こんなことを思ったり。ぼちぼちかんげき。

保護猫と同居人と暮らすアラフィフがビンボーと戦いながら、観劇したものなんかを感激しながら記録。

「私」らしく輝く@龍真咲ラストデイから思うこと

9/4(日)に龍真咲さん(まさお)が宝塚歌劇団からの卒業の日を迎えました。
宝塚歌劇団では、トップスター、もしくはそれをするにふさわしいスターに、千秋楽とその前日の夜公演に「サヨナラショー」という特別なショーがつきます。
そして、いつからはじまったのか私は知らないのですが、今やその最後の日が全国の映画館に配信され、見られる形式になっています。

私が10年以上ものブランクをおいて、再び宝塚を見始めたのは柚希礼音さんがトップスターになる直前のことでした。彼女のダンスの素晴らしさに感嘆し、こんなダンサーが宝塚に入ってくれるなんて!と感激してワクワクと見に行くようになりました。

がしかし、所詮、一番最初の好み、というのは覆せないものです。
私が宝塚にはまったきっかけは杜けあきさん、というトップスターに一目ぼれしたことです。
芝居がとにかく上手くて、歌もまるで芝居のように情景が目に浮かんでくるようで素晴らしいスターさんでした。
でも、残念ながら、男役としての容姿には恵まれているとは言えませんでした。
そして、柚希礼音さんきっかけだったはずなのに、いつの間にか、私には杜さんと似たタイプの霧矢大夢さんというトップスターに夢中になっていきました。杜さんとの違いは、霧矢さんはダンスも素晴らしく上手だったことでしょうか。「男役としての容姿」以外は、まさに三拍子(歌、芝居、ダンス)が揃った夢のスターでした。

その霧矢さんの「ラストデイ」が私の「ラストデイ中継」の初体験でした。
霧矢大夢「ザ・ラストデイ」 [DVD]
宝塚歌劇団
宝塚クリエイティブアーツ

これが、本当に素晴らしかったのです。
トップスターの重責から解き放たれた霧矢さんは、のびのびとしていて、嬉しそうで、最後、この劇場で最後にできるパフォーマンスを楽しんでいるようでした。
霧矢さんは相手役の蒼乃夕妃さん(結婚おめでとう!)と同時退団だったため、彼女にも配慮した編成になっていて、2人の代名詞でもあった「素晴らしいデュエットダンス」からはじまり、蒼乃さんの見せ場も作り、その上で、「ノバ・ボサ・ノバ」の「ビバ・サンバ」を歌いあげたのです。
あまりの解き放たれたのびやかさと上手さに涙もひっこんでポカンと口をあけてしまいました
多分、劇場で聞かれた方は、もっと圧倒されたんじゃないでしょうか。
ショーストッパー、という言葉が私の頭の中を過ぎりました。
それほど圧巻の歌声とパフォーマンスだったのです。
もちろんご挨拶も、その後の余裕で明るい感じも素敵で、ラストデイというのは本当にトップスターが最後の輝きを放つところなんだ、と大満足して帰路についたものでした。

さて、そんな霧矢さんの後をついだまさおのラストデイまでに、私は2人のトップスターのラストデイを見る機会を得ました。しかし、残念ながら、この霧矢さんのときの感動を上回るものにはなりえませんでした。お一方に関しては、これは見に来る必要があったんだろうか、とまで思ってしまいました。すみません。

そんなわけで、私は既に「ラストデイ」というものに期待をしていなかったのです。
しかし、まさおはやってくれました。
涙とそれを上回る笑いと、それをやり遂げたまさおに、ただただ感動。

サヨナラショー自体は霧矢さんのときほどではなかったのですが、それでも「モーツアルト!」の「僕こそミュージック」は、本当に歌詞のとおり「そのままの僕を愛してほしい」という切ない気持ちがじんじん伝わってきて、ああ、この人は「そのままの自分」を「愛してもらう」努力を惜しまなかったのだ、と思ったものです。

多くのスターがそうであるように、スターは「ファン」なくては成り立ちません。
しかし、スターがファンを大切にするあまり、ファンの希望に合わせていく、というのは、好みがわかれるところかもしれません。

まさおはファンを大切にしながらも、自分を貫きました。
自分を貫く姿を愛してくれるファンを作ったのです。
それを、トップスターの重圧を抱えながらやり遂げる、というのは生半可な覚悟ではできないと思うのです。
そんなまさおの姿が見えるラストデイは、本当に、格好良かった、その一言につきます。


ショー中盤でもアドリブ満載で面白かったのですが(そして、それを後で、やりすぎました、でも反省はしてません、と言い切るのもステキだよ、まさお)、その辺りはまだ見られていない方はラストデイのDVDか、来年のスカイステージで確認してください。
以下、大階段での最後の挨拶が終わって、緞帳が一度降りて以降の出来事を思い出せる限り書いていきます。(セリフを覚えているような記憶力はございませんので、こんなニュアンスだったという前提でお読みくださいませ

・早々と再び上がった緞帳に「思ってたよりすぐに緞帳があがったので、余韻も何もない感じなんですが」と沸かすまさお、ステキ

・退団者だけが残されたとき「恒例のどうですかタイムやりますか」と退団者に今の気持ちを聞きながら、するどく突っ込んでいくまさお。そして、一緒にやめる同期生にどう、と聞かれ「よくやったな、自分という気持ち」と言い放つまさお、格好いい!

・組長さんから「ここで責任を取ってもらいたい方がいます。本人の了承を得ましたので、発表します。萌花ゆりあ(まいまい)、結婚します!まいまいを舞台から引きずり下ろしたフィアンセが客席にいます」と昔の宝塚のような発表に大興奮。「目立ってましたよ、白い中に青のジャケット、あなたですね」とまさお。さらに目くばせで組長さんにサインを送ると、組長さんから再び「本人の了承を得ましたので、発表します。龍真咲、結婚…できませんでした!」という言葉に大仰なお辞儀をして指輪がはまっていない左手を見せつけるまさお、やります(笑)
「記者会見で、結婚準備でやめるって言ったんですけど、できませんでした。でも、ウソじゃありません。これから結婚準備するんです!」というようなことを言ったうえで、やってみたかったんです、最後まですみません、みたいな一言。組長、同期生まで巻き込んで、もりあげる、やりたいことやる。そして、それがまた、昔からのファンには、昔は退団者挨拶のあと、こういうことあったなー、懐かしいなー、まで思い出させるまさお。凄すぎます!

・まさおの相手役だった愛希れいかさん(ちゃぴ)は続投するため、今回はショー、サヨナラショーとも徹底してちゃぴと2人で組むシーンはありませんでした。これもまさおの、次への思いやりだとは分かっていましたが、2人のコンビがとても良かったので残念だなあ、やっぱりちゃぴとの絡みはないのか、と覚悟した頃、何度目かの緞帳があがって、まさおが舞台に一人立っていました。
このタイミングで、まさおが「ちゃぴ」と声を放つ。
上手側から、まさか、という表情で顔を覆いながらちゃぴがしどろもどろに出てきたんです。
その顔が必死に涙を堪えてて、震えてて、可愛くて可愛くて、泣きました
「どこかでと思ってたんだけど、いろいろダンドリがね」と裏側をさらすまさお(笑)
オロオロと立っているちゃぴに「必死に蓋してたんだよね」という優しい声のまさお。
でも、言葉にならないちゃぴに「ちゃんと話す!」とつっこむまさお(笑)
「蓋が外れないようにって…」「蓋、ずれちゃいました」と涙をあふれさすちゃぴ。
そんなちゃぴに「ありがとうね」と伝えるまさお。見ているこちらはダダ泣きです。泣かずにいられますか!
さらに次のトップになる珠城りょうさん(たまきち)を呼び出し、これからはこの若い二人が月組を盛り上げますのでよろしく、ときちんとバトンを渡します。
そして、全員を舞台に呼び戻したとき、さっと退団者に場所を譲り列に戻るちゃぴに対して、たまきちがモタモタっとしていたので、「ちゃんと元の場所に戻る」と一喝(笑)
でも、不安がってもらえるうちが華なんです、というまさお。不安がってもらって、なんとかしようと頑張って、そうやってる時が一番いい時期なんです、私もトップになった頃いろいろ言われました、というまさおの言葉に胸打たれます。
最近では異例のトップスター、順トップスターという、Wトップみたいな体制でトップスターに就任したまさお。トップ披露公演も役替わりだったことを思い出しても、彼女が今の位置を築きあげるまでの様々を想像して、それに一つ一つ確実に応え、期待以上のものを見せることで今に至ったのだと思うと本当に格好良いなと思わずにはいられなかったのです。

・恒例の月組ジャンプは、「自分で言うのもなんですけど、龍真咲、最高!いいですか」と言ってしまえるまさおが格好良すぎます。龍真咲、最高!

・そしてもう緞帳があがらない最後の最後、緞帳前でトークを繰り広げるトップさんや挨拶を繰り返すトップさんもいましたが、まさおはなんと銀橋を歩いたんです!
そこで萌花ゆりあさんの婚約者さんのあたりで立ち止まり「あなたですか。まいまいの相手は。なんでその色、着てきたんですか」と問い詰めると、婚約者さんが「そこまでルールを知らなくて…」と返すやりとりも古き良き宝塚を見ているようで、懐かしかったです。
「なんとなくわかるでしょ。周りこんなに白ばっかりなんだから」と茶々を入れつつも「まいこを幸せにしてあげてください」という言葉に愛情を感じます。
「いいライバルがいて…」と話す言葉の向こうに、もちろん、同期生、上級生、下級生いろんな人がいたでしょうけれど、明日海りおさんを思い出させたのも、まさおの上手なところだと思います。
で、私には分からなかったコネタを挟んで、再度、会場を爆笑に誘うまさお。
でも「こうやって皆さんを笑わせたりすることで、自分を隠してきた部分もあると思うんです」という言葉は本当なんだろうなと思いました。本当の自分を見せることに恥ずかしさがあって、それを隠すために笑いをとる、そんなまさおがとてもとても愛おしかったです。

私が霧矢さんにはまって、まさおが気になったのは、もちろん「スカーレット・ピンパーネル」
『THE SCARLET PIMPERNEL』(月組) [DVD]
宝塚歌劇団
宝塚クリエイティブアーツ
のショーヴランのギラギラした底知れぬ野心が燃えているような感じもあったのですが、もう一つ「大坂侍」という作品を映像で見たときでした。
「大坂侍」でまさおは主人公のまわりをうろちょろするやんちゃ坊主のような役を演じていて、それが無駄にキラッキラしていて、いいなあ、面白いなあこの人、と思ったんです。
でも、サヨナラショーまでの組長さんがまさおの経歴を紹介するところで、この役に触れられていて「上級生に芝居がかみ合わない」と言われ悩んだ、というようなことが伝えられたのです。
あんなに、映像で見てもキラッキラしていたのに、そうか、そうだったのか、と思うと泣けました。

いくつもの壁を乗り越えて、最後の最後まで、自分らしいキラッキラ感を放ち続けたまさお。
本当におつかれさまでした。
そして、私は彼女の「勝気そうな美人顔」が本当に好きなので、妖精ではなく「女優」として、舞台に帰ってきてくれるのを待っています!
結婚してもいいから(笑)