こんなことを思ったり。ぼちぼちかんげき。

アラフィフ負け犬がビンボーと戦いながら、観劇したものなんかを感激しながら記録。

娯楽の意味を知る@カイロの紫のバラ

年に一度の舞台ファンのお祭り「トニー賞」が終わりましたねー。
ノミネートの段階ではばらついていたミュージカル部門ですが、終わってみたら「Dear Evan Hansen」の圧勝という。
どんな作品なのか気になるところです。
個人的に気になっていたのが「ミュージカル部門」の主演女優賞。
パティ・ルポン、ベッド・ミドラーとミュージカル界の重鎮2人にどう若手が立ち向かうか、といった風情だったのですが、ベッド・ミドラーの勝利に終わりました。
それにしても、リバイバル賞もとった「ハロー!ドーリー」は主演女優賞と助演男優賞が勝者とのことで、最早役者の力が勝ったのか、いいリバイバルだったのかも気になっております。
まあ、見られることはないのですが、少なくともトニー賞の放映は親友が見せてくれるとのことなので、気長に待ちたいと思います。

ということで、5月に観劇しすぎたので、今月は自制しております。なんか、すみません。
せめて、と思って、雪組の原作映画「幕末太陽傳

幕末太陽傳 デジタル修復版
川島雄三,田中啓一,今村昌平
メーカー情報なし

を見て感想を書こうと思ったのですが、なんというか、難しくて。
いえ、大変に面白い映画ですし、さらにこれを見るとより小柳先生がうまいことキレイに宝塚化したな、と痛感いたしました。
ただこの映画、モノクロの上に登場人物たちが早口でセリフが聞き取りづらく、完全に私の能力が映画についていかず、「先に宝塚見といて良かった」な感じだったのです。
宝塚版も正直分かりにくいところは分かりにくかったのですが、そこは「ミュージカル」の力で歌と踊りでねじ伏せていて、分からなくても楽しい♪みたいなレベルになっているんですよね。ああ、娯楽や、ありがたや。

そして、そんな「娯楽」のパワーを感じさせる映画に出会ってしまったのです。

カイロの紫のバラ [DVD]
ミア・ファロー,ジェフ・ダニエルズ,ダニー・アイエロ,ダイアン・ウィースト,ヴァン・ジョンソン
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン


今も大活躍のウッディ・アレン監督の1985年の映画です。
ストーリーはこんな感じ。

舞台は1930年代のニュージャージー州
不況にあえぐ中、主人公セシリアの夫・モンクももれなく失業中。
暴力的な夫との苦しい生活の中で、セシリアのただ一つの楽しみは映画だった。
ウェイトレスの職も失い、お先真っ暗のセシリアは、上演中の大好きな映画「カイロの紫のバラ」を何度も見ている。
すると、スクリーンからトムという役が飛び出して、セシリアに求婚する。
セシリアはトムとの「夢のひと時」を楽しむが、映画は登場人物が一人欠けて大混乱。
さらにトムを演じたギルも、もし「飛び出したトム」が何かしでかしたら、俳優生命の危機だということで、ニュージャージーにやってくる。
そしてギルとセシリアが出会うのだが…。


こんな感じのファンタジックなロマンティック・コメディなんです。
特に「映画の登場人物」であるトムは、空想上のキャラクターなので、完璧に「夢の男」なんですよね。
甘いマスクで、優しくて、勇敢で、そして純粋。
だけど、それこそ、

魔法にかけられて (字幕版)
エイミー・アダムス,パトリック・デンプシー,ジェームズ・マースデン,ティモシー・スポール,レイチェル・コヴィー
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で、「王子様」が現実世界で役立たずな様子が描かれるように、現実では無力なわけですよ。
そこに、現実の男、ギルが現れる。
いろいろあってどちらを選ぶか、とセシリアに迫るシーンがあるのですが、そのセシリアの選択は全くもって打倒で、そして、その結果が限りなく「現実」で、切なくてたまりません。
夢は夢、現実は現実。
それをガツンと感じさせるのです。この描き方がたまりません。
そして、セシリアは再び映画館に戻ります。
スクリーンに映るのは限りなく「夢のような」このダンスシーン。



完璧な夢です。現実ではあり得ない。
でもこの完璧な夢が、ひと時「現実」を忘れさせてくれる。
だから、私たちは「完璧な夢」を求めて、劇場やら映画館やらテーマパークやらに通うのですね。
そこに「エンターテインメント」の必要性があるのだ、と改めて思った映画でした。

それにしても、このアステアとロジャースのダンスが素晴らしく美しく、映画の流れとともに涙しました。
その一方で、この衣装とダンスなんか見覚えある…と思っていたら、あとで「トップ・ハット」だと気づく始末
モノクロでもロジャースの衣装の美しさが際立っていて、この時代のミュージカル映画のゴージャスさが分かります。
そして、改めて来日版の「トップ・ハット」も素晴らしかったなと感じました。
アステア&ロジャースのダンスをもう生で見ることはできません。
だから、比較はできないんですが、それでも映像を見て、シャーロット・グーチさまの美しい姿とドレスを思い出させたくらいには、アラン・バーキット&シャーロット・グーチペアのダンスも「夢のように」素晴らしかったんですよ!
今まで見た来日公演を振り返っても、あのお二人のダンスシーン以上のものは、私の中でなかったです!

ということで、やっぱり、最近のミュージカルは「ダンスシーン」が弱いと思います。
この映画でも、このシーンが際立つのは「普通の人には立ち入れない美しさをもった非日常」だからだと思うのです。
そして、ダンスにはそういう力がある。
そんなわけで、「夢のようなダンスシーン」を魅せてくれるミュージカルが再び産まれてくれることをやっぱり望まずにはいられないのです。

ところで、私この映画見ながら、久々に何度も「ねえ、この男、殺していい?」と同居人に言ってしまいました。
そのくらいモンクが腹立つ夫なんですけれど、この時代はこんな男ばっかりだったのでしょうか。ナゾ。