こんなことを思ったり。ぼちぼちかんげき。

保護猫と同居人と暮らすアラフィフがビンボーと戦いながら、観劇したものなんかを感激しながら記録。

宝塚雪組「ロミオとジュリエット」

1月2日(日)15時~ 宝塚大劇場

ロミオ 音月 桂  ジュリエット 舞羽 美海
*~*~*
キャピュレット卿 一樹 千尋
モンタギュー卿 飛鳥 裕 
モンタギュー夫人 麻樹 ゆめみ 
ベンヴォーリオ 未涼 亜希
ロレンス神父 奏乃 はると 
パリス 彩那 音 
ティボルト 緒月 遠麻 
マーキューシオ 早霧 せいな 
キャピュレット夫人 晴華 みどり
乳母 沙央 くらま 
ヴェローナ大公 大凪 真生 
愛 大湖 せしる 
死 彩風 咲奈

普通の舞台から、宝塚専用舞台になったこと、フィナーレがついたこと、があり、星組での上演に比べると、より作りは宝塚的だったのかもしれない雪組バージョン。
そして、星組の、ロミオとジュリエットの「恋物語」という側面は、やはり、固定の相手役ではないため薄れていて、それが好きだった方には向かない、とも思った。
けれど、フランス版DVDを見た時の印象には、個人的に雪組版の方が近くて、星組の方が「甘くて悲しい恋物語」という宝塚歌劇らしい印象だった。

古典を現代的な音楽を使って、前衛的なミュージカルにしてきたところが、この作品の個人的に最も面白いところで、だから、星組の若干漂うクラシカル感が、本当に個人的にだけど残念でもあったのだ。

雪組版と星組版の最大の違いは、現代感。
そして、愛の存在感だ。
大湖せしるの愛が個人的に好きだ。私が「愛」という役に求めているものが、彼女の方が近かったのだ。もちろん星組の愛は美しく可愛らしく、また踊りも非常に上手かった。けれど、彼女はまだ舞台経験も少なく、若い。
そこへ行くと、大湖せしるは、新生雪組において、最早中堅に入る。
その舞台での経験、スター候補生の存在感。
男役としての出来上がった体格が女を演じるときの大きさと違和感。
それら全てが、フランス版の「死」に近く、さらに私はフランス版の「死」の中に、母親的な愛も見ていたから、尊大で甘く残酷な「愛」とそれに翻弄された若者、という図式が想像しやすく、「単なる若い2人の恋と死」という物語より、もう一つ、私好みの解釈ができる造りだったことが楽しかった理由だと思う。

私の目は時々錯覚を起こす。
だから、フランス版DVDの印象は、とにかくただただ「死」が大きかったイメージで残っているのだ。
女性が演じていたから、身長などはロミオたちとそう変わることはないはずなのに、「死」がとてつもなく大きく、彼らを惑わし踏み潰したような印象があった。
そして、そのイメージがとてもステキだと感じた。
雪組の愛は、星組の愛がとても「純粋で甘く可愛らしいもの」という分かりやすいモチーフだったのに対し、「大きく厚く、だから抗いがたい誘惑」でもあるように見えた。
一方で対する「死」が、とても「繊細で傷つきやすく、若く不安」な感じがあって、「愛」と「死」がロミオの中にある要素、である、という見方ができることを気づかせてくれたのだ。

衣装も一つ一つはうーんこれは、というものもあったけれど、全体的にロックテイストで現代ぽく、また、星組版のように「赤」と「青」にはっきり分かれているのではなく、モンタギューは青緑から、紫、黒、キャピュレットは赤から紫のグラデーションで、それは、照明にあたると実に陰影が出来て美しく、両家とも紫で、交わるイメージがまた一つ、何か抽象的な意味合いが見えて面白かった。

新生トップスター音月桂は、持ち前の鮮烈な少年性と煌きを感じる現代的で鮮やかなロミオ。だから、彼の駆け抜けたあまりに短い人生に涙した。一方のジュリエットは少女と母性を持ち合わせていて、そのコントラストが良い。けれども、その分歌唱力の拙さが残念でもあった。

歌唱力といういう意味ではベンヴォーリオの未涼 亜希が飛びぬけていて、彼女の声が重なるだけで美しいハーモニーになるし、またソロ曲は、このミュージカルの音楽の格好よさを改めて気づかせてくれた。

両家母親と乳母の最後のハーモニーといい、今回はこのミュージカルが持つハーモニーの美しさを改めて感じた。今後東京へ向けて、全体に磨かれていくことを期待したい。