こんなことを思ったり。ぼちぼちかんげき。

保護猫と同居人と暮らすアラフィフがビンボーと戦いながら、観劇したものなんかを感激しながら記録。

宝塚歌劇星組公演「再会」「ソウル・オブ・シバ」

10月25日(日)18時~ 府中の森芸術劇場
ミュージカル・プレイ「再会」
作・演出 石井昌也
ジェラール 柚希礼音
サンドリーヌ 夢咲ねね
マーク 凰稀かなめ
クードレイ 英真なおき
ティーブ 彩海早矢

ショー「ソウル・オブ・シバ」
ナタラージャ・レオン 柚希礼音
シバ 凰稀かなめ

奇しくもなのか、だからなのか、トップスター柚希礼音が初舞台を踏んだ1999年の舞台「再会」の再演。本当に軽い、これぞラブコメの王道。騙し騙され、本当の恋を見つけるという物語は、ベタだし、ツメの甘いところもあるし、何よりセリも盆もない地方の舞台で転換を処理しきれず、暗転により切り替えが目障りだったところもあるけれど、十分に胸キュンさせてくれた。

初めて宝塚の全国ツアーを見たのだけど、まずは何より、カラオケの音源に外に放り出されたスピーカー、前述したセリも盆もなく、特に照明スタッフの技術も未熟で失敗も目に付き、いかに普段の宝塚歌劇がハード面、スタッフ面で贅沢なものを見せてくれているのか痛感した。

けれども、それを補ってあまりある、柚希礼音のトップスターぶり。
今回のお芝居は、ボンボンで苦労知らずのプレイボーイという役柄が彼女の本来の「陽」の魅力にぴったり合い、彼女の実力の中で多分唯一の不安要素である「演技力」をカバーし、実に魅力的だった。
そして、同じく「演技力」も課題の一つだった夢咲ねねも、コメディエンヌ振りを発揮。今の2人にぴったりあった等身大の姿が微笑ましく、凰稀かなめや彩海早矢の友人たちも、本当に普段もこんな感じなんだろうなという息の合い方で、終始可愛らしく楽しく見せてもらえるものだった。何より、登場のシーンのウェディングドレス姿の夢咲ねねは、もう圧倒的な可愛らしさで、これこそが宝塚のトップ娘役に求められている魅力の一つなのだと痛感させた。

その他の下級生たちは、残念ながら目を引くコはいなかったが、逆に目に触るコもおらず、全体に健闘したと思う。

さて、ショーの方は、2005年に前々代の星組トップスター湖月わたるによって上演された作品の再演。ダンス好きの湖月わたるの魅力を十二分に伝えるダンス・ショーだったので、ダンサー柚希礼音が演じるのにぴったりの作品だった。
久々に宝塚歌劇のショーを見て、心の底から、手が痛くなるまで拍手した。
当たり前だけど、やっぱり、柚希礼音のダンスが素晴らしい。
安定した軸。リズム感。バランス。筋肉の使い方。そしてスピード感。何から何まで隙もなく、溜め息もののラインの美しさ。
一流のダンサーのダンスを見せてもらった上での、
スポットライトを跳ねつけるほどの輝きとオーラ。
観客を集中させる熱さとパワー。
久々にこれぞ宝塚のトップスターという華やぎ。
新しいショースターの誕生を見た、という気がした。

柚希礼音にはなく、今の宝塚に求められているものは、二番手の凰稀かなめがサポートしてくれる。クールで都会的なスマートさ。洗練されたムード。そして、時に妖精のような、時に悪魔のような、美しさ。
そして、トップ娘役の夢咲ねねの現代的な有無を言わせない可愛らしさ。長身のスタイルは、どんな衣装も着こなし、十分に華を添える。
今回は全国ツアーだったこともあって、歌える出演者があまりいなかったのが残念だったが、とにかくこの三人のバランスが美しくはなやかで、ああ、宝塚っていいなあ、と久々に大興奮。
やたらと掛け声を上げながら熱く踊る星組は、私が熱いファンだった頃の星組を彷彿とさせる。90年代の宝塚が好きだった人はぜひ、今の星組を一度見てほしいと思う。そして、これからもこの魅力を伝えるべく、ぜひとも柚希礼音がトップの間は、星組には一本モノはできるだけ避けて、ショーを上演していってもらいたいと切に願う。