こんなことを思ったり。ぼちぼちかんげき。

保護猫と同居人と暮らすアラフィフがビンボーと戦いながら、観劇したものなんかを感激しながら記録。

彼女は逃げない@宝塚雪組「ファントム」

11/17(土) 11:00〜

ファントム 望海 風斗
クリスティーヌ・ダーエ 真彩 希帆
ジェラルド・キャリエール 彩風 咲奈
フィリップ・ドゥ・シャンドン伯爵 彩凪 翔
アラン・ショレ 朝美 絢
カルロッタ 舞咲 りん

脚本/アーサー・コピット 
作詞・作曲/モーリー・イェストン
潤色・演出/中村 一徳 翻訳/青鹿 宏二

アラフォーおといーぬは当時宝塚休憩中ではありましたが、2004年版の初演を見ています。
宝塚宙組DVD「ファントム」和央ようか花總まり安蘭けい悠未ひろ
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メーカー情報なし

ブロードウェイミュージカルの初日本版、という言葉に弱いくらいにはブロードウェイファンなのです。

とは言え、記憶が1シーンしかない。
アンドリューロイドウェバーの「オペラ座の怪人」もロンドンで見ているのですが、面白かったけれど夢中にはなれず、ミュージカル映画
オペラ座の怪人 [Blu-ray]
ジェラルド・バトラー,エミー・ロッサム,パトリック・ウィルソン,ミランダ・リチャードソン,ミニー・ドライヴァー
ギャガ・コミュニケーションズ
もみていないありさまで、ストーリーについてはほぼまるっと忘れた状況で見に行きました。

そんなわたしがまるっと忘れていたストーリーはこんな感じでした。

カルロッタと従者の男がオペラ座の中を探っている。男は地下で仮面を被った男に出会い、そのまま行方をくらませてしまう。
一方、シャンパンで財をなしたシャンドン伯爵は、オペラ座の前で歌いながら自作の曲を売っているクリスティーヌに出会う。
その歌声に惚れこんだシャンドン伯爵は、歌のレッスンを受けられるようオペラ座の支配人キャリエール宛の紹介状を書いてクリスティーヌに渡す。
しかしその頃オペラ座はアラン・ショレ&カルロッタ夫妻に乗っ取られて、キャリエールは支配人の座を下ろされてしまっていた。
キャリエールはオペラ座には幽霊がいるから気をつけるようにと言い残し去る。
その後夫妻の元には「ファントム」からの脅迫状が届き、初公演をめちゃくちゃにされてしまう。
そんな頃、シャンドン伯爵の紹介状を持って現れたクリスティーヌは、シャンドン伯爵がオペラ座パトロンであることを知った夫妻によって衣装係として雇われる。
オペラ座にいられるだけで幸せと歌うクリスティーヌの歌声に魅了された「ファントム」はオペラ座に立てるようクリスティーヌのレッスンを申し出る。
2人のレッスンが進みクリスティーヌは歌声を披露する機会を得て、オペラ座デビューが決まるが・・・


オペラ座の怪人」には描かれない「なぜ彼がオペラ座の怪人になったか」というところを見せる演目なのですが、ここの部分は2部になります。

オーバーチュアの間、オペラ座の地下に潜っていく映像が1部でも2部でも流れるのですが、これが軽いアトラクション気分で作品の世界観を乗せてきたいい演出だと思います。
全体に衣装もセットも豪華で、セリフのある役は少ないけれど、わらわらと人がたくさんいるのが「オペラ座」の裏側っぽいのもよかったですし、クラシックなコーラスも多く、存分に宝塚歌劇の強みは打ち出せたかなと。

さらにファントムとクリスティーヌの歌がめちゃくちゃうまいので、このハーモニーを聞くだけで、作品的には成功です。
もう2人の声が合わさったときの「音」が鳥肌モノの美しさでした。

なのでストーリーについてどうこういうのは野暮でしょう。
けれどもいいたくなる、え、そんな設定だっけ?なキャリエールの、ファントムの過去。
そしてファントムとキャリエールの関係性を考えると、実際はトップスターより年若い二番手がキャリエールを演じなければいけない宝塚制度も苦しい。

この体制でいくならば、2部のキャリエールの昔語りはキャリエール本人に若返らせてやらせてあげたいけれど、それはそれで役が少ないから他の生徒に当てるのも残念です。

ところでわたしが唯一覚えていたシーンというのが、キャリエールとファントムの最後の銀橋のシーンでした。
そのときのキャリエール・樹里咲穂さんのセリフの言い回しがうまくて上手くてそれだけが記憶に残っていたんですね。
それを彩風咲奈(咲ちゃん)がやるってことで、かなりドキドキものだったのですが、セリフ回しはともかく、このシーンの歌い出しの「音」(エリック、のエの部分)がすごく低く柔らかく暖かい音色ですばらしく、今回の「ファントム」は、「歌声」が良かったにつきるなと思いました。

ところで見ているうちになくなっていたと思っていた記憶も、どこからか蘇ってくるようです。
2部の美しく慈愛に満ちあふれ、まるで聖母のようにすら感じたまあやクリスティーヌの「My True Love」を聴きながら、これなら私がファントムも仮面外すわと納得してたんですけど、でも外した後の行動がふっと蘇ってきたんですね。
で当時のクリスティーヌ・花總まりさんのこの歌を「ファントムだまされるな。この女を信じるでない!」と思いながら聴いていたことを思い出したのです。

だから歌としては今回のまあやちゃんがあるべき姿なのだけど、役作りとしては花總さんの方が正しいわけですよ。

とはいえ、まあやクリスティーヌの「My True Love」が素晴らしすぎたのでこれは失くしたくない。
となるとその後の演出を「ガラスの仮面」の「二人の王女」でマヤが演じたアルディスの「ためらいの演技」くらいにしてもらえませんかね?
(分からない方は今すぐ「ガラスの仮面」文庫版16巻を買って読んでください!笑)

せめて鏡のシーンでシャンドン伯爵に「助けて」というセリフを変えるとか、その辺もともとの脚本をいじるのはやっぱり難しいわけでしょうか。

となるとまあやクリスティーヌが「わたしってピュアだからあなたがどんなでも大丈夫って思い込んでいるだけの軽さ」を込み込みで歌ってもらわないといけないわけで、しかしそんなの込み込みで歌われたら、ファントムだって分かってたけど仮面外したよ、にしないといけないわけで、いろいろと難しい演目だなと感じました。

あとは役について箇条書き。
カルロッタ 舞咲りんさん。
いやあ当たり役ですね。コミカルからシリアスまで自由自在。もちろん歌もすばらしい。

シャンドン伯爵 彩凪翔さん。
プレイボーイっぷりが板についた格好良さ。「シャンパンの王様」の肩書きの似合うこと。そして咲ちゃんキャリエールと本物の友だちっぽいところがステキでした。

アラン・ショレ 朝美 絢さん。
よくぞこんな役をきっちりと歌い演じたものです。あーさ(朝美 絢)の演技力の確かさを実感。
こうなるとあーさシャンドン伯爵も見たかったです。

ところで小池先生以外の一本ものを見るのがかなり久しぶりだったので、フィナーレのバリエーションに驚きました(笑)
娘役だけのシーンもあるし、ダンスナンバーの振り付けもいいし、銀橋を色んな人が歌って渡るわでとても楽しかったです。
ショー作家としてのスキルを存分に発揮されたフィナーレでした。