こんなことを思ったり。ぼちぼちかんげき。

保護猫と同居人と暮らすアラフィフがビンボーと戦いながら、観劇したものなんかを感激しながら記録。

タイトルの意味さえ分からないのが問題@スワンキング

7月2日(土)17:00~ オリックス劇場

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スタッフ

脚本/詞/演出 G2

音楽 荻野清子

 

キャスト

ルートヴィヒ2世 橋本良亮

リヒャルト・ワーグナー 別所哲也

コージマ 梅田彩佳

ハンス・フォン・ビューロー 渡辺大

オットー 今江大地

ヨハン・ルッツ 牧田哲也

エリザベート 夢咲ねね

テレーゼ 藤田奈那

 

脚本演出のG2さんのインタビュー

ワーグナールートヴィヒ2世のことは前から気になっていたんですよ。

それで試しにワーグナーの妻・コージマに関する本を読んだら、もうそのまま芝居にしたいくらい面白かった。でも、ワーグナールートヴィヒ2世にコージマを強烈に絡ませると、すごくなると直感が働いて、(中略)こういう形になりました。

という言葉が物語っているように、このミュージカルの主人公はコージマであり、ワーグナーなのです。

ワーグナーとコージマを主軸にビューローとルートヴィヒ2世を描いたら、1部はメロドラマあり、2部は決裂と和解あり、ですっきりと誰にでもわかりやすく面白い作品になったのではと思います。

最初のワーグナーの人間的なダメさを歌う当時の妻ミンナとワーグナーの才能の素晴らしさを訴えるビューローとコージマの曲の三重奏具合も面白かったし、ラスト近くの「バイロイトへの道」は荻野さんの音楽の中でも、ものすごく力強く、コージマの野望と情熱が伝わるいいナンバーだっただけに、この曲を活かせる作品を目指せば「国産ミュージカル」の醍醐味ももっと伝わった気がします。

ワーグナーの別所さんはもちろん主役をできるだけのスターだし、コージマの梅田彩佳さんも実力充分でパワフルだっただけに、この2人を主役にして描くことができなかったのは、さまざまなオトナの事情があるのかもなあと勘繰りたくなってしまいました。

そしてそれも「日本で国産ミュージカルが生まれにくい要素」の1つのような気がします。

 

さて、ルートヴィヒ2世はドイツの観光名所「ノイシュバンシュタイン城」を建てさせたことで有名で、ノイシュバンシュタイン城を日本語訳すると「新白鳥城」となるわけですが、おそらく一般的な知識というのはここまでくらいだと思うのです。

今回の客層を見ても、ワーグナーのオペラに興味があるとか、そういう感じには思えなく、かつ舞台の中でも「ローエングリン」のタイトルは出ても、ローエングリンの物語を説明するくだりはなく、ルートヴィヒ2世がなぜ白鳥の騎士・ローエングリンに心酔したかという説明もありません。

ワーグナーの世界観を表現するんだ!と「ノイシュバンシュタイン城」建設に向かう部分はあるのですが、そこで出てくるのも有名なあの外観の小さなセットだけで、あのお城の中にたくさんの白鳥モチーフが散りばめられているところは分からないわけです。

そうなるとなぜルートヴィヒ2世が「スワンキング」と呼ばれるのか、まずそこが分からない。

そういう「知っていないと分からないこと」が多々あったことが、まず問題だと思うのです。

(まず今は地方名としか残っていないバイエルン王国ってどこ?というのもあるし、すでにコージマが妻になっている状態でワーグナーにとって「フランツ・リストは恩人だ」というのもなぜ?になっちゃう気がします。)

まあ歴史上の人物を演じるときに、その人の勉強をするのは役者として基本だとは思うのですが、今回ルートヴィヒ2世を演じた橋本良亮さんは相当資料本を読まないといろいろ落としどころを見つけるのが難しかったのでは、と思います。

とりわけエリザベート(シシィ)との関係は、手紙のやり取りなどは資料本に載っていたりするわけですが、そこから踏み込んだところは恐らく二人にしか分からない。

そして今回の作品はそこを描くわけではない。

となると、もはやなぜエリザベート(シシィ)が出てくるのかもわからない。

これを見て???となってミュージカル「エリザベート」を見に行っても、ルートヴィヒ2世は登場しませんしね。(分かるのは母親ルドヴィカの「いわゆる姑問題ね」的なセリフのところだけでしょう)

冒頭といい、ワーグナーと絡まないルートヴィヒ2世エリザベート(シシィ)の出番が全部取って付けたように見えるのです。

(ちなみに22年前ノイシュバンシュタイン城が見える湖岸の劇場で見たこのミュージカルでは、シシィとの恋愛が描かれていたようで、当時のわたしはそれに怒ってたようです笑

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なぜドイツ語のミュージカルがわかったかというと、五か国語の字幕があってその中に日本語もあったんですよねえ。

ミュージカル自体はほぼ覚えていませんが、ラストシーンがスペクタキュラーだったことだけは忘れられません)

 

確かにヴィッテルスバッハ家マニア的には、ゾフィー(作中ではソフィー)との婚約破棄はその理由にするのね、とか、ああ湖での最期はその解釈でいくのね、とかそういう面白味はありますが、それ以上に普通にワーグナー、コージマとビューローの物語の方が人間臭くて面白かったので、本当にこちらを主軸に描けたらなあとその一言につきます。

ビューローを演じた渡辺大輔さんは「1789」ぶりに拝見したのですが、すっかり貫禄もついて、上背もあるのでああいう衣装もよく似合う。

破天荒な天才とすばぬけたマネージメント能力を持つ人の間で、自分にできることできないことの悩み苦しみは一般観客の共感も呼べますし、そういうトライアングルの中で、大ファンのスポンサーとしてルートヴィヒ2世を絡ませる方が面白い作品になったろうなと思うと、これまた惜しい、です。

予算の限りがんばったセットやその使い方あたりはさすがG2と思う演出もあったし、オリジナルな重厚な楽曲も惜しいので、採算度外視でワーグナーとコージマ主役にして、物語を構築しなおしたら、割と面白い作品になるとは思うのですが、商業作品としてそれもできないのが残念だなあ、と国産ミュージカルの難しさを逆に痛感しました。

 

ところでこの日はアフタートークとして「スワンキング女子トーク」がありました。

司会が山田裕美子さん、トーク出演者が梅田彩佳さん、夢咲ねねさん、藤田奈那さん。

せっかくなので覚えている限りその内容を残しておきます。(全てニュアンスです)

 

Q.藤田奈那さん初ミュージカル出演の感想

A.元々ミュージカルが好きで、特に宝塚ファンで、はじめて見た宝塚のトップ娘役・夢咲ねねさんと共演できて嬉しい。

苦労したのは輪っかのドレスの扱い。

稽古場から輪っかをつけていたけれど、他の出演者のように取り外しがスムーズにできず、トイレにもいけなかったのを山田裕美子さんが助けてくれた。

 

Q.夢咲ねねさん宝塚を目指した理由

A.なんとなく高校に行きたくなかった。修学旅行で宝塚を見たときに、ここだ、と直感的に思った。音楽学校の(山田裕美子さん曰く)鼠色の制服も憧れた。

山田裕美子さんは1期上の先輩で、委員(成績上位者で期をまとめる立場)でかっこいい憧れの人。だから話したいけれどなかなか会えないレアキャラだった。

(山田裕美子さん曰く、早く帰りたかったとのこと)

 

Q.梅田彩佳さんコージマについて

行動力があってすごい。とにかく別所さんが好きすぎる。別所さんと共演できていることに感動する。

 

Q.他に演じてみたい役は?

藤田奈那さん→民衆。衣装も憧れる。

(山田裕美子さん曰く、一緒にやろうよ、大歓迎、とのこと。アンサンブル少ない中で皆さんいろんな役を演じ分けてらしてすばらしかったです)

 

夢咲ねねさん→エリザベートをできるのが幸せすぎるのであんまり思いつかないけれど、ミンナもやってみたい。

宝塚時代、「エリザベート」新人公演で鏡の間の衣装(有名な「見返りシシィ」とも呼ばれる↓↓↓の肖像画を模した衣装。あ、因みにこの小説も大変面白いです)

をはじめて着たときに「シシィだー!」と感動したけれど、今回もやっぱり同じことを思って、自分って変わらないなと思った。

(個人的に面白かったのは、そんな衣装を着ても舞台袖ではドレスが邪魔にならないようめちゃくちゃ小さくなっている、という山田裕美子さんのお話し。これ、個人的には舞台人としてプロというか、輪っかのドレスでたくさんの舞台に立った経験値のなせる技だなと思いながら聞いてました。

そしてすみません、ここの梅田彩佳さんのお答えが思い出せません・・・)

 

Q.国家予算レベルの大金を自由に使えたら何に使う?

藤田奈那さん→全国の歩道を「動く歩道」にしたい。歩くのが嫌いだから。劇場までも歩いてきているけれど、せっかちなので、早く着きたい。

夢咲ねねさん→犬を2匹飼っているので、全国の犬が幸せに暮らせるような施設を作りたい。

梅田彩佳さん→国産ミュージカルばかりかけている劇場街を作りたい。大劇場からブロードウェイのようにオフブロードウェイがあったりして、そこに行けばいつでもミュージカルが見られて、ミュージカルにたくさん触れられるようにしたい。

 

梅田彩佳さんのお答えが実に素晴らしいのですが、結局そういう話としてしか見るしかないよな、になってしまった「スワンキング」がやっぱりもったいなさすぎるな、としみじみしてしまいました。