こんなことを思ったり。ぼちぼちかんげき。

保護猫と同居人と暮らすアラフィフがビンボーと戦いながら、観劇したものなんかを感激しながら記録。

DAWN YANKEES くたばれ!ヤンキース

5/30(水)13:30~ 青山劇場
http://www.d-yankees.jp/
ローラ:湖月わたる
アップルゲート:川崎麻世
ジョー・ハーティー大澄賢也
グロリア・ソープ:矢口真里
メグ・ボイド:杜けあき
ジョー・ボイド:青山明

幕開き観客側を七色に染める照明や、劇場をスタジアムに見立てたアナウンス、二部の幕開きの「Take me out the ballgame」の合唱と風船飛ばしといい、観客を楽しませようという心意気は伝わる。

そもそもセネターズという弱小野球チームの大ファンの中年男性がいて、あまりに弱いホームチームが宿敵ヤンキースに勝てるためなら悪魔に魂を売ってやる、と言ったら悪魔が登場して、彼を強力なスラッガーに変身させる、というような、B級エンターテインメント独特の荒唐無稽でバカバカしく、華やかで楽しい作品、ではある。

けれどもこういう欧米独特のB級エンターテインメント作品の演出は日本人には難しいのかもしれないと痛感する仕上がりでもあった。「イーストウィックの魔女たち」も、ロンドンでこれぞプロレベルの娯楽作品というセット・演出であんなに楽しかったのに、日本ではいまいちだったことを見ても、日本人向きではないのかなと思わずにはいられない。

特に今回は衣装がダサくてイマイチ。娯楽ミュージカルの見どころと言えばカラフルでポップでセンスの良い衣装、だと思っているので、中途半端にポップな衣装がダサかったのは個人的に痛かった。

また古いミュージカルなので、とにかくスロー。それはそれとしてしょうがないのだけど、例えば、歌のシーンの拍手の後の繰り返しなど、リピート部分はカットしてスピーディーに処理してもらえないだろうか。こういう拍手の後のアンコール的なリピートが多いのは昔の作品の特徴なんだけど、セネターズとか、特に光る華やかな人がいないシーンではとにかく長く感じて辛かった。逆にジョーとローラのダンスシーンなんかは、二人ともスキルのあるダンサーなので、長くても見ごたえのあるシーンになっているので、力量によってセネターズとグロリアのシーンももう少し短くまとめるとか、他のシーンとのメリハリがあればもっと良かったと思う。

とは言え、平日の午後という公演だからか観客の9割は宝塚から湖月さんのファンとみられる中高年の女性層。恐らく主に宝塚を見ている観客だと思うので、これくらいの古さ、スローさはちょうど楽しめるテンポで、作品の有り方としては正しいのかもしれない。

湖月わたるは女っぽい色気は皆無だったけれども、悪魔という性を超越した感じが、宝塚を卒業したての彼女の雰囲気と良くあい、コミカルな演技も個性を活かしていて良かった。宝塚トップならではの華やかさと長身を活かしたダイナミックなダンスはやはり見ごたえがある。川崎麻世はやはり英国風の上品なスーツを着こなせてしまえる容姿と余裕のある舞台姿がさすが。思った以上に大澄賢也が歌も演技も健闘。矢口真里はリフトが多様される前半のダンスシーンは「一生懸命こなしている」というレベルで、歌も声量が弱く歌詞が聞き取りにくく、まだまだ勉強が必要だとは感じたが、とにかく主役レベルの平均年齢も平均身長も高い中で、一人小さくて若くて可愛らしかったので、それだけで十分、という気はした。
青木明の歌声は朗々と素晴らしく、ファンの欲目だけど、杜けあきの、メグをあれだけ中味と雰囲気の可愛らしい女性として作り上げた演技力があったからこそ、ジョーが名声や栄誉やいい女よりも妻を選んだことに説得力を持たせたのだと感じた。