こんなことを思ったり。ぼちぼちかんげき。

保護猫と同居人と暮らすアラフィフがビンボーと戦いながら、観劇したものなんかを感激しながら記録。

気持ちを盛り上げるリズムってなんだ@宝塚星組「RRR × TAKA"R"AZUKA ~√Bheem/VIOLETOPIA」

1/13 15:30~ @宝塚大劇場

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RRR × TAKA"R"AZUKA ~√Bheem

スタッフ

脚本・演出 谷 貴矢
作曲・編曲 太田健/高橋恵
オリジナル振付 Prem Rakshith
装置 國包 洋子
衣装 加藤 真美

キャスト

コムラム・ビーム(アクタル)    礼 真琴        
ジェニファー(ジェニー)    舞空 瞳        
スコット    輝咲 玲央        
キャサリン    小桜 ほのか        
ジェイク    極美 慎
シータ    詩 ちづる        
マッリ    瑠璃 花夏        
ラッチュ    稀惺 かずと

原作はこちら。

RRR

大変話題となっていた映画ですが、わたしは未見で、運よくこのチケットが手に入り、初日からの感想を見ていると「映画を見ていった方が100倍楽しめる」という意見が多かったので、予習として映画を見ました。

映画、最初人物の見分けがつかない・・・と戸惑ったのですが、途中から大興奮。

大変に面白かったです。

この「RRR」は1920年のイギリス植民地時代のインドを描いているのですが、ビームもラーマも史実上の人物だということを初めて知りました。

とはいえ内容はフィクションです。

cinemore.jp

そんなわけで映画は長いものの、映画らしいド迫力のアクションと、人海戦術な歌と踊りでパワーに満ち溢れたエンターテインメントでした。

これを舞台化したものを見るのか、と思ったとき、まあとは言え物語要素はシンプルなので、1時間半強にまとめられるだろうし、インド現地の踊り「ナートゥ」を披露するシーンは普通に映画と同じく盛り上がって楽しいだろうなと思ったんですが、映画全体でかつ前半最大の見せ場のビームとラーマが初めて出会って、少年を助けるド迫力のアクションシーンはどうするのだろうかと、そこを一番の楽しみにしてしまったのが、私の見る側としてのミスだったかな、と思います。

そんなわけでRRRについては、こんないい作品に盛り上がれない可哀想な人もいるんだな、と生温かい目で感想を読んでいただけると嬉しいです。

そして大変に面白かったという方はそっとこのページを閉じてください。

 

というのも、私が最大に盛り上がったのが、この始まる前の映像だったからです。

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これ、時々鹿やら、虎やらが通って楽しい!

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そしていろんな要素が割とごった煮な映画はそこが混沌としてカオス味があって面白いのですが、舞台ではそこはキレイに整理されて、物語は分かりやすく提示されていました。

でも逆にカオスの中にあって混乱しつつも、文句なしに盛り上げてきた「ナートゥ」が、私は舞台ではいまいち盛り上がれなかったのです。

歌って踊っているのは宝塚きってのマルチプレーヤースターだけど特にダンスが素晴らしい礼真琴さんですよ!一緒に踊る暁千星さんだって、宝塚の中では「ダンサー枠」。そんなダンスが得意な二人が「ナートゥ」を歌って踊るのは訳ないわけで、まあ普通に見ていて楽しい。でも何かこう「ここ見せ場!ショーでいうところの中詰め!文句なしにワクワクしてくれよな!」感がなかったというか、「ショーの中詰めって本当によくできているんだな、どういう構成にしたらとりあえず盛り上がれるのだろう」ということを「ナートゥ」を見ながら考えてしまいました・・・。

映画でもジェニーも踊る「ナートゥ」ですが、ジェニー役の舞空瞳さんなんて、本当にかなりのダンサーなので、もっともっとジェニーも一緒に踊るところを入れてもよかったと個人的に思います。

あと今回衣装をクレジットしたのは、「ナートゥ」のシーンの衣装がジェニーはいいとして(てか、あのジェニーの衣装はぜひ「宝塚ステージスタジオ」に入れてください)、せっかく宝塚でやるのだから、映画同様、英国側はもっとバラエティ豊かに「魅せる」ものだったらよかったのに、と思ったからです。

今回タイトルに「√Bheem」とあるのが、最も宝塚バージョンなところなんですが、ビームが主役でトップスターなので、ビームだけヘアスタイルも衣装も、仕方ないのですが、なんか、その、浮いている・・・。まあ服のキラキラは「1789」も同じ現象が起こるのですが、全体に宝塚版の「RRR」が映画に忠実ながらも、すごくシャープにシンプルにまとめてある中で、ビームだけが絵面が違うのが変に気になってしまったのです。

ド迫力のアクションシーンは、まあそうだよね、な感じになっています。映画は再現できない。そしてド迫力にもできない。それであれば、シーンとしての意味合いを「ビームとラーマの共同作業からの出会い、友情」の方へ振り切った方がよかったなと個人的には思いました。

先述したように踊れる二人なので、中央に少年をおいて、炎部隊、水部隊で踊りで少年を翻弄する。その水部隊と炎部隊を、ビームとラーマで協力して操り、踊りながら治めて、少年を保護するみたいな、コンテンポラリー風のペアダンス的な踊りで魅せたバージョンを個人的には見たかったなと思います。

(追記:

「眠らない男」のときに、本舞台からゴンドラで銀橋に移るというシーンがあって、そんな銀橋への渡し方があったか!と驚いたので、二番煎じだけど、ビームが綱もってゴンドラ乗って、銀橋の男の子を助けに行く、でも面白かったかなとも思いました)

それから鞭打たれるビーム(礼真琴さんが鞭打たれる姿、見過ぎて既視感汗)が、それでも耐えて自分たちの誇りを歌う、というシーンは実にミュージカル的で、しかも礼さんは歌もうまいし、声もいいのに、ここもなぜか気持ち的な盛り上がりに欠けてしまったのはなぜだろう、と思ったのです。

舞台全体のリズム感、盛り上がり。前作の「元禄バロックロック」のことも思い出すと、物語はキレイに描くけれども、そういったところがちょっと谷貴矢先生には足りないかなと私は思ってしまいました。きっと谷先生は脚本はうまい。今回も映画では出番の少なかったジェニーやシータもちゃんと最後まで活躍するのです。これは大事なポイント。でも舞台の緩急というか「見せ場」を作る、つまり役者に対する演出とは別の、舞台全体を魅せるという演出の部分では個人的に弱く感じたのが残念でした。

ただ本当に物語はキレイに整理されているし、なんなら映画よりも分かりやすかったので(ただ舞台での見せ方と時間の関係上、映画のビームより知的です。映画のビームの本当に何も知らなくて純粋なところがかわいかったので、仕方ないけどちょっと残念)映画で予習はいらないと思いました。前知識なしの「ナートゥ」がどう見えるか、を見たかった!

とはいえ、最後は楽しいので、気持ちよく幕間を過ごせます。これも大事。

幕開きという重要なシーンで可愛くキレイに歌を響かせたマッリ・ 瑠璃花夏さんもステキでしたし、主役たち含めそれぞれとてもバランスよく、役者にはあまりストレスなく見られたのもよかったです。

 

で、そんな話題の「RRR」に押されて、なんとなく存在の薄かったレビュー「VIOLETOPIA」ですが、こちらは逆に何も期待もしていなかったのがよかったのか、個人的にはめちゃくちゃハマりました!

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スタッフ

作・演出 指田 珠子
装置 二村 周作
衣装 有村 淳

このレビューが、いいレビューかどうかというと、とても人を選ぶなとは思います。

レビューとしてはとてもオーソドックスなんですよ。主題歌のメロディラインもオーソドックス。しかも宝塚歌劇110周年ということで、割に他のショーとかでも見たことあるなあというシーンが並びます。

しかも古い劇場に入ると昔の記憶が甦ってきた、みたいな感じではじまるので、かつてあったバックステージを舞台にしたところから、苦悩とかに移り変わって妙な世界観になる、みたいなシーンが割と続きます。

ショーに一つはあるミステリアスでちょっとダーク目のシーンを集めた、という印象なのです。

でもちゃんと中詰めは盛り上がりますし、ダンスも魅せるし、「見たことあるなあ」シーンをちゃんと現代的な味付けもしてあるところが面白い。(ラインダンスも曲の使い方に合わせたパート分けとか、面白い作りになっていました)

ただ、私は齊藤吉正さんの色使いとかヴィジュアルがめちゃくちゃ苦手で、見てて目が辛い、のですが、それと同じ状況が起こるレビューだなとは思いました。

セットとか衣装とかがね、ティム・バートン的だったり(特に実写版ダンボかな)、


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昔のマリスミゼル


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だったりするので、これが受け付ける人は大丈夫だし、好きな人はハマります。

でも逆に全くダメ、な方もいるはずです。それを作るのはどうか、という論もあるかもですが、齊藤吉正さんに好き勝手させているので、これはこれでアリなはずです!

そして世界観が好きということは、音楽も好きで、このレビュー、めちゃくちゃ楽しみました。

ただ礼真琴さんよりは、ヴィジュアル的に柚香光さんでこのレビューを見たかったなあと思うのですが、そうなると舞空瞳さんがいなくなっちゃうので、星組でよかった!

もう舞空瞳さんの魅力が満喫できすぎるレビューでした。舞空さん、鬘がいつも本当にキレイなんですけど、このショーではそれが本当に大事!そして抜群のスタイルも大事!とりわけ黒燕尾姿でダンス力をフルに活かして踊るシーンは格好良すぎて痺れました(ツヤツヤの金髪ストレートヘアをキュッと結んであるヘアスタイルも最高!)。ああショースターだ・・・!と感じさせる何かが、舞空瞳さんにはある!

さらに暁千星さんもスタイル抜群のダンスの人なので、ショーの方が光る!

そして礼真琴さんのマルチプレイヤーな安定感。その中でも舞空さんとの蛇と少女のペアダンスが本当にステキでした。

 

RRRもちゃんとクオリティは保っていて楽しい作品なので、久々のリピートしたくなる二本立てではあったのですが、残念ながら人気がすごくてチケットないのが現状です。

そんなわけで、ライブ配信を今から楽しみにしています。

RRRファンで、でも宝塚のチケット取れなかったぞ、という方はぜひ!

そして舞空瞳さんが好きで、でも公演が人気すぎてチケット取れなかったぞという方もぜひ!

レビューは好き嫌いあると思いますが、黒燕尾で踊る舞空瞳さんを見るだけで3500円の価値はあると思います。

live.tv.rakuten.co.jp