こんなことを思ったり。ぼちぼちかんげき。

保護猫と同居人と暮らすアラフィフがビンボーと戦いながら、観劇したものなんかを感激しながら記録。

エリザベート

11月30日(日)12:00~ 帝国劇場
エリザベート 涼風 真世
トート 武田 真治
ヨーゼフ 鈴木 綜馬
ルドルフ 浦井 健治
ゾフィー 寿ひずる
マックス 村井 国夫
ルイジ・ルキーニ 嶋 政宏

日本人キャストのエリザベートを見るのは、東宝版初演の2000年以来、8年振りだったので、「私が踊るとき」含め、曲数の追加に加え、演出やセットまで、初演とはまるで違っていて驚く。全体には、ウィーン版に似た、エリザベートのエゴイズムと、動乱の世界の変化、そして、死を描いた、より重く暗い内容に変化している。
初演の時の鏡の間の、柱に巻きつく半裸のトートダンサーのシーンや、宝塚版おなじみの「私だけに」など、あっちの演出の方が良かったなあと思うところはあるものの、全体に陰鬱なライティングと、重く豪華なセットが美しく、これはこれとして、素敵だなと思うシーンも多く、堪能。
特にラストシーンは、宝塚版の「愛と夢のファンタジー」とは正反対の「死という現実」を叩きつけるウィーン版に似たイメージで、宝塚と東宝と二つのアプローチで作る意味合いの違いが際立ち、個人的にはとても好感を持った。見終わった後、どんより暗い気持ちになるけれども(笑)

オーケストラが奏でる名曲の数々を聞きながら、やはりその音楽の素晴らしさは傑出していて、演出も合わせて、力のある名作であることを確信した次第。

宝塚版も合わせて繰り返し再演されている演目だから、個人個人にこれがベストキャストというものがあって、誰が特に優れているというのはもう言えないだろうけれども、8年ぶりに上記のキャストで見てみて、改めて涼風真世の歌唱力の確かさに舌を巻いた。この「エリザベート」という音域の広い難曲揃いの演目だからこそ、やっと彼女の本領を発揮できる素晴らしい仕上がりになったのだと思う。そして、歌の表現力が、本来の彼女の演技力の弱さを十分にカバーし、涼風真世のシシイをちゃんと作り上げられていたように思う。

武田真治のトートは、声量に問題は残るものの、このミュージカルのロックテイストの魅力を十二分に伝え、好みは分かれると思うものの、このトートは宝塚版でも、山口祐一郎トートでも伝えられなかったこの作品の音楽の魅力を見せてくれて、個人的には大変気に入った。役作りも彼の容姿や声の甘さを活かした、また一味違うトートのエリザベートへの執着が見られ、魅力的だった。

何より今回の個人的なキャストの魅力は寿ひずるさんのゾフィ。品があって自然な威圧感があって、これこそ母親で宮廷唯一の男性の雰囲気が漂う。また最初の登場のシーンは若き皇帝の美しい母親、というイメージだったのに、どんどんとシーンを追うごとに老いていく様が見えるのもさすが。ゾフィの幕切れも見事で、私の好みとしては、彼女のゾフィが今まで見た中で一番だった。

全体的に文句のない出来栄えだったのだけど、唯一ルキーニの嶋政宏の演技が変に道化が過ぎて、好みに合わず残念だった。

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