こんなことを思ったり。ぼちぼちかんげき。

保護猫と同居人と暮らすアラフィフがビンボーと戦いながら、観劇したものなんかを感激しながら記録。

劇団スタジオライフ「LILIES」

6/27(土)18:30~【SOURCE】
シモン 岩崎大
ヴァリエ 村上幸平(客演)
伯爵夫人 カサノボー晃(客演)
ビロドー 奥田努
ディアンヌ 新納慎也(客演)
老シモン 重松収(客演)
老ビロドー 河内喜一朗
男爵 藤原啓児
男爵夫人 松本慎也

7/4(土)13:30~【FEU】
シモン 新納慎也(客演)
ヴァリエ 松本慎也
伯爵夫人 関戸博一
ビロドー 林勇
ディアンヌ 山本芳樹
老シモン 石飛幸治
老ビロドー 青木隆敏
男爵 船戸慎士
男爵夫人 村上幸平(客演)

1900年代初頭、まだ同性愛が重罪だった時代のカナダの田舎町で、惹かれ合ってしまった少年たちとそれを取り巻く人々の悲劇を描いた作品。
魅力的なキャラクターとしっかりした戯曲は、本当に名作だと思う。
そして、2003年度の上演を幸運にも見ているのだけど、こういう名作だからこそ、この劇団の特性であるダブルキャスト・トリプルキャストが活き、それぞれに興味深い舞台を見せてもらった。
惜しむらくは、残念ながら、この劇団の役者さんたちは「演劇の基礎」が出来ていない人が多く、でもだからこその「心の演技」というのか、この劇団の特殊感というか、そういうもので魅せてこれる場合もあるのだけど、今回は多数の客演を招いたことで、その「基礎」部分の実力差が見えてしまったことが、残念と言えば残念だった。

その差が顕著に出てしまったのが「SOURCE」チーム。
何よりシモンという大役で主役が、実力でチームを牽引できなかったところが、残念だった。ヴァリエは本当に容姿も美しく、演技もソツなかったのだけど、シモンとの間に何か、この戯曲でいうところの「愛」、どうしようもない「愛」が見えてこなかったのだ。この「愛」が見えてこないと、それによって破滅に向かう全ての人達の悲劇が成り立たず、作品としての意味が失われている感があったのが残念だった。
ただ、新納慎也のリディアンヌは、今まで以上にこの女性のキャラクターが伝わり、女の悲哀を感じさせて良かった。

その新納慎也がシモンを演じた「FEU」チームが個人的には一番好きだった。
この作品は、何を大事にするか、どこに一番気持ちを持って行かれるかで、それぞれ一番良いと思う組合せは違ってくるので、あくまで私個人はそう思ったというところなのだけど、出演者全員が牢獄での囚人としての人格と劇中劇でのキャラクターとの演技のメリハリがあり、これが「劇中劇」である、という認識をしっかり持てたのは初めてだった。
「劇中劇」であること、また林勇輔のビロドーが、この重い芝居の中でコミックパート的要素を担いつつも、きちんとビロドーという人格を演じたことで、この「劇中劇」の意味が際立ち、理解しあえない人間たちを見せてきたところが実に興味深かった。
ディアンヌという人物の魅力という点では新納慎也の方が個人的良かったのだけど、芝居のバランスとして、若干ビロドーと同じくコミックパート気味に演じた山本芳樹のリディアンヌも、それはそれとして作品のバランスというか、息抜き的なところがあって、悲劇の中の喜劇、演じる人によって、同じセリフでも笑いが生まれるという発見が実に良かったし、何よりやっぱり新納慎也のシモンが、どうしてもヴァリエに惹かれるのに、そちらに行ってはいけないという心との葛藤、悩み、迷い、苦しみ、さらに、ようやく自分の心を決めた後、ガラッと男らしく成長した様子を見せたところなど、シモンという人物をきっちりと作り上げたからこそ、ビロドーとの最後に説得力を見せたいい舞台だった。