こんなことを思ったり。ぼちぼちかんげき。

保護猫と同居人と暮らすアラフィフがビンボーと戦いながら、観劇したものなんかを感激しながら記録。

二人の恋愛の違いが再演の魅力@スカーレット・ピンパーネル

私に同じ役を違う人でやる面白さを植えつけたのは、間違いなくロンドンの我が劇団。トリプルキャストとかで日替わりでやっていたのだけど、演じる人が変わるとその作品の違う面が見えて、もうそれが堪らなく面白かったのだ。
安易な再演には批判もあるだろうけれど、今回のスカピンはまさしくその面白さに溢れている。

初演安蘭けいのパーシーと遠野あすかのマルグリットの最大の魅力は「大人の愛の駆け引き」だった。
遠野マルグリットは、きっと、ショーヴランの後も女優になってから、きっと軽いのから深いのまで、遊びから真剣のまで、様々な恋を楽しんできた、大人の女の魅力があった。女優という職業もあって、彼女はきっと今まで思いのままに恋を操っていたんじゃないか、という色気があった。
一方の安蘭パーシーも、申し分ない身分と財産、さらに麗しい見た目があって頭もいいし、何より遊び好きな感じが、今まで恋も娯楽の一つで楽しんできたんだろうなあ、という雰囲気があった。
この2人、結婚するまでに絶対、何人か泣かしてきたに違いない、きっと結婚の影で涙した人間も1人や2人じゃないはず、みたいな(笑)
だから、結婚しても、その頃の感じが抜けなくて、二人の間に、どちらがこの関係の主導権を握るかみたいな、本当の気持ちとは別に、そういう駆け引きのようなものが存在して、それが2人の関係をすれ違わせてしまったみたいな、大人の恋愛が、あの作品に色気を与えていたように思う。
もちろん、円熟期の星組だったから、ピンパーネル団の個性の充実とかあったと思うけれど、その辺は、まあ、ちょっと宝塚に片足くらいつっこんでないと気づきにくいものなので、素人の観客としてみて、一番ステキで、うっとりしたところは、その2人の関係性だったのじゃないだろうか、と思う。

一方で、霧矢大夢のパーシーは、真面目です(笑)
なんか、女ではあんまり遊んでなさそうな雰囲気(笑)
今回私が一番霧矢パーシーを見て思ったことは、「このパーシーは正真正銘イギリス人だ」ということ。
思うと星組版はとてもフランス的だった。華やかで濃厚。そして、どことなくおしゃれ。安蘭パーシーはフランス女に恋をして、ゲットしてしまえるのが納得できるくらい、フランス人っぽい要素を持ったイギリス人だった。
けれども、霧矢パーシーは、どこまでいってもイギリス人。自分の感情を抑制し、表面を取り繕うことが自然と体に染込んでいる英国貴族。だから、新婚の妻の前でさえ、表面を取り繕ってしまう不器用さが、ナチュラル。

安蘭パーシーと遠野マルグリットはお互い恋愛の達人ゆえに様子を伺ってすれ違ってしまった感じだったけれど、霧矢パーシーと蒼乃夕妃のマルグリットは、お互い恋愛がそれほど得意じゃないから、好きすぎる気持ちが裏目に出てしまって、すれ違ってしまった感じで、色気はないけれど、それはそれで2人がとても可愛いのだ。

星組版を見たとき、パーシーがマルグリットを誤解していたとは言え、新婚の晩に名目上狩りに行ってしまうのが、ちょっと許せなかった。女を十分知っているはずの大人の男に見えたから、新婚の夜という女が大事にしそうなロマンティックなシチュエーションを、なしにしてしまうのは、大人の男としてどうなのよ、と思わずにいられなかったのだ。また安蘭パーシーがそうすることで、遠野マルグリットの痛みがより深く響いてきたりしたのだ。

でも霧矢パーシーはどうかというと、動揺した心を抑制して、対面を取り繕うことしか出来なかったのね、本当不器用なんだからと思わせる。だから、ピンパーネル団の仕事に逃げちゃったのね、おバカさん、と(笑)
だから、ピンパーネル団の仕事をしていても、常にマルグリットのことが頭の中にあって、気になっている感じが、良い。
そして、蒼乃マルグリットが、パーシーにショーヴランとのいきさつを説明しないのも「嫌われるのが怖かった」というセリフが、とにかくパーシーが好きで好きで、初めての夫という存在にどう振舞っていいか分からなかった新婚の妻的で、すごく自然。
全体にパーシーとマルグリットがもどかしくて、可愛い(笑)

星組版のエンディングは、ますます深く繋がって行くんだろうなというような2人の人生とか未来が見えたけど、月組版はとりあえず、お互いに間違ったと思ったところ、新婚の夜からちゃんとやり直すようなアツアツ感があって、それぞれに楽しいのだ。

星組版は、大人の恋愛に、その色気にドキドキ。
月組版は、若くて不器用な2人に胸キュン。

どちらもそれぞれにいい。
どちらも楽しい。
だから、良作の再演は面白い、という話。