3/13(土)11:00~ 宝塚大劇場
キャスト(Aパターン)
ロミオ 礼 真琴
ジュリエット 舞空 瞳
ロレンス神父 英真 なおき
モンタギュー卿 美稀 千種
モンタギュー夫人 白妙 なつ
キャピュレット卿 天寿 光希
キャピュレット夫人 夢妃 杏瑠
ヴェローナ大公 輝咲 玲央
乳母 有沙 瞳
ピーター 遥斗 勇帆
ティボルト 愛月 ひかる
ベンヴォーリオ 瀬央 ゆりあ
マーキューシオ 極美 慎
パリス伯爵 綺城 ひか理
愛 碧海 さりお
死 天華 えま
スタッフ
作/ジェラール・プレスギュルヴィック
潤色・演出/小池 修一郎
演出/稲葉 太地
2010年星組で上演されたフレンチ・ミュージカル「ロミオとジュリエット」。
そこから2011年雪組、2012年月組、2013年星組再演と続き、
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間に本場フランスからの来日公演があったり、東宝ミュージカルとして定番化したりして、なんとなくずっとやっているイメージがあったのですが、ふと思い返せば宝塚版は8年振りになります。
このくらいの時がたっての再演はなかなか興味深く、2時間半めいっぱい楽しませてもらったので、やはり面白い作品だなと改めて思いました。
今回は演出に稲葉先生の名前が連なっているのですが、特に過去の上演と違う部分は感じませんでした。
そんなわけで、内容や演出的な見どころは感想から省きます。
ただ、わたしは基本的にこの作品は本場フランスバージョンが好きなので、とりあえずこういう認識でいるよ、という内容を下記に置いておきます。
世界一有名な恋物語ですが、皆さんが見たのはどれが最初でしょうか。
実はわたしは、バウホールで上演された月組「ロミオとジュリエット」再演が最初でした。ロミオは天海祐希さん、ジュリエットが麻乃佳世さん。
これが本当にシンプルに美しい舞台で、今でもセットや衣装をはっきりと思い出せます。そして麻乃さんが演じたジュリエットが、わたしの原点でした。
わがままで勝気。
そして一直線で純粋で情熱的な少女。
この少女がロミオの心を奪い、連れ去った。
そんなジュリエットがひどく魅力的に見えたものです。
しかしフレンチミュージカル宝塚潤色版の「ロミオとジュリエット」は残念ながらジュリエットの書き込み方が少ない(とりあえず一旦はパリスと踊るシーンとか、キャピュレット夫人告白ソングやジュリエットがティボルトの死体を目にするシーンとかがない)ので、こう、というジュリエットを見せづらい、とわたしはずっと感じていました。
(まあそもそもフレンチミュージカル版は「死」がほぼ主役な作品づくりなので、人間を細かには描いていないんですよね)
なのに今回、舞空瞳ジュリエットがそこを覆してきたのです。
内側にため込んだエネルギーが見えるような舞空ジュリエット。
それがロミオと出会うことで爆発し、情熱のままに燃えあがり、ロミオと自分を焼き尽くしたように見えたのです。
とりわけバルコニーのシーンが絶品。
ロミオとの思わぬ逢瀬の中、部屋の中から呼んでくる乳母に「今行くから!」「行くってば!」と言い返すそのセリフのトーンと言い方。本当に反抗期真っ最中のリアルなハイティーン感が最高でした。
さらにロミオの前の恋する顔、乳母への対応の違いでバルコニーのシーンに笑いを生み出したのです。その生命力に「なんて可愛らしい」と魅せられたとき、この命がはかなく消えることを痛ましく思わせる。
誰もが知っているラストへ向かうからこそ、そこまでは輝かしくまぶしく存在することがこの物語を魅力的に彩るんだなと気づきました。
ラストシーンで寄り添うロミオとジュリエットが銅像のように立てかけられる(下記インスタの3枚目のシーン)のですが、その横顔も流れる金糸の髪も美しく、花火のように打ちあがって消えたジュリエットの人生を色濃く魅せた舞空さんに完敗、でした。
この舞空ジュリエットとともに、今回非常に興味深かったのが、ジュリエットの父・キャピュレット卿。
演じた天寿光希さんは、パリス伯爵、マーキューシオと来てこれが三回目の出演となりますが、キャピュレット卿であり、ジュリエットの父だとはじめて感じさせました。
天寿さんのキャピュレット卿もとにかく熱い。血の気が多くて、短気で、見栄っ張りで、ああこの人がこの荒廃したヴェローナの街を作った一因なんだろうなと思わせました。
この時代ですから、娘は父親の所有物です。なのに娘を思う父親ソングの存在がいつも不思議だったのですが、今回はジュリエットは間違いなくこの人の娘で、だからこそこの人なりの複雑な感情が娘にあるのだ、と思えたのです。
とりわけこの父親ソングに行くまでの、ジュリエットとのやり取りのテンポが素晴らしい。
お互いの主張を譲ることなく、傷つけあう言葉の投げ合いはまるで二つの火の玉がぶつかっているように見えました。その流れで、思わずジュリエットを平手打ちするシーンをはじめてこんなにスムーズに見ました。
ああこの2人は似た者親子なんだな(血がつながっているにしろ、いないにしろ)、と思っていたところに父親ソング「娘よ」で「お前のかたくなな強さはわたしに似たのか」と歌う説得力ったらなかったですね。
その一方で、わたしの妄想を駆り立てるキャピュレット夫人が今回あまり印象に残らなかったのが残念ではありました。
ところで礼真琴ロミオなんですが、スキル面では何もいうことがありません。
特に一部の「僕は怖い」は歴代の中でナンバーワンのすばらしさ。リズム感、ロック感、歌唱力、そしてダンス、全てが完ぺきでした。
もちろん演技も「純粋無垢な育ちのよいボンボン」をちゃんと作っていて、だからあの勝気なジュリエット に惹かれたんだろうし、ジュリエットの情熱に巻き込まれた感じも大変面白く見ました。
スキルに不足がないからこそ、ロミオという役は演じる人の個性が合うか合わないか、ということが大きく出るんだな、と感じました。そして多分、礼さんはロミオ役者ではない。それでもあそこまで作って演じたことがすごいと思います。
Aパターンしか見ていないので比較できないのですが、過去の宝塚上演分と比較すると、このAパターンはロミオとマーキューシオ、ベンヴォーリオのバランスがとてもよかったと思います。
頼りなげで気が小さいけれど優しそうなベンヴォーリオと、元気で軽くて浅はかなマーキューシオ。
役作りの方向としてはとてもいいので、極美さんには死ぬシーンの演技スキルだけ、改善されていくことを期待します。全く刺された風にも見えず、息も絶え絶え感もなくて、まあそれはそれで納得な演技でまとまっていたら良かったんですけれど、そうでもなく、歌い終わったら急に死ぬ、みたいに見えたのが残念でした。
ベンヴォーリオ瀬央さんはロミオの犬感があって、不器用な感じがとてもよかったです。「どうやって伝えよう」も戸惑いが十分に伝わってきました。
さて、わたしが好きではない小池先生が作りだした「愛」と「死」なのですが、さすがにわたしももうその存在になれました。
そんなわけで「愛」、ダンスがうまくすばらしかった!一方の「死」はトートっぽくないメイクは好きだったのですが、愛に比べると存在感が薄かったように感じました。
もともとは「死」が主人公なこの作品。しかもフランス版の映像に残っている「死」は女性体をしているけれども、性別を超越したような存在だったので、いつかトートっぽくなく中性的な雰囲気で登場してくれるバージョンが産まれるといいなあと思っています。
そうそう最後になりましたが、フィナーレのデュエットダンスがめちゃくちゃすごかったです。
パソドブレっぽいこれまた炎のぶつかり合い。
もはやデュエットダンスという甘やかな名称ではなく、かなり見応えのある競技ダンスのオナーダンスのようでした。
ちょうどこんなイメージ↓(1分35秒からご覧ください)
そんなダンサーの2人が踊りまくるショーも今後期待しています!