こんなことを思ったり。ぼちぼちかんげき。

保護猫と同居人と暮らすアラフィフがビンボーと戦いながら、観劇したものなんかを感激しながら記録。

思わず熱く語ってしまうこと2005

「RENT」のイベントに参加されたみなさんの、「RENT」やその他に対する熱い思いを日記で読んでいるうちに、私も思わず「熱く」語ってみたくなったので、とりあえず、その思いを記録にしたい。基本的に私はたぶんそれほど「熱く」ない。私の「熱い」部分はすごく少なくて、その少ないうちの一つがやっぱり「ミュージカル」なのだ。ミュージカルの好みも変わっていくし、数年後、あ〜あの時こうだったなあ、なんて思い返せたら楽しいので、記入。

好きなミュージカルは本当にたくさんある。まず「名曲とそのドラマチックな恋愛に乙女ココロが萌えタイプ」が「レ・ミゼラブル」(本来レ・ミッズにはもっと人間として注目すべき点が溢れているのだけど、やはりエポニーヌが私の中で一番大事なので、敢てこのくくりに入れてみた)と「アイーダ」。更に「見た後とびっきりハッピーにしてくれるザ・ミュージカル系」に「ME&MY GIRL」、「THE PRODUCERS」(曲がオリジナルだったら「MAMMA MIA」も入れたいな)。「振付・曲・演出・小道具使い・空間、完璧でしょう!これぞステージアート系」に「CHICAGO」「グランド・ホテル」そして、忘れてならない、日本の誇り「I GOT MARMAN」。「B級の魅力全開、オタクココロ満喫エンターテインメント系」に「イーストウィックの魔女たち」と「BAT BOY THE MUSICAL」などなど大好きな作品は次々思いつく。

けれども、敢て、その中で、私の何かに触れた作品というのがある。上記のようにくくるなら、「青春群像劇系」。これは、私のミュージカル体験が17歳(宝塚除く)から始まっていたせいだと思う。

コーラスライン
実はこれは四季でのみ、二回しか見ていない。(映画は見たけれど、これは舞台で完璧なので、かなりイマイチだった)けれども、場面、場面をはっきり思い出せるくらい衝撃的だった作品。17歳当時はまだとにかく舞台に憧れていて、何かしたくて、そして、何か出来ると思っていたので、舞台が好きでオーディションを受ける若者たちの様子を描いたこの作品に思いっきり共感したし、憧れた。今は亡き志村幸美さんの圧倒的な歌声も忘れられない。空間・演出・振付ともに、この作品が私の琴線の基礎になっていることは確か。

エリザベート
これは、「青春群像劇系」ではないけれど、私の中で大きなブームだった一つ。まだ海外のオリジナル版を見ていなくて、とりあえず、ウィーンでいつか見るのが夢。日本では初演の「雪組版」、続いて「星組」「宙組」と見て、東宝の初演も一応見ている。けれども「星組版」が好きすぎて、ちょっと他には情熱を移せなかったところがネックかも。
それはともかく、とりあえず私の観劇趣味は宝塚から始まっていて、おかげで多いに影響を受けて、「ハプスブルグ家」、中でも「ヴィッテルスバッハ家」に興味を持つようになってしまっていた。そこへ、「華麗なるギャツビー」で「演出って格好いい!私もこんな舞台を作りたい!」と思わせた小池先生の演出で、「ヴィッテルスバッハ家」のエリザベートが主役で、ウィーンのミュージカルを上演するという話が来たときから、これははまるだろうな、という予感がした。
エリザベートの義務を果たさない自由への希求が、当時父親に学費を払ってもらっているくせに父親との確執もピークで、家を出たい、早く大人になって、自分で生活をしたい、と思っていた自分に重なっていたのだと思う。精神病棟で患者に「あなたのほうが自由」と歌うエリザベートが、やっぱり忘れられないのだ。

★RENT
で、RENT。今から考えるとおかしいのだけど、私は当時本当に「世紀末」を恐れていた。その世紀末を刹那的に生きるNYの若者たちの物語はやっぱり心に響いてきたのだ。しかも、主要キャラクターがアーティスト希望。やっぱり当時まだかすかに舞台に関わる何かをしたい、と思っていたので、キャラクター一人一人の中に自分を見出していたのだと思う。後はやっぱり、このミュージカルの現代感。衣装や音楽もそうだけど、留守電・ポケベル・携帯・メールアドレスが登場するミュージカル、というのがかなり新鮮だったし、NYの若者たちからAKITA(秋田犬)・KUROSAWA・MISO SOUPなんて日本の言葉が飛び出してくるのも当時は驚いた。ただ、世紀末をすぎて、それなりに大人になって、このミュージカルを大好きな気持ちは一向に変わらないけれど、なんだか過去を振り返るような気持ちになってしまったのが、少しずつこのミュージカルから心が離れていった原因なのかもしれない。このミュージカルが上演されてから10年経つと、大きな魅力の一つであった「現代感」が薄れていくことが、今は残念な気がする。ただし、このミュージカルの基盤の一つである「エイズ問題」は、まだまだ大きな現実的な問題だし、今の若者たちにとっても、十分に伝わるミュージカルだと思うので、やっぱりなるべく若いうちに、このミュージカルに触れてもらいたいな、と思う。そして、殆ど同世代感覚で、このミュージカルに出会えたことは、本当にラッキーだったとも思う。

★TABOO
まずはやっぱり、ウエストエンドでの劇場の空間使いに魅せられた点が大きい。そして、英語が苦手なのに、聞き取れた部分の歌詞に思いっきり共感してしまったのだ。ゲイである自分を歌う「You always knew,didn't you,Mother? I was a stranger in this world」という部分が一番最初に耳に残った歌だった。私はゲイではないけれど、それでもある部分で「stranger」であることを実感していたし(まあstrangerの部分というのは誰にでもあると思うけれど)、そのことでしんどくなることもあったので、このジョージの歌は私の心をわしづかみにした。そして、キムの「I've been trying to be something,I'll never be. But I'm nothing special. there's no mystery.」という部分が舞台に関係する何かしたいけれど、やっぱり無理だなあ、と思った頃だったので、色々と共感しまくったのだ。更に、ビリーが父親とケンカして家を飛び出す時に「You think you know me,I don't even know me〜」と歌うシーンではカタルシスも感じさせてくれた。80年代のロンドンなのに、見れば見るほど、共感する部分が増えていったのが、未だに覚めずにファンでいる原因。世代的には思いっきりRENT世代だけど、精神的には80年代ロンドンの方が近いのかも。
でも本当に酷評に次ぐ、酷評でブロードウェイでもたった100日でクローズしてしまったけれど、私は、これ、本当に音楽は良く出来ていると思う。RENTの作者ジョナサン・ラーソンは「tick,tick...BOOM!」の中で、「ミュージカルの音楽はラジオから流れてくる音楽より60年くらい遅れている」と言っていたけれど、「TABOO」の音楽はそれに比べれば、遅れは20年くらいなので、まだ良い方だと思う。出来の悪い子ほど可愛くて、オリジナルメンバーから見ていて、そんなにメジャーじゃない、という点が、知ったときには既に賞も取っていてセンセーションを起こしていた「RENT」との愛情の差かもしれないな、と思ってみたりもする。