こんなことを思ったり。ぼちぼちかんげき。

保護猫と同居人と暮らすアラフィフがビンボーと戦いながら、観劇したものなんかを感激しながら記録。

ルーク・エヴァンスとミュージカル「TABOO」の思い出プラスα@おと文

絶賛上映中の実写版映画「美女と野獣」ですが、みなさまもそろそろご覧になられたでしょうか。
ここ1ヵ月くらいで、twitterのTLにも
ガストンがカッコイイ!最低だけど。
とか
イケメンだけどクズ。クズイケメン。
とかガストンへの素晴らしい称賛を見かけました。


改めて、ルーク・エヴァンスって「普通にイケメン」なんだな、と思いましたです。

ところで、長年細々とでも舞台ファンをやっていますと、俳優さんのデビューというものに出くわすことがあります。
私の場合、日本だと森山未來くんがそうでした。
宮本亜門演出、ウルフルズ音楽の「ボーイズタイム」初演で森山未來くんはまだ中学生でした。歌も芝居も下手でした。しかし一度踊り出すと、なんだこのコ!と強い衝撃を受けたことを未だに思い出します。
となると、やっぱり応援したくなるのが性。なんとなく親戚のおばちゃん感覚で応援してしまうのです。

そして、ルーク・エヴァンスも私にとってはそういう存在でした。

ロンドンに滞在中、毎週ミュージカルを観に行っておりました。そして、そんな生活を8ヶ月以上続けていると、さすがにウエストエンドでかかっているミュージカルはほぼ網羅。そんな頃、来年1月下旬に、新しい劇場とミュージカルがオープンするよというニュースが飛び込んできました。
しかし、残念ながら、2月は3週間、自分の所属してる劇団の芝居にかかりきりで時間がなく、それが終わった2月の終わりにようやくその新作を見に行くことにしました。それがTABOOでした。

TABOOは当時なかなか話題の作品でした。なぜかというと、ボーイ・ジョージが音楽を担当し、自分自身の過去を振り返る内容だったからです。
でも、音楽に疎い私は、ボーイ・ジョージもカルチャークラブも全く知らず、なーんの知識のないまま、見に行きました。
新しい劇場はThe Venueといって、クラブを改装して劇場にしていたので、せまーい階段を降りていくのにドキドキしたことを思い出しました。なんか、セキュリティチェックみたいなものもあって、飲み物とか取り上げられたのには大いに驚いたものです。

そして、入ってみたら、客席に厚化粧した人たちが座ったりしている。なんだ、これは?と思いましたね。
後から学んだのですが、ボーイ・ジョージが活躍した時代のニューロマンティックブームメントを象徴するメイクらしいです。
つまり、出演者が客席にいて、普通に来た観客に話しかけてるんですよ!
舞台にはクラブっぽいセットがあって、そこにドリンクバーもあり、そのドリンクバーにも出演者がいて、観客に普通に飲み物を売っているんです。多分、ニューロマンティック世代の観客は一気にその時代に戻った気持ちになるんじゃないでしょうか。
何も知らない日本のギリギリうら若き女子だった私は衝撃を受け、そして舞台と客席の垣根のない感じに、これは私の好きなタイプのミュージカルかもしれないと期待を抱きました。

その予感は見事に当たりました。
暗くなったらいきなり客席から登場するフィリップ・サロン。
あっという間に、ニューロマンティックの時代に連れて行かれます。
そして、舞台にはテレビを見ているごく普通の両親と若い男のコ。
この若い男のコがルーク・エヴァンスでした。役名をビリーと言います。
ビリーは創作上の人物。実在しません。
垢抜けなくてダサいけれど、なんか可愛い、と思って見ていたら、いきなり父親役がビリーを怒りはじめるんです。
ビリーはフォトグラファーになりたくて、芸術専門学校に通っていたのですが、それが女っぽい、と父親になじられるんですね。
そこでビリーが父親に向かって歌う言葉が、まず私の心をめった打ちにしました。

you think you know me
but I don't even know me
I'd screw my head off
and lay it at your feet
So you can tell me please
What's on my mind

あんたはオレを分かってると思ってるけど
自分ですら自分が分からない
オレの頭を外して、あんたの足元に投げてやるよ
だから、教えてくれ
オレの頭の中がどうなってるか


私も父親との関係が良くなく、でも父親が私を分かってると思っているのを不快に感じていたことをこの時、はじめて理解したのです。

この歌は、こうもいいます。

If I stay here
I'll be nothing
I'll be no-one
So don't hold me back
Just let me go

ここにいたら
何にもできない
何にもなれない
だから、引き止めないで
ただ行かせてほしい


訳す必要もないような、すごく簡単な英語です。
だから、それはそのまま私の耳に飛び込んでくることができました。
そして、この簡単な英語こそが、私がロンドンへ来た全ての理由を説明していたのです。
私の内側にあった気持ちが全て言語化されている、と感じた初めての作品でした。

こうやってビリーは家を飛び出し、ロンドンでまだ何者でもなかったボーイ・ジョージやらその界隈の人々と、キムというデザイナーを目指す女のコに出会います。

ビリーも私の一部なら、ジョージも、キムも私の一部で、このミュージカルに出会ったときはロンドン滞在ももう終了間際だったから、特にキムの

I've been trying to be something, I'll never be
But I'm nothing special, there's no mystery

ずっと何かになろうとがんばってたけど、
きっと無理
私は特別じゃない、不思議なことじゃない


という言葉が、挫折じゃないけど、私にがんばれるのはここまでだなあ感じていた気持ちを見事に言語化してくれていたのです。

これが、私が、ボーイ・ジョージを教祖さまと呼んでいる理由です。
ボーイ・ジョージが、私の心を全部言語化してくれたからなのです。

私は一気にこのミュージカルにはまりました。
そして、帰国までの2ヶ月間にほぼ毎週通い、再渡英してボーイ・ジョージ本人が出演するのも見て、ブロードウェイに進出したときには追いかけました。

ブロードウェイではストーリーが違っていて、ビリーもキムも登場しないため、ルーク・エヴァンスはブロードウェイには進出しませんでした。
エストエンド版はビリーが主人公のような造りだったのですが、やはり話題はボーイ・ジョージを演じたユアンモートンに集まりました。
仕方ありません、当時のボーイ・ジョージを彷彿とさせる美貌と、何よりユアンモートンの持って生まれたハニーボイスが素晴らしかったのです!

ということで、しつこく布教のためにDVDを貼っておきます。
美女と野獣でルークに興味を持たれた方はぜひご覧ください!
まだまだ歌も不安定で垢抜けないけれど、可愛いルークが見られます!

そして、ユアンの美貌とハニーボイスもぜひお楽しみください!

TABOO〈ボーイ・ジョージ・ミュージカル〉 [DVD]
ボーイ・ジョージ,ユアンモートン,ポール・ベイカ
ビデオメーカー


しかし、そんなユアンモートンもブロードウェイでは大苦戦。
(しかし、US国内ツアーのヘドヴィクは見たかった日本に来てくれないかなあ)
だから、ルーク・エヴァンスのことはすっかり忘れていました。
なのに、2007年にロンドン旅行に行ったら、RENT REMIXEDルーク・エヴァンスの名を発見!プロフィールを確認したら、あれから着実にウエストエンドでキャリアを積んでいたのです。
TABOOの頃は、学校出たでノーキャリア、ウエストエンドデビューだったのに、と思うと、私の中のおばちゃん心がうずきます笑

そして、今や、ディズニーさまの映画に主要な役で登場するくらいの大スターになったのですから、私はすごい逸材を運良くデビューから見られていた幸せを感じております。

ところで、TABOOにはゲイであるキャラクターがたくさん登場しました。観客もゲイが多く占めていました。
そんなわけで、ビリーという役は一応ストレート、ではあるのですが、なんとなくルーク・エヴァンスユアンモートンもゲイだろうなあと思っておりました。
特にルークの方はボーイ・ジョージの書籍にもそのような記述がありましたしね。
で、今回、改めて調べてみたらやはりゲイを公言しているとのこと。

さて、今回の実写版「美女と野獣」は奇しくもルーク演じるガストンの家来ル・フウがゲイという設定である、ということが話題の一つでもありました。このため、同性愛を禁じている国では上映不可になったりもしていますよね。

実写版「美女と野獣」をご覧になった方はお分かりかと思いますが、その前情報がなければ、ル・フウがゲイかどうか気づくだろうか、ぐらいの描き方です。
これでも、ディズニーが性の多様性を描いたことに価値がある、という意見も拝見しました。
そして、それはそうだろうなあと思います。

私も色々考えたのですが、正直な感想は
描くのであれば、こんな半端でなく、はっきりと描いてくれても良かったのに
でした。
ル・フウの恋の歌くらい入れたら良かったと思います、野獣の片思いソングに被せるくらいに。
子どもが、好きになる人に性別は関係ないんだ、とわからないと意味がないと思ったんですよね。

ところで、ストレート(とされている)俳優が同性愛者を演じるとき、すごく話題になりますよね。今だと中谷美紀さんが、「片思い」で同性愛者(美月という役は原作では性認識がグレイゾーンに描かれているので、この表現を使わせていただきます)を演じられることが話題になっています。
なのに、ルークのようにゲイなのに、ガストンのようなゴリゴリマッチョなストレートを演じても、すごい、とならないことに改めて不思議を感じました。なんでなんでしょうね。