こんなことを思ったり。ぼちぼちかんげき。

アラフィフ負け犬がビンボーと戦いながら、観劇したものなんかを感激しながら記録。

ヒーロー像、ここに極めり@宝塚星組「柳生忍法帖」「モアーダンディズム」

9/25(土)15:30~ 宝塚大劇場

f:id:morton:20211005152225j:image

スタッフ

原作 山田風太郎
脚本・演出 大野拓史
殺陣 清家光彦

キャスト

柳生十兵衛 礼 真琴    
ゆら 舞空 瞳        
芦名銅伯 愛月 ひかる    
堀主水    美稀 千種        
千姫【天樹院】    白妙 なつ    

加藤明成 輝咲 玲央

沢庵和尚 天寿 光希        
お圭(堀一族の女) 音波 みのり        
お品(堀一族の女) 紫月 音寧        
お沙和(堀一族の女) 夢妃 杏瑠        
具足丈之進(七本槍) 漣 レイラ        
司馬一眼房(七本槍) ひろ香 祐        
さくら(堀一族の女) 紫 りら        
漆戸虹七郎(七本槍) 瀬央 ゆりあ        
お鳥(堀一族の女) 音咲 いつき        
柳生宗矩 朝水 りょう        
鷲ノ巣廉助(七本槍) 綺城 ひか理        
平賀孫兵衛(七本槍) 天華 えま    
天秀尼    有沙 瞳    
お笛(堀一族の女) 澪乃 桜季        
お千絵(堀一族の女) 小桜 ほのか        
香炉銀四郎(七本槍) 極美 慎        
大道寺鉄斎(七本槍) 碧海 さりお    

 

原作はこちら。

わたしは原作は未読。柳生十兵衛についても「奈良に“柳生街道”ってのがあったけど、なんか関係あるんだろうなあ」くらいのうっすーい知識で見に行きました。

 

でも大丈夫です!

柳生忍法帖」はわかりやすい勧善懲悪な娯楽作品でした。

原作はエログロ味が強いと聞きかじっていましたし、見ながらもきっと小説ではこういうところをエログロで書いて読者を楽しませているんだろうなあということは推察できました。

がしかし宝塚歌劇の舞台ではそれは描かれず、かっこいいヒーロー物に仕上がっています。

 

ストーリーは史実にもある「会津騒動」をベースに描かれているそうです。

ちなみに「会津騒動」についても今回はじめて知りましたが、知らなくても問題ないです。本来の「会津騒動」がどのようなものであったかは分からないのですが、「会津騒動」は物語の発端となる部分ですので、史実とは異なるでしょうが設定としてきっちり描かれます。

 

会津藩主・加藤明成は藩主の立場を利用しての悪行三昧を働いている。

そんな藩主に手を焼き業を煮やした老中・堀主水が反乱を起こすが失敗し、処刑される。

藩主の魔の手は天樹院が庇護する東慶寺に匿われた堀一族の女たちにも迫る。

戦乱の世に翻弄され、男たちに自身の人生を翻弄された千姫(天樹院)は、敵討ちを願う堀一族の女に、その指南役として隻眼の剣士・柳生十兵衛を招聘。

十兵衛と女たちは知恵と技を磨き、会津藩へ乗り組む。

しかしながらそこには藩主の愛人で妖しげな術を使うゆらとその父・芦名銅伯、彼が率いる剣豪集団「会津七本槍」が待ち受けていた。

 

文字に起こすとこんな感じですが、

会津七本槍→敵、加藤明成→敵のボス、芦名銅伯→実のラスボス

柳生十兵衛と堀一族の女たちがいっぱい工夫しながらやっつけていくという痛快SF時代劇です。

この作品の何がいいって、「千姫含む男の都合で振り回された女たちが結託して復讐をはたす」のをメインに描いているところです。

千姫については色んな大河ドラマで登場しているかと思うのですが、個人的に心に残っているのは「真田丸」でしたね。

そして千姫の存在でだいたいの時代感を把握できて有難かったです)

十兵衛はあくまで彼女たちを助ける存在でしかなく、しかも十兵衛が彼女たちを決して「女だから」と見下したりはしないのです。

彼女たちの現状の実力をしっかりと理解し、目的達成のために彼女たちができることを考え指南する。

これをできる指導者がどれくらいいるでしょうか。

にっくき敵を一生懸命倒そうとがんばる女たちをちゃんと見守り、彼女たちができること、できそうなことはアドバイスしながら自らの手で果たさせる。どうしても難しく命が脅かされることがあれば、もちろんガッツリ助けに行く十兵衛の格好いいこと!

これこそが今の時代のヒーローだな、と痛感しました。

原作とどのくらい違うのか分からないのですが、こんなヒーローが昭和30年代に生まれていたのでしょうか。それともこれは大野先生の今の時代ならでは味付けなのでしょうか。

その辺も気になるので、小説、読みたいなと思っております。

 

そんな柳生十兵衛を何と魅力的に礼真琴が演じることか。

全体的に武士言葉、古い言葉が多く、セリフが聞き取りにくい中、礼真琴と沢庵和尚を演じた天寿光希だけが、滑舌も明瞭に話してくれるのです。

そのうえで元々のダンスの素養も活かした殺陣がまた格好いい。

宝塚歌劇の殺陣ではじめてそこそこ満足できるものを見た気がしました。

セリフを言いながら殺陣も魅せる、というのは決して簡単なことではない。

それを魅せ場シーンとして成り立たせられる礼真琴は、改めてすごい能力を持った舞台人だなと思いました。

それから多分はじめて刀とか持つ役で勉強されたのか、堀一族の女たちが刀の扱いも型もちゃんとしていたのも好感でした。何しろこの復讐劇自体の主役は彼女たちですし、彼女たちのがんばる姿がこの話を好感を持って見られる要素の一つだと思います。

もちろん会津七本槍も殺陣はがんばっているのですが、みんなとりあえず発声と滑舌という基本スキルのアップを願います。何を言っているのか聞き取れない(涙)

そして一番そこが辛かったのが芦名銅伯でした。

多分ほとんどの方が登場人物の名前くらい勉強して行かれると思うので、わたしの前知識なしが本当に申し訳なかったのですが、まず「芦名」が聞き取れなくて、しばらく困りました。それからゆらの使う「香」。これも最初のシーンでは聞き取れなくて、とりあえず演出と小道具から魔術っぽいことをやっているんだなという認識する始末。

だからこそ余計思ってしまったんですね。

銅伯の歌をカットして、ゆらの十兵衛へ惹かれる気持ちの歌に差し替えては、と。

この作品もシティーハンター同様、全体に詰め込み感はあるんです。

でもどのシーンもカットできないくらいには削り込まれているんです。

しかし今のままでは、ゆらの心の変化は全く伝わらないという大欠陥がある。

それを解消するには「ゆらの心情を伝える歌を30秒でもいいから作る」くらいしか思いつかないわけですよ、素人としては。

そうなると、とりあえず銅伯は妖しげな風貌で何か企んでいるのは存在だけで伝わるので、その銅伯が何を思っているかは別に歌にしてまで伝えなくても大丈夫だから、その分ゆらに、と出来ない宝塚歌劇ルールが久々に厳しいなと思わざるを得ない演目でもありました。

しかしながら大野先生の作品なので、相変わらずセットの美しさが眼福でした。衣装の色合いのバランスもさすがです。

f:id:morton:20211005152729j:image

そして、最後の十兵衛のセリフが「くぅぅぅぅー!」と思わず唸ってしまうほど、格好良い。そしてこのセリフがある限り、ゆらが相手役であることは必須なので、東京公演までにゆらの気持ちの変化が確実に伝わるシーンができるといいなと思っています。

本当に十兵衛がかっこういいし、女たちが大活躍でスカッとするし、個人的にはとてもいい娯楽作だと思うんです。だからちょっぴり惜しい。

ただこういう劇団☆新感線的エンターテインメントを品あってキレイな日本物にもできるのは宝塚歌劇団として他ミュージカルにはない魅力になり得る気がするので、今後も期待したいです。

 

さて岡田 敬二先生のロマンチック・レビュー「ダンディズム!」シリーズの第3弾「モアーダンディズム!」ですが、実はわたしは「ダンディズム!」も「ネオ・ダンディズム!」も未見でした。

とりあえず知っておいた方が楽しそうだったので、過去映像を見て参戦しましたが、まあこれはどちらでもよいかな、という気がします。

ただ「ダンディズム!」シリーズが「宝塚男役の魅力を追求する」というテーマなので、礼真琴・舞空瞳実力派ダンサーコンビがやるにはちょっぴりもったいなかったかな、とは個人的には思いました。

もっと踊りまくる舞空ちゃんを見たかった!

レビュー的には可もなく不可もなく、まあ普通に楽しいです。

だたクラシカルはクラシカルなので「柳生忍法帖」目当てで来られた方が今楽しむにはちょっと厳しいかも、と思いました。

そうなると人気の原作がある作品を芝居の演目とする際に併用するショー・レビューをどうするか、というのも今後の宝塚歌劇の課題かもしれません。