こんなことを思ったり。ぼちぼちかんげき。

保護猫と同居人と暮らすアラフィフがビンボーと戦いながら、観劇したものなんかを感激しながら記録。

サイド・ショウ

4月11日(日)16:00~@東京芸術劇場 中ホール

板垣 恭一/演出
貴城 けい/ヴァイオレット・ヒルトン
樹里 咲穂/デイジーヒルトン
下村 尊則/テリー
大澄 賢也/ボス
伊礼 彼方/バディ・フォスター
岡 幸二郎/ジェイク

実在のシャム双生児ヒルトン姉妹が、見世物小屋から見出され、ヴォードヴィリアンになるまでの人生をミュージカル化。力強いナンバー彩られた興味深い作品だった。
何より冒頭の、「サイド・ショー」と呼ばれるフリークスたちの見世物小屋のシーンが、奇妙に美しく、ダンスも力強く、一気に作品に惹き込む。
しかし残念ながら、その最初のシーンのインパクトが強すぎて、後のシーンがどうしても間のびしている感が否めなかった。何より全編歌、のミュージカルなので、旋律などはとても良いのだけど、会話の部分も全て歌になるからこそ、スピード感、というのが削られてしまって、ワンシーンワンシーンがとても長く感じられたのが残念だった。
また一人で心情を歌いあげるナンバーも多く、確かに出演者たちは技巧者だけれど、それが続いてしまうと、どうしても飽きがきてしまう。
だから、今回良かったのは、主役がシャム双生児で二人いたことだった。
一人で見せられるものには限界があるけれど、二人いれば歌もパフォーマンスも幅が出る。
二人の歌はどれも良かったけれども、やはり最後の「I Will Never Leave You」は圧巻!
甘い夢を捨て、厳しい現実に体当たりでぶつかっていこうとする彼女たちの姿は、哀しくもとても力強く、共感し、心を打った。

何よりこの二人の体型、体格が似ており、双子、と言われてもそれほど違和感がなかったところも良い。また、貴城けいはそれほど歌が得意な俳優だと思っていなかったのだが、今回はそこそこ聞かせられるレベルで驚いた。共演の樹里咲穂の支えもあっただろうけれども、これは嬉しい発見。
他の出演者はみな実力者揃い、とりわけ、大澄賢也がこういう役をやらせると実にいい味を出す。何よりダンサーなので、立ち居振る舞いがスマートだ。ダンスの見せ場がなかったのが甚だ残念なくらい。一方、残念だったのが伊礼彼方。見た目、歌、芝居は申し分ないのに、とにかく舞台上での動き方がまだまだ素人レベル。演出側の不足もあるだろうが、ミュージカルで活躍の場が広がっている今、もう少し舞台上での立ち居振る舞い、というものをレッスンしてもらえたら、と思わずにはいられなかった。

今回はアンサンブルの精度の高さも目を引いた。このような実力あるアンサンブルがあると作品の安定感が増して、より魅力を伝えてくれるのも良かった。
また、セットはこれ以上もなくシンプルで、判断つきかねるほどだったけれど、衣装と色バランスは可愛く美しかった。