こんなことを思ったり。ぼちぼちかんげき。

アラフィフ負け犬がビンボーと戦いながら、観劇したものなんかを感激しながら記録。

清廉と狂気は紙一重@宝塚雪組「ひかりふる路」「Super Voyager!」

11/23(祝・木)15:00~ 宝塚大劇場

ひかりふる

(ポスター画像は宝塚歌劇団HPより) 
キャスト
マクシミリアン・ロベスピエール 望海 風斗
マリー=アンヌ 真彩 希帆
ジョルジュ・ジャック・ダントン 彩風 咲奈
カミーユ・デムーラン  沙央 くらま
タレーラン・ペリゴール 夏美 よう
マノン・ロラン夫人 彩凪 翔
サン=ジュスト 朝美 絢

作・演出 生田 大和
作曲 フランク・ワイルドホーン

みなさんは、マクシミリアン・ロベスピエールという名前をいつ知りましたか?
多くの方は高校の世界史で「フランス革命」と一緒に聞いたかな、という人物だと思われます。
少女漫画ファンや宝塚ファンはやはり池田理代子さんの名作漫画「ベルサイユのばら」で知ったのではないでしょうか。
かくいう私も、もちろん漫画の「ベルばら」でサン=ジュストとともにその名前を知りました。
漫画の中では、「死の天使長」とも呼ばれたと紹介されていたサン=ジュストの美しい絵柄に比べて、ロベスピエールはこざっぱりとはしつつも地味目の普通の男性に描かれていました。
そして、確か「清廉な人柄」的なことが書かれていた記憶があるのですよね。(昨日11/25ベルばらの漫画を確認したところ、清廉な人柄ではなく「ロベスピエール・・・あの清らかさ」とオスカルがモノローグで語ってましたそしてプログラムを読み返したら、寄稿が「清廉の人を想う」というタイトルでした

この際なので、「清廉」とはどういうことか調べてみましたところ、「心が清らかで私欲がないこと」だそうです。
今回の「ひかりふる路」では、そういう「清廉なロベスピエール」を描こうとしていたように思います。

さて、「ベルサイユのばら」の宝塚歌劇化が成功してから、宝塚歌劇ではさまざまな「フランス革命」が描かれております。
近年でも本家「ベルサイユのばら」から
宝塚グランドロマン ベルサイユのばら―オスカル編― ~池田理代子原作「ベルサイユのばら」より~ [DVD]
凰稀かなめ,実咲凜音,朝夏まなと,緒月遠麻,蓮水ゆうや
宝塚クリエイティブアーツ

フランスミュージカルの「1789」
月組宝塚大劇場公演 スペクタクル・ミュージカル『 1789 ―バスティーユの恋人たち―』 [Blu-ray]
宝塚歌劇団,龍真咲,愛希れいか,凪七瑠海,美弥るりか
宝塚クリエイティブアーツ

そして、今回と同じフランク・ワイルドホーン氏が作曲された「スカーレット・ピンパーネル」
星組宝塚大劇場公演 ミュージカル『THE SCARLET PIMPERNEL』 [DVD]
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宝塚クリエイティブアーツ

などなど、他にも
花組 宝塚大劇場公演 『愛と革命の詩―アンドレア・シェニエ―』『Mr. Swing!』 [DVD]
宝塚歌劇団,花組,蘭寿とむ,蘭乃はな,明日海りお
宝塚クリエイティブアーツ
とかもそうですし、大劇場で公演された以外の作品も多数あります。

今回の「ひかりふる路」はちょうど「1789」の数年後(1793年ルイ16世処刑裁判から始まるので3年半後か)、「ベルサイユのばら」のフェルゼン、マリー・アントワネット編の最後らへんとちょっと被り、「スカーレット・ピンパーネル」の少しあとまで描かれている感じでしょうか。
ロベスピエールは「1789」「ベルばら」では、「世の中を良くしたいと奮闘する真面目な革命家」として描かれ、「スカーレット・ピンパーネル」では恐慌政治を行う独裁者として描かれています。
史実に基づく話しにはよくありがちな「物語に都合の良い史実の解釈」で描かれるため、主人公の立場によって、こんなに人物像が違うロベスピエールを主人公にした場合どうなるか、ちょっと楽しみではありました。

ということで、「ひかるふる路」はざっとこういう話です。
国王ルイ16世を死刑にし、ダントン、デムーランらとともに、革命をますます進めていくロベスピエール
一方マリー=アンヌは地方貴族の娘で、ロベスピエールらが中心となって起こした革命で家族と婚約者を虐殺されてしまいます。
1人生き残った彼女はロベスピエールに復讐しようとパリへ行き、ロベスピエールと出会うのですが、彼の清らかな「理想」を知り、だんだんと惹かれていきます。
しかし、革命は思っていたようにはスムーズに運ばず、外国との戦争、国内の動乱と問題が山積する中で、ロベスピエールはダントンやデムーランとの考え方の違いから、進む方向を変えていき、サン=ジュストらに煽られ、恐慌政治を行うようになるのです。
もちろんマリー=アンヌも変わってしまったしまったロベスピエールを攻めます。
志を分かち合った友人を失い、想い人(マリー=アンヌ)にも拒否されたロベスピエールは1人「理想の世界」に向かって、突き進んでいくのですが…。


まあざくっと書いただけでも結構重い内容です。
まあ、陰謀、裏切り、そしてギロチン台へ、の繰り返しです。
その重いストーリーをワイルドホーン先生の音楽がですね、ますます重厚にのしかかってくるんですよ。
すみません、ワイルドホーン先生がちょっと苦手な私として、この組み合わせはかなりの「胸焼け」具合でした。
ワイルドホーン先生の音楽って、ほら、なんていうんですか、最初から最後までステーキどーん!みたいなメインディッシュが続いて、口休め的なものがないんですよね。
「スカーレット・ピンパーネル」でさえ、貴族の女のコたちとパーシー、マルグリットの会話シーンが歌だったあたりに胸焼けする私としては、出会ったばっかりのロベスピエールとマリー=アンヌの「会話」も「歌」になったあたりで、もうお腹いっぱいでした。ほんと、いろいろすみません。
でも!ロベスピエールの望海風斗さん(だいもん)もマリー=アンヌの真彩希帆(まあや)ちゃんも、歌はものすごく上手いので、聴きごたえはあります!ワイルドホーン先生の音楽がお好きな人にはオススメします。

ただ、物語がなんというか、重いだけじゃなくて、分かりづらいのが残念です。
というのも、その「二面性」が描かれてきたロベスピエールが主人公ということは、やっぱり「清廉な若者」だった彼がなぜ「恐慌政治」を行うにいたったか、というとこがミソだと思うんですね。

個人的なことで恐縮ですが、私、今、大河ドラマを毎週見ているんですけれど、今回の大河ドラマでは史実では「悪人」として伝えられている人たちを見事に「彼らには彼らなりの思いや覚悟があって、結果こうなったんですよ」という一つの史実の解釈を見せてくれているんです。これが史実上の人物を描くときの「創作」のあり方だなあとしみじみ思っているのですが、残念ながらこの作品にはそこまでの説得性がないんです。
というか、ロベスピエールがいきなり「恐怖による支配」思考になっちゃった感じなんですよね。
や、分かりますよ、友人だと思っていたダントンが裏でいろいろやってたりして、なんか革命は理想どおりには進まなくて、追い詰められた結果なんだなということは想像で。
でもその「追い詰められていく様」をもっと丁寧に描いてほしかった!
その様子を描けば、もっとロベスピエールに肩入れできたと思うんですよ。
だけど、そこがあんまりなかっただけに思っちゃったんですよね。
「真面目だけで遊びができない人間はこれだから」って
自分に厳しいから他人にも厳しい。
自分の理想に陶酔するがゆえに、現実の人の心が見えない。
そんなおこちゃまにしか、このロベスピエールは見えないのですよ。
見せ場であるはずの「最高存在の祭典」のシーンなんて、ほんと、ロベスピエールがピエロにしか見えなかったですもん。
そこに「堕ちていく」しかできなかった人間の「哀しさ」じゃなくて、そこに行っちゃった人間の「愚かさ」しか見えなかったんですよね。
まあ、それはそれで面白かったんですけど、「うん、ダントンが民衆に人気あったのわかるわ、ロベスピエールがこんな人じゃ」と途中で思わせてしまったら、主役としてはもう魅力減ですよね。

そんなどうしようもないロベスピエールをだいもんは一所懸命やっていたと思います。
でも描き方がこうなもんだから、ロベスピエールよりマリー=アンヌの方が魅力的で!
ロベスピエールが「もう、何言ってんの」的なセリフを言うたび、マリー=アンヌが私の気持ちを代弁してくれるかのようなセリフを言ってくれて、すごくカタルシスでした
そしてまあやちゃん自身もめっちゃ魅力的!
こんな真ん中で輝く人だとは知りませんでした。
歌は絶品な上に華やかなんですよ!
大きな舞台では「華やか」は何よりも強みです。トップ娘役さんが空間を埋められる器であると舞台は一気に華やぎます

無事、二番手となったダントンの彩風咲奈(さき)ちゃんも、前回とは打って変わって、ワイルド系の器が大きく、心優しい男をちゃんと演じていました。ダントンが民衆に人気があったのが納得できるくらいには。改めてさきちゃんて「陽」の人なんだなと思いました。あとはもうちょい、包容力がでるとこの役はもっと良くなると思います。
そして、今回専科からデムーラン役で沙央くらまさん(コマ)が出演してるんですが、このコマとの友情のシーンは泣きましたね。
宝塚歌劇らしい身内受けなんですけど、個人的にはこれはいい身内受けだと思います!
それから、私が常に辛口評価をしてきた彩凪翔さんが今回良かったんですよ!!
美女、本当に美女!しかもずっと気になり続けていた滑舌が女役の声の高さのせいか全く気にならず、セリフもきれいだし、存在が格好良くて美しい
調べてみたら、史実のロラン夫人は、処刑前に 「自由よ、汝の名の下でいかに多くの罪が犯されたことか」という言葉を残されたそうですね。この言葉、セリフで言わせたかった、と思うくらいに魅力的でした。
もう一人の美貌の人、サン=ジュストを演じた朝美絢さん(あーさ)は、しょっぱなの歌が非常に良かったです。
ルイ16世を処刑に追い込んだという演説だという説得感がありました。
今回の演出ではロベスピエールに心酔する人、という形だったので、正しく演じていました。
でも、せっかくの「死の天使長」とも呼ばれた人物なんだし、もう一癖ある演出だと面白かったかもですね。

全体にセットはシンプルで可もなく不可もなく。ギロチンをイメージさせるあの「線」はどーんと暗転にしてから、バッと現れるともっと効果的だったかもとは思いました。
で、まあラストシーンも、これお披露目公演なのにサヨナラ公演くらいなの?なしょっぱい感じで終わります。

となると、とりあえず、幕間に公演カクテル「レボルーション」とルマンでテイクアウトしたサンドイッチをいただきながら、

ショー、ショーできっと気分あがるよね?と期待しちゃいますよね。

なのに、ショーが
もう語りません。
初めて私は「頼む、せめて再構築させてくれ!」と思いました。
そして、その再構築をずっと考えさせてしまうという新しい楽しみ方を覚えたショーでした