こんなことを思ったり。ぼちぼちかんげき。

保護猫と同居人と暮らすアラフィフがビンボーと戦いながら、観劇したものなんかを感激しながら記録。

ボーイミーツガールに見せたガールミーツボーイの物語@宝塚星組「恋する天動説」「DYNAMIC NOVA」

1月24日(土)15:30~ @宝塚大劇場

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ビート・シアター

「恋する天動説-The Wand'rin' Stars-」

スタッフ

作・演出 大野拓史

作曲・編曲 玉麻尚一/高橋恵

装置 清家三彦

衣装 木津未希

キャスト

アレックス[モッズのリーダー格]暁 千星
シンシア[ホテルグループ社長の孫娘]詩ちづる
レスリーロッカーズのリーダー格]瑠風 輝        
ドロシー[ホテルグループ社長]    万里柚美        
クラーク・ミラー[医師] 美稀千種        
ゴードン[シンシアの叔父] 輝咲玲央        
ティモシー[シンシアの兄] 碧海さりお
ピート・ダグラス[王立天文台所長] 朝水りょう        
モーガン観光協会の協会長] 蒼舞咲歩        
エース[テーラー] ひろ香 祐
ジュディー[テーラー]    星咲 希
ロビン[アレックスの弟分] 天飛華音        
バート[アレックスの弟分] 稀惺かずと        
アレックス・ニュートン[ブライトンFCのファン]    大希 颯
キアラ[シンシアの妹]    乙華菜乃        
ケイト[キアラの友達]    碧羽 陽
エリカ[キアラの友達]    茉莉那ふみ
ウィリアム[若き日のドロシーの恋人] 天希ほまれ  

若き日のドロシー  藍羽ひより

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2026年の観劇はじめは宝塚歌劇の新生星組からになりました。

毎回新体制になると本当にずっといたはずなのに見える顔が違ってきて、そこが宝塚歌劇の面白いところでもあるなと改めて思いました。

舞台は1960年代の英国、当時の若者たちに流行っていた「モッズ」とか「ロッカーズ」とかいう文化やスタイルが登場して、実際にモッズとロッカーズの対立・乱闘が、今回のお話しの舞台でもあるロンドン近郊都市・ブライトンであったらしいのですが、とりあえず、そんな歴史や文化を前もって勉強しておくことは一切必要のない作品です。

見ながら初演の「めぐり会いは再び」(原作/マリヴォー「愛と偶然の戯れ」)を思い出しました。あそこまで上質の「ロマンティック・コメディー」にはなっていないのですが、新生星組の「顔見世公演」的な楽しさと可愛らしさに満ちた作品でした。

何が面白いって、オープニングの乱闘でボーイたちを見せておきながら、物語の中心はガールであるトップ娘役なんですよ。そのトップ娘役・詩ちづるさん演じるシンシアの周りにさまざまな問題があって、でもシンシアはトップスター・暁千星さん演じるアレックスに恋に落ちることから物語が軌道を外れて回りだす、のがとても興味深かったです。

しかもシンシアがなぜアレックスに恋したか、というと「自分の夢の価値を分かり応援してくれる人」だったから、という理由もすごくいいなと思いました。

上流階級の結婚にはいろんな事情が絡むもので、今回は「はいからさんが通る」と同じ「祖母の初恋」だったりするので、まあ二番煎じではあるんですが、観客としては理解しやすい。偶然が作用した取り違いと勘違いもシェイクスピアの昔からよくある要素だから、その辺も分かって見られるので、最初からこれは「ハッピーエンドしかない」と分かる物語を終始ニコニコしながら眺められるって、私個人はとても好きな観劇時間の過ごし方なんです。

簡単に言えば、賢くて強いお嬢さまが、賢さゆえに「家のために生きる」決意をしたけれど、アレックスに出会い、視野が広がり恋をして、夢を追いかける決断をする、だけのお話しなんですけれど、これに当時の文化とファッションを散りばめて、可愛くて格好いいビジュアルを作りあげ、ダンス&ソングで盛り上げているので、本当に難しいことは何も考えず、シンシアの運転する車に乗った気分で、ぶーんぶーんと振り回されて楽しめる作品だと思いました。(トップ娘役さんがトップスターを助手席に乗せて華麗な走りを披露するのも恰好よかったし、あのシーンの作り方も好きでした!)

思いましたが、これがどこまで通用するかは分からないな、という感想でした。

突っ込みどころは多々あるので、そこがひっかかって前に進めない方もいる気もするし、何より現段階では特に歌詞が聞き取りにくかったので、ここが改善されて、お芝居のテンポ感が整うと、もっとこの作品の面白さは引き出されそうです。なので、セリフの言い方や間の演出はもっとしっかりやった方がよかったかな、と思います。

その点は、碧海さん、大希さん、乙華さんが上手いんですよね、本当。そしてこの3人もしっかり物語に関わっているところがいい。

もちろんトップスター暁さんはかわいいし、二番手の瑠風さんは恰好いい!そして何よりトップ娘役さんの詩さんがすっごくかわいいのです。(大野先生といえば衣装とセット、なのですが、今回は衣装の方がよかったです。大野先生、本当に英国衣装の可愛らしさを魅せるのうまい。そして詩さんによく似合った衣装だったのもさすが!)もうアテガキここにあり、だったし、アテガキされた役を魅力的に演じられるのもスキルなので、この3人の体制の魅力と上級生から下級生まで、全力で作っているのも伝わるので、お披露目作品としては本当に「アリ」だと思いました。

なので東京公演に向けて、もっともっとブラッシュアップしているといいなと思いますし、とりあえず、私個人は大好きすぎる作品なので配信は絶対見ようと思いました。

live.tv.rakuten.co.jp

ところで、多分、この作品で一番の引っかかりどころがタイトルじゃないかと思うんですが、私個人はこのタイトル、天才だと思ったりしてるんですよ。多分サブタイトルの「The Wand'rin' Stars」、迷える星たち、惑星たち、の方がピッタリしたタイトルなんですけれど、そこを敢えて「恋する天動説」というキュートな日本語の語感にしたのが本当にステキだと思っているのです。

だって「地動説」の太陽を中心に完璧な軌道を描く惑星ではなくて、「地動説」が定着するまで、宇宙の中心は「地球」でその周りを太陽をはじめとする惑星が回っていると考えられていたけれど、星を観察すればするほど、動きが複雑で理論が整わないと考えて考えてたどり着いたのが「地動説」だったわけで、「天動説」の時の惑星たちは、思わぬ動き方をした。

そんな天動説の惑星のように、登場人物全員が知らぬ間に思わぬ動き方をする物語で(そして一応、天文学の話しもでます)、特にシンシアが恋をした時から軌道がおかしくなって、あらゆる方向に回り始めるから「恋する天動説」、めちゃくちゃいいじゃないですか!

でもまあ私が観劇した日も、お芝居が終演してから「何が天動説だったの?」というお声が聞こえてきましたので、いいタイトルではないのだと思うのですが、私は好きなタイトルで、そして万里柚美さんの聡明でできる社長からオチの乙華さんキアラの賢さや度胸、その位置につけるパワーのある人間像までが、とてもいい。本当に女性たちが輝いているのがすごくいい。そういう意味では、本当に伝わりにくいのが残念だけど、そしてもっと伝わりやすくする必要はあったと思うけれど、エンパワメントもしてくれる作品ではないかと思っています。

 

ギャラクシーレヴュー

「DYNAMIC NOVA」

作・演出 稲葉太地

装置 國包洋子

衣装 河底美由紀

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撮影タイムのオープニング前が本当に美しかったです!

いや、ショー自体も楽しかったんですよ。

ただ世界観が「宇宙」で統一されすぎて、セットは美しいけれどあまり変わらないし、もちろんアラビア風とか、スパニッシュやらスーツやらのシーンもあるんですけど、それすら全体のテイストが統一されすぎてて、個人的には少し退屈してしまいました。

そして改めて「BADDY」が苦手だった一因がここにもあったのか、とか気づきました。あれもショーらしく南国風とか衣装やセットは変えてはきてくれたのですが、世界観はずっと一緒で、私はそういう「世界観が統一されすぎたショー」というのがあんまり好きじゃないんだという発見があったので、よかったかなと思います。

もうこういうのは好みですからね。

とはいえ、スーツで歌う瑠風さんが格好良くて、その歌声の中、踊る暁さんもステキで、何よりここの相手役・稀惺かずとさんがめちゃくちゃ色気のある美女でたまらなかったです!


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(4:45くらいからご覧ください。因みに「恋する天動説」は1:15くらいからの娘役さん4人の恋する気持ちの歌うシーンもキュートで素晴らしかったです!)

暁さんと瑠風さんのバランスが本当にいいので、今後バンバン、ショーで、稀惺かずとさんの女役を取り合う二人の男、みたいな宝塚王道ショーシーンを見たいんですけど、次はもう「RRR√Rama」の一本物が決まっちゃってるのが残念なくらいです・・・。

もう若手というより中堅くらいのスターもたくさん育っていますので、この体制がどこまでどう続くかは分からないのですが、この体制で王道のクラシックショーも見てみたいなと思いました。

2025年かんげき振り返り

大変遅ればせながら、明けましておめでとうございます。

知らず知らずのうちに、2025年の観劇納めは11月の雪組になっていました…。

そして2025年末、2026年始もやっぱり不調のまま過ごした更年期が哀しい。

今年は新しく治療方針を探っていく予定ですので、もう少し元気に過ごせることが1年の目標です。

 

というわけで、めちゃくちゃ今さらながら、昨年の観劇を自分の記録のために振り返ってみます。

■1月

シス・カンパニー公演KERA meets CHEKHOV vol.4/4「桜の園

来日版ミュージカル「SIX」

■3月

日本版ミュージカル「SIX」×3回

宝塚雪組「ロビン・ザ・ヒーロー」「オーヴァーチュア!」

朗読歌劇「忠臣蔵

■4月

ミュージカル「ホリデイ・イン」

■5月

彩風咲奈1st Concert「no man's land」

ミュージカル「ウェイトレス」

宝塚星組阿修羅城の瞳」「エスペラント!」

ケムリ研究室no.4「ベイジルタウンの女神」

■7月

Burn The Floor2025

■8月

宝塚月組「ガイズ&ドールズ」

■9月

宝塚星組「ダンサ セレナータ」「Tiara Azul-Destino-Ⅱ」

■11月

KAATプロデュース「最後のドン・キホーテ

EPOCH MAN「われら宇宙の塵」

ホリプロ「舞台チ。-地球の運動についてー」

宝塚雪組ボー・ブランメル~美しすぎた男~」「Prayer~祈り~」

 

さすがに自覚はあったのですが、昨年は観劇する月としない月のバラツキが激しい一年でした。

作品数的には17本と大健闘!

ですが、日本版SIXを3回行ってしまっているので19本。

でもまあ20本下回ったし、来日版SIXもマイルで行ったので1泊の宿代のみ、ディナーショーとか価格の高いものには手を出さなかったのでまずまずかと。

とはいえ、実写版「WICKED」にまあまあお金を突っ込んでしまったので、合計するとさほど例年と変わらないかもしれません・・・。

そしてこうやって並べてみても、やっぱり今年は「SIX」を超えるものはなかったなと思います。凱旋公演も訳詞をブラッシュアップしての再演もいつまでもお待ちしています!

そして、「SIX」の次に楽しかったのが「Burn The Floor2025」だったんですよね。

改めて自分のペアダンス好きを自覚しました。おかげで昨年後半は割と自分自身が踊る方にも少し力を入れてしまった気もしています。

そうそう実は日本語で見るのは初めてだった「ガイズ&ドールズ」も大変楽しかったです。そして私のような観客もいるので、長期スパンで演出工夫しての再演は個人的にはありだと思っています。

こういうボーイミーツガールのザッツブロードウェイミュージカルから「ウェイトレス」が出来てきていると思うので、これもブロードウェイの「歴史と伝統」だと思うんです。そしてそれを見るチャンスはいつでもあるものではないので、タイミングのあう時に見られる状況であるのは望ましいと思っています。

 

パフォーマンスとしては、その「ウェイトレス」の高畑充希さんが本当に素晴らしかったです。「SIX」は、私はクレーヴス推しだけど、パフォーマンスという点ではハワードの鈴木愛理さんに引き込まれました。あのくるくる変わる表情管理の素晴らしさは、なかなか出来るものではないと思っています。

ということで、ここでももう一度、鈴木愛理さんのエル・ウッド、「リガリー・ブロンド(キューティー・ブロンド)」再演を願っておきます。

 

ところで問題は今年、なんですよ!すでにもう見たいものがいっぱい。

観劇はじめは宝塚星組なんですが、宝塚ですら見たいものが多いのはいいことですよね、きっと。

4月~5月の月組「RYOFU」は、演出家の栗田優香先生が大劇場でどんな舞台を魅せてくれるのか興味津々ですし、5月末~7月頭の宙組「黒蜥蜴」は昔、ルヴォー演出、中谷美紀さん主演で見たものが素晴らしく、三島の音楽のようなセリフの数々をどう宝塚歌劇化するのか楽しみです。

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そしてその後の雪組ポーの一族」再演ですよ!

もう脳内でキャスト妄想が止まらない案件なのですが、チケット、取れるかどうかが大問題(涙)

そしてチケット取れるか大問題だけど、1番見たいのが「バーレスク」!

映画が大好きすぎて、これをどう舞台化しているのか、そして、シェールの演じていたテスをいったい誰が演じるのか、早く情報求ム!状態です。

(↑とか言ってたら、1/9夜に公演中止のお知らせがありました...。何が原因か分からないけれど、残念です)

そして2017年のトニー賞で「Waving through a window」を聴いたときから、ずっと見たかった「DEAR EVAN HANSEN」が本当にやっと、日本版が上陸!


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これは新納さんが出演されるので、きっとチケットは手に入るはずと信じて、めちゃくちゃ期待しながら待っています。いくつか自分でも訳詞をしたので、どんな訳詞になるかも楽しみです。

そして昨年全く見に行けなかった歌舞伎なんですが、今年は3月南座の「曽根崎心中」を見に行くことが決まってワクワクしていたら、なんとスーパー歌舞伎もののけ姫」が作られるとのことで、これまた遠征案件だなと思っています。

そしてこの辺の楽しみな演目が夏に固まっているのが、また厳しい。

本当いうとずっと見られていなかった「レベッカ」再演とかも見たいし、「シスター・アクト」再演も見に行きたいのですが、そこまでお金が回るかどうか(涙)

でも昨年も全て違う見どころがあって、面白かったKERAさんの作品は絶対見に行きたい(4月兵庫公演のケムリ研究室no.5「サボテンの微笑み」、楽しみです、まだチケットないけど)ので、チケット争奪戦やら資金繰りやらと闘いつつ、よき作品に出会えるといいなと思っております。

 

実は9月にはアメリカの田舎旅行も予定しています。

なのに世界情勢が、というかアメリカが、というかトランプ大統領がまた大変なことを新年からはじめてしまって、未来が見えないような状況ですが、久々に「NO DAY BUT TODAY」精神で、世界平和を願いつつ、がんばってその日その日を生きて行きたいと思います。

今年もどうぞよろしくお願いいたします。

栄光と没落の間にあったもの@宝塚雪組「ボー・ブランメル~美しすぎた男~」「Prayer~祈り~」

11/29(土)15:30~ @宝塚大劇場 

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ミュージカル・ロマン
ボー・ブランメル~美しすぎた男~』

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スタッフ
作・演出 生田大和
作曲 フランク・ワイルドホーン
装置 國包洋子
キャスト
ボー・ブランメル 朝美絢        
ハリエット・ロビンソン    夢白あや        
プリンス・オブ・ウェールズ 瀬央ゆりあ        
ヘンリー・ピアポント    縣 千        
ウィリアム・ブランメル    諏訪さき
リトル・ジョージ 愛陽みち        
キャロライン皇太子妃 音彩唯
ロバート・ジェンキンソン 華世京        
デボンシァ公爵夫人 華純沙那

 

ボー・ブランメルに関しては全く知らず、ただプリンス・オブ・ウェールズ

に登場した人物と同じ、という認識はあったので、だいたいの歴史背景は分かっていたと思います。

冒頭、狂ったような父親の貴族社会への執着から華やかな社交界シーズンへの移り変わりなどは、さすがワイルドホーンという感じで、上手くミュージカルしていたし、呪いにもなってしまった父親の言葉に苛まれながら、貴族社会の中で成り上がっていくブランメルの姿は物語としても興味深かったです。

ほぼほぼ時代設定も大好きで見ている「ブリジャートン家」(シーズン4、楽しみです!)と同じおかげでそのファッションとともに

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王族と社交界の関り、噂が支配する社会だということも割と理解できていたので、その辺りも面白いモチーフでした。

しかしなぜかいつもの生田先生の作品の感想になっちゃうんですよね。つまり「悪くないけど惜しい!」

父親と幼少時代の自分とかロココの夢あたりの見せ方は面白いのに(そして諏訪さん、愛陽さんの演技も素晴らしかった!)、肝心なところを見せてくれないのですよ。

私が今回、肝心だと思ったのは、ボー・ブランメルの「愛と苦悩」でした。ハリエットと再会してから、ウィンダミア湖の一件で何かしらあって再び愛が戻ったことは理解できたのですが、むしろこの「何かしら」をラブ・デュエットでもデュエットダンスでもいいから見せてくれれば、彼らの立場の危うさにハラハラしながらも、なんとかばれずに「愛」を育めないか、とドキドキと見守ることができただろうし、ばれたらお互いの身の破滅だと分かりながらも逢瀬をやめられない二人をもう少しちゃんと描けば、あのラストシーンがもっと際立つと思うんですよ。だから、惜しい!

湖水地方の森とそこから見えるウィンダミア湖のセットは美しかったし、ベタでもそこに雨がふり雷鳴を轟かせるならば、その中で再熱した二人をがっつり見せるべきだったと思います。そこをふんわりさせちゃったので、悩めるハリエットの歌唱があっても、急にブランメルの部屋でいちゃいちゃ、で見てるこっちは「え、いつの間にそうなっちゃったの?まあハリエットはブランメルに未練あったのはちゃんと描かれてたけど、ブランメル自身もそうだった?」みたいな感じで、そこから噂社会であっという間に追い詰められるのも、「ブランメルの上昇志向と野望」は描かれているのに「ハリエットへの断ち切れない思い」は一切描かれていないので「なんで?」と思わせてしまったら、もうドラマとしては成り立っていないですよね。朝美絢さんの演技力と美貌を持ってしても、描かれていないものを魅せるのは難しいです、妄想で補うとしても。

なんというか「ひかりふる路」で、ロベスピエールの「堕ちていくさま」がなくてがっかりしたことを思い出すと、生田先生が描きたいものと私が見たいものはなかなか一致しないなという印象でした。

ただ貴族社会の辛酸をなめて、それでも生き抜くデボンシァ公爵夫人をしたたかに美しく演じた華純沙那さん、皇太子妃の誇りと怒りを全面に出し、どうやって自分のメンツを保つかを狡猾なのに気高く魅せた音彩唯さんの好演は光り、この二人が非常に魅力的だったからこそ、これが最後の舞台になる夢白さんのハリエットにも、もうちょっと観客の心を掴むシーンを作ってほしかったと思います。

そしてこの二人の女性に対して、ブランメル以外の男性陣がそれほど魅力的に描かれなかったのも気になりました。まあ私は女性を魅力的に描いてくれる方が嬉しいのでいいのですが、縣さんの役なんかはもうちょっと「道楽貴族」風に描いた方がよかったように思います(あのグループに蒼波黎也、紀城ゆりやのキラキラスター格を配置している意味も増したはず)。何よりハリエットとの逢瀬を見てあんな感じで脅すよりも「社交界は噂社会だよ、お前がどうなろうと知ったこっちゃないけど、お前で稼げないなら用無しだしお金は返してね、ヘラヘラ」みたいな方が、貴族の余裕から生まれる傲慢さみたいなものが見えて、ブランメルの野望が際立った気がするのです。そして華世さん演じるジェンキンソンの優しさももっと伝わったはず。

ワイルドホーンの曲はいいけれど、やっぱりこれを話の粗を吹き飛ばすくらい問答無用に、圧巻に歌いあげるという点では、「ひかりふる路」の望海風斗さん&真彩希帆さんレベルでないとできないんだなと思うと、劇団作曲家の中で、出演者がより魅力的に見える、その力を発揮できるキーでの曲で作る方がよかったような気もするところが、もう一つ残念でした。

 

プレジャー・ステージ
『Prayer~祈り~』
作・演出 中村一徳  

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今回もショー!ショーですよ!

なんだかんだ言ってみんな大好き「一徳先生ショー」最高でした。

歌も踊りも古来「神にささげられたもの」。

サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼者、瀬央さんと女神のようだった音彩さんの美しい宗教画みたいなシーンから一転したアフリカの「祈りとダンス」の縣くんのすばらしさよ・・・!素足から大地と炎が見えるようなダンスは本当に見ごたえあったし、日本の祈りと祭りみたいな中詰めは花火みたいな楽しさだったし、韓国の海の男たちが荒波の中で祈る気合の歌&踊りも面白かったです。ずっと小さく刻まれるドラム音や太鼓音はDNAレベルで興奮させられます。

そして一徳先生ショーの、景気よく誰も彼もが渡る渡る銀橋に、もはやショーの順番が思い出せず、久々に「目が足りない」ってなりました。

(とりあえず女神だった音彩さんが、若干ドス聞かせて2階席の奥の奥まで届く勢いでオラオラ私がスターですよ的に銀橋で歌いあげたの格好良すぎた!そして、華世京が堂々と1人で銀橋渡り切り、本舞台で娘役さん4人率いて立派に爆踊りしてたのは泣いた!)

でも何よりよかったのは、フィナーレ近くで舞台はアメリカに移って、諏訪さんの「グッドラック」という言葉のみを覚えている歌からの一連の流れでした。「神にささげられた祈り」が、ここから退団者と観客に向けられたのですよね。

つまり雪組の皆さんが「観客の幸せ」を祈ってくれている。

これは見ていて、聞いていて、本当に元気でます。明日もがんばろうと思わせてくれる。これが「ショーの本質」じゃないでしょうか。

一徳先生ショーはほぼテンプレなので、正直見終わったらもう覚えていないことが多いし、衣装や装置においてもそれほど見どころはないです。でも確実にショーでなきゃ出せない楽しさと幸福感がそこにある。これは本当に大事なことだと思います。1点だけ残念だったとすれば、一徳先生ショーの見どころの一つ「トップ娘役が娘役だけを率いて踊るシーン」がなかったことでしょうか。でも娘役さんだけのワンシーンもちゃんとあって、個人的には毎日見たいショーでした。

ので配信見ようかなと思ったけれど、夢白さんのサヨナラショー付きなので、お値段4,000円か・・・。

live.tv.rakuten.co.jp

 最低限だけど出演者の名前出してくれる円盤買っちゃおうかなと思ったら、発売日までまだまだですか・・・。

shop.tca-pictures.net

でもそんなことを考えるくらいには、大満足の二本立てでした。

何を見たいか@ホリプロ「舞台チ。 -地球の運動について―」

11/22(土)17:30~ @梅田芸術劇場

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原作    魚豊「チ。 ―地球の運動について―」
小学館「ビッグスピリッツコミックス」刊)
脚本    長塚圭史
演出    アブシャロム・ポラック
音楽    阿部海太郎
振付    エラ・ホチルド

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キャスト    
 オクジー 窪田正孝 
ヨレンタ 三浦透子 
グラスなど 大貫勇輔 
ドゥラカなど 吉柳咲良 
ラファウ/シンガー 小野桜介・駒井末宙(Wキャスト)
アントニなど 吹越満 
バデーニなど 成河
ノヴァク 森山未來
ダンサー    
皆川まゆむ 川合ロン 加賀谷一肇 笹本龍史 Rion Watley 半山ゆきの
演奏  

 MUSIC for ISOLATION(竹内理恵、ギデオン・ジュークス)

 

原作はこちら↓↓↓。

実は原作の方は未読で、放映されていたアニメでこの作品に夢中になりました。

原作とアニメはほぼほぼ同内容と聞いていますので、その前提でこの舞台版の感想を書いてみたいと思うのですが、これが非常に難しい。

でも公式ウェブサイト等に掲載されているキャスト欄を眺めてみると、森山未來さんの名前が最後にクレジットされている、ことがこの舞台版の本質だったのかなと思います。

壮大な原作やアニメの世界観の中で何を受け取るかは人それぞれだと思いますが、「変わりゆく世界と価値観に翻弄されながらも生きた名もなき市政の人々の点と点のつながりによって歴史は成り立っている」というようなことを私は受け取っていました。地動説はそれを描くモチーフとして1つ大きくあって、宇宙の中の地球、知性によって良くも悪くも変化する人間、みたいなものを表現しているのかなと想像したりしています。

そしてその壮大な物語を舞台という上演時間にもそこそこの制約がある中で、何をどう描くのだろうかというところが、今回この演目の注目点であったと思うのです。

キャスト&スタッフが解禁されたときは、舞台ファンとしては玄人集団に歓喜し、これは素晴らしい舞台になりそうだけれど、主にムービングを軸としたアートダンスっぽい内容になるのかなと思っていたくらいなのですが、先行している東京公演の感想をちらほら見ていると、「ちゃんとチ。」「ちゃんと芝居、ちゃんと舞台化」みたいな声も聞こえてきて、思ったより芝居寄りなのかなと想像していました。

実際見てみると「ちゃんと芝居」というよりも、「ノヴァクを主人公にしたがっつり演劇をアートダンスで飾り付けている」印象でした。

ノヴァクを主人公にするということは、もちろん、最後の最後、ポーランドのパン屋のあたりのエピソード、つまり原作の帰結の部分がまるっとありません。

この時点で本来の「流転する歴史の中で生きた名もなき人々」的な要素はなくなっています。なので「地動説」にまつわる宇宙の神秘や、それを知性によって解明していくロマン的要素もありません。ノヴァクが主人公なので、フライヤーに書かれたキャッチコピー「命を捨てても曲げられない信念があるか?世界を敵に回しても貫きたい美学はあるか?」が全くもって意味をなしていません。知性と地動説の「チ。」はあまりなく、暴力による血の「チ。」のみが強く残った印象なのです。

脚本と演出の中でどういう折衝があってこの内容になったのか、フライヤーの制作は誰がどう関わってあの内容で先行したのか私には全くわかりませんが、この舞台は元々のこの作品のファンの方々にとっては、可とする方とそうでない方の比率は「そうでない」方が多いかもしれないなと思っています。

どちらかというと、全く知らないでキャストファンで観劇された方の方が楽しめた割合は高そうな気もしています。物語がどのくらい伝わったのかどうかは分かりませんが、贅沢な効果演出(雨、宙づり等)は見ごたえがあって面白かったのではないかと想像しています。

私個人はとにかくムービング、動き方を見るのが好きなタイプなので、一幕はオクジー&バデーニとヨレンタさん辺りのエピソードで飾り付けられたダンサーたちの動きとヨレンタを演じた三浦透子さんの透明感のある歌声を楽しみながらも、個人的にムネアツだったヨレンタさんやオクジーさんのセリフとかがなくて、「やっぱり何が心に響くかというのは、人それぞれなんだな」とか思ったりしていました。

からの二幕は、うすうすもうノヴァクが主人公であることに気づいたので(一幕の幕開きもノヴァクが拷問しているシーンをユーモラスに描くところからはじまったので)、ラストあたりの死闘シーンの森山未來さんの上着の動き方まで計算されたムービングと、「悪役の哀しみ」の演技に大興奮して見ていました。王道のシェイクスピア悲劇、特に「リチャード三世」辺りを思い出しました。いやもちろん「リチャード三世」にはコンプレックスという悪行にいたる大きな理由があって、ノヴァクはただただ与えられた仕事を「それが正義だ」と信じて(悪行とも思わず)やっていた、という大きな違いはあるのですが、逆にこの違いがノヴァクの哀しさを感じさせて、「そうか、この元々の作品をこういう側面で切り取れば、こういう見方もできるのか」という面白味がありました。

ただそう作るなら作るで「ノヴァクの、血の物語」と割り切って、先行フライヤーを制作した方がよかったし、とりわけ一幕が視点がぼやけて間延びしているので「ノヴァクの物語」としてもう少しコンパクトにまとめる方が面白かったように思いました。

音楽との融合具合とダンサーたちのムービングは当たり前だけど本当に素晴らしかったのですが、ステージングそのものがもう少し洗練できた気もするので、全体的に惜しいな、というか、演劇にするのか、アートダンスにするのか、もう少しスムーズに融合させるのか、振り切りが必要だったのかなと思います。

ただヨレンタ爆死シーンのスモークの焚き方とそのライティングとかは本当に素晴らしくて!消え物とライトの使い方とかで「こんなこともできるんだ!」というのはやはり海外演出家のときの方がよく思う気はします。

そして森山未來さんがやっぱりすごくて!最初のダンスもそうですけれど、舞台上に動く壁のようなセットがあって、その壁のセットの上で、ほぼほぼリバースプランクに近い状態でくつろぎながらオクジーたちを見ているみたいなシーンで、そのリバースプランクみたいな状態から体幹だけで起き上がったときには「え!私、今、現実では絶対不可能だと思っていた亜弓さんの『1人ジュリエットでベンチに腰かけて手にとまった小鳥が飛びったとき、下半身を動かさず上半身だけ起こすパントマイム』と同じようなものを見ている!?」とあっけにとられてしまって、ただただもうその身体能力に感嘆してしまったのです。

(亜弓さんの「1人ジュリエット」って何?と思われた方はこちら↓↓↓をどうぞ!)

ガラスの仮面 20

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そう思うと私も「キャスト目当てで見に行ったら面白かった」の一員でした。

そして今回の舞台版の感想の比率を知りたくなっています。

これから生きていくために@EPOCH MAN「我ら宇宙の塵」

11月8日(土)14:00~ @扇町ミュージアムキューブ CUBE01

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クリエイティブスタッフ

脚本・演出・美術 小沢道成

映像 新保瑛加

音楽 オレノグラフィティ

ステージング 下司尚実

 

キャスト

宇佐美陽子 池谷のぶえ

鷲見昇彦 渡邊りょう

早乙女真珠 異儀田夏葉

平家織江 ぎたろー

星太郎 小沢道成

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大変申し訳ないことに、この作品が「第31回読売演劇大賞 3部門受賞[優秀作品賞/優秀演出家賞/最優秀女優賞]」したことも、小沢道成さんのことも知らず、ただただ「池谷のぶえさんが主演」の1点だけに惹かれて見に行きました。

というのも、今までもドラマで拝見していて好きな俳優さんでしたが、年明けに「桜の園」を見たとき、どう見ても若い女性にしか見えないドゥニャーシャに圧倒されてしまったからです。(因みにWOWWOWで放映された映像では年相応に見えるのですが、舞台の上では本当にオペラグラスで覗いても20代の小間使いにしか見えなかったのですよ!まさしく演劇マジックを体感した時間でした)

stok0101.hatenablog.com

そんな池谷のぶえさんが主演する、しかもチケット価格も安く、大阪の新しくできた小さな劇場で演じてくださる、と大興奮して赴きました。

 

物語は父親が亡くなった後、ほとんど言葉を発しなくなってしまった少年が、父親を探しに出かけ、その少年を母親が探す、というシンプルなものです。そのシンプルさが恐らく、人は死んだらどこへ行くのかとか、この宇宙の中で生きているとは何なのか、みたいなことを観客に思い起こさせる力があったのだと思います。

このWEBサイトで見られるように

epochman.com

背景全面がLEDになっていて、そこに描かれる世界観はかわいらしく無限を感じさせてとても工夫されていたし、何より父親を失った少年・星太郎をパペットにして、それを違和感ないくらいに動かすことによって、より想像力を羽ばたかせる世界観を創造されたことは素晴らしく、これが読売演劇大賞の優秀作品賞と優秀演出家賞を獲得したのも納得でした。

まるで絵本のようで、多くの人が心動かされる物語だと思いましたし、観客の分だけ色んな視点や心揺さぶられる部分のある作品だと思います。

でも小沢道成さんの最大の功績は、この主演を池谷のぶえさんにオファーしたことじゃないかと思っています。

そのくらいやっぱり池谷のぶえさんが素晴らしかったのです!

第一声からこの人が深い悲しみの底にいることが伝わってきて、何なら私はこの「宇佐美陽子」が冒頭に語る夫と星太郎の説明が一番涙が出そうになったくらいです。

母親として、幼い子どもがもう死んでいない夫を(しかも自分が「お父さんは星になった」と言ったせいで)1人で探しに行ってしまった心配や焦りも十分すぎるほど伝わりましたが、それ以上に彼女自身が夫を失った事実を受け止め切れておらず、喪失感に打ちのめされている気がしたのです。

彼女が夫を心底好きだったことは、本当に冒頭のさりげない台詞の演技で伝わってきましたし、夫と息子との生活を愛していたことも分かりました。

だからこそまだ立ち直ることが出来ていないのに、年端のいかない息子の母親でいなくてはならない難しさや苦悩をそこはかとなく感じたからこそ、私は、星太郎は父親を探しに出かけたのではなくて、彼なりに「父親の死」を解明して、母親に「大丈夫だよ」と伝えたかったのではないのだろうか、と思ってしまいました。星太郎がパペットで表情が変わらないからこそ、観客は好きに彼の表情を作ることができる。その自由さこそがこの作品の中で秀でていたところだと思います。

 

そして池谷のぶえさん演じる「宇佐美陽子」は夫を失った悲しみでいっぱいいっぱいで、まだ「父親の死」がどういうことなのか理解が追い付かないからこそ言語化することができない星太郎の状態を理解する余裕がないように見えました。だから押し黙ってしまった星太郎に感情をぶつけてしまう、のを見るのが本当につらくて悲しい。大切な人を失うということはこういうことなのか、とただただ圧倒されてしまいました。

そう書き連ねると池谷のぶえさんがとてもヒステリックな演技をされていたように想像されるかもしれないのですが、本当にあるがまま、普通に、等身大の「宇佐美陽子」がそこにいました。

子どもの集まる場所で普通に見かけそうなお母さん、だったのです。

隣の人に語り掛けるかのように自然な声は、幸せなエピソードを語るときは見ている方の口元がほころぶくらいにかわいらしくて、突っ込むべきところは突っ込んでチャーミングで、会話は面白かったりするんです。

でも彼女の中には「喪失感」という狂気はずっとあって、ちょっとしたことでそれが破裂してしまう。その荒げた声さえ過剰なことはなくて、劇場空間の中でちょうどよく彼女の感情が伝わる言い方で声量なんです。

もうそれが本当にすごい。これが読売演劇大賞の「最優秀女優賞」のスキルなのだな、と痛感しました。

扇町ミュージアムキューブ CUBE01は座席数250のいわゆる「小劇場」です。マイクはありません。そして物語自体はとても静かな作品なのです。というか声をはってしまったら世界観にほころびが出ます。

他の役者にそのほころびが見えたのが唯一残念な点でした。

特に物語のオープニング部分は小沢道成さんらが宇宙や星について遊ぶように話し合っているシーンからはじまるのですが、ここの小沢道成さんの第一声が「はった声」に聞こえたのがとても残念だったので、この作品では小沢道成さんは演出に徹された方がよいかもと個人的に思ってしまいました。作られたものは素晴らしかったので。他3名の役者さんも本当によかったのですが、池谷のぶえさんと比べると「鍛えられた声帯、ムービングスキル、空間掌握感」が弱く見えてしまったのです。

なので、ロンドンで現地の方が演じたバージョンも見たかったなと思います。なによりロンドンで上演されたものが「火葬」をどう表現していたのか、「お骨あげ」や「のどぼとけ」をどう解釈し見せたのか、とっても気になりました。

 

多分この作品は「やさしさ」が全体を包んでいるから、多くの人に届くのだと思います。その世界観を完璧に届けるためのブラッシュアップの余地はあるように感じました。池谷のぶえさんは今回でこの役は最後、とのことなので、北九州と金沢の公演でぜひご覧になられることをおすすめしたいです!

そしていつか違うキャストで再演するとき、池谷のぶえさんに頼らずともこの作品が内包しているものをさりげなく全て感じさせる舞台に出会える未来があるといいなと思っています。

夢の中で見る夢@KAATプロデュース「最後のドン・キホーテ」

11/1(土)18:00~ @SkyシアターMBS

作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ

音楽:鈴木光介 

振付:小野寺修二

美術:松井るみ

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配役

ドン・キホーテ(ヘンリー・クリンクル):大倉孝二
看護婦(ローズ)ほか:咲妃みゆ
牧師(サンチョ・パンサ)/ガロン(ダスティーの夫)ほか:山西惇
医者/アルビーのアパートの大家/鏡の騎士 ほか:音尾琢真
果物屋(ビーター)/死神ほか:矢崎広
負傷した患者(兵士)/ペドロ(劇場常連客の少年)ほか:須賀健太
俳優3(ドリー)/果物屋の妹ほか:清水葉月
エドワード(クリンクルの代役)/果物屋の父親ほか:土屋佑壱
患者(商人)/探偵ほか:武谷公雄
クリンクルの次女(モナ)/署名運動をする人ほか:浅野千鶴
ロシナンテ/役人/クリンクル家の執事ほか:王下貴司
ルシオ/俳優5ほか:遠山悠介
俳優1(兼演出家/アルビー)ほか:安井順平
俳優2(ウォルター)/ニセ少年ほか:菅原永ニ
農夫の女房/プロデューサー/腐ったオレンジを買った兵士/クリンクル家の乳母(ドミニカ)/ニセ少年ほか:犬山イヌコ
売店の売り子/アルビーのアパートの大家の妻/クリンクルの長女(ダスティー)ほか:緒川たまき
女因のボス(サマンサ)/クリンクルの妻ほか:高橋惠子

演奏

鈴木光介/向島ゆり子/伏見蛍/細井徳太郎/関根真理/関島岳郎

 

誰もが知っているキャラクター名「ドン・キホーテ」ですが、原作はもちろん数多くある関連作品の中でも、私が事前に見ていたのは「ラ・マンチャの男」だけでした。

stok0101.hatenablog.com

これすらももう9年前に一度見たきりで記憶は曖昧。ただこのミュージカルと似たシーンがあったことには気づいたので、その辺りは原作にあるのだろうなと思います。

ラ・マンチャの男」が原作者が牢獄の中で囚人たちと「ドン・キホーテ」の物語を演じていく、という三重構造に対して、「最後のドン・キホーテ」はヘンリー・クリンクルが、お芝居で「ドン・キホーテ」を演じているうちに、自分を「ドン・キホーテ」と思い込む、という作りになっていました。

舞台もより現代に近づいた英語圏の都市のどこかで、でも舞台の天井に釣り下がる風車の羽根のようなセットがステキで、松井るみさんの舞台美術はステキなときとそうでないときがあるので、改めて舞台美術も演出家の努力が必要なんだなと実感したりました。

そしてドン・キホーテの妄想と現実が交錯するあり方は、本当に見事だったと思います。というかKERAさんの強みがグッと出たように勝手に感じました。

何がどこまで本当で、この起こっていることに続きがあるのか、帰結があるのか分からない酩酊感が「イモンドの勝負」とか「江戸時代の思い出」とかナンセンス・コメディーと近いところもあってとても面白く、はじめて原作を読んでみたいという気持ちになりました。

あとよく分からないドン・キホーテが憧れる「騎士道」も、「ドン・キホーテという役になりきろうとして、そのままドン・キホーテになってしまう」設定なっていることでかなり受け取りやすくなりましたし、さらに「騎士道」には必須らしい思い慕う姫、という設定を、単に「会ったことないけど思い慕う姫がいる」と思い込んでいることにしてある辺りがさすがというか、翻訳物が上演される時には、分かりにくい文化の違いはこのくらいスマートに書き変えてくれるといいなと思います。

そして何より大倉さんのドン・キホーテが素晴らしかったのです!

狂人のおかしみを笑う、というのは個人的にはあまり日本人には合わない方向の笑いだと思っていたのですが、とにかく大倉さんのドン・キホーテがチャーミングで、この人に振り回されながらも魅了されていく人々がいるのもすごく納得できるんです。

ところどころ歌があるのですが、その中でも大倉さんが歌う「ドン・キホーテのテーマ曲」みたいなのが、1980年代の「世界名作劇場」ぽくて、愛すべきヒーロー感を漂わせていて最高でした。

プログラムのインタビューに「歌いたくない人」に手をあげたのに、歌があると書かれていましたが、個人的には歌、少しがんばってもらって、大倉さんの「ラ・マンチャの男」が見たいくらい、大倉さんのドン・キホーテが大好きでしたし、主役としてこれほどまでに愛すべきキャラクターになっていること、それがこの「最後のドン・キホーテ」の大きな意味じゃないかなと思ったのです。

ローズをはじめペドロや、最終的には彼のせいで一番絶望的な状況に追い込まれていく演出家アルビーさえも、ドン・キホーテに魅了される。そのことに全く違和感がないのです。

でも本名のヘンリー・クリンクルは、アロンソ・キハーノと同じく、実際の身内にとってはとんでもなく迷惑を通り越して憎むべき存在に描いてあるところも、とても興味深かったです。というかきっと原作もそうで、ラストシーン近くは「ラ・マンチャの男」を思い出すところも多かったので、「ラ・マンチャの男」ではそういう帰結か、と漠然と見ていたものに、私個人の勝手な気持ちが乗ってしまったのは、一重に大倉さんのドン・キホーテが魅力的で大好きになっていたから、なんだと思います。

人が死んだ時というのは、恐らくその人の多面性が視覚化しやすい時で、家族にとってはひどい人であっても、他人にとってはそうでない場合もある。

そして芝居のラストシーン間近としては、クリンクル家の親族の気持ちになるよりも、「ドン・キホーテの死を悼む側」でいる方が観客としては気持ちがいいのです。

私もローズやアルビーになりたかったのに、ローズやアルビーを「ああ父にはこういう泣いてくれる人もいたのだ」と冷めた瞳で見つめる側になってしまうと、やはりカタルシスは得にくく、芝居と現実はなかなか切り離せないなと久々に思う観劇体験になりました。

ただKERAさんは多分こういう私みたいな人がいることも考えてくれたような気がするのが、このシーンの後に愉快なドン・キホーテのシーンがあったことでした。個人的にはやはりローズがドルシネアに、アルビーがサンチョ・パンサになると宣言するところで終わる方が、分かりやすく劇的であると思うんです。

でもあの世でもドン・キホーテの遍歴の旅が続く感じで、この舞台は終わりました。蛇足だったかもしれない。でも個人的にはそこに私は優しさを感じ、いい作品だったと思いました。

 

役者については大倉さんに終始しましたが、山西さん演じる牧師のそれこそ欲と自分でも理解できない憧れみたいなものの狭間に揺らいでいる感じが素晴らしかったし、音尾さんの「底知れぬ怖さ」がすごかったです。少年そのものに見えた須賀くんは舞台に彩りを加えてくれていたし、ローズに片思いするピーター役の矢崎さんがイケメンのはずなのに朴訥として柔らかな存在でいてくれたのが、なんとなく舞台に安心感を与えている感じがしました。

緒川たまきさん、犬山イヌ子さん、高橋惠子さんはもうさすがとしか言いようのない存在感。この3人ががっつり固めてくれているから、ドン・キホーテもペドロもアルビーも自由に役を生きていたような気がします。

そしてヒロイン・ローズの咲妃みゆちゃんなんですが、声がキレイだし、ミュージカル調のところも当たり前だけど上手いし、何よりドルシネアを演じるところの姫演技は仕草といい、口調といい、さすが、の一言でした。そして宝塚時代よりはいいと思いました。でもやっぱりKERAさんの演出をしても、彼女が私に刺さらなかったのは、ちょっと残念でした。KERAさんの演出だと好きになれるかなとちょっと期待をしていた部分が勝手にあったのですが、どうにも私は好みではない俳優さんのようです。ただ本当に技術は高く、賞賛に値する方だというのは納得できました。

記憶と物語のあいまいさにとまどう@宝塚星組「ダンサ・セレナータ」「Tiara Azul -Destino-II」

9/27(土)15:00~ 梅田芸術劇場

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ミュージカル・プレイ
『ダンサ セレナータ』
作・演出/正塚 晴彦  

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キャスト
イサアク  暁 千星
モニカ  詩ちづる
ホアキン  瑠風 輝

フェルナンド/老人 凛城きら
ローザ  小桜ほのか
クラウディオ  輝咲 玲央
アンジェロ  蒼舞 咲歩
ジョゼ  碧海さりお
アンジェリータ  綾音 美蘭

リタ  乙華 菜乃
ルイス  大希 颯
カロリーナ  茉莉那ふみ

初演はこちら↓↓↓

初演、見ています。だってショー「Celebrity」の方の記憶はうっすらあるんです。

なのに、昔の自分のつぶやきを見ても「ダンサ・セレナータ」の方の記憶が全く蘇らなくてですね…。

なのになぜこれを見に行ったかというと、本当にたまたまお友だちから急病で行けないので代理で見ませんか、というご連絡をいただいたから、でした。本当にすみません。

でも今回プレトップお披露目となる暁さんのことは応援しているので、これも何かの縁だ、晴れ姿を見せてもらおう、そして見れば昔の記憶も蘇るはず、と席についたのですが、一切思い出せなかったのです涙

 

暁さんのイサアクは舞台となっている国の「ルアアズール」という店のショーダンサーで、 詩さんモニカはその国の植民地出身で留学生。舞台となっている国と植民地の関係は悪化していて、植民地の方は独立を目指している状態で、植民地では内乱レベルの戦闘が起こっている模様です。モニカの兄・アンジェロは植民地の独立運動に関わっていて、本国での仲間と結託しようと画策するために訪れている。その動きを見張っているのが秘密警察のホアキン、ということを理解するまでに、割と時間を要してしまいまして、あれ、この作品ってこんなに事情が混みあっていたかな?と気になり、初演映像はなぜか手元にあったので、観劇から一週間後に見直してみました。

 

この公演、夢咲ねねファンとしては、ねねちゃんが黒塗りだったことだけは覚えていて、改めて初演映像を見直すと、良くも悪くも、モニカとアンジェロが黒塗りであることで一番わかりやすかったのが、最初にモニカとイサアクが出会うバーで、モニカとアンジェロ兄妹が軍人から「植民地の人間だな」と絡まれるところ、でした。今回は単にモニカがかわいかったから目をつけたのかな、と思っていたら「植民地の人間」とかいう言葉が出てきて、何?イントネーションとかでわかったの?とか思ったのですが、ここが二人が黒塗りだと、視覚ですぐ理解してしまえるのです。

ただこの辺は私がアップデートしていかなければならない部分だし、視覚で分かりづらい分、正塚先生にもセリフでのフォローをお願いしたい部分ではありました。

あとタカラジェンヌは一般人よりも色白を保っている部分はあるので、個人的には役によっては「日焼け肌」くらいのトーンにしてもいいのでは、とも思ったりもします。

 

そして暁さんのイサアクをみながら、「ああ、これ初演の柚希さんだったら、普通に何も思わず見ただろうな」というセリフが多くて、初日だったのもあって「暁さんのイサアク」がまだこう上手く身になっていない感じというか、改めて初演映像を見たら本当に柚希さんそのもの、だったので、これを「イサアク」という人として作り上げるのはなかなか難しいと思いました。でもきっともう今ごろは「暁イサアク」に血が流れていると思うので、改めて見てみたいなとも思います。

ただホアキンの瑠風さんとの関係性がすごくよくて、それぞれの立場で大切にするものや価値観の違いとか、なんとなくですがホアキンはイサアクみたいになりたい、とも感じている気がして、正塚芝居のいい部分である「男の人間くささ」みたいなところがホアキンから伝わってきて、個人的にはとてもいい発見でした。

大変申し訳ないことに、私はあんまり宙組を見ない(最後に見たのは「アナスタシア」、そしてその前は多分「モンテ・クリスト伯」)ので、瑠風さんのことをほぼ存知あげず、え、こんな素敵な人がいたんだ、と思ったのも大きいと思います。

暁さんとは同期生ということもあるのでしょうが、トップスターと二番手がちゃんと対立できるのって、見ていて安心するというか、それだけで芝居が締まるところがあるなと改めて思いました。そしてこの2人で本当にいろいろな役が見たい、と思ったので、同期生の下の二番手って立場は微妙でしょうけれど、この体制の星組への期待値は断然あがり、大劇場のお披露目公演を今から楽しみにしています。

 

ところで個人的に正塚作品の難点は女性を魅せられないことだと思っていて、芝居の上手い下手じゃなく、もう「自己発光」しないとヒロインとして目立つのが難しいと感じています。

詩さんは初演のねねちゃんよりスキルは高い。そしてもちろん、かわいい。けれどもそもそも正塚先生の演出がモニカという人を魅せるには足りなくて、イサアクとの関係性だけが浮き上がって、モニカが何を考え、どうしたいのか、というところは見えづらいのです。

これ、覚えていないけれど、初演観劇時の感想です。(ダンサ、をダンス、に間違っているのは大目に見てください・・・)

特に今回は舞台初心者あるあるな「袖にハケて安心してしまって、そこで止まり、後からハケてくる人とぶつかる失敗」を詳細にセリフにする必要があったのでしょうか。これじゃあ、本当にモニカが甘い感じで舞台に立っていることが強調されてしまって、マイナスイメージになってしまうじゃないですか。初演では普通にぶつかった、としか言及されていないので、何かしらのハプニングでそうなったんだろうな、と思えるから、なぜこう変えたか不思議です。

だってモニカはお嬢様で小さい頃からダンス教室には通っているから、これまで発表会なんかもあったと思うので、今回セリフにあったようなミスはしないと思うんですよ。

本当、この辺りは正塚先生になんとかしていただきたい。

(もしかしたら、もう元に戻っているかもしれませんし、戻っていることを期待!)

でも逆に「自然発光タイプ」には美味しいのが正塚作品で、最も何をしたいのか分からないリタ役の乙華菜乃さん、今回はじめて認識しましたが、妙に目立つ。さらに芝居がよくてコメディパートを上手くこなしているので、下手したら「うっとおしい」と思われそうなこの役を、「なんか可愛くて面白い」まで持ってこれているのが本当にすごい。しかも彼女とルイス役大希颯さんの、セリフの間がいいものだから、クスっと笑える部分が増えたのは、今回の再演のいい点だったと思います。

ただ本来二番手娘役であるところのアンジェリータは、本当に難しい役だったんだな、と痛感しました。全体にヒステリックに見えてしまったところが残念です。

ところで、全く思い出せなかった初演の自分のつぶやき感想でこういうのがありました。

そして今回も観劇直後にこんなことをつぶやいていました。

この初演の人物関係図

archive.kageki.hankyu.co.jp

を見ないと混乱してしまうようなストーリーの主軸にほぼほぼ関わってこないのが、ルイスとカロリーナなんですけど、「温室の薔薇」は愛だけでは生きられない、というのは大好きなテーマなので、このサイドストーリーは見たいよな、と思う部分があるのは、正塚作品の面白いところだったりするから、改めて偶然とはいえ、忘れ去っていたこの作品を見られてよかったな、と思います。

再演を見ることで初演を見直して、改めてイサアクという人の傷や不器用さ、繊細さに気づくところもあったので、まあ、なぜこれを再演したのとは思いますし、もっと詩さんが光る演目があっただろうとも感じますが、とりあえず暁・瑠風体制を打ち出す、という目的は果たせたのかなと思いました。


カルナバル・ファンタジア
『Tiara Azul -Destino-(ティアラ・アスール ディスティーノ)II』
作・演出/竹田 悠一郎  

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で、ショーなんですけれど、私これを残念ながらチケット取れず泣く泣く配信だけ見たんですね。

で、その時に特に中詰めの戦隊ものみたいな衣装が、大好きな舞空瞳さんの最後なのに、なぜこんなのを着せるんだ、と悲しくなってしまって、多分東京公演の千秋楽配信は見なかった気がするのです。

そんなわけでショーに関しても、ほぼ知識なし状態で見たのですが、とりあえずショーは生で見なきゃ、と改めて思いました。

セットも実際見てみたら、多分、全国ツアー用に簡略化はされているだろうけれど、配信見たときほどの残念感はなくて、全体にとても楽しく見ました。

そして真ん中、暁・瑠風がでかい、スタイルいい!

ショーの変な衣装ってやっぱりタッパあってスタイルいい方が見栄えするので、まずそこで大成功ですよね。 

そして瑠風さんがスター!歌は上手いと前情報で聞いていたのですが、大柄なのでダンスも映えるし、なんかそれこそちょっと湖月わたるさんを思い出させたんですよね。

すごく星組にあっているというか、もしかしたらイサアクも瑠風さんの方がニンだったかもしれないなとまで思ってしまいました。(けんか強そうだし、俺様似合いそう笑)

ということで何と暁さんを寿ぐつもりでいったら、瑠風さんに堕ちて帰宅の途についてしまいました。

そして、ありうたコンビは身長差萌えする層にはかなり受けるはず!

すみません、私にはこの萌えがないので、芝居もあわせて「うたち、ちっちぇえ」て感想だったのですが、それでも、ホリゾントめいっぱい使って踊る白い衣装の二人のデュエットダンスがキレイで、ああー新しいコンビの誕生っていいなあ、と幸せな気持ちになりました。

 

ということで最終地仙台まで、怪我なく元気で公演が終えられることを願っています!