こんなことを思ったり。ぼちぼちかんげき。

保護猫と同居人と暮らすアラフィフがビンボーと戦いながら、観劇したものなんかを感激しながら記録。

オーバーチュアの意義を知る@ラ・カージュ・オ・フォール

4月21日(土)17:30〜 梅田芸術劇場

ザザ/アルヴァン 市村正親
ジョルジュ 鹿賀丈史
ジャン=ミッシェル 木村達成
アンヌ 愛原実花
ダンドン夫妻 今井清隆森公美子
ジャクリーヌ 香寿たつき
ハンナ 真島茂樹
シャンタル 新納慎也

恐ろしいことに2012年の観劇時と主要キャストはジャン=ミッシェル以外変わっていません!
初演時から同じ役をやり続けている真島さんやモリクミさんをはじめ、途中で入ってきた方々もこの作品に取り憑かれていくのでしょうか。
「くるくる回れて可愛かったら誰でもいい役」と言われていたアンヌ役さえ2012年に愛原実花さんが出演されてから固定されてしまったこの作品。
もはや、今回ジャン=ミッシェルしか新鮮味はありません(笑)

わが新納慎也さんも1999年にシャンタル役でこの作品に出演なさってから、再演のたびにオーディションを受けてまで(さすがに今はもうオーディションなしだろうけれど)、出演される熱の入れよう。
こんな写真をツイッターであげておられました。

新納慎也ツイッター(@ShinyaNIRO)より
(すみませんツイッターのリンクの貼り方が分からないのでとりあえず新納さんの公式ブログを貼りました)
ちなみに私のラカージュ観劇も新納シャンタルと同じ歴史をたどっています。
1999年にはじめて見て衝撃を受け、2008年、2012年、2015年、そして今回と見てきました。


stok0101.hatenablog.com

 だからもうオーバーチュアで泣くんですね

今まで古いミュージカルにはどうしてオーバーチュアがあるんだろうとか思ってたんですけど、やっと納得しました。
愛して時間かけて何度も見ている作品って、もう曲がかかるだけで盛り上がりますわ、ほんと。

そんな「ラ・カージュ・オ・フォール」とは念のためこんな話です。

地中海沿岸の街・サントロペでナイトクラブ「ラ・カージュ・オ・フォール」を経営するジョルジュとそのクラブのスター・ザザことアルヴァンは20年来のカップル。
2人には大事に育ててきた息子・ジャン=ミッシェル(ジョルジュは本当の父親、アルヴァンはほとんど息子に関心がない母親に変わってジョルジュとともに育てている)がいる。
その息子・ジャン=ミッシェルが3週間の旅行から帰ってきたとたん結婚するという。
そのお相手は保守派の政治家ダントンの娘・アンヌ。
ダントンの要望で両家の顔合わせをすることになったジャン=ミッシェルは、アンヌとの結婚をかなえたいから1日だけ「普通の家族」を演出しようと考える。
それはつまり本当の母親を呼んで、アルヴァンに出て行ってもらうということ。
それを知ったアルヴァンは・・・。


このストーリーの続きにあの有名曲「I am what I am」が歌われるんですけれど、もう毎回これに泣くんですね。
正直に市村さんも鹿賀さんも衰えています。
特に鹿賀さんの衰えが今回顕著で少し残念でした。
けれどそれすらも凌駕するものがこの作品にはあるんです。
その1つが「I am what I am」なんです。
歌詞や音程を飛び越えてヒタヒタヒタヒタと押し寄せ染み込んでくるアルヴァンの気持ち。
観客の心までアルヴァンの心にしてしまうあの市村さんの「I am what I am」
は健在で、もうこれだけでも充分なくらいです。
その上にナイトクラブのショー出演者(カジェル)たちのど迫力のパフォーマンスといい、お約束だけどどうしても笑ってしまうやりとりといい、もうこれでもかっ!と全速力で投げられるボールにあっけにとられているうちに終わるんです。

演出はオーソドックスです。
キャストの固定率も高いので、内輪受けもあります。お互いにどれだけ笑わせるかで遊んでいます。
間延びしてるシーンもたくさんあります。
でも終わったらあっという間だったと思わせるのはなぜなんでしょう。
(ちなみに上演時間は3時間5分)
そしてまた最初のシーンから見たいと思うのはなぜなんでしょう。

ダントン夫妻との食事で歌われる「今この時 The Best of Times」のせいでしょうか。
人生賛歌。
そしてそこから一波乱あって、サントロペの海岸で寄り添うアルヴァンとジョルジュの姿に愛おしさと憧れを抱くからでしょうか。
ジャン=ミッシェルへの愛情、アルヴァンとジョルジュの永遠にも見える恋。
それがまがい物か本物かなんて本人たちが決めることで、周りがどうこういうことじゃないんです。
そういうことを爆笑のなかで、じんわりさりげなく漂わせてくるから、この作品が愛おしいのです。
できっと、居座り続けるキャストや、客席を先導して盛り上げつつご自分が1番楽しそうな指揮者の塩田先生もみんなみんなこの作品を愛しているのを感じるんです。
ステージの上も下もこんなに愛で包まれる作品を私は他に知りません。
そしてこの幸福感を味わうために、何度も足を運ぶのでしょう。

ダイヤモンドより光るガラス玉を見に。

今回心に残ったセリフがアンヌのこれ。
こんなホモたち、みたいなセリフのあとの「そんなことわざわざ言わなくなって、この方たちは充分ご存知よ」的なもの。
そうなんです、本人たちが誰よりもそんなことは分かっている。
それを罵倒したり、したり顔で意見することになんの意味があるでしょう。
そしてそう遠くない未来にこの作品をはじめて見た人が「昔は両親が男性同士って隠さなきゃいけなかったの?」と言う世の中になってくれることを願います。

ところで市村さんが最初にザザを演じたのが44歳のときでした。
シャンタルの新納さんがこの日43歳を迎えられました。
この愛すべきキャストたちは大好きだけれども、この素晴らしい作品を残していくためにも、ぜひ5年くらいのスパンを経て、ニューキャスト、ニュー演出の「ラ・カージュ・オ・フォール」を見たいです。
言霊信じてまた書いておきます。
次の機会には新納慎也ザザ(アルヴァン)×井上芳雄ジョルジュでこの作品を見られることを期待しています!