こんなことを思ったり。ぼちぼちかんげき。

保護猫と同居人と暮らすアラフィフがビンボーと戦いながら、観劇したものなんかを感激しながら記録。

ありのままを受け入れる@来日キンキーブーツ

11月3日 12:30〜 オリックス劇場

2007年の12月、私はロンドン旅行前で、こんな日記を残していました。
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さすがにそろそろ、とロンドン旅行の準備をし始めるものの、あったはずの変圧器がまたない。
まあ、今回一週間だし、携帯の充電以外は必要ないので、なんとかなるかと思うものの、出鼻を挫かれる。

しょうがないので、イギリス気分を盛り上げるために、借りておいたDVDを見る。

キンキー・ブーツ

キンキー・ブーツ [DVD]
ジョエル・エドガートン,キウェテル・イジョフォー,ジェミマ・ルーパー
ワーナー・ホーム・ビデオ



イギリス映画お得意の、仕事がなくなって困った状況を奇抜なアイデアで切り抜けるというヒューマン・コメディ。なので、とっても気軽に見れる。更に重くなく、「偏見を捨てて」と言うドラァグ・クイーンの姿はとても説得力があって、ショー部分の歌も良く、ミュージカルにしても楽しいんじゃないかなと思った。
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それから6年後、2013年にトニー賞でキンキーブーツのミュージカル化を見るわけですが、パフォーマンスシーンよりも、シンディ・ローパーの作詞作曲が大きく取り上げられ、受賞したことの方が印象的でした。
因みに今、確認したら、トニーでパフォーマンスされたのは、赤いブーツが完成した、このシーン「everybody say yeah」でした。

youtu.be


まあ、確かに楽しいけれど、割とありがちで、そのときはあんまり良い印象を持たなかったんですね。

でもトニー賞の印象と実際の舞台は違う、ことはアベニューQで実感していましたので、せっかく大阪にも来日公演が来てくれる、ということで、見に行きました。

本当、トニーの印象はあてになりません。
すっばらしいエンターテインメント作品でした!

キャスト看板はこちら↓


上に簡単な映画の感想書いているのですが、正直映画は殆ど覚えていませんでした。
ただ、「フル・モンティ

フル・モンティ [DVD]
ロバート・カーライル,トム・ウィルキンソン,マーク・アディ,スティーブ・ヒューイソン
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン

で「ブラス!

ブラス! [DVD]
ピート・ポスルスウェイト,ユアン・マクレガー,タラ・フィッツジェラルド
アミューズソフトエンタテインメント

だな、という印象が残っているだけ。
それだけ結構、あっさり見ちゃったんでしょう。

そんなわけでストーリーはとてもシンプルです。
靴の町ノーサンプトンで、紳士靴の工場の息子チャーリーが主人公。
彼女ニコラの影響もあって、こんな田舎町よりロンドンへ、と引っ越した矢先に父親が亡くなり、ノーサンプトンに帰らざるを得なくなります。
父の工場を受け継いだはいいものの、現実は返品の嵐。工場は経営難だったのです。
さて、この工場経営をどう立て直すか。
ここは紳士靴にこだわらず、ニッチなニーズを見つけるのはどうだろうかと思案していたときにドラァグクイーンのローラに出会います。
ローラのピンヒールを見て、これだ!となるわけです。
そして、ローラのヒールへの愛情とセンスを感じ、デザイナーとして工場へ迎えます。
さて、ドラァグクイーンのローラと田舎町の工場職員はうまくやっていけるのか、無事工場は立ち直るのか。


ね、フルモンティで、ブラスですよね
まあどちらも好きな映画だし、フルモンティはそれこそロンドンでミュージカルを見ましたねえ。
だからきっと映画も楽しく見たはずなんですよ。
でも、なぜそれほど印象に残っていないのか、我ながらナゾです。

そして、そんなあっさり見た映画に対して、ミュージカルでこんなに目から汁を流すとは思いませんでした。

1幕で、チャーリーとローラ/サイモンが歌う
Not My Father's Son
が、もう
チャーリーは幼い頃から父親に工場を継ぐんだと言われて育ちますが、結局父親が生きているうちには希望を叶えられませんでした。
ローラ/サイモンは父親にボクサーになるように育てられます。でも今はドラァグクイーン
自分で選んだ道だけれど、それでも親の期待に叶う子供でなかったことを、どこかで心苦しく思っているのです。
それで2人が共感しあって、一緒にがんばろうとなるところで涙してしまいました。
それは多分もう歌の力なのです。
歌が言葉以上に2人の感情を届けて、だから心に迫る。これがミュージカルの魅力なのだ、と改めて思いました。
この歌があっての
everybody say yeah
だから、単なる楽しいシーン以上になるんですね、本当。

でも駆け足な印象の1幕よりも2幕はもっとステキでした。
工場で働く脳みそマッチョなドンに向かって、ローラが歌うWhat a woman wants の爽快なこと!
もう、電車で大きく股開いて座るおっさんにイライラしている全女子に捧げたい一曲です!

そして、ローラとドンがとあることをきっかけに和解するシーンで、ローラがドンにいうこのセリフがステキなのです。
accept someone for who they are
(誰がどうであろうとそのまま受け入れて)


これはローラがドンに私を受け入れて、と言っているわけじゃなく、ローラがドンをそのまま受け入れてるのが分かるのですね。
だから本当、反省しました。
ローラにRENTのエンジェルの姿が重なりました。包容力。暖かさ。そして、強さ。
ローラは本当に美しい人でした。

演じたJ・ハリソン・ジーのスタイルの良さと端正な顔立ちもあるけれど、それ以上にローラは美しい人でした。ローラが美しいから、心揺さぶられ、涙したのだと思います。

それにしてもセットも簡素なのに美しいし、ローラの独唱シーンの照明が、単純なのに、素晴らしい効果をなしていて、まるでローラから後光が差しているかのようでした。
最初のマイクトラブルはあったものの、このスタッフ側のクオリティの高さも、やっぱりブロードウェイってすごい、と思わざるを得なかったです。
ラストシーンの敢えてダサく簡単な振付はきっと、向こうならみんな踊るんだろうなあと。
楽しそうで羨ましい!
でも大阪の客席も、シーンを追うごとに熱くなってきて、ラストシーンは喝采でした。
そして、喝采にふさわしい舞台でした。

シンディローパーの音楽なのですが、幕あきがまるでミー&マイガールのような、クラシックミュージカルっぽい曲で、ああ、こんな音楽も作れるのだ、と逆にそこで感心
ダンスナンバーやバラードはさすがのクオリティでした。

ローラに終始してしまいましたが、主役のチャーリーがちゃんと主役として立っているからローラが活きるのです。
等身大で、共感できる役作り、素晴らしかったです。
そして、ローレン!
もう、愛すべき女のコ!

この役、トニーの映像を見ると結構可愛いコが演じてるんですね。
でも今回のローレンは、ちょいぽちゃで小柄で、お世辞にも美人とは言えない顔立ちで、だから、彼女の片思いがすごくホンモノなんですよ!!
歌もめちゃくちゃ上手くて、ステキでした。

こうなると、日本版がどのように訳されて、どのような舞台だったのか気になるところです。
まあ、キャスト人気でチケット取れなかったけれど、それ以上に、私はオリジナル版を見てから日本版を見たかったので、順番が逆だったら良かったのにな、と思います。

そして、日本版以上にお金があったらこの来日版をもう一度見たいです!