こんなことを思ったり。ぼちぼちかんげき。

保護猫と同居人と暮らすアラフィフがビンボーと戦いながら、観劇したものなんかを感激しながら記録。

礼真琴が尊い@宝塚星組「ANOTHER WORLD」「Killer Rouge」

6/2(土)15:00〜 宝塚大劇場

ANOTHER WORLD
作・演出 谷正純
キャスト
康次郎 紅 ゆずる
お澄 綺咲 愛里
徳三郎 礼 真琴
閻魔大王 汝鳥 伶
貧乏神 華形 ひかる
於登勢[おとせ]万里 柚美
喜六 七海 ひろき
杢兵衛[もくべえ]天寿 光希
艶冶[えんや]音波 みのり
阿漕[あこぎ]夢妃 杏瑠
初音 有沙 瞳

(画像は宝塚歌劇団HPより)

千秋楽間近にこの作品を見に行ったのは花詩歌タカラヅカでの桂春雨さんの落語があまりにも楽しかったからかもしれません。笑

ということで、RAKUGO MUSICALと銘打たれた「ANOTHER WORLD」はこんな話でした。

とある茶屋で出会い、お互いに一目惚れした康次郎とお澄。しかしながらお互いどこの誰かを知らないまま恋煩いで寝込み、康次郎の家(両替商)がようやくお澄を見つけたときには、すでにお澄は同じく恋煩いで亡くなったあと。
それを知った康次郎も恋煩いで死んでしまってあの世へ行き。
するとあの世で、現世に飽きたからあの世見物に来たという徳三郎一行と出会う。
一緒にあの世を巡るうち、お澄にこちらの世界で会える可能性を知った康次郎は、徳三郎一行とお澄を探して回ることに。


ということで、え!崇徳院、まさかの設定だけ?と驚いていたら「地獄八景亡者戯」の地獄めぐり中に「崇徳院」の物語がショーとして見せられたりして、なかなか工夫されています。
個人的にはいきなり冥土での幕開けの方が、物語に入りやすくて良かったです。
でも日本物にあまり慣れてない観客には、やはり華やかでテンションあがる幕開けではあるので、これはこれでいいかな。

オープニングに私が乗り切れなかったのは、やはり日本物のスキルを生徒さんたちに感じられないところが大きいです。
むしろこのために一生懸命これだけ練習しただろう初舞台生の方が扇の使い方もきれいで、清々しい口上に感動しました。
昔よりも生徒さんが忙しくなっているのはよーく分かるので、もっと日本物の練習してくださいとは言いがたいのですが、宝塚歌劇団としての日本物は大事にしてもらいたいところです。

全体的な日本物のスキルの点は置いておけば、「ANOTHER WORLD」めちゃめちゃ面白かったです!
たぶん元ネタ知っていたらもっと楽しいのかもしれないけれど、知らなくたって充分おもしろいです!
セットも衣装もナンセンスですけれど、それがまたこの世界観にあっている気すらしてきたし、まあちょっと中だるみ感もあるけど、全体的によく出来ています。←わたし、何様?すみません。

ただ唯一で1番の問題が康次郎です。
落語の「崇徳院」には康次郎は登場しません。
恋煩いで寝込んだ若旦那としか語られないのです。
けれど花詩歌タカラヅカで聞いたときは、林家染雀さんの素晴らしい語りの中で、儚げでピュアな若旦那の姿が目の前に見えるようでした。

そんな「恋煩いで寝込む若旦那」しか情報のないキャラクターを作りあげるのは大変な作業であることは分かりますし、がんばっておられました。
ただ、ただね、落語という元ネタがあっての演出だと思うのですが、セリフがかなりの早口なんですよ。
するとやっぱり明瞭に言ってもらわないと聞き取れない。
今回の演技を見ながら2011年4月の「めぐり会いは再び」のことを思い出してしまいました。
あの時もコミックパートで、なぜか男役としては信じられないくらい高い声で演じておられたんですけど、今回もなんですね。
なぜあんな高い声で演じるのか不思議でなりません。演出家の指示なんでしょうか。
高い声で早口でまくし立てられると本当に聞いていてツライ。
今回は大劇場公演だから大阪弁の早口に慣れている観客が多かったと思われるけれど、この後東京公演のことを考えると、早急に声の高さ、セリフの言い回しは改善していただきたいです。

だからこそ、礼真琴さんがまあ低く透る声で、早くても明瞭にセリフを言ってくださるのが尊い
それこそ「めぐり会いは再び パート2」のときは、ダンスはうまいけど芝居はまだまだだなあと思っていたら、私が星組を全く見ていなかった3年間でこんなに進化するかというほどの進化ぶり!
洋物ダンスのうまい人って日舞はイマイチだったりするんですけど、礼真琴さんは日舞もちゃんとしてました。
何より出てきた瞬間の存在感と華
そして歌い出したときの安心感と説得力。
ショーにいたっては踊り出したとき、久々に男役のダンスを見てトキメキました!

崇徳院」のショーをトップコンビに人形振りさせて、礼さんと初音役の有沙瞳ちゃんに語りとして歌わせた演出が、もう本当ナイス選択、と思いましたよ。
(惜しむらくはあの人形振りがまたちょっと哀しい仕上がりなのでもうちょっとがんばってほしい)

そして私が大好きな天寿光希さんことみっきーがまた良かったんですよね。
もともとみっきーのセリフの言い回しと舞台上での動きの洗練さでファンになった私としては、その辺りはもちろん出来ているものとして見ていますし、もちろん出来ていました。
その上で感動したのが、途中黒い着物になるシーンがあるのですが、そこの帯の締め方が美しかったんです!!
日本物を上演するにあたって、ちゃんと勉強して美しく着こなすプロっぷりに惚れ直しました。

華形ひかるさんの貧乏神の気弱でかわいい感じもすごくいいですし、冥土界の女性陣がみんな気が強そうなのも魅力的でした。

宝塚らしい楽しいハッピーエンドで終わって、ご満悦で休憩後、ショーがはじまります。

な、なんですか、この田舎のヤンキーみたいな感じ?(^◇^;)
もう台湾公演に向けた仕様なんでしょうか。
同行者が「なんか『満天星大夜總会』を思い出す」と言い出して調べてみたら、作・演出は同じ齋藤吉正先生。納得。
途中のペラッペラの竜のセットを見た瞬間「リオ・デ・ブラボー」のペラッペラのキリスト像のセットの悪夢を思い出しました(涙)
選曲もねえ。
もう何もいうまい。これが今の宝塚に求められているものなんでしょう、きっと。

でもそんなショーでもね、礼真琴が踊り歌うと「魅せて」くれるんですよ!
なんかいいもん見たかもしれない、と思わせてくれるんですよ!
だから今回の結論はタイトル通りです。

礼真琴が尊い

彼女が霧矢くん以来の三拍子揃ったトップスターとなる日を心待ちにします。

こんなショーに文句言ってるけど、前に見た雪組月組のショーより普通に楽しめてしまったんですよねえ(^◇^;)
主題歌は覚えやすくて、振り付けも楽しかったし。
やっぱり私はショーは頭空っぽにして、ただ歌やダンスを堪能できるものの方が好きみたいです。