5/18(日)15:00~ @宝塚大劇場
ミュージカル『阿修羅城の瞳』
クリエイティブ
原作/劇団☆新感線「阿修羅城の瞳」(作・中島 かずき)
原作演出/いのうえひでのり
潤色・上演台本・演出/小柳 奈穂子
キャスト
病葉出門(わくらばいずも) 礼 真琴
闇のつばき 暁 千星
四世 鶴屋南北 美稀 千種
十三代目 安倍晴明 ひろ香 祐
美惨(びざん)小桜 ほのか
阿餓羅(あがら)白妙 なつ
吽餓羅(うんがら)紫 りら
安倍邪空(あべのじゃくう)極美 慎
安倍雷王(あべのらいおう)碧海 さりお
安倍鳴王(あべのめいおう)夕陽 真輝
安倍震王(あべのしんおう)大希 颯
安倍毘沙門(あべのびしゃもん)天飛 華音
安倍大黒(あべのだいこく)稀惺 かずと
桜姫 詩 ちづる
火縁(ひえん)澪乃 桜季
水誼(みなぎ)七星 美妃
樹真(じゅま)二條 華
谷地(やち)都 優奈
呼鉄(こてつ)綾音 美蘭
笑死(えみし)瑠璃 花夏
少女 茉莉那 ふみ
大人気の礼真琴さんサヨナラ公演で、かつ劇団☆新感線の人気演目を宝塚化、ということで、絶対見られないだろうと思ったのですが、阪急交通社さまの貸切公演に応募したところなんと当選してしまい、観劇が叶いました。
とはいえ、実は本家本元の劇団☆新感線版「阿修羅城の瞳」を見たことがなかったので、ありがたい配信600円で先に予習してから行きました。
2003年版、天海祐希さんが「闇のつばき」を演じたバージョンです。
これを見たときの感想が「分かるけど、分からない」でした。
「恋をしたら鬼になる女」というのは分かるのですけれど、だからと言って最後のつばきの行動が、理屈的には理解できるけれど、感情的にそうあってほしくない、というのは、やはり天海祐希さんが演じられていたのかもしれません。
恋をしたら、というか、恋情が恨みに変わって鬼になる女は好きなんです。
一番好きなのが、この作品の中に多分入っている「桜の森の桜の闇」。
「雨月物語」の「浅茅が宿」がベースになっているのですが、「浅茅が宿」の宮木にあたる白衣の選択がすごい。ああ、これが「待つ女」の心理か...とものすごく納得していて、未だに大好きな話しなんですけれど、ここにあるのは女のリアルで、「阿修羅城の瞳」にあるのは男のロマンなんですよね。
(そしてさらに私は「鬼」というテーマではやはり木原敏江さんの世界観が好きだなとは思いました。鬼と人間、マイノリティとマジョリティ、差別と特殊能力が引き起こす哀しみと憎しみの連鎖やそこから生まれる愛情なんかは、木原敏江さんの作品からの方が私は受け取りやすかったです)
今回のプログラムで劇団☆新感線の演目の中で宝塚でやるなら「阿修羅城の瞳」しかない、なぜならこの作品はラブストーリーであるから、と演出のいのうえひでのりさんが書かれておられましたが、そう考えるとラブストーリー主体の演目というのは劇団☆新感線には少ないのかもしれません。
しかしこれをトップ娘役不在の今やる意味、というのは考えてしまいました。
2003年の劇団☆新感線版「阿修羅城の瞳」は175分ありました。これを宝塚歌劇版は95分に短縮されています。そのため、皆大好き、かどうかは知らないけれど、私は大好きな劇団☆新感線の常連キャラクター抜刀斎は登場しません。その他もろもろバッサリとカットされて、さらには主要キャラクターの心情を吐露する歌も追加されています。でもしっかり「阿修羅城の瞳」でした。
構成が時系列になっているのも、良し悪しは別として、短縮せざるを得ない中でストーリーを分かりやすくするのにとても効果的だったと思います。
2003年の劇団☆新感線版にたっぷりあった笑いの部分はほぼカットされていましたが、桜姫の詩ちづるさんがやりすぎない可愛らしさで笑いの部分をカバーされていたのと、阪急交通社の貸切アドリブをたんまり入れて、その辺は補っていたように思います。
晴明先生と南北先生あたりの出番がめちゃくちゃ少なくなってしまったのは残念でしたが、まあこれくらいでも話はちゃんとつながるのか、とびっくり。
あと殺陣がちゃんとしていたのも素晴らしかったですね。もうこの辺は本当に礼さんの身体能力の高さに唸るばかりでした。
そしてもやっとしていた出門とつばきの関係も、宝塚歌劇化されることでファンタジックに感じられて、大詰めシーンの見せ方含め、いい感じにスペクタクルになっていて、本当によかったです。このあたり、さすがですよ、小柳先生!
しかしこの壮大な大詰めラブシーンこそ、宝塚の伝統美トップコンビで見たかった・・・!いや、暁さんは可愛くて綺麗で本当に素晴らしかったのですよ。ただ本当に命がけのラブストーリーだからこそ、トップコンビで演じるバージョンも見てみたいので、ぜひともまた再演をお願いしたいところです。
あと邪空の出門への執着が、歌とともに少年時代を見せることで分かりやすくなっていたのもさすがというか、本家の邪空もこんな気持ちだったのかどうかは分かりませんが、人間関係を見せるという点では、個人的にはすごく見やすくなったなと思いました。なので極美くん、スポンサーさまもついたし、花組への組替えも待っているところなので、とにかく「発声と滑舌」を、礼さんが最大限に実践されているこの間にあともう一歩しっかり身につけてくださることを願うばかりです。
礼さんは集大成にふさわしい役で本当に素晴らしかったです。礼さん主演の作品を振り返っても、今まで一番好きな役は「柳生忍法帖」の柳生十兵衛だったので、シックな着流しをさらりを着こなす役が実は一番似合っていたのではないか、と最後の最後に思いました。
そして憎い最後のセリフ。あの厳しいコロナ禍を綱渡りのように駆け抜けざるを得なかったトップ時代を思い出すと、本当に「おつかれさま」の気持ちでいっぱいで、惜しみない拍手を捧げました。
ファンタジック・タペストリー『エスペラント!』
作・演出/生田 大和
ショーも「青い星、地球」をテーマにきれいにまとまって、ノンストレスのいい作品でした。小桜ほのかちゃんがほぼトップ娘役扱いになっていたのも嬉しい配慮でしたし、踊れる礼さんの横で踊る暁さんの迫力はさすがで、礼さんもゴールが見えているからか、いつもよりも少しだけ肩の力を抜いてショーを、歌い、踊ることを楽しんでいるようにも見えて、最後のソロダンスも、歌も気持ちよく見せて聴かせてくれて、本当に110周年が誇る実力派トップスターの力を堪能しました。
そしてその実力派トップスターと冒頭に一緒にタップダンスを踊るという構成だった、初舞台生ラインダンスが素晴らしかったです。111期生の方々も緊張もあったけれど、舞台で踊るモチベーションもあがったのではと思います。これからの活躍を期待しています!
最後に両方ともいい作品に恵まれたことも、礼さんの実力があったからこそだと思います。
後は配信を見るのを楽しみにしているので、最後まで、無理なく完走されることを心より願っています。