こんなことを思ったり。ぼちぼちかんげき。

アラフィフ負け犬がビンボーと戦いながら、観劇したものなんかを感激しながら記録。

不器用で真面目を突き詰めた先@宝塚雪組「fff-フォルティシッシモ-」「シルクロード~盗賊と宝石~」

1/9(土)11:00~ 宝塚大劇場

『f f f -フォルティッシッシモ-』~歓喜に歌え!~
作・演出/上田 久美子

ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン 望海 風斗 
謎の女 真彩 希帆 
ナポレオン・ボナパルト 彩風 咲奈 
ケルブ【智天使】 一樹 千尋 
ヨハン・ヴァン・ベートーヴェン 奏乃 はると 
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ 彩凪 翔 
ヘンデル 真那 春人 
小さな炎/マリア・ヴァン・ベートーヴェン 笙乃 茅桜 
宮廷楽長サリエリ 久城 あす 
クレメンス・フォン・メッテルニヒ 煌羽 レオ 
ゲルハルト・ヴェーゲラー 朝美 絢 
エレオノーレ・フォン・ブロイニング【ロールヘン】 朝月 希和 
モーツァルト 彩 みちる 
テレマン 縣 千 
ジュリエッタ・グイチャルディ 夢白 あや 

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フランス革命後のヨーロッパ。混沌とした世の中を生きるベートーヴェンがなぜ「交響曲第9番」を作曲するにいたったか、を描いた「fff」。

今、人気の座付き作家・上田久美子先生のお芝居を見るのは実はこれが2本目なのですが、最初に比べたらずいぶん「大劇場で絵的に魅せる」ことのできる作品になったな、と思います。

2020年はベートーヴェン生誕250周年で、この作品も本来であればその意味も含めて作られたものだと思うのです。

でも残念ながら状況が変わってしまった。

変わってしまったがために、混沌とした世の中を生きるベートヴェンの姿をリアルに感じる代わりに、劇場にいるのに「外」と変わらない閉塞感があったことが残念でした。

でもこういう状態でなければこういった「閉塞感」を描くのは単純にすごいなと思います。

また現実と理想、そして過去と夢か妄想の行ったり来たり感も個人的には大変面白く見ました。とりわけ終盤近くのナポレオンとのシーンは、演劇的な表現方が好きです。

でも問題は、見ていて「ドキドキしない」こと。驚きがない。ただ「かっこいい!」とキュンとするシーンや「息をのむ」シーンがない。心が高揚しない。

ただこれは何を「大きな劇場で上演される演目に求めるか」の個人差だと思います。

心情にひたひたひたと迫る芝居は、わたしはもう少し小さな空間で、密接に見て感じたいと思いますし、それはわたしが宝塚歌劇に求めているものとも違っていたのです。

もう一つ思ったのは、おそらく複数回見る方がこの演目的には面白いだろうということ。そう思うと、主演カップルのサヨナラ公演でこれをやることは意味があるのだろうと思います。主演カップルファンは何度でも通いますし、見るたび、違うものを見つける、回数を重ねることで何か自分の中に落ちてくるものがある、のは同じ芝居を見続ける喜びの一つだと勝手に思っています。

でも一度しか観劇しない身としては、これはつらい。

ましてや一度目で「気持ちがひっぱられた」と思わないと、通常はもう一度見ることはないわけで、その辺のバランスが「商業演劇」として難しいなとか、いろいろ考えてしまいました。

(そして宝塚歌劇的に「舞台写真、早くください」な気持ちになれないのも、若干問題な気もします。「謎の女」と「天使」のビジュアルがもう少し凝ってほしかった)

今回も録音上演だったわけですが、今回に限っては録音上演がいいと思いました。演出ではなくて、ベートーヴェン交響曲が多数使用されていたからです。

これが宝塚のオーケストラだと物質的にもあの音は出せないですし、かといって交響曲だけ録音が流されるのも不自然なので、その辺りが苦なく見られたことはよかったなと思う反面、オケボックスをうまく使った演出も含めて、本来だったらどういう演出だったのかも気になるところです。

さてそんな作品の主人公ベートーヴェンを演じる望海さん。悲壮です。独りよがりです。こじらせてます。うまいです。でもこんな望海さん、他の作品でもいっぱい見ました・・・。特にトップスターになられてからは、こういう役が多くて、結局望海さんの魅力があまり分からない人間には、芝居では歌以外の魅力に気づけないまま終わってしまったのが残念でした。

一方、毎回その歌と存在で心ときめかせてくれた真彩さん。なのに今回の「謎の女」はいつもの魅力がなく(そういう役なので仕方ないのですが)、もう一作、彼女の魅力を存分に発揮した作品を見たかったなあと思わずにはいられませんでした(涙)

唯一ピアノソナタ「月光」のメロディに歌声をのせてくるシーンが、ヴィジュアルと歌の両方を魅せてくれたかなと思います。というか、よくぞピアノの旋律にこんなにきれいに歌声を絡ませられるな!と感動。もうここで「なんかいいもの聴いたぞ」と思ったので、いろんなことには目をつぶります。

そしてナポレオンの咲ちゃん(彩風咲奈)が、かっこういい!ナポレオンといっても「ベートーヴェンの思い描いた男」の具現化なので、ちょっと人離れした英雄感がとてもよく似合っていました。

物語はもう一人ゲーテの彩凪翔さんも軸に巡るのですが、彩凪さんも最後にふさわしいしっかりとした骨太の芝居で、ベートーヴェン、ナポレオン、ゲーテの3つの軸がきちんと立っていたのが素晴らしかったです。

時期娘役トップスターになる朝月希和さんの優しく落ち着いた佇まいも素敵でしたし、その夫・ゲルハルトを演じた朝美 絢さんは、元からの美貌が一層輝きを増し、演技も歌も存在感も光っていて、新生雪組も楽しみになりました。

 

ところで概念の具現化は「エリザベート」以降、すっかりミュージカルファンには馴染んだのですが、その具現化された「概念」自身が、芝居の中で「自分はそうである」と言うのはどうなのでしょうか。分かりやすいといったらそうなのですが、「エリザベート」のトートを「黄泉の帝王」にしつつも、概念として捉えたい人には捉えられる方がわたし自身は面白いなと思いました。

ましてやフレンチミュージカル「ロミオ&ジュリエット」の「死」は言葉もなく説明もなく、でもその演出と身体表現だけで「死」だと気づかせたところが衝撃だったわけで、そこを概念そのものがセリフでしゃべっちゃうのは、なんかひっかかったわけです。

そのひっかかりも含めてもう一回くらいはみたいので、ライブ配信を楽しみに待ちます。そしてどうかそれまで、無事に完走できることを心から願っています。

 

そうそうショーシルクロード~盗賊と宝石~』(作・演出/生田 大和)は、もう何回か見たいです!

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でも芝居以上にショーは、本当に現実を忘れさせてほしい。

つまり「世界の終端」のリアルな「戦争」感をなんとか和らげる方法ないでしょうか。

それまで楽しくショーの世界に酔っていたのに、銃の小道具とあの衣装がなんかガツンと暗さを突き付けてくるので、その辺をもうちょっとまろやかにしてもらえると嬉しいなと思います。

個人的には「三人のタンゴ」も宝塚あるあるでいいのですが、真彩ちゃん主役なシーンがないので、ここを映画版RENTのこんなシーンだと嬉しかったかな。

(マークとジョアンが望海さんと咲ちゃん、モーリーンが真彩ちゃんで)


Tango Maureen - "RENT" the Movie

でも上海ナイトクラブシーンの紅いチャイナ服の咲ちゃんの格好良さは堪能できるわ、青チームは彩凪さんで、二人の対立がずっと同じ組で競い合いながら成長してきた歴史を感じさせてくれるし、フィナーレでは望海さんから咲ちゃんのバトンタッチもあるし、次のトップコンビ以外にもたくさんのカップルが次々出てくるし、全体には見どころありすぎてどうしたら、それこそ「早く舞台写真ください」な終始楽しいショーでした。

セットも衣装もきれいでしたしね。

個人的には生田先生はショーを引き続きどんどん作っていただきたいです。

 

1/14から関西圏も一部緊急事態宣言が発令されました。首都圏の緊急事態宣言も相まって、せっかくの完売チケットもキャンセルがあったりするそうです。

それをうまく活用できるシステムがこの間に構築されることを願いながら、最後の日まで少なくとも「やりきった」だけでも感じられるよう、祈っています。