こんなことを思ったり。ぼちぼちかんげき。

保護猫と同居人と暮らすアラフィフがビンボーと戦いながら、観劇したものなんかを感激しながら記録。

ライブとショーの間に@来日公演ボディガード

10/19(土)17:30~ 梅田芸術劇場

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キャスト表

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元ネタはもちろん大ヒットしたこの映画です。

 

ボディガード [Blu-ray]

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1992年公開の映画ですので、逆算するとわたしは16歳。

高校生なので、見に行っていてもおかしくは全然ないのですが、そんな余裕のない高校生活を送っておりました。(残念ながら「デートで見た」とかいう色恋沙汰もなし)

それでもこの主題歌は知らないうちに脳裏に焼き付いたし、ポピュラーミュージックに全く明るくなかったわたしでもホイットニー・ヒューストンというアメリカの歌手とケビン・コスナーというアメリカ人俳優を認知したので、一世風靡したといってもいいでしょう。

その後、大学生くらいのときにレンタルビデオか何かで見た記憶はあるのですが、物語は全く覚えていませんでした。

ということで、わたしの事前の認識は下記3点。

  1. ホイットニー・ヒューストンの役はスターだった。
  2. ケビン・コスナーは彼女を守るボディガード。
  3. 二人は恋に落ちる。

 

まんざら間違っていませんでした。

というか、この舞台版「ボディガード」は本当にこの3つのパートだけで作られていたように思います。

というのもあまりにも映画の記憶がなくて、ウィキペディア先生にきいてみたら、舞台で見たよりもうちょっと事情が複雑だったからです。

そして映画版が記憶にある方は、「ポートマン役」がキャスト表で「ストーカー」としか書かれてないあたりで、その辺を察していただけるのではないでしょうか。

ミュージカル「ボディーガード」は物語を極力そぎ落としたショーだったのです。

舞台もライブのようなT字のエプロンステージがあって、スター・レイチェルが歌いに歌い、ステージダンサーたちが踊りに踊って、合間にまるでライブの演出のようにストーリーがある、といった感じでした。

本来「踊り・歌・芝居」の三本柱で成り立っているはずの「ミュージカル」を期待するとがっかりするかもしれないけれど、国内で海外スターシンガーのライブショー、もしくはアカデミー賞授賞式を見ている感覚、というのもめったにできない経験なので、とても面白かったです。

むしろ「ミュージカル」を見たことがない観客には、ライブ的なステージングが多いので、見やすかったんじゃないかと思います。

その上で一部の幕開きの衝撃とか、映画でも有名なシーンをとある手法でシルエットとして浮かびあがせるとか、惹きつけるところは惹きつけるのがさすが。

 

もちろん「ミュージカル」好きとしては、もうちょいレイチェルとフランクが恋に落ちる過程、そして姉ニッキーとレイチェルの姉妹の複雑な感情なんかを丁寧に描いてくれたら、物語に入り込めたのになあとは思いますが、この演出はそれを狙っていないと思うので、あるがままを楽しむのが一番だったと思っています。

 

個人的には二部幕開きのショーシーンが最高でした。

レイチェル役はあくまで「歌手」なのでそれほど踊らないのですが、代わりにバックダンサーたちが踊りまくります。その点は日本と変わりないのですが、二部幕開きの曲がサルサのリズムでペアダンスだったんですね。

そのサルサダンスのパフォーマンスが、それだけでもサルサパフォーマンスとして成り立つレベルで、「ああ、ペアダンス文化のある国のペアダンスのレベルって違うよなあ」としみじみしてしまいました。

 

わたしが見た回は観客に光るブレスレットが配られて、フィナーレで客席もそれをつけて一緒にライブを体感する、という趣向がありました。

普段ライブとか行かず、声を出すのが苦手なわたしにはなかなか難しかったのですが、ちょうど後ろの席に制服を着た高校生の団体客がいて、彼らがもうライブの客さながらに、ものすごい盛り上げてくれたんですよ!

客席にいたわたしも楽しかったとともにキャストも三階席の一番後ろからこんな大きな歓声と声援がとんで、盛り上がってくれて嬉しいだろうなあと感じました。

 

もう一つ思ったのが、この作品だと「演技」があんまり出来なくても、スターのオーラと歌唱力さえあればレイチェル役として舞台に立てるし、フランクはある程度の演技とレイチェルをお姫様抱っこできる力だけあれば、この舞台に出演できるんです。

ダンサーもそう。普通のバックダンサーの人たちがそのままその力を舞台にのせられる。

その分キャスティングに幅が出せる。つまりキャスティング次第では普段舞台を見に行かない層を劇場に連れてこれる可能性がある演目でもあると思います。

そういう意味でさまざまなパフォーマンスの垣根が曖昧になる良さ、というのを感じた作品でした。

だからちょっと日本版ボディガードの配役がちょっと残念です。フランクの大谷亮平さんは、ドラマからファンになった人を呼び込める良いキャスティングだと思うのですが、レイチェル役が新妻聖子さんと柚希礼音さんというガチガチミュージカル畑の人。

ここは1つ普段演技とかしないスター歌手の方をキャスティングしても面白かったと思うのですが、そこまですると通常の舞台ファンの動員を見込めないと考えた結果なのかもしれません。