こんなことを思ったり。ぼちぼちかんげき。

保護猫と同居人と暮らすアラフィフがビンボーと戦いながら、観劇したものなんかを感激しながら記録。

拮抗する力の心地よさ@東宝スカーレット・ピンパーネル

11月5日 12:30〜 梅田芸術劇場

訳詞・翻訳・潤色 木内宏昌
潤色・演出 ガブリエル・バリー

パーシー・ブレイクニー 石丸 幹二
マルグリット・サン・ジュスト 安蘭 けい
ショーヴラン 石井 一孝
ロベスピエールプリンス・オブ・ウェールズ
佐藤 隆紀[LE VELVETS]
アルマン・サン・ジュスト 矢崎 広
デュハースト 上口 耕平
ベン 相葉 裕樹
ファーレイ 植原 卓也
エルトン 太田 基裕
ジー 駒木根 隆介
ハル 廣瀬 智紀
マリー・グロショルツ 則松 亜海



ブログ再開してから、恐らく一番読んでいただいているのが、この3人のショーヴランについて書いたもの。
(ありがとうございます)

そのくらい、このミュージカルは面白くて、ショーヴランというキャラクターは魅力的なんだなあと思います。
けれど、実は私、ショーヴランよりパーシーが好きなのです
英国人らしい慇懃無礼なところ、感情を表に出さず、妙に不器用なところが可愛い
で、宝塚で「スカーレット・ピンパーネル」を見たときから、ずっと思っていたのは、本来これはパーシーとショーヴランの力が拮抗していて、マルグリットをめぐる物語なのだろうなあということ。
もちろん、オタク仲間から「ひとかけらの勇気」が宝塚版のために用意された曲であること、さらにルイ・シャルルの奪還等は宝塚オリジナルストーリーであることなどを事前に聞いていたため、よけいにそう思ったのだと思います。

ブログにも書いたように、三人のショーヴランはそれぞれすっごく面白かったです。
でも、残念ながらパーシーとの芸歴の差が三人とも明らかでした。
だから、三人のショーヴランの中では明日海ショーヴランが一番バランス的には好きでした。
なぜかというと、一番存在が弱くてだからその後ろにどどーんと「敵」としての「ロベルピエール」の存在が大きく見えたからです。
寧ろ、このときロベスピエールを演じた越乃リュウさんがショーヴランを演じたならさぞかし面白かっただろうなあと思わずにはいられませんでした。

そんなわけで、私が今回この「スカーレット・ピンパーネル」を見に行った理由は一つ、パーシーと力の拮抗したショーヴランが見たい!ということでした。
その点で、この「スカーレット・ピンパーネル」は大満足でした。

ということで、一応ストーリーを。
時代はロベスピエール率いるジャコバン党が支配するフランス。
自由・平等・友愛を旗印に起こった革命は激しさを増し、貴族たちが次々とギロチンにかけられています。
コメディフランセーズの女優マルグリットが英国貴族パーシー・ブレイクニーと結婚すると宣言するところから舞台ははじまります。
元恋人のショーヴランはロベスピエールから信頼を得て、革命家として貴族の粛清に活躍しています。
実はマルグリットも元は革命家で、その過去をばらすとショーヴランに脅され、サンシール公爵の隠れ家を密告します。
パーシーはサンシール公爵の親友で、彼を英国へ亡命させる手はずも整えていたのですが、帰国してサンシール公爵が処刑されたことを知ります。
そして、それにはどうも新妻マルグリットが関わっているらしい・・・。
そんな疑念を抱きながら、パーシーは隣の国フランスで巻き起こる狂乱を黙って見過ごしててもいいのだろうかと自問し、友人たちとマルグリットの弟アルマンとともに、革命に巻き込まれた人々を救う活動をはじめます。
その活動に「スカーレット・ピンパーネル」、紅ハコベの紋章を用います。
一方でマルグリットへの疑念がはれないパーシーとマルグリットの関係はぎくしゃくしたまま。
そんな中、ロベルピエールは革命を邪魔する「スカーレット・ピンパーネル」を見つけ、片づけることをショーヴランに命じます。
アルマンが捕らえられ、そこから「スカーレット・ピンパーネル」がどうやら英国人であるらしい、ということをつかんだショーヴランは、一路英国へ。
マルグリットにアルマンの命をだしにして、「スカーレット・ピンパーネル」をさぐるように命令します。
アルマンのために、と「スカーレット・ピンパーネル」を探しはじめるマルグリット。
それを怪しむパーシーとピンパーネル団。
2人はお互いの真実に気づくのか、革命の嵐吹き荒れるフランスでアルマンをどうやって救出するのか。



さて、そんな物語で、一応パーシーが主役なんですが、石井ショーヴランが、もはや主役かってぐらいギラギラしているんですよ。
あんな男(パーシー)じゃお前を満足させられないだろう、ってマルグリットにいうマンティング加減も最高です(笑)
さらに「マダム・ギロチン」の歌の迫力。ワイルドホーンの音楽の本来の魅力を見ました。
まあ、私、ワイルドホーン先生の音楽はどちらかというと苦手なので、二幕には胃もたれしちゃったのですが、「マダム・ギロチン」と「君はどこに」の2曲は特に今回の方が堪能しました。

そして、もう一つ、良かったことが、パーシーが正義のヒーローではないこと
パーシー、大好きなんですが、宝塚版は最初から正義の味方「スカーレット・ピンパーネル」で無用な殺戮は許さない、みたいな正義感がバーンと出ていて、それがちょっと好みから外れていたのです。
でも今回は、親友のサンシール公爵が殺されてしまって、そこではじめて、自分は英国でこんな気楽な傍観者でいていいのだろうかと考える、という流れがいいなあと個人的に思いました。
だから、アルマン救出のためにフランスに渡ったあと、パーシーはかなりギリギリまでショーヴランに追い詰められるのもスリリングで面白かったし、そのシーンでパーシーがもう家族の問題(アルマンは義弟)だから、君たちをこれ以上危険にさらすわけにはいかない、英国へ帰ってくれ、というのもすごく良かったです。
もちろん、この後、ピンパーネル団が「炎の中へ」を歌うのもカタルシス

なのに、「正義、信念、そして勇気だ」なんてセリフで言っちゃうのはどうかと。
そんなことはピンパーネル団が「炎の中へ」を歌うので十分伝わっています。
だから、感動するのであって、「ワンピース」は、これは少年漫画だから、と堪えましたけれど、いい歳の男たちがこんな言葉で鼓舞されちゃうのはちょっとがっかりしてしまいました、すみません。

まあ、パーシーとショーヴランが拮抗しているのに対して、ピンパーネル団が若くてねえ。
いや、宝塚版も片腕のデュハースト以外は若かったりするのですが、石丸さんがいかに甘い顔立ちの素敵な男性でも、中年な体形と雰囲気は否めないわけで、一番スラッと美しい年齢のピンパーネル団たちとの差がちょっと目に厳しかったです。
その中でオジーは良かったですねえ。
ああいうキャラ、宝塚では作りにくいし、いい感じに緩和材にもなっていました。

宝塚版とオリジナル版があると、どちらがいいか、という話になるんですけれど、私はこれはもう別物だと思いました。
ミュージカルのキャバレーと映画のキャバレーが違うくらいには違っています。
同じキャラクターが出ていて、似たようなストーリーの別物だと思うと楽しいです。

一つ思うのは、小池先生って宝塚の演出家として本当プロだな、ということです。
「マダム・ギロチン」だって、女声ではあそこまでの迫力が出ないことが分かっていたからこそ、あんな風に群衆のダンスをつけて迫力を生み出したわけで、ルイ・シャルルの奪還のエピソードも宝塚ファンが「ベルばら」を熟知しているからの配慮で作られたのでしょうし、そして、あんな楽しい娯楽作品に仕上げたのは素晴らしいの一言です。
この「スカーレット・ピンパーネル」はこれで好きですけれど、改めて、小池先生、好きだなあと思いました。

ところで、今回、パーシーとマルグリットは出会って6週間で結婚ということになっています。
どう見ても妙齢の男女のスピード婚。
これはこれで色々妄想してしまったので、また機会があれば書きたいなあと思います(笑)
いろいろ妄想できる点でも、この作品、やっぱり楽しいです(笑)