こんなことを思ったり。ぼちぼちかんげき。

保護猫と同居人と暮らすアラフィフがビンボーと戦いながら、観劇したものなんかを感激しながら記録。

ばかばかしさの極み@六本木歌舞伎「地球投五郎宇宙荒事(ちきゅうなげごろううちゅうのあらごと)」

地球投五郎 市川 海老蔵
駄足米太夫 中村 獅童
高窓太夫 尾上 右近
左坊 加藤 清史郎

昔、「恐れを知らぬ川上音二郎」を見た時も思ったんですけど、こういう演目ほど感想って書きにくいものですね。

なんていうか、「演出」とか「物語」とか、
ぶっとばされちゃうと、感想がもう

とにかく面白かった!
理屈なしに笑った!


の2言で片付いちゃうんですよ。
エンターテインメントとしては
ある意味ものすごく上出来ですよね。

えっと、もう一度言いますが
理屈なしに面白かったし、笑い転げました!
もう一度体感したいくらい、それはそれは楽しい時間でした!


その上で、何が面白かったのか、を書く、
ということに挑戦してみようと思います。

感想が書けないほど、物語はありません。
コンセプトが「地球投げちゃうくらいはちゃめちゃな舞台を作れたら面白いだろうね」
だもの。
物語ははちゃめちゃです。

まず、海老蔵獅童が楽屋着で登場して、普通に楽屋トークを始めながら歌舞伎の準備をします。
海老蔵はブログのために、客席の写真撮影もします。
(加藤清史郎くんの開演前ご注意で海老蔵さん以外は携帯の電源切ってください、とかも言われます)
それで、俺たちすごい忙しいよな、稽古、本番、ブログ、稽古、本番、ブログの繰り返しで
なんて自虐的なセリフを飛ばします。
それに獅童が普通に「ブログやめたら、ちょっと時間できんじゃねえ?」
とか返します。
もうどこまでが脚本なのか、アドリブなのか全くわかりません。
だから毎日見たくなります。

でも、目の前で歌舞伎メイクが出来上がる過程を見ることって早々ありません。
私ははじめてでした。
そんなお得感もあります。

で、海老蔵獅童の楽屋トークから
「地球投げちゃうくらいはちゃめちゃな舞台を作ろうよ」となり、「地球投五郎宇宙荒事(ちきゅうなげごろううちゅうのあらごと)」がはじまるわけです。

とりあえず、
トランスフォーマーとか
スターウォーズのパロディ入りまくりなので
元ネタを知っているともっと笑えることは間違いなしです。
私は囃子方が「ダースベイダーのテーマ」曲を奏でたところに、もう本当、心から驚き感動しました。

なんか、役者方よりも固そうなイメージのある囃子方
やっちゃう。やってくれちゃうんだ…!
みたいな妙な感動。

その「地球投五郎宇宙荒事(ちきゅうなげごろううちゅうのあらごと)」は
駄足米太夫が宇宙船でやってきて、
周りの人々を混乱させる中、
それをおさめるため、投五郎が立ち上がる、
みたいな話になっています、多分。

で、「地球投五郎宇宙荒事(ちきゅうなげごろううちゅうのあらごと)」を
やっている間も楽屋での裏側も上演されていて、そこで、
海老蔵って本当は宇宙人じゃないの
という疑惑を弟子の左坊が抱き、獅童に伝えます。
でも海老蔵さんには言わないでくださいね、
という左坊に
歌舞伎調の大見得を切ってまで
「口がさけても言わねえよ」
という獅童が、
海老蔵が楽屋に戻ってきた途端、
「宇宙人なの?」とストーンと聞く、
あの間、言い方、最高です!
今思い出しても笑ってしまいます。

それに観客サービスも満点。
いつもの如くビンボーなので、2階の上の方で見ていたため、その恩恵にはあずかれませんでしたが
客席に投げ飛ばされるライトセーバー、じゃなくて銀河丸に大興奮。
なんでグッズ販売しなかったかなあと思うくらいほしかったです。

後はもう、海老蔵の歌舞伎技を魅せていく、
という作りになっていて
改めて、海老蔵の歌舞伎役者としての魅力とスキルを堪能。
右近さんのお姫様だけが、
ちょっと女形としては色々ごつくて、
これが七之助だったら…とは思いましたが、
それくらいで、よく分からないながらも、
終わって、
「なんか、すごいもの、見たわ」感
海老蔵の「花形役者」たる
スキルに基づいたパワーでしょう。

いやあ、面白かった!

ダメだという人も多いでしょう。
中身ないし、私だって、いい作品だなんて言えません。
でも、こういうのをやって、
新しいことに挑戦して、
観客のすそ野を広げていくことは大事なことだと思います。

そんなわけで、これで
初めて歌舞伎の海老蔵をご覧になったみなさん。
成田屋は荒事がお家芸らしいですけれど、
私は海老蔵の上品な役柄の方が好みなんですね。
本当に本当に上品でたおやかで、テレビでの彼を
想像できないほど美しいのですよ。
ぜひ、一度、柔らかい役もやっている海老蔵もご覧ください。
特に「海神別荘」の公子さまの美しさといったら、玉三郎さんにも引けをとりません。
個人的には「白波五人男」の「弁天小僧菊之輔」がもう一度見たいです!
楽屋トーク海老蔵獅童
散々愚痴を言われていた(笑)松竹さん、
ぜひお願いします。