入ります。

白い軍服の群舞には複雑な思いを抱きながらも、デュエットダンスは音彩さんの衣装も振付もとてもかわいかったこともあって、この夢のような時間がなくならないことを心から願いました。

そしてパレード代わりに朝美さんと音彩さんが腕を組んで、組子の間をぐるっと回るのは、まさしく新トップコンビを寿ぐようで、幸せな気持ちいっぱいで見終わることができました。

 

今、この時期にこういう物語を見る気持ちは人それぞれでしょうし、今この物語をキツイと感じる方も少なからずいる気はします。逆に舞台は舞台、現実は現実と割り切って楽しめる方もいらっしゃると思います。これから見られる方はどちらのタイプか考えて、心の準備をされておくのは悪くないかもしれません。

私個人は「盧溝橋事件」を調べなおしたりして、何が起きてどんな感じに戦争に突入していくのか、を改めて勉強するきっかけにはなりました。なので、今、上演する意味というのはあったかなと思うのですが、ただただ夢を見たい派の方には、もしかしたら厳しい演目かもしれません。そして見ていて厳しく感じる演目になってしまったのは、現実の方が変わってきているからだと私は考えています。

原作漫画11巻の特装版にあった、原作者の西香はちさんと朝美さんの対談を読む限り、「戦争」はこの作品のコアな部分でもあると感じましたので、ただ「ほのぼの日常」にせず、二幕にしっかりと「戦争」を入れてきた小柳先生の脚本の方向性は正しかったと思いました。

 

ところで別箱ですし、公演期間も短いので仕方ないですが、スクリーンにセットを映し出す部分が多くて、そこが一番残念といえば残念でした。スクリーンに出演者の影が映ってセットとの違和感が生じる部分が多く、とりわけその上で出演者に照明があたると、スクリーンのセットが半円形に塗りつぶされてしまって気になってしようがなかったので、幼少期の街の背景とか、家の中の映し出しセットはいらないかな、と思いました。なくても十分状況は伝わりますし、どこまで何をスクリーンに映し出すのか、というのは、今後もっと慎重に考えていってくれると嬉しいなと思います。

 

その辺りがどう映るか分かりませんが千秋楽配信は4月26日です。

live.tv.rakuten.co.jp

予定があったら個人的にはもう一度見たいなと思っていますし、その前に音彩さんの舞台写真を早く買い込みに行きたいです!

幸せを守るために、消える人、立ち上がる人@映画版「WICKED part2~永遠の約束~」

待ちに待った映画版「WICKED」二幕、part2、「WICKED for good」もとい「ウィキッド 永遠の約束」をIMAX、MX4D、ドルビーシネマととりあえず3回見たので、ネタバレ全開で感想を残したいと思います。

ちなみにIMAXとドルビーシネマの違いは分からないくらいどちらも映像も音響もよかったです。MX4Dは体験としては面白かったけれど2つに比べると映像と音響は落ちる感じだったので、個人的にはIMAXかドルビーシネマでの鑑賞がおすすめです。

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そして書いていたら長くなってしまったので、目次をつけてみます。

1.WICKEDとの出会いと映画版の評判に対するあれこれ

2006年3月5日、某大学の発表会的なもので私は初めて「WICKED」を鑑賞しました。

劇団四季の初演が2007年6月、ユニバーサルスタジオジャパンでの特別版ショー開幕が2006年7月だったことを考えると、恐らく学生たちがオリジナル版を見て自ら全ての訳詞を手掛けたと思われます。おかげで四季版では変更されなくなっている「ガリンダ→グリンダ」への改名なども私はこの時にちゃんと把握できていたのが本当にありがたいなと改めて思ったりしています。

で、その時の感想はいろいろあったのですが、何よりも「誰もが知っている『オズの魔法使い』を見ながら、あの物語の始まる前にこれだけの世界観を想像したそのアイデアが素晴らしい」と一番強く思ったのでした。

実際には「オズの魔法使い」の前日譚というよりは、二次創作に近いのだと思います。

2006年8月にユニバーサルスタジオジャパンでのショーを見終わってエメラルドシアターから出てきたら、母親に連れられた少年が「ドロシーもトトもかかしもブリキの木こりも出てこない!どこが『オズの魔法使い』なんだ!」と怒っていたことがとても印象に残っています。

ユニバーサルスタジオジャパンでのショーは今回の映画でいうところのpart1(邦題:2人の魔女)部分をかなり短くしたバージョンで、登場人物も限られていました。でもこの時点でありがたくもミュージカル「WICKED」の全ての内容を把握していた私には本当に素晴らしいショーで、だからこそ去年から今年までの一年間という長い幕間に、衣装展示やグリーティングだけじゃなくて、エメラルドシアターを再建して、ショーが再開したらよかったのにな、と思っています。

そうです、映画の「WICKED」はミュージカル版を映画化したもので、part1、part2に分けられましたが、本来2つで1つの作品なのです。スターウォーズやハリーポッターシリーズたちとは違って、part2は続きではなくて単なる「物語の後半部分」なのです。本来であれば、part1にあたる一幕の後に15分から20分くらいの幕間休憩があって、今回のpart2にあたる二幕がはじまり、その最後までを1つの作品として見終わるものでした。

だからこそ一幕は楽しくなくてはならない。なぜなら欧米の観客は一幕がつまらなければ二幕を見ずに普通に帰っちゃうからです。

なので一幕にアップテンポでキャッチーな曲が詰め込まれて、ショーアップされているのは当たり前で、この作品では二幕こそが本来の「テーマ」的なものを背負っていると思っています。

(なので映画版単体を見てpart1に比べてpart2が面白くないという評価は、監督が2つに分けてしまった弊害だったかなと感じています)

そして一幕だったpart1は元々の舞台ファンを取り込めるよう、とても舞台版に忠実で、なおかつ映画ということを巧みに活かしたヴィジュアルを入れ込み、映画としての魅力をこれでもか!と放つ、ことをまず意識していたんだなと改めて思いました。

と言うのも、二幕にあたるpart2は一幕よりももっと「監督の視線」を感じる作りだったと感じたからです。

新たな2曲が映画版のために追加されるだけでも、やはりそれは舞台版とは違ってくるのです。各々にこういう人と捕えていたエルファバとグリンダが、この曲たちが追加されることで、元々思い描いていた輪郭と違っていた、という方も多分いるだろうし、舞台では台詞でしか説明されていなかったことが映像になって、一瞬しか登場しなかった「黄色いレンガ道」がああいう風に描かれ、ネッサローズ周りも時代の変遷に伴って調整され、part1より変更や追加点が多く、その部分に「監督が解釈したWICKED」で、今まで自分の中で解釈し理解していた「WICKED」とは違う、と感じている人もそう少なくない数いるように思いました。

 

2.個人的映画版part2感想

前置きが長くなりましたが、私個人はどうだったかというと、その監督の解釈込みで、大変面白く興味深く観賞しましたし、大好きな作品であることは変わりませんでした。

なんなら監督が付け足してくれた部分で、より好きになったところがあるくらいです。

part1が楽しすぎて、私はこのpart2までの1年間という長い幕間に3冊の本を読みました。

「オズの魔法使い」は子どもの頃、絵本で読んだことがあったのですが、改めて再読すると非常に興味深い児童文学でした。そしてミュージカル版の原作として知られる小説の方は、びっくりするくらいミュージカルとは内容が違っていたのです。改めてこの小説が湾岸戦争をきっかけに創作されたことを感じる内容で、対立する民族と不安定な世界が描かれ、その中で「1人の人間の中に宿った信念や正義がテロリズムにたどり着く」部分などは、この小説のキャラクターと名前、一部の設定だけが独り歩きしているようなミュージカル版が、2004年にトニー賞主演女優賞他2つの賞を獲ったことがちょっぴり皮肉だなと思うくらいでした。(そしてここまでの改変を認めた原作者、グレゴリー・マグワイアがすごいと思います。もちろんここまでエンターテインメントとして成り立つように仕上げた脚本家ウィニー・ホルツマンもすごい)

ということで、原作小説は読まなくても映画版は楽しめますが、もし「オズの魔法使い」をご存じないなら、絵本でもYou Tubeに公開されている映画でもいいので、見ておいた方がいいとは確かに思いました。(私はpart1の前に見ていました)


www.youtube.com

さてpart1の感想で私は

No One Mourns」の時のグリンダの絶妙な表情からもう泣けます。

Yes, goodness knows the wicked's lives are lonely
Goodness knows the wicked cry alone

の歌詞が、今のグリンダに跳ね返ってきていることを感じるのです。

と書きました。その跳ね返りを本当に感じるpart2でした。

ちなみに前述の学生の「WICKED」を見たときに、グリンダ(ガリンダ)を演じていた方が、かわいいタイプではなくて「正統派美人」タイプだったので、「個人的に良かったのが、やっぱり美しい少女の持つ悪意のない残酷性・傲慢・天然の優しさや愛情なんかが描かれていて、さらにガリンダ役がそれを旨く表現出来ていたところだと思う」という感想を残していたのですが、悪意のない残酷性のたどりつくところとして描かれたネッサローズとボックの関係性は、舞台版とは若干違っていることもあって悲劇性を増していたように思います。

(舞台ではネッサローズは当然のようにマンチキン総督を引き継いで、総督の権利行使して既にマンチキンの人々に圧制を強いてボックを強制的に自分の身近に置いているところに、マンチキン総督の死を知らないエルファバが総督に助けを求めにやってきます)

でもグリンダは舞台版でも映画版でも、自分の一言がネッサローズとボックの関係を歪ませたことを知らない。そしてかなり強引な婚約発表から結婚式へ向かう間に、婚約者フィエロが本当はエルファバを愛していたことを知って、そのショックでエルファバを「オズの国共通の悪」に仕立て上げて捕えようとしているマダム・モリブルに「ネッサローズが大変だという噂を流したらエルファバはネッサローズのところに現れるだろう」と告げてしまうのです。その後、起こった「オズの魔法使い」のドロシーがマンチキン国に訪れるシーンにつながるところで、エルファバと再会し、フィエロが捕らえられた辺りから、グリンダは魔法使いとマダム・モリブルの真意に気づいていくわけです。

そして「Defying Gravity」で「Unlimited」と言い放ったエルファバが「I'm limited」と歌いだすところからもうずる過ぎる「For Good」を経て、魔法使いとマダム・モリブルを追い出し、自分がオズの国を、民衆を守ろうと決意したときに、「No One Mourns」で身に付けていた、今回の映画で特にグリンダカラーとして協調されていたピンク色のドレスを身にまとうわけですよ!

ああ、あの隙のない美しいドレスはグリンダの「戦闘服」だったのだ、と思うと、全てをたった一人で背負うと決意したグリンダが切なくも神々しく、しかも舞台版以上に、その重圧と孤独と闘いながらこれから彼女は生きていくのだ、と感じて震えました。でもそんな彼女だから、私はずっと舞台版の時からグリンダ派なのです。

悩み惑い闘いながらも最終的に自分の役割を全うして、愛と共に消えたエルファバの人生も厳しい道であることは間違いなく、その道はそれほど長く続くものでもないとも感じています。ましてや今回は荒廃されたその土地が映像で見えるからこそ、よりそう感じます。でもずっと孤独だったエルファバはもう1人ではないのです。厳しいけれど恐らくは最期のその時まで満たされた時間を過ごすのでしょう。

けれどグリンダはこれから本当に何が起こるか分からないオズの国で、たった一人で民衆を幸せにする使命を引き受けた、この胆力こそが彼女がエルファバと出会い「変わった」ところで、彼女の魅力だと心から思いました。自分の気軽でなんてことない言葉が何を引き起こすかさえ想像しなかった優しく魅力的だけれども浅はかだった少女が「変わる」、変わらざるを得ない状況だったことを思うと哀しい。これを美しいと思ってはいけないのに、美しい、格好いいと思う自分の心が「危ない」のだと知るとき、私はこの作品のすごさに改めて圧倒されたりしたのでした。

 

最後のグリムリーが光って開くシーンと見える「Handprint」にはさまざまな解釈が生まれていますけれど、それはもうこの作品が好きで見た人の数だけ色んな解釈があっていいはずです。私個人は「For Good」のメイン旋律がはじまる前に交わされるグリムリーを渡すシーンで、「You know I can't read this」というグリンダに、エルファバが「well, you have to learn」と言って、映画版ならではの「名前だけの“善い魔女”じゃなく、本物にならなくちゃ」(4/6追記:下記公式SPOT映像にありました。英語は「you can't like be good just a word, has to change things」であってますか?)


www.youtube.com

のセリフの後「because now it's up to you」と歌に入っていくこと、そしてそこまでに映画版で付け加えられた子ども時代のセリフ「I wanna be magical, for real」と新曲「The Girl in the Bubble」を合わせると、グリンダはグリムリーを学ぶ決心をしたのだと解釈しています。子どもの頃の偶然でごまかせた魔法ではなくて、魔法使いが作ってくれた空飛ぶシャボン玉で善い魔女のふりをしているのではなくて、「本物の善い魔女」になろうとする彼女の心がグリムリーに伝わったのではないかと思って見ています。

ちなみにですが、阪急うめだ本店のディスプレイにエルファバの最初の隠れ家にあるこんな「魔法」に対する考えまとめメモみたいなのが飾られていたので、

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これもどうにかしてグリンダの手元に届いてグリムリーの勉強の役にたったらいいなくらいの妄想までしています。

くらいにグリンダ派なのだな、と改めて感じさせてくれたソニンさんのエルファバ派からの視点が興味深いYou Tube動画もぜひご覧ください。


www.youtube.com

ちなみにソニンさんが映画版として褒めている「ワンダフル」のシーンについての監督の意図インタビューが興味深かったので置いておきます。

www.cinematoday.jp

そして、私は舞台版は日本人キャストの3回しか見ていないので、今まで特に後半、グリンダとエルファバの友情を邪魔しやがってフィエロ、くらいに感じていたと思っていたのですが、海外でも何度もご覧になられているソニンさんですら「いい」と仰るのだから、本当にジョナサン・ベイリーのフィエロは尊いのだなと改めて思いました。

3.映画版part2のここが好きだから期待

ところでpart2の改変部分で視覚的に大きいところとしては、動物たちが本当にいて、エルファバが強制労働されられている動物たちを救おうと活動しているところが、がっつり最初から描かれたり、オズの国から逃げ出そうとする動物たちを説得しようと歌うエルファバの新曲「No place like home」(邦題つけられていませんけれど、これはもう「お家が一番」でいいですよね?そしてドロシーが「赤い靴」のかかとを3回合わせるシーンはもちろんないので、part1の「Popular」でグリンダがエルファバに投げつけた自分の赤い靴のかかとを3回合わせるのは、ないからオマージュとして先にやっといた、ってことでいいでしょうか)に伴う映像表現もあるとは思うのですが、個人的にずるいと思ったのは「シズ大学時代の楽しいピクニック」みたいな映像を、サブリミナル効果のように入れてきたところでした。

(ディラモント先生、生きててよかったーじゃなくてごめんなさい笑)

本当にあった出来事かどうかすら分からないあの映像の断片からの、あのラストカットですよ!

 

実は私が最後に弾丸ブロードウェイ観劇旅行(3泊5日)に行ったのは2004年の2月で、その頃、WICKEDはオンブロードウェイの新作だったんですけれど存在を知らず、ただブロードウェイグッズショップみたいなところに行ったとき、このグラフィックデザインのマグカップが目に飛び込んできたんですね。

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(これはオリキャス版のCDなんですけど「A New Musical」って書いてあるのが時代を感じます・・・涙。そして上にかぶせているのは今回思わず購入した↓↓↓です)

どんな作品なのか全く知らなかったのに、マグカップを買おうかどうか迷うくらいに魅力的で、おかげで2006年当時のユニバーサルスタジオジャパンでは読みもしない英語の原作本から写真立てやスカーフまで買うほどの散財をしたんです。

そんな私にあのラストカットですよ!泣きますよ!泣くに決まっているじゃないですか!てかはじめて見たときは、心臓とまるかくらい驚いて、過呼吸気味になりましたよ、どうしてくれるんですか!

ということでプログラムにもどっこにもあのカットの画像はないので、円盤販売される頃にはあのカット画像の入ったポストカードとか、Tシャツとかパーカーとか発売してくれるんでしょうね!お願いしますよ。

そして特別映像には、多分泣く泣くだろうけれど、消しまくったシーンも全部入れておいてください。このピンクの帽子とドレスのグリンダだって見たかったので。


www.youtube.com

そんなわけでpart2も映像の先行発売とともに円盤の発売も、今から心待ちにしています!