こんなことを思ったり。ぼちぼちかんげき。

保護猫と同居人と暮らすアラフィフがビンボーと戦いながら、観劇したものなんかを感激しながら記録。

東宝「RENT」

11/9(火)19:00~ シアタークリエ

マーク 福士誠治
ロジャー 藤岡正明
ミミ ソニン
コリンズ 米倉利紀
エンジェル 中島卓偉
モーリーン キタキマユ
ベニー 白川裕二郎

演出: エリカ・シュミット 

新演出日本版「RENT」再演の個人的な見所は、何をおいてもソニン、だった。
とにかく「OUT TONIGHT」が圧巻。
鍛えられた肉体に身体能力の良さを見せつけたパフォーマンスもさることながら、このミミが、身体の中に「命」というキャンドルがあるならば、それはもしかするととても短くなっているかもしれないのに、だからこそ、そのキャンドルを力を振り絞って最大限に燃やそう、というエネルギーが、ものすごく伝わってきたのだ。
まさしく「NO DAY BUT TODAY」を体現していた。今を最大限に、力の限り、生きている、そういうパッションに溢れたミミ。だからこそ、彼女の影がまた哀しく愛しく、久々に鳥肌の立つパフォーマンスを見せてもらった。
彼女の身体からあふれ出る熱情、それこそが舞台の上での輝きとなる。
そして、誰もが主役のこの舞台だけれども、それでもメインキャラクターがこれだけ輝いてくれると、作品はそれだけで力を持つのだ。

そして、彼女とぶつかる藤岡ロジャーがまた良い。セリフ回しは若干気になるところはあったのだけど、それを覆す歌の強さ、声の強さ。
不器用で、世間に背を向けているロジャーだからこそ、歌で自分をそして気持ちを表現している、という部分が良く伝わり、ロジャーとミミの、重なる不安やとまどいに久々にドキドキした。
二人の「手をつなぐ」仕草がとても良くて、怯えたように不器用に、手を取る感じが「伝えたいけれど言えない」雰囲気を良く伝えていた。

さらに福士マークが良い。私にとって、彼の最も良かったところは、セリフ回しと滑舌の良さ、という演技のスキルが際立っていたところ。進行役のマークにとってこの二つは重要な要素なんだな、と改めて思う。その上で、きちんと彼なりのマークを作り上げていて、今まで見た中で最も親しみやすい、友人になれそうなマークだった。アーティストというよりは、もう少し内にこもったオタクっぽいところがあって、それが、他に比べて「傍観者」であるという側面を際立たせて、かつ純粋さも見えて、共感もできるし、可愛い。歌もあれだけ出来れば上々。
個人的に歌が上手くても、動けなかったり、演技が出来なかったりする方がダメなので、まずきちんと演技が出来て、ミュージカルの舞台で見れる程度にちゃんと動けて、あの程度まで歌える、というのは、本当に素晴らしい資質だと思う。

とにかくこの三人がとても良くパワーを放っていたので、とてもエネルギー溢れるRENTらしいいい舞台になっていたことが嬉しかった。この三人に比べ、他のメインカップル2つが若干弱かったことはちょっと残念(エンジェルが歌は良いし、演技の方向も悪くないんだけれど、全く動けないかったのが見ていて気になった。せめて姿勢、猫背だけでも治した方がいいと思う。ロジャーと違って、エンジェル役が姿勢が悪いのは頂けない)だけれど、アンサンブルはとても良く、ああ、やっぱり私、RENTが好きなんだな、と改めて感じさせてくれたいい公演だった。

セットは二年前に比べて、簡素で使い方なども面白みがあって良かったのだけれど、二年前唯一良かった照明が、今回はとても安易でチープなイメージだったのが残念だった。RENTの世界観でチープなのは良いのだけれど、それに工夫がないというか、作品を装飾しておらず、ところどころ気に障る部分もあって、もう少し何かがあると良かったなあと思う。
演出は二年前よりも改善され、受け入れやすくなっていて、及第点。
衣装は仕方ないのかな、というところも多いのだけど、個人的にはあまりセンスを感じられず、これも残念なポイント。ただ「タンゴ・モーリーン」でのモーリーンの衣装だけでも改善してもらえると良いなあとちょっと思った。