こんなことを思ったり。ぼちぼちかんげき。

保護猫と同居人と暮らすアラフィフがビンボーと戦いながら、観劇したものなんかを感激しながら記録。

TALK LIKE SINGING

2/7(日)16:00~赤坂ACTシアター
ターロウ 香取慎吾
大村博士 川平慈英
二茂井博士他 堀内敬子
ブラザー他 新納慎也
作・演出 三谷幸喜
作曲・音楽監督 小西康陽

NYの散々な評判を前もって聞いていて、どんなにひどいものか、という心構えで行ったためか、さして悪くなかったというのが正直な感想。アイドル主演のオリジナル・ミュージカルとしては及第点の出来だと思う(とは言え、あくまで日本で、有名アイドルをキャストに置く前提で成り立っている舞台であることは間違いなく、これをそのままNYに持っていてどうこう出来たとは思えない。けれどもその挑戦、が大事なのだろう、きっと)。少なくとも個人的には「オケピ!」よりかはずっと「ミュージカル」として買える。(まあ、「オケピ!」は音楽劇だったので、比べても仕方ないし、三谷脚本という点では「オケピ!」の方が優れていたことも確か)

何より、キャッチーで可愛らしいメロディサウンドが良い。
ミュージカルは音楽ありき、という点を考えるなら、この音楽を持っているがために、いろいろ惜しい、と思わずにはいられなかった。

全体に問題は演出、だと思う。
三谷幸喜はやっぱり第一に脚本家、なのである。だから、言葉のやりとりは面白いし、そういうところは十分に楽しませてもらった。けれども、ミュージカルは言葉のやり取りだけを楽しませればいい、というものではない。あくまでミュージカルは「ショー」なのである。今回のように面白さに重点をおくならば、これは「エンターテインメント」でなければならない。だから、ショーとして、歌と踊りで「シーン」を見せる、ということはやはり大切だと思うのだ。
とりわけ、ターロウとニモイ博士のラブ・デュエットは、ロマンティックでポップな可愛いシーンなのだから、もうちょっと「シーンとして魅せる」ことを考えて演出してもらえれば、見どころが出たのになあと思わずにはいられなかった。さらに、振付、はもうちょっとちゃんとダンス、でも良かったと思う。
また、一場面が長く、日本語と英語、という部分もあって、繰り返しも多く、その辺はもう少し、舞台全体の流れとリズムを整える必要があったと思うし、簡素なりに、例えば「ニュー・ブレイン」のような、印象的なセットを配して欲しかった。セットはどうしても「粗末」という印象が抜けがたく、ライトも特に印象に残っていないのも残念だ。全体にヴィジュアルが考慮された部分があまりなく、その辺りも三谷幸喜は脚本家なのだなあ、と思わせてしまった。

何より、やはり主人公、香取慎吾の役の作り方が問題だと思う。
香取慎吾はそれなりにちゃんとこなしていた。けれども、このターロウという主役の、「歌うようにしゃべる」自然性、それを失ったどうしようもない苦しみ、不自由さ、その後の取り戻した喜びなんかがちゃんと伝わってこず、だから、物語としての締りを欠いたように思う。この辺は役者どうこうというよりも、やはり演出の魅せ方の問題だと思うのだ。

いろいろ端々に感じる素材としては悪くないからこそ、もっといい作品に出来たのでは、と思えるから、なんだか全体に「惜しい」と思わせる作品だった。