こんなことを思ったり。ぼちぼちかんげき。

アラフォー負け犬がビンボーと戦いながら、観劇したものなんかを感激しながら記録。

過ぎた夢と恋の果て@宝塚雪組「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」

1/4(土)15:00~ 宝塚大劇場

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ヌードルス 望海 風斗  
デボラ 真彩 希帆   
マックス 彩風 咲奈  
ジミー 彩凪 翔    
キャロル 朝美 絢  
ファット・モー(壮年期) 奏乃 はると  
コックアイ 真那 春人   

サム 煌羽 レオ
ペギー 愛 すみれ  
チャン・ラオ 天月 翼  

ファット・モー(少年期・青年期) 橘 幸  

ニック 綾 凰華

エヴァ 彩 みちる

パッツィー 縣 千

ドミニク 彩海 せら
 

原作 ハリー・グレイ/セルジオ・レオーネ監督による同名映画
脚本・演出 小池修一郎
作曲・編曲 太田健

原作映画はこちらになります。

 

もちろん、わたしは何の予備知識もなしに見に行きました!←いばることではない・・・。

でも何の予備知識がなくても、ちゃんと「宝塚歌劇」になっています。

そんなあらすじはこちら。

 

1950年代アメリカ・ニューヨーク。

ファット・モーが経営するダイナーにヌードルスがやってくる。

かつて彼はユダヤ系移民でニューヨークのローワーイーストサイドで生きていた。

しかし今は違う名前で田舎で細々と暮らしているという。そんな彼のもとに大金と妙なパーティーの招待状が届いた。その理由を知るべくかつての故郷に戻ってきたのだった。

鍵は彼が捨てた人生にあるかもしれないと、過去を振り返るヌードルス

貧乏でどうしようもなかった少年時代(1920年代)。友情に恋にまっしぐらだった青年時代(1930年代)。

彼の人生が浮き彫りにされていく・・・。

 

観劇後に映画を見たのですが、映画ではこの3つの時代を行き来します。

しかし舞台は1950年代から過去に戻り順にヌードルスの人生を追い、1950年代に戻ってきます。

この辺の編集作業はさすがです。

特に第一部は圧巻。

小池修一郎先生の輸入ミュージカルではない一本モノでここまでショーアップされた作品を見たことがない気がします。

ヒロインのデボラはミュージカルスターになることを足掛かりにいずれ一国の王妃になることを夢見るキャラクターなのですが、彼女がみごとにミュージカルスターになったシーンの見せ方がすばらしい。

さらに「ショースター」であることをこれでもかと見せつけるまあや(真彩希帆)ちゃんの存在感と華と歌唱力がすごい。

ここだけでも圧倒されるのに、その後にマックスたちが経営する潜り酒場(スピークイージー)「クラブ・インフェルノ」の歌姫・キャロルとショーガールズの歌い踊るシーンが続くあたりが、本当に魅せられました。

キャロルは男役であるあーさ(朝美絢さん)が演じているのですが、音域的に女役の方が声が出やすいのか、歌も歌姫のまあやちゃんに劣らず魅せてくれたのです。

宝塚歌劇という特性上、仕方ないこととはいえ、女役が真ん中のショーシーンが続く、というショーをほぼ見ることができないので、この部分だけでも個人的にはすごい、と思うのです。

1930年代アメリカのショービズ界は本当にこんな感じじゃなかったんだろうか、と思わせる空気感を久々に味わいました。

何より一部のすばらしい点は、ヌードルスの恋を主軸に描いたこと。

子どもの頃からデボラが好きで好きでたまらなくて、とある事件をきっかけに刑務所に入ることになり、出所してもデボラへの恋心は募るばかりであることをしっかりと見せたからこそ、一部のラストシーンの「ヴィジュアル」が魅せるのです。

もちろん「男ってなんちゅうバカ!」と心から思いました。

もうほんと腹の底から。

怒りさえわくぐらい。

それでもヌードルスを演じるだいもん(望海風斗さん)の絶唱に「まあ、そんだけ好きだったんだもんな」とちょっとだけ同情できるくらい仕上げてきたことを心から評価したいです。

そんなわけで一部はいい意味でメロドラマに仕上がっているんです。ギャング映画をショーアップされたメロドラマに変換したのは「宝塚歌劇」として正しい選択だとわたしは思っています。

(正直「壬生義士伝」もこのくらいの変換が必要だったと思います)

 

だからその一部に比べると二部が弱かったのが残念と言えば残念。

幕開きのハバナと「サヨナラ禁酒法」のショーアップさ加減はよかったのですが、ここからはヌードルスとマックス、二人の人生の選択とその分かれ道となる大きな事件を描いていくので、どうしても暗い。というか二回目ですけれど「男ってバカ」。

それでもマックスの方は悲哀性をもって「バカ」の説明があったのですが、ヌードルスに関してはどこか中途半端なんです。

まあ映画を見ると一部のヌードルスをああいう風に描いてしまったので仕方ないのですが、そこを信仰心の方に傾けてしまったがゆえの歪みだったのかなあと思います。

とはいえ、アヘン窟での悪夢のシーンの作り方は、これを一本モノにした意味があるなあと感心しましたし、人生の帳尻というか、何が幸せで何が不幸かなんて本当にわからない、という小池先生が描きたかったところは、プログラムを読まずともちゃんと感じることができました。

まあこの辺はわたしが多感な時期に「ヴァレンチノ」と「華麗なるギャツビー」の二本をむさぼるように見たから、というのもあるかもしれません。

ヌードルスの生きる時代 | 雪組公演 『ONCE UPON A TIME IN AMERICA(ワンス アポン ア タイム イン アメリカ)』 | 宝塚歌劇公式ホームページ

(データないのは重々承知ですけれど、スキャンとか方法あったと思うので、初演のポスターも掲載してほしかったです)

 

何より1950年代の再会のシーンとセリフで、ああそう言えば一部の子ども時代にプレゼント持っていたな、と思い出させたところがすごくいいです。

(そして「壬生義士伝」でもこのくらい見せられただろう、と思わずにはいられませんでした。けっこう引きずっているな、わたし)

子ども時代からずっと交差している二人の人生。その選択と結末。どっちも「バカ」です。でも貧民街から生き抜き、大それた夢を必死につかもうとした生きざまは切なくもありました。

あれほど正しく努力を重ねて、駆け上がっていったデボラでさえ、最終的に戻っていくところはそこなのか、と思うと哀しくもありました。

その一部始終を見届けたヌードルスが今、何を思いここを立ち去っていくのか、その余韻が公演を重ねるごとに出てくることに期待します。

 

残念ながら1/4の時点では、まだだいもんの演技はそこまで追いついていなかったです。でも圧巻の歌唱力でその辺をねじ伏せてきました。これがトップスターの力です。

さき(彩風咲奈)ちゃんのマックスも、その二面性を自然に身体の中に取り込むにはまだまだという感じでした。けれどだいもんの横に立ち、張り合える存在感が備わってきていました。そして何より子ども時代がかわいい!だからデボラの選択もなんとなく理解できるのは大事。

デボラのまあやちゃんとキャロルのあーさはいうことなしですね。

華、美しさ、そして歌と魅せるべきところは魅せましたし、デボラのまっすぐな気性が「人を惹きつける」ものであること、そのヒロイン性を高めていました。

 

ジミーのなぎしょ(彩凪翔さん)、よかったです。

まさかなぎしょがここまでキーパーソン的なわき役をしっかり演じるとは。

そして映画を見ると、この役をこう描いたのも面白いです。

そしてニックの綾凰華ちゃんがかわいかった。かわいくていい人の役で、ちゃんと印象に残ってきたあたりが、美貌の若手としてちゃんと活躍してましたし、逆にワルを演じることが板についてきた煌羽レオも、とてもいい仕事をしていました。

 

こういう話ですから、ヌードルス、マックスとつるむコックアイ、パッツィ、ドミニクあたりはすごく美味しいかわりに娘役さんが割を食うのがかわいそうではありました。

エヴァ(映画の字幕ではイブ)もちょろっと登場しただけなので、ペギーあたりは映画くらいに役割分担させてもよかったように思います。まあどう描くかが宝塚歌劇の難しさではあります。

だから総括すると、本当にあの映画をよくぞここまで「宝塚歌劇化」したな、と思うのです。

これはギャングの物語ではなく、1人の男の物語で、その男が愛した女と友人の物語なのです。だから映画の人物像の在り方が好きな方には向かないと思います。

 

映画は映画で映像美がすごかったです。そしてロバート・デニーロが漂わせる雰囲気がめちゃくちゃかっこいい。

でも本当にギャング映画、なのですよね。

ヴァイオレンスはともかくとして、女に対する扱いがひどい。

舞台を見ながらも「男ってバカなの」と何度も思ったのですが、映画は「バカ」なんて柔らかい言葉では済みません。長い映画なのでインターミッションがあるのですが、ここでインターミッションに入られてもどういう気持ちでいたら・・・くらいの怒りしかありませんでした。

(おかげで後半は全くヌードルスが格好よく見えなかった。この犯罪者!みたいな気持ちでいっぱいでした涙)

ここで怒るか、しかけた方が悪いと思うかは人それぞれかもしれないですけれど、今ならかなりの問題になりそうです。

ただ映画に描かれていたマックスとヌードルスの友情というか愛憎というか、そういった複雑な感情から生まれたセリフで、使用してもよかったのにな、という部分はありました。

でも総じて「宝塚歌劇」としてはこれでよかったと思っています。

昔むかしアメリカで、こんなバカな男たちがこんな人生を送りましたよ。

そんなほろ苦さを味わえる作品でした。