こんなことを思ったり。ぼちぼちかんげき。

保護猫と同居人と暮らすアラフィフがビンボーと戦いながら、観劇したものなんかを感激しながら記録。

ビギナー向けエンターテインメント@片岡自動車工業vol.2「名探偵青島青子-劇場版-」

5月21日 17:00〜 HEP HALL

演出・脚本 片岡百萬両

青島青子 一瀬尚代
エンジェル 南雲飛鳥
ヨークシャテリア 清水かおり
チャウチャウ 袋小路林檎
トイプードル 森口直美
ダックスフンド 米山真理
ドーベルマン 真壁愛
ケルベロス 大江雅子
チワワ 小野村優
豆柴 川端優紀
ポメラニアン 中元優那
ゴールデンレトリバー 河上由佳
野良犬 ダンサーズ


いやあ、HEP HALLに足を踏み入れたのはいつぶりでしょうか。
なんか色々懐かしく思い出しました。
ということで、いわゆる小劇場劇団の作品を見るのもかなーり久しぶりです。
なので、申し訳ないのですが、片岡自動車工業という演劇ユニットもはじめて知りました。

ストーリーはこんな感じでした。
品行方正、頭脳明晰な主人公・青島青子、26歳。
でも、いつも二番手なちょっと残念なタイプ。
そんな青子が青島探偵事務所を立ち上げた。相棒は愛犬のエンジェル。
何かいいことがないかなあ、と依頼人を待っていたら、ヨークシャテリアと名乗る犬から、とりあえず自分のいるところに来て助けてほしい、と言われる。
頼まれたら断れない青子は、ヨークシャテリアがいる「ワンルーム」へと導かれる。
そこは、犬たちだけで成り立つ不可思議な世界だった。
そして、ポメラニアンがこの世界を制圧しているという。
依頼内容もわからぬまま、ここに居る犬たちの紹介を受けるうちに、愛犬のエンジェルと離れ離れになってしまう。
再び、エンジェルと会えるのか、そして、このワンルームの秘密、ヨークシャテリアの依頼とは?


という、サスペンス仕立てのエンターテインメントでした。
上演時間も2時間弱。
つまり、2時間サスペンス的なモチーフを随所に散りばめた徹底した娯楽でした。

感心したのは、野良犬役がみんな本当にダンサーで、踊りのシーンに隙がなく、楽しめたこと。そして、録音の音楽と3つの本物の弦楽器(恐らくヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ)を混ぜ合わせていたこと。
音楽と踊りが本物、であることが全体のクオリティをあげていた気がします。

あと、役をキャラクター化していて、LINEスタンプを作ったりしているのは、そうかー、いまどきの小劇場ってこんなことができるんだな、としみじみしました。またこれが良くできている!

もちろん、エンターテインメントですから、映像も駆使。それも大変良くできていました。
充分楽しませてもらいました。

ただ、なんというか、映画チックなオープニングも、もう10年以上前にG2演出の「憑神」で見ちゃったし、新感線的な映像の使い方も娯楽性も見慣れてしまっていて、私には目新しさが何もなかったんですね。
しかも、G2とか新感線とか、歌舞伎役者という舞台芸のプロ中のプロが出演したものを見ていたので、これを、役者としてのスキルは明らかにおとる人たちがやっているのを見る意味はあるのだろうか、とか思いながら見終わりました。

で、ちまちまtwitterで呟いていたら、TLで、
はじめて演劇というものを見たのだけど、面白かった!映画よりいいかも!
的なツイートを拝見したのです。

そっか、ニーズはそこか!と納得いたしました。

三浦しをんさんのどのエッセイかは忘れたのですが、しをんさんがお母さまを連れて宝塚歌劇、確か、ベルばらを見に行かれたエピソードを書かれていたものがあったんですね。
それに、何回も役名を呼んでくれるから誰が誰か分かりやすくて面白かった的な感想をお母さまが仰った、というようなことが書かれていた記憶があるのです。(間違っていたらごめんなさい)

それと同じことがこの作品にも言えるのです。
犬たちはみんな、顔に「犬」とペイントしている。
そして、物語の前半戦は、歌舞伎の屋号の掛け声のように、登場するたび、「ポメラニアンポメラニアンポメラニアン」と叫ばれ、セットに映像と名前が映し出される。
そういう風にかぎりなく、理解しやすく工夫されているのです。

逆にいうと、私なんかは、もういいよー、話進めてよーと思ってしまったのですが、対象がビギナーであるなら、正しい演出。
だから、これはこれでいいのだと思いました。
そんな風に分かりやすくて楽しいので、もし演劇ってものにちょっと興味があるなーて方は、片岡自動車工業という演劇ユニットはオススメです。
そして、片岡自動車工業さんには、一層の演劇の草の根活動をがんばっていただきたいと思いました。

ところで、私がなぜこれを見に行ったかというと、友人・袋小路林檎が出演していたからです。
彼女は名バイプレーヤーでして、この作品の中でも出過ぎず、ちょうど良いバランスで立っていてさすがだなーと。
(とは言え、ちょっともったいない感じがしたので、いつか「漁港の肉子ちゃん」の肉子ちゃんを演じてもらいたいと思っている私。あの役、彼女にぴったりだと思うのです。版権は吉本興業が持っていると聞きました。どうお願いしたら届くんでしょうか。)

しかし、そんな友人を差し置いて、私は主役・青島青子に夢中でした
まずね、青子の衣装が昭和レトロでめっちゃ可愛いんです!明らかにかけているコストが違う!
いいんです、主役の衣装だけでも豪華であることは、娯楽性を高める要因です。
そして、それを着こなす一瀬尚代さんがステキ!
演技は、敢えて演出家の指示でああいう風に演じているのなら素晴らしかったと思います。
素なら、ちょっとうーん、な感じではあるんですけど、とにかく存在そのものが「青島青子」の世界観を成り立たせているんですよね。
あの独特の雰囲気は、多分演技では補えないので、演出家の方の選択がいい!
青子が世間からちょっとズレてる感じ、そして、きっとお嬢さまなんだろうなーと思わせる、浮世離れした品がたまりませんでした。

愛犬エンジェルを演じた南雲飛鳥さんが丸っこくて小さくて可愛くて上手だったので、2人がお互いへの愛情を示しあうシーンは、飼い主と犬ではあるんですけれど、たいへん百合百合しくて目に嬉しかったです
だから、まあ、男性が脚本で小劇場だと仕方ないけど、下ネタなかったらもっと良かったなーと。
メインキャストがオスメス関係なく全員女性だったので、下ネタ的なセリフがなければ、宝塚ファンの人にもオススメできそうな気がします。
(とは言え、3,500円て宝塚の1番安い席と同価格だから、宝塚ファンはそっちへ行っちゃうか)

ところで、袋小路林檎なんですが、もちろんこれは芸名でして、演劇はじめた頃は本名だったんですよ。でももうこの芸名にして長くなっていて、今回のカンパニーでも完全に芸名で呼ばれているようでした。
何が言いたいかっていうと、差し入れするときに林檎の「檎」の字が書けないくて不便したよ!
書けないのが自覚あったので、敢えて先にちゃんと差し入れに彼女の名前と自分の名前書いておいたのですが、やっぱり預けるときに専用用紙に書かなくちゃいけなくて焦る私。
ということで、差し入れ、臨機応変に対応していただけると大変嬉しかったなあと思った次第です←自分の漢字能力の低さを棚上げ。