こんなことを思ったり。ぼちぼちかんげき。

保護猫と同居人と暮らすアラフィフがビンボーと戦いながら、観劇したものなんかを感激しながら記録。

ブロードウェイ♪ブロードウェイ

2006年に再演された「コーラスライン」のオーディション風景のドキュメンタリー映画である、一応は。
けれども、これが単なるオーディションの録画にならなかったのは、もちろん、「コーラスライン」の脚本のベースとなった、ダンサーたちへのインタビューの音声の公開や、マイケル・ベネットの人となりの紹介、そして、素晴らしい初演の舞台の映像が流れたせいもあるけれども、何より「コーラスライン」という作品そのものが、オーディションの物語であるからだ。

だから、見ていると時々、どちらが舞台なのか、作られた脚本なのか、数年前のニューヨークを現実に生きている舞台人の話しなのか、混乱し、絡み合い、より膨れ上がり、心臓を直接鷲掴みするような、直接的な感情の波に揺さぶられる、そういう映画だった。

私が「コーラスライン」という舞台に出会ったのは、1993年の劇団四季による大阪公演だった。それまで殆ど宝塚とオペラしか知らなかった身に、シンプルを極めた舞台装置と衣装で、これほどまでに素晴らしい作品を生み出せることは衝撃的だった。また若く、舞台に関わる仕事をしたいと思っていた頃だったから、この物語にとても感銘と感動を受けたことをよく覚えている。
ただ、まだまだ未熟で、感動をそのままに、それ以上の情報を掘り下げていくということはしなかったので、今回この映画で初めて、初演の舞台の様子を知り、マイケル・ベネットという人が、どういう人だったかを知り、そして、ダンサーにとっての鏡の意味を知り、それが全てがとても衝撃で、最初から最後まで涙が止まらなかった。

とりわけ、初演の舞台映像が強烈だった。
そう、踊るドナ・マケクニーだ。
劇団四季のノースター性という特性もあって、また私が見た大阪公演では、志村幸美さんの伸びやかな歌声が、キャストの中では個人的に1番印象的だったのもあり、キャシーというキャラクターを殆ど意識せず、素晴らしい群像劇、という観点からしかこの作品を見ていなかったので、彼女の映像はそれは衝撃だった。
改めてこの作品が「ダンサー」の物語であることを認識し、踊り、というパフォーマンス、ダンサーという生き方、そういったものに心打たれずにはいられなかった。

もちろん、オーディションを受けているダンサーたちも個性的で魅力的で、分かりやすく感動的な場面もあったり、ちょっと笑えたり、微笑ましかったりで、胸を打つ。そして、何よりスタッフ全員がこの作品をどれだけ大切に思っているか、どんなにこの作品を愛しているか、そういう思いが伝わってきて、そういうものが入り乱れて、個人的には息をつくヒマもない、そういうドキュメンタリー・フィルムだった。

だから、同じようにコーラスラインという作品を愛している人には、これほどまでに胸に迫ってくる映画はないと思う。
ただ、「コーラスライン」を知っている、ということがこの映画を見るには必要であったことは否めなく、誰でもふらっと見て感動できるか、と言われると決してそうではなく、誰でも楽しめる、というラインに持っていくには、「レッドクリフ」のように、ベースの説明というのを冒頭に用意するのが正解かもしれないなとも思った。

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