5/15(木)18:00~ @梅田芸術劇場

キャスト
ジェナ 高畑充希
ポマター医師 森崎ウィン
ドーン ソニン
ベッキー LiLiCo
アール 水田航生
オギー(Wキャスト) おばたのお兄さん/西村ヒロチョ
カル 田中要次
ジョー 山西 惇
ルル 瀬川真央/本田涼香/山口晴楽
岩﨑巧馬 茶谷健太 堤 梨菜 寺町有美子 照井裕隆 中嶋紗希 永石千尋
(スウィング)中野太一 中原彩月

クリエイティブ
脚本 ジェシー・ネルソン
音楽・歌詞 サラ・バレリス
原作映画製作 エイドリアン・シェリー
オリジナルブロードウェイ振付 ロリン・ラッターロ
オリジナルブロードウェイ演出 ダイアン・パウルス
共同制作 バリー&フラン・ワイズラー
演出補・振付補 アビー・オブライエン
音楽スーパーバイザー ライアン・キャントウェル
翻訳・訳詞 高橋知伽江
日本版演出補 上田一豪
演出家通訳 鈴木なお
音楽スーパーバイザー通訳 天沼蓉子、寺田ゆい
インティマシー・コーディネーター 浅田智穂
ハミルトン旋風が起こった2016年の(私の中の)伝説のトニー賞。
その際にノミネートされた作品で、賞獲得にはいたりませんでしたが、なんか面白そうと思ったのが「ウェイトレス」でした。
なので本当は日本版初演もすごく見に行きたかったのですが、間違いなくお財布の都合で見逃していたので、再演、本当に嬉しかったです!
(そしてこれをやりたいと言って、日本上演を成り立たせてくれた高畑充希さん、本当にありがとうございます!)
しかし相変わらずお財布は厳しかったので天井桟敷で見たのですが、逆に高畑充希のすごさを身に沁みて感じられたかなと思う観劇でした。
元々の原作はこちらの映画らしいですね。
見終わった今、映画も見たいけれど、歌とダンス抜きでこの物語をどうやって楽しくしているのか想像つかなくて、ちょっと見るのが怖い気もしてます。
そのくらいまず主人公ジェナの夫がひどい。
公式ホームページには「魅力はあるが」と説明されていましたが、梅芸の3階席ではその「魅力」は全く伝わってこないだけに、ただただジェナの「怯え」が伝染してくるのです。そして表面上は明るく冷静にそして何気なく過ごしているジェナの「怯え」を、3階まで伝える高畑充希が本当にすごかったです。
ということで、この先、多分、高畑充希がすごい、しか繰り返さない気がしますけれど、一応感想を書いていきたいと思います。
まずこの作品の面白いなと思う点は、場所はアメリカ南部の田舎町とまあざっくり紹介されているのに時代については言及されていないところです。昔っぽいのに、今そこにある現在にも見える(何かあったら電話して、という割に、出会い系アプリ的なものはありそうな設定なのですよ)。時代をこういう風に自然にぼかすのはなかなか難しいように思うのですけれど、あっさりそれができているのが、まずすごい。
開演前の「携帯切ってねアナウンス」も歌になっていて、めっちゃくちゃ楽し気に見せておきながら、いざ物語が始まってみると、等身大の3人の女性としょーもない男ばっかり出てくるわけです。
その中でもジェナの夫・アールは、もう拗らせ具合もリアルなDV夫で、ジェナは別れたい、でもお金がないから別れられない、でもいつか、とパイ作りに逃避しているわけです。
驚いたのがジェナはダイナーのウェイトレスだけど、パイ作りの全てを任されていて、なのにお給料はたいしてもらってなさそうなところ。やりがい搾取、という言葉が若干頭をかすめるんですけど、これをずっとかすめる状況で置いておくというのも見事な仕掛けだなあと思いました。
そんな中、望まぬ妊娠、つまり夫に酔い潰されたて犯された(これも性暴力です。結婚していても同意なしの一方的なSEXは性暴力に当たることを「プライマ・フェイシィ」で学びました)結果の妊娠に気づくところから物語ははじまっちゃうんです。
パイ作りの大会で優勝すれば2万ドルがもらえる、ことを教えてもらうわけですが、パイ作りは得意でも、そこで優勝できる腕前なのか自信がない、そしてお腹にいる赤ちゃんを喜べない自分に葛藤しているからこそ、ポマター先生との不倫に逃げちゃうのが、すごく自然に見える。これもすごいなと思っています。
そのポマター先生とのデュエットソング(Bad Idea)もなんていうか、もう、こんな内容のデュエットソングある?みたいな内容でめちゃくちゃ面白い!
お恥ずかしながら男女の仲的なものには何の経験も知識もない私には、本当すごく興味深かったのですが、これ、普通に恋愛とか結婚とかされている方にはどう見えるのか、それも気になりました。
逆にですね、欧米産ミュージカルでは初めて見たかも、なドーン役には激しく共感しました。恋愛市場に一度も参戦したことがない身だからこその思い込みとか自己肯定感の低さとかとまどいとか、アラサーの頃の自分を見ているようで、だから同じ道を選んでほしかった気はするのですが、まあそうは単純にいきませんね。
あとベルのようにポイント的に鳴り響く「シュガー」という音の使い方も新鮮で、セットも工夫されていて、本当いろんなところに感嘆しながら見ていたんですけど、セットはトニー賞の映像を見る限り、やっぱり追いついてないな感、ありますね。涙
惜しいのはやっぱり音楽で、もちろん見ている間は楽しいのですが、終わった後にめちゃくちゃ印象に残るかというと、そうでもないのが、テーマがいいだけにもったいないかなと思いました。
でもトニー賞でも披露されていた二幕の「She Used to Be Mine」は圧巻!
そしてこの歌を表現し梅芸3階までその繊細な演技を届ける高畑充希さんがすごすぎました!
今の状況を打開したいなら、少しでも幸せになりたいなら、怖くても最初の一歩は自分で踏み出さなくてはならない。
その先にあるものはそれぞれだけど、この作品は「その先」に少し夢を見せてくれるのです。
ポマター先生の森崎ウィンくんはもちろん、ドーンを演じた信頼と実績のソニンもものすごくよかったし、LiLiCoさんもそこの歌唱力にくらいつくくらいにはちゃんと歌えて、かつやはり見た目の派手さがすごくこの役に活きていたと思っています。
そこへいくとやはり山西さんとか、歌は気になるところがあるのですが、それでもこの作品を締める演技の塩梅がすばらしい。この人がこうでないと、このエンディングにはならないので、歌も大事だけど演技もね、と心から思いました。
ということで、配信、アーカイブもあるので、ちょっと見てみたいなという方にはおススメします。アーカイブある分、高いけど、アーカイブないと見られない日程なので、ありがたいです。
ただ映像で見てもあの3階まで届く高畑充希さんのすごさ、は伝わってこないだろうなと思うので、本当、見に行ってよかったです。
そしてせっかく時代をぼかしているので、ぜひとも再演も重ねてほしいなと思います。
この広さを埋める知名度と実力を兼ね備えた高畑充希さんみたいな存在はなかなかいないけれど、逆にこの作品、もう小さい劇場の方が似合うとも思うんですよ。
なので、アラサーくらいの歌唱力、演技力には文句なしだけど、大劇場を埋める知名度だけないよ、という実力派ミュージカル俳優たちの登竜門的な作品になって愛されていくことを願っています。
そしてもしそうすることでチケット代を抑えることができるなら、個人的には高校生くらいの人たち、特に男子に見てほしいなと思う作品でもありました。セクシーシーンもあるので、それで吊りながら、でも大切なことを教えてくれる作品でもあると思うのです。
ところで、今回、作品とコラボということで、アップルパイの販売がありました。これ自体は世界観を広げてくれるので、すごくいい取り組みだなと思ったし、アップルパイ、美味しかったです!
でもこの作品で登場する魅力的なパイの数々(とりあえず私はあのチョコレートとパッションフルーツのパイが食べたい!)は、いわゆる日本の「タルト」に近いんですよね。なので本物の「アメリカのパイ」を提供したら、よりこの作品の世界観が伝わる気がするんですけど、難しいだろうので、私がお気に入りの色んなパイを作ってくれるアメリカ人シェフのインスタを貼り付けておきます。
あー、キーライムパイ、今年は食べられるといいなあ。
