こんなことを思ったり。ぼちぼちかんげき。

保護猫と同居人と暮らすアラフィフがビンボーと戦いながら、観劇したものなんかを感激しながら記録。

宝塚雪組「ハウ・トゥ・サクシード」

7月9日(土)16:30~ 梅田芸術劇場

フィンチ 音月 桂
ローズマリー 舞羽 美海
バド 早霧 せいな
ビグリー 汝鳥 伶
ブラット 未涼 亜希
ミス・ジョーンズ 舞咲 りん
トインブル
ウォンパー 緒月 遠麻
ヘディ・ラルー 晴華 みどり
ギャッチ 沙央 くらま
スミティ 愛加 あゆ

くたばれヤンキース、キスミーケイトなど、今まで古くてつらいなあと思ったミュージカルは多い。そして、ハウトゥサクシードもそういう作品の一つだろうと、何一つ期待せずに向かった。
けれど、その期待は良い方に裏切られた。

調べてみたら、この作品がトニー賞を取ったのが1961年。翌年ピューリッツア賞も獲得している。2012年の今だから、色々と感じるところも違うけれど、これは間違いなく素晴らしかった作品だったし、ブロードウェイらしい作品だったのだと思う。
先に述べたように今まで、古いブロードウェイ作品もそれなりに見てきた。テンポの遅さに耐えられなかったり、今上演するのだからもうちょっと割愛できる部分はしていったらいいのに、と思ったことはたくさんあるし、今回のこの作品にも似たような感想を抱えた部分もあった。
何より、一部が長い。楽しいけど、長い。フィンチと社長の出身大学の歌の繰り返しの部分とか、古いミュージカル作品の特徴なのだけど、ああいうところはやはり整理してくれた方が今はすっきりみれると思う。

けれど、そういうことを置いても、この作品は私のミュージカルが、しかもブロードウェイミュージカルが好きだという気持ちを高ぶらせてくれるものだった。
Chicagoやリトル・ショップ・オブ・ホラーズ、プロデューサーズもそうだけれど、とてもショーアップされた中にいれ込まれているシニカルさ、これこそ、ブロードウェイのペーソスで、お気楽で軽いだけの作品をピリッと彩るおもしろさだと思う。それがこの作品にはある。

でも、それは、ショーアップされてからこそ、で、だから、このセットといいライトといい、完全ショーベースで作られた演出は私個人は正しいと思った。そして、殆どショーである作品を作るのに、宝塚歌劇での上演は私は合っているとも思う。

ということで、この作品には、一冊の本によって出世していく、というガイドラインしかストーリーはない。後は大会社をテーマにしたショーだと思ってもらえれば、もっと楽しく見てもらえるのではないかと思う。大作ではない。でもこれは確かにミュージカルの一つの形だ。残念ながらあまり日本では人気のでない種類のものではあるけれど。

ストーリーに関係あるのかないのか、そんなことは関係ないショーシーンの連続。コーヒーブレイク、チアガール、TVショーのパイレーツのシーン。どれも意味なくにぎやかに繰り広げられるそのショーの楽しいこと!カラフルでピカピカしていて、そしてもちろん多種多様の音楽も楽しくて(この種類が現代に近づくほど、ロックやラップなんかが入ってきて増えるんだろうなとかそういう流れも思わず考えてしまった)、とにかく見ている間中ずっと笑顔だった。
そして、最後のbrotherhood of manの文句ない楽しさ。こういう一曲、こういうシーンがあることこそがミュージカル、そして、帰り道ではこの曲を思わず口ずさむことこそミュージカルの醍醐味。
この楽しさ、ヘアスプレーを見た時以来の感覚。
可愛い、楽しい、だから幸せ!!!

出演者もとにかく可愛く、見た目にも楽しい。
考えさせられるもの、心ゆざぶるもの、感情移入するカタルシスとかはこの作品にはない。けれど、だからこそ、思考をとめて、目と耳から入ってくるもののみを味わう楽しさがこれにはある。返す返すもどうして初演は行かなかったんだろう、と我ながら不思議^^;

惜しむらくはこの楽しさを本当に100%満喫するには劇場が広すぎること。この作品に合うサイズの劇場で見てみたかった。