7/30(火)18:30~ SkyシアターMBS
キャスト
東山義久/三浦宏規/蘭乃はな
穴沢裕介/木村咲哉/鈴木凌平/髙橋慈生/田村允宏/長澤風海/中塚皓平/早川一矢/MAOTO/望月凜/山﨑感音/山野光
MUSICIAN
Piano 松本 俊行
Violin 張 大赫(東京公演)
Violin 崔 樹瑛(大阪公演)
Cello 菅野 太雅
Marimba & Percussion 吉田 開
スタッフ
総合演出 植木 豪
共同演出 中塚 皓平
企画・構成 栫 ヒロ
音楽 la malinconica
総合振付 大村俊介〔SHUN〕
振付 原田 薫/森 優貴/長澤風海/木野村温子/中塚皓平/植木 豪
主催
読売新聞社/M・G・H/サンライズプロモーション東京/関西テレビ放送
製作
M・G・H/サンライズプロモーション東京
個人的に一番感想を書くのが難しいのが「ダンス・パフォーマンス公演」なんです。
ダンスが大好きだけど自分は踊れないので、これだけ踊れる人たちが真剣に力を尽くして踊る公演となると「すごい」以外の感想がないのです。
ただ今回大阪は平日3公演のみで、平日働き人が有休を申請せず見に行けるのがこの日しかなく、定時で仕事あがって駆けつけても開演10分前だったので、物販の列には並べず、プログラムを買えなかったのは残念です。
というのもせめてどのシーンがどなたの振付か知りたかったからです。
(アフタートークでM5.光るボールを使ったシーンが植木豪さん振付というのは知れました)
改めてプログラムの電子販売化がもっと一般的になればいいなと思いました。
アフタートークの司会進行は鈴木凌平さん、Wikipedia先生によると大学でジャズダンスをはじめて、2016年東宝ミュージカル「1789〜バスティーユの恋人たち〜」でミュージカルデビュー、らしいです。
このように「ダンス」という括りはあるものの、その種別も年齢もさまざまなダンサーさんたちと振付家さんたちで構成されていて、それがこのダンス・パフォーマンスの特徴で面白さかなと思いました。
全体にはコンテンポラリー的な振付なのですけれど、三浦くん他バレエ出身者が踊ればバレエ要素が増すし、シアターダンス系の方はそういう見せ方をするし、ブレイクダンス系の方はやっぱり「技見せ」的要素があったりするものの、踊ることに対する愛みたいなものが共通していて、踊ることでしか見せられない何か、を表現している公演だったなと思います。
今回女性は蘭乃はなさん(宝塚歌劇団出身)お一人だったので、圧倒的に男性群舞が多かったのですが、個人的には東山さん、三浦さん、蘭乃さんの三角関係っぽいダンスが、ランボーとヴェルレーヌ、その妻を彷彿とさせて非常に楽しく観賞しました。
そしてこれができるのも、三浦くんの踊りがバレエベースで優雅で繊細だからというのと合わせて、ご自身が若くてかわいいから、なんですよね。
そしてラストの「ボレロ」はやっぱり圧巻。ボレロという曲が本当に踊るための曲というか、踊りとともにある曲なんだなと実感しました。
音楽はミュージシャンの方が生演奏されているのも「ダンスは音楽とともにあるもの」だからかなと勝手に思ったりしていました。
ところで、今回この公演を見て、こんなにミュージカルに出演しているダンサーがいるのに、そして東山さんご自身も「エリザベート」のトートダンサーからミュージカルで主役を演じるまでそれなりの時間を要したのに、三浦くんがこんなにもあっさりと「ミュージカルスター」になったのは何故なんだろうと改めて思いました。
下記インタビュー記事で述べられている技術の違いについては、わたしのような素人ではほぼ分かりません。
むしろ今回のダンスパフォーマンス公演になると、三浦くんのバレエ基礎が若干マイナスに働いているというか、「もうちょっと東山さんのようにポイント押さえて“魅せる”に走ってもいいんだよ、かっこつけていいんだよ」と思うところはありました。
本当に純粋に実直に「踊り」に向き合われていた感じがしたので、もっと分かりやすく観客へアピールしてもいいのに、と思ったのです。
でも三浦くんはじめ若いダンサーさんたちが、東山さんをはじめとする年代の人たちの背中を見ながら、ダンスが軽視されがちな日本のミュージカル界で、このようなダンスパフォーマンスを引き続いてやっていってほしいな、と心から願ってしまう熱い公演だったように思います。
あともう一ついいなと思ったのが、席の割り振りです。
いい席は高く、S席はまあ通常価格くらいで、A席はそこそこリーズナブルで、「どこでも見やすい」がSkyシアターMBSの謳い文句ですが、縦に長い劇場なので物理的な距離感分の値段差は、今回のように全ての公演につけてほしいです。
せっかくアフタートークがある回だったので、それだけザクっと記録的に感想を残します。
先述したように司会進行が鈴木凌平さん、登壇者が総合演出の植木豪さん(元PaniCrewの方なのでブレイクダンス系。そして調べてから「ああー、アミューズ版ORANGEで石原善暢さんが演じた役をやっていた人か!」と思い出す始末・・・。あれは石原善暢さんへのアテガキだったから植木さんには厳しかったよな、今思っても)、主演の東山さん、三浦くん、そしてダンサーの山野光さん。山野さんはコンテンポラリーの若きトップランナー(植木豪さん談)、らしいです。なんと三浦くんよりも若い21歳!ミュージカルは2.5次元を経て「イン・ザ・ハイツ」に出演、さらに「エリザベート」のトートダンサーもやられているようです。
アフタートークの最初は植木さんが振付られた「M5.光のボール」のシーンの感想からはじまりました。三浦くんは「イメージ的には、頭を殴られたときに目がチカチカするので、その殴られたときに見る幻想みたいな感じ」で表現しているとのこと。これに植木さんも「その通り」的な発言をされていたのですが、どういうイメージか、という共有はないんだなと、改めて振付とダンスの世界とはそういうものなのかと驚きました。
全体構成を決めた後、三浦くんが自暴自棄になってクラブ行ってお酒飲んで「怒り」みたいなものを表現するシーンを植木さんが振り付けるとなったとき、自分の得意技(光る小道具のことみたいです)を入れたかったとのことで、普段なら1コンテンツに一つだけど、三浦くんが踊るので奮発(光るお酒のボトル、ボール、チューブなどが登場しました)したらしいです。
というのも三浦くんの「天使の羽」(チューブで表現されていたらしいのですが、記憶が・・・すみません・・・)がどうしても見たかったので、取り入れたかったとのこと。
その後も、植木さんが三浦くんのことを「本物の人」というのが印象的でした。バレエ出身ダンサー何人かいらしたけれど、その中で「本物の人」と感じさせる何かが三浦くんにはあって、それが今の三浦くんの活躍につながっているのかもしれません。
植木さんと東山さんは20年来のお付き合いらしく、その中で植木さんが「舞台上で魅せる踊り」と自分たちがやっている「ストリートの群衆の中で目の前で踊るもの」の違いを考えさせられたと話されていたのも興味深いものがありました。
というのも、踊れないのにただダンスを見るのが好きなわたしとしても、最初ヒップホップやブレイクダンスが舞台上で表現されたのを見たときに、「舞台の上から魅せるダンス」ではないなと思ったからなんです。
でもあれから時が経ち、ヒップホップやブレイクダンスベースのダンスがミュージカルで自然に「魅せる」ものになっていることを感じていたら、2016年では「ハミルトン」が振付賞も受賞。そして今年度のトニー賞にノミネートされた「ヘルズ・キッチン」ではこのパフォーマンス!
本場ブロードウェイでも、このように完全に「舞台で魅せるダンス」に進化するまでには、こういう植木さんのような意識を持った方がいたのだろうなとか思ったりしました。
とは言え今年度のトニー賞はバレエ的な「イリノイズ」が振付賞を受賞したのですが、
今回の「BOLERO-最終章-」を見ながら、このメンバーで日本版「イリノイズ」ができないかなあ、なんて考えてしまいました。
もちろん女性メンバーがもっと必要そうなのですが、バレエ人口的には女性の方が圧倒的に多いので、キャスティングは問題ないと思います。
そんな妄想までさせてくれる楽しいダンスパフォーマンスでした。