こんなことを思ったり。ぼちぼちかんげき。

保護猫と同居人と暮らすアラフィフがビンボーと戦いながら、観劇したものなんかを感激しながら記録。

彩の国シェイクスピア・メール・シリーズ「恋の骨折り損」

3/24(土)18:00~ 彩の国さいたま芸術劇場大ホール
演出:蜷川幸雄
ナヴァール国王:北村一輝
王の側近(デュメイン・ビローン・ロンガヴィル):窪塚俊介高橋洋須賀貴匡
フランス王女:姜暢雄
王女の側近(ロザライン・マライア・キャサリン):内田滋・月川悠貴・中村友也

ナヴァール王率いる男性4人組とフランス王女率いる女性4人組の馬鹿馬鹿しい恋の鞘当ての物語。そこにシェイクスピアらしいクラウン・パートが絡み3時間弱の作品となっている。シェイクスピアの時代のままの脚本を上演するので、相変わらずやはりクラウンパートが煩わしく間延びし、見ていて辛いところもあるが、このシリーズのコンセプト上仕方ないだろう。言い換えれば舞台作品としてのシェイクスピア作品の勉強と思えばこれほど最適なものもない。勉強なのでただ楽しいだけでなく根気も必要なのだと思えば納得も行く。とは言え、なんとなくまとまりの悪い結末にこの作品がシェイクスピアの中であんまり上演されない理由も分かったような気がした。

一昨年の蜷川演出の歌舞伎版「十二夜」を見たときも、幕開きの度肝を抜かれる鏡のセットからの息を飲む桜のセットに感嘆の溜め息が漏れたものだけど、今回もカーテンがあがると一面の森のセットのあまりの美しさに驚愕。セットで一瞬に観客を芝居の中に取り込んでいく作品作りはさすがとしか言いようがない。とりわけ一幕幕切れで森の木の葉がざわめいて、「風」を表現されたときには、初めて野外舞台以外で舞台上で「風」を見たことなどなかったことに気づき、そのアイデアと情感にやはり蜷川幸雄という人はただ者でないことを痛感した。

シェイクスピアということで、セリフの膨大さからキャストの負担は大きく、全体的に膨大なセリフを言葉にするまでは至らなかったが、全員良く健闘していた方だと思う。文書をラップにしていく趣向は面白かったが、いかんせん元々の分量が多いので、長く、間延びした感じは否めなかった。それでも、男性のみ編成はシェイクスピアのコメディの面白さを的確に伝え、楽しい舞台だった。