こんなことを思ったり。ぼちぼちかんげき。

保護猫と同居人と暮らすアラフィフがビンボーと戦いながら、観劇したものなんかを感激しながら記録。

一体感と圧のよしあし@梅芸「8人の女たち」

9/10(土) 17:00〜@シアタードラマシティ 

キャスト
ギャビー:湖月わたる
オーギュスティーヌ:水夏希
ピエレット:珠城りょう
ルイーズ:夢咲ねね
シュゾン:蘭乃はな
カトリーヌ:花乃まりあ
マミー:真琴つばさ
シャネル:久世星佳

スタッフ
上演台本・演出:板垣恭一
翻訳:山口景子
美術:乘峯雅寛
衣裳:十川ヒロコ

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わたしがこの作品に出会ったのは、もちろん映画の方でした。

ステキな衣装&セットにミステリ仕掛けの会話劇となんとも言えないミュージカルテイストを組み合わせた大変魅力的な作品だと思いました。

 

がしかし、ミステリあるあるで結末も成り行きもいい感じに忘れていたので、見る前に映画をもう一度見直すか迷ったのですが、見ながらドキドキしたいなと思って、割とまるっと忘れた状態で見ました。

 

クリスマスの頃、雪深いフランスの田舎の豪邸で館の主人が殺される。

その犯人探しをするうちに館にいる彼の家族やメイドたちの秘密が暴かれていく。

 

というシンプルな物語です。

後から知ったのですが、元々戯曲のこの作品、日本でも何度も上演されていて、スタッフは翻訳と演出のみが書かれているバージョンと、上演脚本・演出と翻訳があるバージョンがありました。

今回は上演脚本・演出のバージョンで、キャストは全てトップスターを経験している宝塚OGでした。

 

演出の板垣さんはキャスト一人一人の個性をじっくり見て演出をしていかれたそうなのですが、これは良し悪しかなあと個人的には思いました。

確かに今回この演目を見る観客には、この演出は嬉しいし、楽しい!

自分が応援していたスターたちがこんなふうにがっつりお芝居で絡みあうだけで面白いし、元タカラジェンヌ同士の一体感は、家族を描くにはふさわしい気がしました。

ただ元タカラジェンヌ同士なので、テンションあげていくとどこまでもあがっていく。

すると途中はゆるいドタバタコメディにしか見えなくて、ラストが浮いているなあと思ってしまったのです。

 

その中で久世さんのマダムシャネルが抑えた演技と的確なセリフ回しで素晴らしかったし、真琴さんマミーも登場してお酒を呑むだけで笑わす間の取り方が抜群でした。

そして花乃さんカトリーヌがうまいし、かわいい!

湖月さんギャビーは圧倒的に華やかだし、水さんオーギュスティーヌは個性的な女をきちんと演じていたと思います。

ただやはり湖月さん、水さんと同列に絡むにはピエレットの珠城さんは経験値の浅さと若さが目立ってしまったなと感じたのです。

そしてこの辺の調整をするのが演出の役目だと思うのですよね。

 

こういう言葉とやりとりで笑いを誘う場合、役者たちのパワーバランスと細かな間を調整するのが1番難しく、重要なところではと思っていて、その辺りのツメの甘さは感じずにはいられませんでした。

全体にずっと同じテンションで続いて走ってしまった印象で、人と人のやりとりの中での緊張と緩和がもっとあれば、あのラストももうちょっとザラッとした後味を残せた気がするだけに惜しいなと思いました。

 

そして改めて映画を見直すと、この緊張と緩和が上手いうえに、緩いミュージカル的な歌があることで、軽ーく館の主人の人となりを紹介していたり、自分たちの紹介や本心を見せているので、物語にもうちょっと膨らみがあるのですよね。

とりわけオーギュスティーヌの大変身と、メイドのルイーズの見た目にも豹変する部分は、同じセット、ほぼ同じ衣装(1日の出来事を描いているため)のこの作品の中で、楽しい見せ場にもなったろうし、キレイな水さんを水さんファンの方だって見たかっただろうし、ねねファンとしては、ルイーズのドライで人形みたいなメイドからガラリと態度を変えるさまを見たかったです。

 

映画は監督のフランソワ・オゾンが脚本にも携わっているので、恐らく元々の戯曲から脚色しているところは多々あるのだろうなと思うと、元々の戯曲を読んでみたい!てなりました。

(が、案の定ない。本当戯曲全般の原書、翻訳書不足、なんとかなりませんか涙)

 

とはいえ、ねねファンとしてははすっぱルイーズと最後の片足上げポーズを満喫しましたし、

ギャビーにコートを着せてあげるのが自然で、宝塚時代にこういうのも鍛えられたのだなというところも見えて満足でした。

そしてこの役はあの人で、みたいな妄想大会も楽しかったので、次回はぜひ、演出家を変えて違うキャストでやってくれると嬉しいなと思います。

正塚先生とか生徒をよく知ってて、割とセリフと間にこだわる演出家が演出するのも一つありかなと思っています。

個人的には、映画にあった同性愛要素を入れたものを見たいので、『レザネ・フォール -愛と幻影の巴里-』でナチュラルに同性愛要素を入れてきた大野拓司先生でも見たいなと。

 

そして著作権がなんとかなるなら、できれば映画版を舞台化したものを見たいです。

宝塚OGということは、もちろん巧拙あれど歌も踊りも鍛えてきた人たちなので、演技の間をちゃんとして笑いにつなげるよりも、得意分野を活かしてバージョンアップしていく方が見応えと楽しさはある気がします。

そしてそのときの配役当てにはぜひとも参加して盛り上がりたい!

 

今回一番うまいなと思ったのは、SNS戦略でしたね。

誰がどの役をやるでしょうクイズは、この作品を見る前からファンの妄想力をかき立てました。

こういう今ならではの楽しみ方提示は大事だと思うので、今後も楽しみにしています。